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はっ!不覚!!

 視界がぼやっとする。何度か瞬きをしたあとに見える身体を起こせばなんだか頬が痛い。下敷きにしてた勉強道具が目に入る。ノートが少しよれてしまっていた。


(……ああ、僕は寝てたのか)


最初はそこそこ綺麗な文章が途中から眠気に負けてついには力尽きたであろうところ文字が汚い。よくこれで書こうとしたなっと苦笑するしかない。しかも最後はなんて書いてあるのか自分でも良くわからないくらい酷い。


(これは書き直しだな)


消しゴムで消そうと机を見るがない。それに探してる最中にふと肩が軽くなる。なんだっと思って視野を広げて床に視線を落とせばなぜか布がある。これがかかっていたものだろう…けど、僕が羽織った記憶はない。ぼっーとする頭で考えていたら急に頭が何かの衝撃があってビクッとしたがそれが少し強めに撫でられていることだということに気が付いたのは隣に笑う彼が居たから。


「良く寝てたな」


「…雅人さん?」


何度か瞬きして雅人さんを見続けていたが頭が付いていかない。だってまだ仕事してるはずで、…そいえば今何時だろうと針を見れば20時を指していた。信じられなくてもう一度時計を見るが変わらず20時を指していた。


「えっと、もう夜なの?」


「ああ、そうだな。もう外暗いぞ」


指された窓の外を見れば綺麗な月が見えた。これはいくらなんでも寝すぎだろう。驚かされてばかりだった思考が今度は事の事実に頭を抱えた。


(今日初めてあった人の部屋でのん気に寝れるなんて…)


いくら昨日が寝るの遅くて、今日も転校生の事で大変なことがあったとしてもだ。雅人さん達は頑張って仕事してたのに自分だけこんな不本意だけど寝落ちしてしまうのは申し訳ない気持ちになる。僕だって頑張らなきゃいけないのに。


「まぁ今日くらい寝てたっていいだろう。疲れてたんだろうし?」


「えっ」


「顔に書いてある。それに汚れてるしな」


ここっと人差し指を頬に当てられてた。僕も片手ですぐに押さえると楽しそうに笑う雅人さんの顔が目に入る。


(楽しいのか?うーん…それにそんなに僕はわかりやすいんだろうか?)


チワワ達には無愛想って言われて余計な反感を買っていたような、どう遡ってもわかりやすい要素はないと思うだけど。


「孝太から事情は聞いたんだけどな。大変だったな」


また頭を撫でられた。本当に撫でるのが好きなんだな雅人さんと、思いながら頷く事かし出来なかった。他に"バレなかったよ"とか"何も無かったよ"とか言えばよかったんだろうか。ただ今撫でられてる頭は心地が良かったからつい甘えちゃってたのかもしれない。…ふいにガチャっと扉が開く音がすると、


「いちゃつきタイムはそれくらいにしとけよ」


「チッ」


金髪の髪が眩しい…橘さんと孝太さんが入ってきた。なぜに雅人さん舌打ち!?

なにこの状況。呆然と見つめてしまうしかない。


「いいじゃないちょっとくらい。私すごく残念」


「てめの趣味がよくわからん」


「言葉汚いと彼女さんに嫌われるわよ」


「うっせぇ」


言われるままに入ってくる情報。ついていけないと言えばいいのか。目で彼らを追えば向い側の席に座る。


「いつものノリだから気にするな」


「えっ」


こそっと雅人さんが耳打ちしてくれた。固まっていた体が自然に動く。すこし雅人さんの方を向けば優しく笑っていた。が、再度二人を見るがこれがいつも通りのノリってどういうことなんだ。疑問しか浮かばなかった。


「もう、みっちゃん付いていけてないじゃない」


「お前も変なこと言うからだろ。それに今から大まかに言うから孝太は黙れ」


「はーい」


孝太さんは渋々頷きちゃんと黙るようだ。立花さんは頬杖を付きながら眉を寄せている。うん、やっぱり橘さん不機嫌。そうに違いない。なぜか背筋が伸びる。緊張からだろうか…。


「で、実。とりあえず、決まったことだけを簡潔に言うぞ。詳しくは雅人に聞け」


「はっはい」


「明日休みだが学校に行ってもらう。これ決定事項な。こいつが化け物並みに処理してるがまったく終わらないから休日返上して日曜日もやるぞ。実の部屋の移動もちゃんと受理されたから場所は雅人に部屋に帰りながら聞け。制服は雅人の部屋に届いてるって連絡もらったからそれを着ろよ。仕事は明日詳しくやるとして、朝8時30分には準備室に居ろよ。寝坊助は叩き起こして構わないからな!!あとは……雅人に聞け」


