質問と回答(孝太視点)
本当は私が転校生のやつらの前に出ても良かったのだけど、そうなるとみっちゃんを隠すなんて100パーセント無理。せっかく私がみっちゃんをこんなに可愛く意味がなくなるし、さすがの私でもイラッとしてたから本性を曝してみっちゃんに嫌われたくはない。今まで話してみて、みっちゃんはいい子ってわかったし、まさくんとの会話からいい感じとも受け取れてたから、見守っていきたいのだけど。とりあえず今はやり過ごしつつ上手く脱出しないと二人に怒られてる未来しかないわね。
おっかない未来は成ってから考えるとして、この際まさくのためにちょっとだけど、みっちゃんについて知っておこうと思って聞いたんだど…大人しく隣に座ってくれてるみっちゃん。私が可愛くしたらからより小動物みたいになってる。悩んでる姿も可愛いけど、どうやら話題に悩んでるみたいね。
(大雑把すぎたから?)
さっきから上を向いたり、首をひねって考えてみてくれてるみたいだけど、こう黙ってるってことは思いつかないのかな。
そうわかりやすくてつい、くすっと笑ってしまった。ここは私から聞いたほうが良さそうね。
「みっちゃんの好きな生き物なにかしら?猫?犬?」
「えっ」
「結構この手の話は王道でしょ?猫派?犬派?」
みっちゃんの目が大きく広がって驚いていたみたいだけど。すぐに笑って、
「僕は猫派ですよ」
「そうなの。猫可愛いわよね。毛も柔らかしい、猫鍋とか可愛いし、癒しよね」
「あっ孝太さんも猫派なの?」
「私もどっちかと言えば猫派ね。犬も可愛いけど、猫のツンなところたまらないわ」
想像しただけで可愛い。両手で二匹抱えるのが夢だったりする。思わず緩くなる頬にハッとなる。
「いっいけない!私ばかり話してるわ。えっと好きなものは?」
つい、自分の話をしてしまっていたわ。不覚!みっちゃんのことをサーチするためだったのについ楽しくて、気を引き締めて違う話題を振ってみた。
「好きなもの?」
「そう。好きなもの。たとえば曲とかテレビとか」
「…えっと最近は…料理かな。まだ下手なんだけど」
恥ずかしそうに言われた。頬がほんのり赤い気がする。
「ああ、料理器具持ってきたもんね」
「うん。それに大事なものもあるし」
「大事なもの?」
遠慮なんか忘れてあえて突っ込んでみた。気になるのもあるけど、なんかみっちゃんの語り方が優しいのが気になる。この殺風景な部屋で唯一見せた好きなものだし、なにか特別な感じがするから。
「大事もの。包丁なんだけど。料理が特に好きってわけでもなかったのに入学祝いにもらったんだよ。母さんに」
「めっ珍しいわね」
予想がちょっと違ったかしら。前の学校で好きな人からとか思ったんだけど…まさかの母親から。しかも包丁ってなかなかないわよね。でもみっちゃんは嬉しそうに話してるから、今はとても料理が好きなのよね。
「『これからの男子は料理も出来なきゃだめよ』って、やる気初めは無かったんだけどやり始めたら意外に楽しくて」
花が咲いたような笑顔で話してる。出来るようになったレシピや、失敗談を話すときの笑顔は生き生きしてて、さっきの暗い顔が嘘のようだ。
(ちょっと安心ね)
笑顔は私の部屋でも見てたけど、こっちの笑顔の方が好きね。
「素敵なお母様ね」
「うん、母強だよ。敵わないや」
「もしかして一人っ子?」
みっちゃんが首を振って、
「違うよ。姉さんがいる。…おっちょこちょいなんだけど」
「おっちょこちょい?」
「…よく忘れ物したり、こけたり」
「いわゆるドジッ子ね」
おっちょこちょいのお姉さんか実際見たことないのよね…見てみたい。並べてたら可愛いだろうな。妄想が膨らむ。
「似てるのかしら?写真とかないの?」
「似てるとは言われるよ。画像ならあるけど、携帯がその…充電切れで」
「じゃ後で見せてちょうだいね」
「うん」
なかなか興味深いことを聞けたんではないかしら。写真は楽しみしといて、あとどうしても聞きたいことがあるのよね~。にやにやしてしまう口元をなんとか引き締めて、
「突然だけどみっちゃんの身長いくつ?」
「えっ言わなきゃダメ?」
「聞きたいな」
ここは押さなきゃね。ぐいっと耳を傾けて聞く。言いづらそうなぐぐもった声が僅かだがぼそりと『ううっ1…cm』とだけ聞こえた。まぁ身長小さいことにコンプレックスなのかもしれないけど。自然に聞き出すにはこの流れが必要だから心を鬼にして聞く。
「ごめんなさいね。聞こえないわ」
「…160cm」
みっちゃんんはあまりの恥ずかしさか顔を覆ってしまった。でも、まぁ納得の小ささね。
「まだ高校2年生だし、これから伸びるわよ。大丈夫」
思い切り背中を叩いて元気つけてみた。そうかなっと自信なさげだけど、まぁとりあえず牛乳飲みましょうってことで落ち着いた。そして私が一番聞きたかった本題。
「誕生日はいつ?」
「1月13日だけど」
「血液型は?」
「O型…って本当に唐突だね」
「うふふ。情報は必須なのよ?」
みっちゃんにきょっとんと見つめられたけど、気にしてなんていられないわ。きっとまさくんは誕生日なんて聞かないだろうし、チェックしとくのは常識よね。
「必須なの?どうでもいいことだと思うだけど」
「あら、どうして?どうでもよくないてないじゃないわ。卑屈になっても楽しくないじゃない。私はみっちゃんのこといっぱい知れて嬉しいわ」
「…うん」
みっちゃんは俯いて頷いてくれたけど、これは照れてるのかしら。気持ちがほんわかしたところで、時間をちらりとみる。そろそろ良さそうね。
ベットから立ち上がり、みっちゃんの肩を叩く。
「そろそろ行きましょ?準備してね」
「うん」
みっちゃんが荷物の鞄を取り、私ももう1つの鞄を持つ。さぁ無事に脱出してみせましょうか。




