ペローナ・ヴァローナ
「で? 魔光大帝ペローナちゃんはいったいなんで行き倒れてたのかな?」
つーか魔光大帝ってなんだよ。
魔王の一種かなんか?
世界の半分とかくれちゃうわけ?
最近の魔王は魔眼をくれるっぽいけど……って作品変わっとるがな!
「くっくっく。聞くも涙、語るも涙の冒険活劇、魔光大帝ペローナの珍道中を聞きたいとな? 話せば長くなるんじゃがのぉ。どーしようかのぉ」
「あっ、長くなるの? じゃあいいよ。むりしないで、ぺロりん」
「くっくっく。ジニーとやら、べつに余はむりなどしとらんよ? どうしても聞きたいというのなら話してやってもよいというだけでの」
「いやいや、さっきまでしにかけてたぺロりんのからだにふたんをかけるようなこと、わたしにはできないよ!」
「あの、ジニー? 余の、余の話ちゃんと聞いとる? っていうかぺロりんって……」
なぜかいきなりコントを始めるジニーとペローナ。
話の内容こそ噛み合ってないが息ぴったりの姉妹漫才のようだ。
こころなしかジニーの笑顔がいつもよりまぶしい。
同年代の同性の子と話すというのもジニーにとっては特別な体験なのかもしれない。
ペローナが同年代かどうかはなんとなく疑問だが。
「ふむ。そうかおぬしはユウェルの……。このご時世じゃ苦労しとるんじゃろうのぉ」
「そうなの。わたしがユウェルだってばれたとたんにまわりの人がみんなかわっちゃうの」
なんかジニーがユウェルだとばらしちゃってるんだが。
「あの、ジニー? ユウェルだってこと言っていいの? まあたしかに、フードかぶっておけって言わなかった私が悪いんだけど」
「だいじょうぶだよ、ルーナ。これでもわたしは良い人と悪い人のちがいくらいわかるんだから!」
自信満々で、ない胸を堂々と張るジニー。
「心配せんでも、余はユウェルの宝石に興味などないわ。余の絶大な魔力をもってすれば借り物の力など必要ないからじゃ」
ペローナもまた不敵な笑みを浮かべ、自分の青髪をかきあげる。
自分でいうのもなんだが、今の俺がやればちょっとはさまになったであろうペローナの行為は、いかんせん本人が少女の域をでない容姿をしているために、まったく色っぽくない。
むしろ、がんばって背伸びしてます感がにじみでてほほえましいくらいだ。
そのぶんジニーは年相応な振る舞いをわきまえてて完璧だな。
うんやっぱジニーだわ。
「こほんっ。それでじゃな、おぬしらに折り入っての相談というかお願い事というかがあるんじゃ。まあ、出会ったばかりなのに図々しいこととは重々承知しとるんじゃが」
なぜかいきなり下手にでてきたぺローナである。
いつの間にか俺たちの呼び方も「きさまら」から「おぬしら」に変わっているあたり、さっきまで無理してキャラをつくってた感じが否めない。
ただ、依頼するときに丁寧な物腰になれるあたり、じつはペローナはいいやつなのかもしれない。
「なに? 言ってみて」
「それがのう。余はゆえあってさるダンジョンを攻略していたんじゃが、余の魔法と相性がよくないモンスターばかりでさっぱりはかどらんのじゃ」
「えっ、ぺロりんひとりでやってたの?」
「まあの。普通のダンジョン程度ならひとりでも攻略できるんじゃが、属性の相性が悪いとどうしようもないの」
それはそうだ。
「そこでお願いじゃ! どうか余と一緒にダンジョンを攻略してほしい! クリア報酬はひとつ、あるものを除けばあとはおぬしらのものでよい!」
うーむ、どうしたものか。
ゲーム時代なら、通常はパーティメンバーを5人程度あつめてじっくりと進めていくのがダンジョン攻略というものだった。
今いるのは俺とジニーとペローナの3人だけ。
ペローナの実力がどれほどのものかはわからないが、とりあえず人数的に物足りない。
「やろうよ、ルーナ」
ジニーが俺をみつめていた。
薄い緑色を映している彼女の瞳からは強い意志を感じられる。
だとすれば、俺に迷いなどない。
「うん、やろう」
「そうか、引き受けてくれるか! くれぐれも余の足を引っ張ることのないようにの」
なんかいきなり態度でかくなりやがった。
「それで、どこのダンジョン?」
一応聞いてみるが、俺の知る限りだとこのあたりではほとんど限られているので答えも予測可能だった。
それはこの大陸中で最難度を誇るダンジョン。
「グロームの塔じゃ」




