表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

オフ会シリーズ

交差する運命のオフ会

作者: 双月キシト

 ある日、九人で行っていたチャットで、私はある提案をチャットの皆に聞いてみた。



 【淋しい兎:今度、○日にオフ会をしませんか?】



 これが、全ての始まりだった…


 ◇  ◇  ◇


 オフ会の前日


 日本 東京



 「ねえ、うさ。本当に行く気なの?」



 「え? 何処に?」



 学校の帰り道に葛城かつらぎ 宇佐美うさみの友達、深雪に突然何かを聞かれた。最初何を聞かれたのか、全く分からなかった。

 深雪は、そんな私の様子を見て呆れられた。その返しは友達として失礼じゃないかな…


 「ほら、例のオフ会」



 「ああ、明日のオフ会こと? うん、行く予定だよ♪」


 私は最近始めたチャットを通じて、仲良くなった私を含めた九人でオフ会をする予定なのだ。

 ちなみに私のハンドルネームは『淋しい兎』で登録(うさみをもじって兎にした)している。


 何故私がチャットを始めたかは置いといて、私はこのオフ会を楽しみしている。いつもチャットの中だけで、お話をしているお仲間と一緒に食事をしたり、遊びに出掛けたら、どれだけ楽しいだろう。

 なのに隣にいる友達は、私を馬鹿にしたような目で私を見てくる。


 「違うわよ。馬鹿にして見てるの」


 

 「心読まれた!!! ユキちゃんはもしかしてエスパー!?」


 「そうよ」


 あ、つまんない。肯定したよ、私の友達は。そこは「そんなわけないでしょ、漫画の見過ぎ!!」とか解答する所だと言うのに…


 「いちいちアンタのジョークに付き合いきれないわよ。それに考えたら分かるでしょ。そんなファンタジーがその辺に落ちてたらシャレになんないわよ」


 「そりゃ、そうだけどさ…」



 「そもそも話をそらそうとするんじゃないの」



 あ~この感じは分かる。私のラビットセンサー(自分にとっての危険、辛い事が起こる時に、敏感に反応する異常な感覚気管)が反応してる。この場合は恐らく…


 「アンタね~もう私らは麗しの高校生なのよ。どんなに金をつぎ込んでも、完全無欠のロボットを操ろうと、この世界を支配しようとしても、けして手に入らないものは何? そうです、“今”なのよ!! 正確に言うなら十代で最も可能性に満ちた、“高校生活”なのよ!! 高校生活は勉学や部活に勤しみ仲間達と絆を深めたり、愛しの先輩に告白して失敗して友達と慰めあったり、文化祭で大きな催し物をしたりとイベント事は、盛りだくさんあるの。今私が言った以外にもたくさんあるの。それをオフ会ってアンタは、何を考えているの? まあ、確かに人の趣味にとやかく言うつもりもないし、チャットくらいは私はTwitterみたなもんと枠組みして、無視してもいいかな~、とか思っているけど……………………………………………………………………………」


 「……………」


 うわ~でたよ、ユキちゃんのゲージ溜め必殺技『100秒間のトライアル・マキシマム』

 

 この技が発動している間は、ユキちゃんにはどんな言葉も寄せ付けずに、相手に一方的な言葉による楔を打ち付け、ジャスト100秒間になる限界ギリギリまで浴びせられた楔(言葉)の説教が終わると、楔が一気にハートを貫き、相手のハートを破壊へと陥れる悪魔の技…。

 (前、どんなに言われてもけして怯まないダメ人間でも、ユキちゃんのこの技を受けて、精神に障害を起こす程の重症を受けたという。この時の時間は93秒…)


 「だから、アンタにはね……………………」



 (ヤバイ、あと30秒!? 逃げないと…) 



 私はそろり~とその場でコマンド:逃げるを使う。


 「逃げるな!!!! 座りなさい!!」



 「はい!!」



 でも、失敗してしまい、私は無惨にもユキちゃんにハート・ブレイクされてしまった…


 ◇  ◇  ◇


 「うぅ…ひっく…ひっく…ぐすん」



 「分かった!! 誰が来るか分からないオフ会なんて、うら若き高校生が行くと危ないから、行くとか駄目だからね!!」



 それだけのために私の心を砕いたのか、目の前の友達は…。

 お陰で今の私は立つことも出来ないくらい疲労してる。ユキちゃんはそんなのお構い無しに携帯を見てるし。



 「えっと~96秒くらいだね。まあまあ喋ったわね♪」


 喋りすぎだよ。てか、私の絶望までの記録が96秒か。


 「じゃあね、うさ♪ 私は帰るけど、オフ会何て行っちゃダメよ」



 「でも、皆…いい人達だよ…」



 チャットで話している仲間達は親切な人達ばかりだ。


・いつも私のことを心配してくれる紳士のクスノキさん。


・脱出ゲーム・パズルゲームがうまいドラゴンさん。


・戦争ものオンラインでいつも上位獲得しているウィキペディアさん。


・世間知らずでいつも私達の会話についてこれないけど、そこが可愛いキャッドさん。


・時々怖い発言を連発するけど、意外と涙脆いソウゲツさん。


・政治や経済にかなり詳しく、リアルで多忙な日々を送っているユーミンさん。


・正義感が強く、たくさんの人々を救いたいと日々頑張っているゾークさん。


・そのゾークさんにいつも噛みついて、否定するけど何処か話すのが楽しそうなマナツさん。



 「皆と会うの…楽しそうなのに…」



 ユキちゃんはそんなことはお構い無しに別の道で帰って行く。道で一人涙を流しながら、帰る私はすれ違う人にあらゆる誤解を与えているだろうが仕方ない。私は悲しいのだから…



