決定事項…?
これほど自分にとって衝撃的な事があろうか。持っていたスプーンはカップの中に落ちた。
「……本気で言ってるんですか?」
「本気だが」
腕を組んで自信満々に言われても困る。どうしたらそんな考えが出てくるのか…。
「だって僕が生徒会会長の補佐なんですよね?なんで僕なんかが…」
「“なんか”なんて付けんな。推薦したのだって見所あるからに決まってるだろ」
真剣な顔をつきで言われた。が、そんな短時間でわかるものなのか。正直戸惑うばかりだ。それにこのまま見つめていたら、また流されるそうで、怖くて視線をそらしてしまう。ここはきっぱり断っとかないと、声だけは雅人さんに伝わるようにはっきり言った。
「僕には出来ません」
「なぁ!??」
予想に反した答えだったのだろう。雅人さんの驚いた声が響く。会って間もないのにこんな僕に期待してくれるのはとても嬉しいことだ。出来ることなら何かしたい気持ちがある。でも…。
「怖いから……」
「…怖い?」
「……はい。雅人さんの近くに居れば絶対傷つけますよ?」
震えそうになる声を抑えて淡々と伝える。これは牽制だ。今だって業務がパンクしそうなのに問題事を増やすわけにはいかない。ぎゅっとズボンを掴む。
「それがどうした」
「へっ」
うつ向いていた顔を上げた。目に写ったのは堂々とした雅人さん。にやりという言葉が似合いそうな表情に、思わずまばたきをしてしまう。
「大体なもう俺は巻き込まれてんだ。わかるだろ?」
「でも…」
「確かに資料室には逃げ込んだけどよ。そもそも俺は誰だ?」
不敵な笑みを浮かべて問いかけてきた。が、まさかこんな事を聞かれるとは思わなくて、
「せっ生徒会会長?」
疑問系で答えてしまった。きっとこれでよかったはずなのに、ふっと鼻で笑ったような声が聞こえる。そしてまた頭をくちゃくちゃに撫でられた。…乱雑すぎる。きっと髪はあらぬ方向こう跳ねてるだろう。
「もっと自信もって言えよ」
そう言われても、変な言葉を言ってしまいそうだから、口を閉じて、頷くだけにした。
「生徒会会長と名の知れた俺は誰でも知ってるよな。まぁ例外を除いてわ」
「うっ」
口許を手で押さえて雅人さん。ちょっと震えてるし、これ絶対あのときの事を思い出して笑いを堪えているに違いない。かっと羞恥心にかられて思わず声が出てしまった。
「今更実が俺の側に居ようが、居なかろうが関係ないだろう」
「でっでも」
「それに俺の親衛隊の事なら大丈夫だ。誰にも手出しさせないから。他のもな」
「えっ」
雅人さんは優しい笑顔をこちらに向けて、大丈夫と何度も言ってくれた。僕の言い出せなかった不安な要素もわかってくれてたことに嬉しくてじわりっと視界が滲む。
「実は泣き虫だな」
「ほっほっといてください」
恥ずかしくて、そっぽを向き、食べかけだったゼリーを口に運ぶ。
「実」
「なんですか」
素っ気ない返事になってしまったし、目線も合わせられない。雅人さんは優しい声で、
「引き受けてくれるってことでいいんだよな?」
「……はい」
これ以上拗れさせる必要もないから、渋々だけど頷く。なぜだか素直になれない。
「よろしくな」
「よろしくお願いします」
僕は出来るだけ頭を下げて、お互いに改めて挨拶をし終えた後に顔を上げた。そのときに顎を引っかけられ、
「なぁ実。俺との約束忘れてないか?」
顔が近いのと、言葉の意味にパニックになりそうになる。
冷や汗が流れる僕は何を約束しんだあああ!!!!