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十一階

【グロームの塔・十一階】


「アースリメイク!」


 ジニーの放った魔法で地形が変わっていく。


 中級補助魔法アースリメイク。


 属性は土。


 その効果は術者が任意に一定範囲の地形を再構成することだ。


 魔法範囲は熟練度によるが、ジニーの類まれなる才能のおかげか実戦に耐えうる猛威を振るえるほどの効果はある。


 地響きをうならしながら直方体型の石が地面からいくつも突き出してきている。


 あっという間もなく石は俺とジニーとペローナをぐるりと囲みこんで簡易的な城塞じょうさいを構成した。


 石壁は遥か高くそびえ立ち、天井とつながってしまっている。


 周囲を囲んだ壁だが、壁が通路のように抜け出ている場所がひとつだけある。

 

 その幅およそ4メートル。


 通路は唯一、壁の外へとつながっているのである。


 壁の外側には10体のスケルトン・コボルトロードがいる。


 ただいま、グロームの塔十一階での中ボス戦である。


 さすがに一階でのサービス戦とは違って、今回の敵は最初から起き上がってこちらを迎え撃つ上に数も多いときた。


 ゲームでの経験からベストと思われる戦略として試してみたのがさきほどの地形操作である。


 前衛が俺一人しかいない今のパーティでは10体ものスケルトン・コボルトロードを相手取るのは相当に難しい。


 俺が一度に抑えられるのはいいところ3体程度なので、数の多いフロアボス戦で工夫が必要だったのだ。


 アースリメイクで壁をつくってジニーとペローナを後ろに下げ、通路で俺が敵を迎え撃つ作戦である。


 大量の敵が横や後ろから回り込んでくる心配もないし、俺も直接戦う敵の数を絞ることができる。



 ついにスケルトン・コボルトロードたちが通路を通って攻撃を仕掛けてきた。


 広いフロアに比べて狭く細い通り道のなかでは縦列をつくって向かってくるしかない。


「やあっ!」


 常に一対一の状況に持ちこみながら、有利に戦いを進めていく。


 重みを少しだけ増し、剣としての威力や切れ味にも磨きがかかっているクラディウスの影響もあって楽々と迎撃してゆくことができていた。


 真上から振り下ろされた敵の片手剣を軽く受け流し、隙をついて真っ二つにする。


 『レベルを上げて物理で殴る』が俺のRPG攻略のモットーである。


 オンラインゲームでは魔法職しかなかったので殴れはしなかったが、強力な攻撃魔法をガンガンぶっぱなすのがいちばん気持ちいい。


 たまには頭を使わないと勝てないけどね。


 そういえば今のレベルってどうなってんだろうなぁ。


 こっちに来る前は上限のレベル120に対してもう1レベルだけ足りなかったので、結構気になるところだ。


 ステータス画面とか見れないもんかな。


「グラウンドスパイク!」


 ジニーの魔法攻撃が後方の敵を襲う。


 中級攻撃魔法グラウンドスパイク。


 属性は土。


 地面から突き出した幾本もの棘が相手を串刺しにする。


 効果範囲は狭いが、細い通路で囲まれたスケルトン・コボルトロードたちは逃れることができない。


 ジニーにしては速い連続の魔法使用だったので、ペローナが魔力を渡したのだろう。


 ちなみにペローナはぜんぜん俺のこと援護してくれない。


 魔力はジニーに渡す分と緊急用に残しておく取っておく分で精一杯、ということを理由にしてまったく補助魔法とか攻撃魔法とか見せてくれない。


 どんだけ魔法使いたくないんだよ。


「あと一匹っ!」


 魔法から逃れて生き残っているスケルトン・コボルトロードを発見する。


 すかさず飛び込んで大上段からの一撃。


 なんとかとどめを刺すことができた。


「終わったみたい」


 グラウンドスパイクは範囲が小さい分だけ威力はそこそこ大きめだ。


 属性の相性もあるので直撃すれば相当なダメージだっただろう。


 眼前には数々の骨が転がっていた。


「ふむ、なかなか速かったの。地形をこちらに有利にするのはいいアイディアじゃった」


「いっぱいいたのにまとめて倒せちゃったもんねー」


 ジニーとペローナの高速回転コンビのすごみはアニマを大量消費する強力な魔法を連発できることだろう。


「ジニー、魔法を解いてくれる? まだ残ってるかも」


「あ、うん!」


 ジニーが杖をくるっと回す。


 とたんにあたりを支配していた土壁と棘はすべて砂に変わり、消えていった。


 フロア中には敵影は見えない。


「これで11層をクリアか。ここまでは順調だけど……」


 グロームの塔が大陸で最難度と言われている所以は、最後のボスがやたら強いことで有名だからである。


 どれくらい再現されているのかはわからないが少なくとも簡単な戦いになることはないだろう。


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