 「今日はみんな来てくれるかな…」


――――――――――――――――――――――


 オフ会の前夜



 日本 千葉



 「ああ、暇です。何処かに女姓はいませんかね♪」


 私は、楠本くすもと 浩平こうへいはいつもように自室でゲームをしている。俺はいつも自宅にヒッキーしてゲームをするのが、マイブーム…てかそれしかしません。あとはネットにつないで最近始めたチャットで話すのが、日課ですかね。


 「どんな女性でも、愛せる自信はあるのですが…出会いがありませんね」


 まあ、そもそも、ヒッキーしては出会いなんてある訳がないですが…ははは(笑)自分で笑ってしまう。

 そんなことしていたら、パソコンの画面が明るくなり、画面にメッセージが浮かぶ。



 「うん? チャットで誰か入って来ましたね? どれどれ…」



 【淋しい兎:皆さん、明日のオフ会ですが、私は行けなくなりそうなんです。事情と言うのが………………こうなんです。どうしたらいいでしょうか?】



 「大変だ…!!」



 いかん!! せっかくこのヒッキーであるクスノキさんが自分の意思で外出するオフ会に兎さんが来ないだと…。

 私の第六感で感じているが、兎さんは100㌫の確率で女性だとわかる。メンバーの中で9人中4人が女性であることも理解している。

 

 「これでは、女性とのおしゃべりがなくなってしまう…。どうにかしなくては!!」


 私はひたすら兎さんに励ましのメッセージを送る。女性を持ち上げ、励ますのは得意中の得意ですから。


 「ギャルゲーで鍛え上げた私の話術を見せてあげましょう♪ このクスノキ紳士の力を!!」



 この日、私は兎さんが眠りにつくまで、兎さんが喜びそうな言葉を送った。


――――――――――――――――――――――


 同時刻



 アメリカ ワシントンD,C ホワイトハウス

 

 「……以上が私が考えた、我が国に必要な政策です。何か意見がありますか?」

 

 私は周りの無能な政治家達に聞いてみた。はっきり言って、国の金を自分の金と勘違いして、至福を肥やす馬鹿に聞いても意味はないけど…。まあ、一応決まり文句みたいな感じだと私は思っている。


 「大統領。しかし、この法案はあまりにも、実現が不可能だと思うのですが…」


 「これは、あれをこうして、ここをこうして、あれやそれやすれば、実現は100㌫可能であるというデータがあります!! …それとも、貴方は別紙の紙を見ていないですか!?」



 「すいません、大統領…」



 ふん、大した案が出せずに、人の発言をただ否定するしか能がないゴミはこれだから困る。ほら、顔を青くして「失敗しちゃったな~」とか思っているわね。これだからは無能は……


 「意見がないなら、私はこれで失礼します。あと、この前に出された国家予算の総決算分ですけど、全てもう一度やり直しなさい。今度、計算が合わない場合は合わない分だけの給料か、ここにいる人をクビにします」


 今度は皆、顔を青くしてる。ふん、事細かに予算を合わせようしてたけど、私から見れば穴だらけよ。


 私は会議室を後にして、近くの滑走路から直ぐに自家用ジェット機に乗り込み、コックピットにいる機長に“例の場所”に向かうように指示する。


 「大統領、行き先は何処ですか? ハワイ、フランス?」



 「日本よ」



 私は機長に目的の場所言うと持っていたパソコンを開き、チャットに繋げる。そこには仲の良い兎さんが困っているような文章だった。



 (頑張りなさい、兎さん。)



 店内アナウンスが聞こえるが、私は関係なくパソコンを持ち、兎さんに励ましのメッセージを送る。


 「兎さん、待っていなさい!! 今から私、第62代目大統領ユーミリア・ケネディ…いえ、ユーミンが会いに行きますわ!!」


―――――――――――――――――――――


 同時刻



 中国上空の飛行機内



 「すう~~、はぁ~~。やっぱり葉巻はいいな♪」



 ああ、葉巻を作ってくれた人には、かなり感謝するぜ。タバコやパイプでは味わえない香りと気分をくれる。更に飛行機内で葉巻を吸えるのはかなりいい。

 殆んどの飛行機には喫煙スペースが無く、禁煙だ。今俺がいるのは一般人は絶対に乗らない飛行機のファーストクラスだ。何を言おうが、俺のしたい事ができる。


 「まあ、飛行機内が火事になっても困るが、やっぱり葉巻とか自由に吸えねえとスッキリしないからな~」



 「首領ドン

。リラックスタイムの所すいませんが…」



 「ん、どうした?」


 付き添いの黒服が携帯を渡してくる。画面を見ると、俺の故郷イタリアにいる部下からだ。


 「あいつら…外国は電話代高いのに掛けてきやがって。おみやげの催促か、こら」



 俺の黒服から携帯を貰い、通話ボタンを押す。



 『受領、遅くにすいません。休暇は楽しんでいますか?』


 「まだ、目的地にもついてねえよ。あと電話代高いんだから、必要な時以外掛けてくるな。おみやげなら、ちゃんと買ってきてやるよ。何が欲しい? 饅頭か? 木刀か? それとも新しく出来た電波塔のプラモか?」


 『ええ、それは楽しみですが…違います。用件ですが先日私達のファミリーからお金を持ち逃げした男を捕らえたのですが、どうしましょうか?』


 「は? そんなの決まっているだろ」



 ファミリーを裏切れば最後にどうなるかは…分かりきっているハズだ。


 『いえ、受領。その男はファミリーのために必死に働いて、誰もが彼の功績を認めています。更に、今回の金の持ち逃げですが…彼の家族が重大な病気になり、治すには莫大な治療費が必要との事。彼は仕方なくファミリーの金に手をつけてしまったのことらしいですが…受領? 聞いてますか?』


