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ドア越しの…

 聞こえた音は玄関のドアを開ける音に近かった。でも聞き間違えかもしれない。きっとこの場所にいるから、幻聴が聞こえたのかも…。


(だって孝太さんが転校生達は学校に居るってメールを雅人さんからもらったって言ってたし。ここに居るはずなんて…そんなはずない…)


頭では否定して、じっとドアを見てしまう。

 しかし、その考えはあっさり砕かれる。玄関の方から複数の声が聞こてきた。疑問が確信に変わると、咄嗟に自分の部屋の鍵をかけていた。扉の向こうはまだがやがやしているが、廊下に響かせる音はどんどん近づいている。

 不安で孝太さんの方をちらりと見ると、険しい顔をして壁を見て何か考えている。たぶん孝太さんも壁の向こう側を気に向けているようだ。鍵はかけてるから大丈夫だけど。いつのまにか手汗がじわり出ていたようで、手を冷たくさせていた。

 ドタドタと駆けてくるような足音がちょうど僕の部屋の前で足音が止まった。と思ったら、今度はドアが激しく叩かれ、思わずビクッと肩を震わせてしまった。


「おい、実!いるのはわかってるんだぞ!!引きこもるなんて卑怯だぞ!!」


声の主はやはり転校生だ。ドアが激しく揺れるほど叩いているのに、手は痛くならないのだろうか。一時は驚きで心臓を鷲掴みされたが、今は呆れに近い。こうも同じことしか出来ないのだから。

 騒音は無視に限る。…ただ何もしたくないだけだけど。ため息を吐いてベットに座る。孝太さんはじっとドアを見つめていたが、暫くして僕の隣に座った。が、耳元でぼそりっと小声で、


「…なんなのアレ?」


「タイミングが悪かったとしか言えないよ」


揺れるドアを見ながら言った。


「ついてないわね。なんでこんなときに戻ってくるのよ。いつも使ってる生徒会室に行けばいいのに」


「あはは」


苦笑いしか出ない。でもたぶん転校生は僕が戻ってくるから確信的にここに来てるだと思うだけど。それはまた孝太さんを不機嫌にさせそうだから黙っておこう。意外にリアクションが激しいから。


「しかし、厄介ね…飽きないのかしら?」


孝太さんが頬に片手を当てながら、はぁっとため息を吐いた。

 勉強机の上の置時計を見ると11時30分だ。この時間にいるのは本来は可笑しいだけど。まぁ、普段もあんまり授業を受けてないみたいだから変わらないかもしれない。

 

「-----ときなさい。手を痛めますよ」


誰かが止めたのかドアを叩いてた騒音が止まる。


「だって!!実が引きこもるのがいけないと俺は思うぞ」


「でも本人が出たくないって言うんだから無理に出さなくても良いじゃない〜」


「太陽も止めるのかよ!!」


静かになるはずもなく、転校生の荒げる声がうるさいほど聞こえる。気にくわないとすぐに態度に出ちゃうからな。耳を傾けつつ、小声で孝太さんに、


「声からして副会長さんと会計さんだね」


「そうね。でも三人だけってめずらしくないかしら?」


「へ?」


「たぶん、大人しいからわかりづらかったと思うけど、書記も居るんじゃない」


推測だけどねと笑う孝太さん。でも確かに転校生に連れられていたときには、副会長さん、会計さん、書記さんが居た。後、美形の怖い人も居たり居なかったり…。確かに今発言していないだけで居るかもしれない。人数を探るように耳を傾ける。


「彼、出てこないようですし、本来の目的道理ご飯食べましょう」


「そうだよ〜もうお腹がぺこぺこだ」


「太陽がそういうなら…でも、この際誰が作るんだ?いつも実だろ?」


「それなら笹原くんが適任ですよ。ね?」


「あっ…うん」


やっと4人目の声がした。それに決定だの名前も副会長に言っていたから間違えない。孝太さんの考えが正しかったみたい。しかし、ドア越しのメンバーが豪華と言うべきか。しかも書記さんが料理を作るとか普通の人なら卒倒しそうな話なんじゃないかと思う。

 それを聞いた転校生がすごい喜んだ声が響いて、この騒音はこのドアから離れて行く。それに続いて足音も遠ざかって行くから、皆離れて行ったんじゃないだろうか。確かめるためにそっとドアに耳を当てて

いるかどうか確かめようとしたが、孝太さんに手を掴まれた。


「ちょっと待ちましょう。料理を作るとしても、あのメンバーなら書記一人。その他はフリーなはずよ。物音に気付かれたアウト。それに今のみっちゃんをあいつらに見せるわけにはいかないから、ね?」


「は、はぁ…」


「だから、みっちゃん話でもしてましょうか」


名案とばかりに笑顔になる孝太さんに戸惑って、


「えっなんで!」


「しー。声が大きいわよ」


人差し指を立てながら言われてしまった。慌てて手で口を押さえる。と、孝太さんが隣に座るようにとぽんぽん叩いていた。こうしてると本当に近所のお姉さんみたい。孝太さんは男だってわかってるんだけど。やわらかい雰囲気がそう思わせる。

 いつまでも立っていてもしかたないから孝太さんの隣に座る。でもにこにこと笑いながら両手を合わ待っている孝太さん。そんなに楽しいことがあるのだろうか…。どうしても僕の話をしなければいけないらしい。音にならない息を吐いて孝太さんの目を見た。

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