橘さんノンブレスで一気に言い切った。いくつか気になったことがあったけど。なんだか聞きづらいし気まずい。それに最後はなんか言いづらそうな口ぶりだった。


(なにか有ったのかな…)


また転校生のことで迷惑な要素が増えたのとか頭に過って不安になったが、ここは話を進めておこうと頷いといた。気になることはあとで雅人さんに聞けばいい。…でも部屋の移動が決まったのにはとても安心した。もうこれで戻らなくても済むんだからちょっとだけ心が軽くなる。


「まぁ、みっちゃんも気になることがあるでしょうけど。まぁなんとかなるわよ」


「なにそのポジティブ?」


「はぁ…」


「もう二人して…ポジティブいいじゃない?」


考えて飛んでた思考が孝太さんの笑い声でもとに戻る。


「まぁとりあえず、今夜はもう休んだ方がいいわよ、ねぇ?」


「確かにな」


言われたとたんにまた髪を撫でられる。もう放っておこう。…嫌いじゃないし。

でも橘さんに呆れられてる気がするのは気のせいかな。


「もうイっ……ない。お前らはとっと部屋に帰れよ。俺らも明日の準備があるんだから」


「…そうだな」


雅人さんが立ち上がる。が、僕はどうすればいいんだろう。きょとんとしてる場合じゃない。ワンテンポ遅れて慌てて立ち上がったが、


(あっカバンと…机も片付けないと)


オロオロと隅に置いてあった鞄に目をやると、もうすでに雅人さんが両方の荷物を持っていた。が、片方を渡してくる。


「入れるだろ?」


「あっはい!ありがとうございます!!」


あっつい敬語を使って慌てて受けってしまったが、雅人さんはふふっと笑っていて、


「慌てなくてもいいぞ」


「俺もそこまで急かないぜ。佐藤落ち着けよ」


「ふふ。あっ夕飯はこれ食べてね」


笑いを堪えた雅人さんと苦笑を浮かべた橘さん、そして優しい笑顔で孝太さんには買い弁なんだけど許してねと渡された。オドオドしながらもとりあえず荷物を近くに置いてから両手で受けとる。


(……あっ…すごく久しぶりの感覚だ)


嬉しくて、嬉しくて、なんでこんなことで、自分でも思うんだけど。自分の周りがこんなに穏やかで安心できる空間にいることがこんなに幸せなんだと思わずにはいられなかった。つい目頭が熱くなってしまったけど、泣くのは可笑しいからグッと堪えて、


「ありがとう」


自分の精一杯の笑顔で笑顔で言う。とても嬉しかったから届けばいいなと思いながら。でも何故か笑顔を向けたとたん三人とも固まってたけど、そんなに可笑しかったのだろうか。ちょっとだけ、落ち込む。


「みっ実とりあえず、片付けよう」


「そうだね」


一番始めに復活した雅人さんに言われて、忘れかけていた机の上置かれた今日教科書やノートをしまう。弁当もしっかり持った。


「じゃ行くか」


「はい」


「じゃ明日ね」


「はい、また」


「遅れたら許さない」


「それは勘弁」


雅人さんが苦笑していた。橘さんも和らいだ言い方だったけど、本気なんだろう。気を付けないと。

 僕は孝太さんには手を振りかえしてから雅人さんの隣に付いていく。…そういえばまだ新しいところの場所聞いてないけどこのまま案内してくれんだろうか?

ちらりと雅人さんを見るが、雅人さんが気づいて微笑むだけだった。うーん付いていけば良さそう。それに『行くか』ってさっき言っていたばかりだからたぶん案内してくれるんだろう。

 橘さんと孝太さんの部屋を後にした。

 二人が出てって暫く扉を見つめていた。

さすがに本当のことが言えなかったが、佐藤に伝えてもし断られたらと考えたら言えなかった。


「なぁ、あの二人大丈夫だと思うか?」


「…みっちゃんは鈍感だから、まぁ。問題はまさくんね」


「だよな。無自覚なのが厄介なんだよ」


机に項垂れる。朝も抱き枕にしてたくらいなんだから、ヘタレだからたぶんそれ以上はたぶんしないと思うけど。


「まぁ、みっちゃんは嫌がってないしなんとかなるわよ」


「でも、あそこベットないぞ」


「…無自覚だから襲いもしないでしょ」


「ああ、まぁ、うん」


「まぁ不安しかないわよね。みっちゃん可愛いもの。まさくんと同じ部屋だものね」


流石の孝太も不安だったららしい。あの笑顔はたしかにヤバかった。それが不安要素を増した原因でもあるけど。はぁ…ため息を吐いて、


「考えても仕方ないな」


「それもそうよ!」


自信満々に答えられてもイラッとすんな。まぁ明日見て様子を決めるか。

名前の件もちゃんと伝えてるか不安だ。

どう考えても心配事しか増えてない気がした。

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