 携帯から声は聞こえていたが、俺の目から涙が溢れでていた。ヤバイ、俺はこんな話がかなり弱いんだ。前に『フランダースの犬』を見て、号泣したくらい泣けてきた。


 「そうか…そうだったのか…。泣ける話じゃねえか。ぐすん」



 『で、首領。どうしましょうか?』



 俺は黒服が持ってきたティッシュで涙を拭く。くそ、そんなの考えるまでもない。



 「お前は俺の口から言わせる気か? そんなの一つしかねえじゃねえか」



 『受領が決めた方がいいかと…』



 俺は携帯を握り変えて、涙を拭き取ったティッシュをゴミ箱に入れて、笑顔で言う。



 「殺せ……家族もろともだ♪」



 俺は携帯を切り、黒服に渡す。そしてまた葉巻に火を着ける。やっぱり、家族が離ればなれになるのは寂しいからな。だが皆一緒なら寂しくはないよな。

 神様見てるか。イアン・マーキンはいいことしたぞ。


 「さて…今日のチャットを見ると兎が落ち込んでいるな。たまには助けてやるか♪」



 俺は葉巻を吸い、ノートパソコンに開き、チャットに書き込み、励ましのメッセージ送る。



――――――――――――――――――――――



 同時刻



 日本海 海上




 私はミリリア・マイセン。イギリスに所属している国際スパイ。あのジェームズ・ボンドの女バージョンだと思っていればいいわ。



 腕は言わなくてもわかる通りの超一流。私にはかかれば、どんな鉄壁な要塞だろうと忍び込めるし、どんな強固な金庫であろうと開けれるわ。



 ん? それはスパイじゃなくて、泥棒じゃないかって? 全然違うわ。あんな気品のない人達と一緒にしないで欲しい。



 私はイギリスの女王陛下から直々に任務を貰い、母国のために、世界の平和のために、日夜危険な任務に挑んでいる。



 今回の任務だってそうだわ。今回の任務は私はあるチャットで明日に行われているオフ会に参加すること。



 え? ただ遊びにいくだけだろって? そんな事ないわ。そんな考えでは一流のスパイなんて、夢のまた夢ね。



 実は我々イギリスの情報機関が調べた所、そのオフ会では“ある重大な出来事”が起こるのではないかと、思っているからだ。



 そもそも、このオフ会に参加している人があまりにも不明な人が多い。イギリスの情報機関でも調べ上げたのはたったの二人、回線場所を判明させたのがさっきの二人を入れて四人。残り四人については何処の国さえわかっていない。



 一人は回線を事細かにして、居場所を特定されないようにしているのはわかる(それほどの相手がこのオフ会に参加するのも気になる)

 そして残り三人については全く分からなかった(追跡しても、途中で確実にエラーになるからだ)


 そして分かっている四人だが、これも色々問題がある。まず判明していない二人だが、一人はイタリアにいる大きなマフィア組織の誰かということ。もう一人はアメリカのホワイトハウスの誰かまでは判明している。



 この二人だけでも、かなり問題がある。イタリアを統べるマフィアとアメリカの権力ピラミッドの最高に維持している誰かがこのオフ会に参加しようとしている。もしかしたら、この二人がオフ会の裏で何か取引をするのかもしれない。



 あと判明している二人だが、この二人をどんなに調べても、何も共通するものは何もない。これだけ謎めいたメンバーの中でこの二人だけ何もないなんてことはあり得ない。絶対何かあるとスパイの感が言っている。絶対に謎を突き止めてみせる。



 えっ? 何故さっきから普通に喋らずに心の中で呟いているかって? それはね………

 


 「それはね…喋る暇がない程、忙しいのよ!!!!」



 本気で叫んでいるわ。今私はあのボンドカーで日本海を横断していたのだけど、突然の嵐に巻き込まれてしまった……天気予報の嘘つき。

 波が荒れ果て、雨や雷が激しく降る。しかも波の影響か車がエンストしてしまうというアクシデント発生(この車を開発した博士はあとで殺す)もう何回も横波で横転してる。防水は完璧だが、いつ水が入ってくるかわからない恐怖を味わっている。

 ああ…今までに感じたこともないくらいの死が私に纏わりついているよ。死んだわね、これ……



 「でも、諦めないわ…私は…必ずオフ会に…」



 私は博士に渡されたスパイの秘密道具がある。見てなさい、嵐。あなたなんかには負けないわ。

 私にはまず内側のポケットから道具を取り出す(何処から出しているという質問は受け付けません)


 「えーと、相手を一瞬で気絶させる光線銃(うん、使えない)、空気を集めて一気に放出する小型大砲(でも調整中)、食べればどんな異人の言葉でも話せる小型フード(なぜか味噌味)、頭に着ければ短時間飛べる小型プロペラ(しかし電池切れ)、調整すればどんな人の声でも真似できるネクタイ(今全く使えない)、足に装着すれば一撃で木を破壊できる蹴りを出せる革靴(今使えば車が壊れる)、当たれば確実に相手を昏睡させる針を入れている腕時計(今は自分が永眠する)………」


 使えない!! 今の状況を打破できるものが何一つとしてない。何だろ、何処からか聞いたことがある道具なんだけど!! しかも、最後の辺は何か作品が違う気がするのですけど!?



 「くぅ~…死ぬわ。てか兎さん…私がこれだけのピンチの中で、何で落ち込んでいるのよ!!」



 24時間体制でチャットを覗いているけど、今日は兎さんが何か落ち込んでる。しかも、明日来れないかもですって…

 ふざけんじゃないわよ!! 私は明日を生きれるかもわからないかもしれない危機感の中で頑張ってオフ会の会場まで行っているのに。



 「兎さん頑張りなさい!! 私も今頑張って会場にいくから…あ、」



 私はキーボードをうち終わると目の前に高さ20メートル以上の津波が見える。あれ~嵐でもあるくらいの津波がくるんだ…へぇ…



 「最後にマザーのフィッシュ&チップス食べたかったな…」




 私は静かに目を閉じた…



 ………………………


――――――――――――――――――――――



 同時刻



 ロシア シベリア基地




 「軍曹、お疲れ様です」



 「うむ、お疲れ」



 部下の一人が挨拶をしてくる。多分今から仕事なんだろう。敬礼をして仕事場に向かっている。

 さて本来なら私は家に帰り、スコッチでも飲みながら休みたいものだが…私には今から行かなければならないところがある。

 


 「軍曹、少しいいですか…?」



 「ん? アーシャか。どうした?」



 そんな時に前から屈強な体格のアーシャ来た。アーシャは私が率いる部隊の中でもトップクラスの戦闘能力を誇る者で、特に軍隊格闘術…ジークンドーは彼の右に出る者はいないとされる程に強い。



 「私は数年前まで自分は“最強”だと自負していました。貴方に倒されるまでは…」



 「…………」



 数年前に、アーシャは私に勝負を挑んできた。自分よりも弱い者が上にいる事を嫌い、隊長の私に「自分より強いことを証明してみろ」と言ってきた。まあ、その後どうなったかは…ご覧通りだ。

 それからは性格は良くなり、部下からも信頼が厚い者になった。次の隊長は彼に決まっていると噂されている。



 「軍曹…私は数年間必死に努力して、自分を磨いて来ました。私はあの時より、確実に強くなったと思います」



 「そうだな、あの時より確実に強くなっているだろう」



 「そこで…お願いがあります!!」



 アーシャは私の前で構える。なるほど…強くなった自分がどれ程、私に“近付いたか”知りたい訳か…。

 本来なら断る所だが…私は彼の熱意を無視は出来ないようだ。それに私自身も“強き者”と戦いたいと体が疼いている。私は上着脱ぎ、彼と対峙する。


 「いいだろう…来い。お前の全力を見せてみろ」



 「行きます!!!」



 アーシャは私に向かって、突進してきた。まず、持ち前のジークンドーで私を圧倒する気なんだろう。更に何か“秘策”を持っているとわかる。


 「成長したな、アーシャ」



 私はあと数㌢でアーシャが私に触れようとした………



 瞬間、私は“圧倒的な速さの拳”で彼の殴り付け、地面に叩きつけた。



 「ふん!!」



 「っっぐは!?」



 その衝撃で床に亀裂が入り、地面がへこんだ。そのまま10秒程が経過した後、アーシャが動かないのを見て、決着は着いたと判断した。



 「………見事だ。私に力の“半分”も出させるのはお前が初めてだ。光栄に思いなさい」



 前回は、1割ほどの力で圧倒したからな。彼の成長は比較的に上がったと見える。拳をのけると彼は気絶して、白目を向いている。ヤバイ、やり過ぎたかもしれん。急いで救護班を呼びつけ、タンカーで運ばせる。


 「彼ならいい隊長になるだろう。私の後任は決まったも当然だな」



 上着を羽織り、荷物を取り、私は軍の所有する滑走路に向かう。ああ、外は寒いな。

 そこには整備士が機体の調整を行っていた。



 「軍曹。準備が終わりました」



 「うむ、ご苦労。今から発進する」



 私はスホイカスタムに乗り込む。この戦闘機はロシアが開発した音速戦闘機を私に合わせチューニングした機体である。他の者では15分もしないうちに気絶してまう機体だ。

 私はヘルメットを被り、来る途中にチャットで書き込みを終えた端末をしまう。



 「軍曹どちらに?」



 「戦場だ」



 私はハッチを閉め、エンジンを暖める。全てのメーターや計器を見て、不具合が無いかどうか調べる。



 「私が何故ここに向かうのか…それは私にもわからん。ただ…私は行かなければならない!!」



 最後に母国の大地を見る。またこの大地を見る事が出来ればいいが…。私は深呼吸して目指す場所に目を向け、操縦間を握る。



 「グロース・エルリック…違うな。ウィキペディア!! スホイカスタム…出る!!!」




 私は母国を出て、新たな戦場に向かった…



――――――――――――――――――――――



 同時刻(か不明)



 異世界  チャート共和国



 今、この世界では魔王が世界を滅亡させようと猛威を奮っている。そして、それをよしとしない人間達も魔王の軍勢に立ち向かった。だが、魔王軍はあまりにも強く、瞬く間に世界の3分の2は魔王の領地になっていた。



 もう、この世界は終わる…と誰もが思っていた。だが……そんな時に奇跡が起きた。



 世界を救う“勇者”が現れたのだ。



 この世界で生まれた勇者は各地にいる魔物と戦い、仲間と出会い、絆を深めて人々のために戦った。

 時には仲間と争ったり、心に傷を負ったり、苦悩と後悔に苛まれながらも世界を平和にするために歩き続けた。


 戦いの果てに魔王軍から幾度となく国土を取り戻す事に成功し、今では大陸の2分の1まで魔王軍を撃退に成功した。



 そして遂に魔王軍VS王国連合軍の最終決戦が実現するようになる…のだが。


 

 その最終決戦の前に勇者から、ある提案を出される。それは一度、魔王と会談が出来ない…かという話だった。

 普通ならあり得ない話で、却下されるのが当たり前だった。だが勇者からの提案との事で、無下にすることは出来なく、一度国から魔王に使者を送り、会談の申し出を行った。

 勇者以外は確実に断られると思っていたが、なんと信じられないことに魔王が会談に応じたのだ。


 そして会談の場所は、魔王の領地と人間の領地の境にあるチャート共和国で行われることになった。


 ◇  ◇  ◇



 チャート宮殿  会談の場




 会談はチャート宮殿で行われる。勇者御一行は到着しており、既に着席していた。



 「なあ…本当に来るのか?」



 剣士のアーサーは怪訝な顔して言う。それに対して、隣にいる魔法使いのムウが黙らせる。



 「五月蝿い、アーサー。勇者様の考えに、異を唱えるわけ?」



 「そうは言わないけどな…。でも、あの魔王だぜ。何か裏があると思うだろ」



 「その時は有無を言わさずに、私が……魔王を倒すわ」



 「お前が…? 無理だろ」



 「やってみないとわからないじゃない!!」



 二人は席を立ち、睨み合う。仲間達は止めさせようと二人の仲裁に入る。金髪の男…勇者は目を瞑り、黙っている。


 すると通用口のドアが開き、銀髪の若い男とローブを被った六人が入ってきた。勇者の仲間達は一瞬で黙り、部屋に入ってきた者達を見る。


 ローブを被った人達は高い魔力を感じる。多分あれが魔王軍の幹部“魔の六人将”だと仲間達は考えている。

 そしてその六人将の前にいる銀髪の男が魔王だろう。後ろにいる六人とは全く違う魔力の質を感じる。


    ―強い―


 それが仲間達が感じた魔王の感想だった。



 魔王が勇者の前のテーブルに座り、ローブの六人が魔王の後ろに控える。すると魔王は、勇者に語りかける



 「済まない。少し遅くなったか?」



 「いえ、大丈夫です。この度は会談に応じて下さり、ありがとうございます」



 勇者は魔王の言葉に丁寧に返した。



 「いや、会談の件は感謝している。私もお前達人間に対して話し合いの場を設けようとしていてな。やる手間が省けて助かる」



 魔王のこの発言に勇者の仲間達は驚いている。いや勇者側だけでなく、魔王の後ろに控えている六人も驚いているようにも見える。あの魔王が人間に対して何を伝えようとしていたのだろうか…と


 「そうですか。では時間もありませんし、本題に入りましょうか、魔王様。実は…この度の魔族と人間の戦争ですが……」



 「「「「「………………」」」」」



 「「「「「………………」」」」」



 

 仲間達は、勇者を見る。一体魔王に何を言うのか。魔王と六人将も勇者に注目を集める。皆の視線が勇者に向けられる。



 

 「………休戦しませんか?」




 「「「「「………………はぁっ?」」」」」




 六人将と勇者の仲間達は一斉に驚いた。すると六人将の一人が勇者を見て嘲り笑う。



 「ふ…ふふ……ふはははははっ。なんだ? 勇者っていうのはキャグも一流なのか。ははは、これは笑えるぜ♪」

 


 「冗談を述べた覚えはありませんよ」



 六人将の発言に勇者は真顔で答える。その反応にさっきまで笑っていた男は、表情変えて鋭い目で睨む。



 「あん? だったら頭がイカれているかのどっちかだな。ふざけてんじゃねえぞ、勇者!! 人間と手を繋いでわかりあっていきましょう、とでも言う気か!? 大体魔王様が「わかった。休戦しよう」認めるとでも、本気で思っていると……はい?」



 喋っていた男と残りの六人将が一瞬止まり、ゆっくりと魔王に目を向ける。



 「あの……魔王様? 今…なんと?」



 「うむ、休戦しようと言ったのだ。聞こえなかったか?」



 「「「「「…………え、えぇぇっ!!!!!?」」」」」



 今度こそ、六人将と勇者の仲間達は驚きのあまり固まってしまった。更にさっきまで喋っていた男は顎が外れ、目が点になっていた。

 そして勇者は、何事もなかったように一枚の用紙を取り出し、魔王の前に出した。



 「では、こちらに停戦のサインを。ああ、一応文章は全て確認して下さい。何かあると色々大変ですから」



 「わかった。少し読ませて貰うぞ」



 魔王は渡された用紙をくまなく拝見し、自らの名前を書く。



 「これでいいかな」



 「はい、大丈夫です」



 勇者は用紙を貰い、それを鞄の中にしまう。そして目の前の魔王に握手を求める。



 「色々ありましたが、これからは同じ世界の住人として頑張っていきましょう」



 魔王は勇者から出された手を握り、握手をした。



 「ああ、お互いすれ違うことも合ったが、これからは平和のために頑張っていこう」



 「はい、魔王様♪」



 「宜しくな、勇者よ」



 「「はははははは…」」



 強く絆を深めつつ在る二人を見て、周りにいる固まっていた人達の堪忍袋が切れた。




 「「「「「「ちょっと待て、この馬鹿勇者(魔王)!!!!!!」」」」」」




 二人は仲間に引っ張れて、お互いに部屋の端に連れて行かれる。



――――――――――――――――――――――


 勇者サイド



 「どうしたんですか皆さん?」



 折角、魔王軍との全面衝突は回避されたというのに、何故か皆が怒っているように見え、私を壁側に連れて行かれた。

 


 「どうしたんですか?、じゃねぇよ!! 何だよ、あの休戦の申し出は!?」



 中でもアーサーはかなり興奮しているように見える。どうした、カルシウム不足か?



 「何って…戦争を終わらせて、魔王と平和条約を結んだだけじゃないか。良かったですね、これで世界から争いが無くなる♪」



 まだ小さな争いが起こるかもしれないが、それは国の人達が対処出来る範囲だと思っている。このぐらいなら“勇者”はこの世界に必要なくなる。

 いや~長かった。これで勇者をしなくて済んだ。魔王って意外に話の分かる奴で助かったよ。



 「いえ、そうではなくてですね、勇者様!! 今から王国連合軍で魔王軍に対して、最終決戦をやろうかという時に、何魔王と和解しているんですか!? これまでの私達の戦いはどうなるのですか!?」



 魔法使いのムウまで反論してきた。いつもは異論を立てることはなかったのに珍しく思い、耳を傾けるかもしれない。だが、私にはやらねば成らない事がある。



 「……いいか、皆。確かにこれまでに魔王軍がやってきた事は許せないことが多々あるかも知れません」



 そもそも、私が勇者をやる理由を作りやがった魔王軍は絶対許さんけどな。



 「私が初めて魔物と戦った時、一緒に旅をしていたランドが死んで悲しかったけど…」



 私は瞳に涙を溜めて、涙を溢した。仲間は悲しい表情で私を見る。

 まあ、本当は性格が最低な奴で、死んでも全然悲しくないけどね。いや、あいつが死んだお陰で、奴が持っていた聖剣を奪う事が出来て、逆に魔物に感謝したい。



 「私が各地で魔物を戦っていると魔王軍に目をつけられ、私の故郷に大量の魔物を送り込まれて、私の故郷の村が壊滅しました…」



 「勇者様…」



 ムウが私の話を聞いて泣いてくれた。普通なら確かに泣けてくる話だ。

 まあ、色々やり過ぎて故郷から追い出された私にして全然悲しくないけどね。



 「そして魔物と戦っていると、国王の目に止まり、勇者という称号を貰い、各地で暴れている魔物と更なる死闘と惨劇を見てきました…」



 「勇者…」



 アーサーはその時の事を思い出しているのだろう。アーサーとはその時に出会ったからな…。魔物がやった行為が許せないだろうな。

 まあ、私が本当に許せないのは私を勇者にしたあの国王だけどな!! 大切な事だからもう一度言うけど、あの国王は絶対に許さんかならな!!


 何普通に冒険者をして、出てきた魔物を潰しているだけの人を、いきなり宮殿に呼んで「お前を勇者に任命します」だ。ふざけるなと言いたい!! そのせいで更に強い魔物と戦ってどんだけ死にかけて、見たくもない戦場の惨劇を見せるつもりだよ!!

 と、私は本心を隠して、笑顔で接する。



 「でも…復讐の連鎖をいつまでも続けても意味がないんだよ。私達は魔王軍と解り合えると信じて前に進み、平和の道を探さなければならないんです!!」



 「…………」



 ふふ、アーサー達は何も言えなくなったな。そうさ、いつまでも戦争なんかしてたまるか!! そもそも、何故私がこうまで早く戦争を終わらせたいのか…


 私は少し前に古い遺跡を探索していると、最下層からある古い機械を見つけた。その機械を弄ると突然ガラスのような所から光を発し、そこから古代文字出てきた。なんでも私が見つけた機械は『ぱそこん』というもので、異世界に繋げられる不思議な機械だった。


 私は必死に古代文字を勉強して、画面に出てくる文字を解読した。そこには私達の世界にはない不思議な力が文明が栄えさせていた。私に直ぐにその世界にのめり込み、勇者の仕事を疎かにするほど『ぱそこん』にはまっていた。


 更に私はある交流の場と思わしき場所で異世界の人とコミュニケーションを参加していた。私は【マナツ】という名前で参加していた(季節が夏なため)そしてその場所の人から『オフカイ』という名の集まりに呼ばれてしまった。そんなおもしろそうな未知えの探求心か私を駆り立てた。


 (行きたい!! 行きたい!! 異世界がどんな場所か行ってみたい!!)


 たが、それには“勇者”という称号は邪魔だ。本当なら捨てても問題ないが、最後までやらないと悪い気がしてしまい、このような手段を使った。いや~成功して助かった。



 「いいな皆!! これからは魔族と仲良くすること。以上勇者からでした。それじゃ、達者でな♪」


 「え!? 勇者様何処へ!!!!!?」



 私は最後に振り返り、仲間達に言う。



 「………宛もない…冒険さ!!!!」


 私は最後に魔王に「さようなら、魔王様♪」と言い、部屋を出ていく。この『オフカイ』のために遺跡の最下層に用意した空間転送装置を使って、まだ見ぬ異世界に出発だ♪



 「さあ、ジーク・ルナカイカの冒険第二章の始まりだ!!」


―――――――――――――――――――――



 魔王サイド



 「さようなら、魔王様♪」



 勇者がそう言うと部屋から出ていくのが見える。あちらは話が終わったようだな。



 「魔王様!! 一体何故なのですか!!!?」



 こちらはまだ、終わりそうにないが…



 「もう、いいではないか…。我ら魔王軍はこれ以上争う必要ないのだ」



 「それでは納得出来ません!! 一体この戦いでどれだけの同志が無くなっていると思っているか知っていますか!?」



 知っているわ。我を誰だと思っている。なりたくもなかった魔王なんて。そして、なめるなと言いたい。たく、我の幹部は実力はあるが、融通が聞かないのがたまに傷だ。

 仕方ない。我は自らの魔力を解放し、六人将に殺意を向ける。


 「魔王…様…」



 「黙れ!!」


 我は六人将の口を塞ぎ、黙らせる。このような奴は圧倒的な力と殺意を向ければ直ぐに終わるからな。すると一人が魔力に当てられて、気を失い倒れる。ヤバイ、やり過ぎたかもしれん。



 「お前ら…誰に向かって意見を述べている?」



 「それは……」



 「我は誰だ?」



 強い口調で話す。こいつらにとっては、これが一番効果的なやり方だ。



 「……貴方様は…我ら主…偉大なる…魔王様です…」


 「そうだ。我らは魔王だ…。魔族の中でも最上位に位置する魔王だ。その魔王が『戦争は終わりだ』と言ったら従わないのか?」



 「いえ…しかし…」



 「しかし、何だ!」

 


 「……っ…」



 ああ、やり過ぎたなこれは。ローブで顔は見えないが、多分泣いている。てか、脅し過ぎた…。

 はあ~やることは多々あるのに。

 


 「…お前ら…知っているか? 何故我が人間に戦争を仕掛けたのか?」



 「それは…世界を征服して…私達魔族の世界を作るために…」



 「違う!! 我は世界中で迫害を受けて、苦しんでいる魔族を助けようと活動していただけだ。それすら知らなかったのか!?」



 「「「「「えっ……」」」」」



 なんだ…幹部全員知らなかったのか? 我が魔族の救う時に、迫害した奴等に制裁を加えていたら、他の魔族の連中が「魔王様に続けえーー」と人間達に攻撃を加えたのが、始まりだったな…。



 「思えばあれから幾つか小さな争いが起こり、戦争という大きな争いになってしまったのだな」


 とは言え幹部達は事情くらいは知っていると思っていたが…まさか世界征服とか。そんなもんに興味はないのだが……。


 「我はただ…この手で救える命を救いたかっただけなんだ…。自己満足と言われようと、偽善者と言われようと。我はただ…皆の笑顔の為に何かしたかったのだ」



 「魔王様……」



 「たが…これでやっと戦争を終わらすことができた。あの勇者には心から感謝している」



 あの勇者が戦争を終わらせてくれた。本来なら我が自身の命を引き換えにしてでも、戦争を終わらせなければならないのに。復讐の連鎖を止める決意、見事としか言いようがない。



 「六人将よ」



 「はい、魔王様!!」



 「今より、全魔王のあらゆる権限をお前達に託す。後は任せたぞ…」



 「魔王様…それは…まさか!?」



 「うむ、我は魔王の座から降りる。魔王軍は新しい指導者の下、新しく平和な世界を作りなさい。それが我の最後の命令だ…」



 まだ託すには早いかもしれない。しかしお前達は根は素直で良い奴なのは我が一番に知っている。六人で力を合わせて、素晴らしい世界を救って欲しい。

 

 「どうした? 返事がないぞ」



 「「「「「「はい、頑張ります!!」」」」」」



 「宜しい、良い返事だ」



 我は最後に勇者の仲間達に挨拶をする。



 「色々済まなかった…。謝って済む話ではないかもしれん。しかし、どうかこれから生まれてくる命だけは恨まないでくれ」



 「あ…はい」



 魔法使いの少女は緊張しているのか、怯えたように返事をした。そうか、さっきまで殺意をむき出しにしていたからな。怖がるのも無理はないか…。



 「では、後は頼んだぞ…どうか、平和な世界を作ってくれ…」



 そして、私はテレポートの魔法を使い、会場を後にした。



 ◇  ◇  ◇



 「魔王様……」



 魔王はテレポートを使い、何処かに消えてしまった。残されたのは勇者の仲間達と六人将だけ。重たい空気が彼らを包み込むが、長くはつづかない。最初に切り出したのは勇者の仲間達の魔法使いだった。



 「話はさっき魔王様から聞きました。私達人間にも非があるように見えます」



 「…………」



 「今回のことは両種族とも不幸な出来事が起こってしまったようです。もうこのような事が起こらぬよう…私達で平和な世界を作りませんか?」



 勇者の仲間達は全員、六人将に手を差し伸べる。六人将は困惑しながらも一人一人彼らの手を握り、最後には全員が手を握る。



 「これで、私達人間と魔族が繋がりを持った瞬間です。これから宜しく♪」



 「……あぁ…宜しくな…」



 これにて、この世界での争いは終わった…。ありがとう、勇者。ありがとう、魔王。


 これでこの世界は救われた。たが…



 「なあ、さっきそこで拾ったんだけど、これ誰のだ?」



 アーサーが何か小さい金属製の何か持っている。小さいガラスのような物がだった。周りの皆か見たこともない物を見ていると六人将の一人が何かを思い出したようだ。



 「確か…これは魔王様が持っていたな」



 「魔王が? これ、何に使うんだ?」



 「さあ~確かここ押すと光っていたが…」



 記憶を便りに操作すると、いきなり画面が光だし、何か文字が出てきた。それは古代文字だった。


 「これは古代文字ね…えーと…」


 

 「え、読めるの?」



 「楽勝よ!! 何々…ゾークのオフ会に行くための空間転送装置の作り方メモ…何これ?」



 「ゾークは我が主…魔王様のことだな。魔王様の本名はヴァレン・ゾーク・アリアトスだからな」


 「じゃあ…これは魔王の?」



 何故だろうか。周り皆は急に中に書いていることが怖くなった。あの時に出した殺意がまだ抜けていないため、もし勝手に中身を見たことがバレた暁には



「「「「「………………」」」」」



 「………見るの辞めようか…」



 「そうだな…」


―――――――――――――――――――――


 同時刻



 ???



 「やっと、ここまで来たわね」



 私は時計を見ながら、これまでの参加者の動向を見ていた。まあ、私が何かしなくてもこうなるのは必然的…いえ、運命的に決まっていたのだから。



 「そう…これは運命なのよ」



 私はチャットのメッセージを見ていた。この様子なら兎さんは必ず明日のオフ会に来る。いえ、来なければならない。


 「私の、いえ…私達がやらなければならない事がある。その為には…」


 私は今だに慣れないキーボードを打ち、兎さんにメッセージを送る。“明日を楽しみしている”と…。



 「さあ、世界はどんな結末を選ぶのか…楽しみ♪」



 私は口元を歪めて笑う。いや、今の私には笑うことは出来ないか。表情としてだすことが難しいためだ。

 すると画面には兎さんからのメッセージが書かれる。



 【淋しい兎:皆さん、ありがとう(^o^)。私決めました。明日頑張って行きます】


 

 「フフ…私も嬉しいわ、兎さん。いえ…葛城 宇佐美さん…」




――――――――――――――――――――――



 オフ会当日




 オフ会まで、約一時間前


 私は淋しい兎こと葛城 宇佐美はオフ会の会場にダッシュで向かっていた。別に遅刻したわけではない。ただオフ会が楽しみで仕方なく、まるで遠足で前日眠れない子供のような感じだ。


 会場はオシャレなカフェテリアのテラス。周りには植物園があり、綺麗な花が咲き乱れている。


 「楽しみだな~どんな人が来るんだろ♪」


 それから私は少しするとカフェにたどり着いた。カフェは私のイメージ以上に素敵なお店で、店員さんも親切に対応してくれた。私は前もって予約した席に案内され、白く洗練されたテラスに通される。


 「それと、お客様のお連れ様“らしき”人が、御一人到着されていますが…」



 「えっ!! そうなんですか?」


 そうなんだ。まだ時間まであるのにもう集合しているんだ。どんな人だろうか、店員さんに聞くとちょっと苦笑いしながら「個性的な方ですね」と言われた。どんな人だろうか、楽しみだ。


 「お客様のご予約された席はあちらになります。ウェイターをお呼び際は、テーブルに置いてありますボタンを押しされ下さい。それでは…」


 指定されたテーブルを見ると誰かが座っていた。全体は黒い服を着た男の人に見える。誰かな、ソウゲツさんかな? ウィキさんかな? 私は勇気を出して男の人に声をかけた。


 「こんにちは、はじめまして♪ 私はハンドルネーム:淋しい兎で登録している兎です♪」



 「あ、どうも。兎さんですか!? はじめまして、私はクスノキです。今日はオフ会という素敵な催しを開いていただき真にありがとうございます」



 「…クスノキさんですか? どうも、丁寧にありがとうございます…」


 うん。クスノキさんだ。この私に対するこの言葉使いは完全にクスノキさんだ間違いない。

 え、なんかさっきとテンションが違うって? うん。確かに、今の私は、クスノキさんを見て若干引いている。言っとくけど、別に顔がキモいとかという理由ではない。もしかするとウケ狙いでやっているかも知れないので、最初にツッコンでみよう。


 「え~とクスノキさん…今日のその服は…?」



 「これですか? いや~初めてオフ会に行きますので、新調したのですけど何かサイズが合ってませんか?」



 「いえ、サイズの問題ではなくて…その…………何故、タキシードなんですか?」


 そうクスノキさんが着ていたのは完全なまでのタキシードだ。本来なら舞踏会とか大きなパーティで着る服のハズですけど……。あれ、私がズレているのかな?


 「女性と話すのですから、やっぱり失礼のない服が良いと思ったのですが、少し違いましたか?」


 うん、違う。私の感性で言うなら絶対に違う。でも初対面の人にそんなこと言えない。店員さんも苦笑いするわけだよ…てか、個性的過ぎる。

 凄いな、オフ会。最初っからかなりパンチのある人が来たよ。ちょっと話題をずらさないときつい…。


 「いえ~そんなことはないですよ。それにしても今日は早いですね。11時に集合ですから、まだ時間までかなりあるのに♪」



 「いえ、オフ会が楽しみだったものですので。朝の始発から電車に乗り、ここで待っていました♪」



 「そうなんですか♪……って、始発で来て、ここで待っていたのですか!!!?」



 「はい♪ でもテラスに来たのはお店が開店した時間ですから二時間くらいですね。それまではお店のドアの所で待っていました」



 「お店が開くまで待っていたの!?」



 「そうですよ。でも、ここって変ですよね。8時に開店のハズなのですが、開店時刻になってもドアが開かないのですよ」



 「何故…でしょうかね?」



 「私にもわかりません。中では店員さんがいるのに、誰もドアを開けようとしないんです。しかも、何人か怯えて私のこと見ていましたからね。何故でしょうか?」



 「うわぁー…」


 私は思わずに声に出して、引いてしまった。店員さんの気持ちが理解できる。朝からタキシードの男が店の前にずっ~といたら、誰だって怖がる。私的によくそんな人を店に通したな、この店は。普通なら警察沙汰になってもおかしくないないのに。


 「え~と、今いるのはクスノキさんだけですか?」



 「そうですね。ずっといましたが、チャットのメンバーに会ったのは兎さんが最初です」


 まだ、皆来ていないんだ。まあ、まだ約束まで時間があるし問題ないか。でも…クスノキさんが私のことをじ~と見てくるんだけど(けして私の自意識過剰では無く)うわ~話づらい。誰か早く来て欲しいな。


 「チャットのオフ会はここでいいかしら?」



 「えっ!?」


 私は声のする方に振り向くと高級感溢れるスーツを着た若い外国人女性がいた。もしかして、この人は…。


 「はい、そうですけど…もしかしてチャットの人ですか?」



 「そうよ。私はユーミンです。貴女は…兎さんね♪」



 「はい、そうです。はじめましてユーミンさん。外国の方と聞きましたけど、日本語ペラペラなんですね」



 「ええ、私は色々な国にお仕事で行っているから、日本語以外にも13ヵ国語くらいは日常会話までなら話せるわ」



 「凄いです、ユーミンさん!」


 ユーミンさんハイスペック過ぎます。容姿も綺麗でスラッとしている。そして頭も良いなんて反則です。同じ女性として憧れます。


 「そして、貴方がクスノキさんかしら? とても素敵な格好をしているわね♪」


 そして、ユーミンさん凄い。あのタキシードクスノキさんを見て、一瞬の迷いもなく褒められるの? それとも私がおかしいのかな!?

 

 「ありがとうございます。後…ユーミンさん。私、ユーミンさんを何処かで見たことがあるような気がするのですが…」



 「えっ!! 気のっせいい、、では、なっないかしら!!」



 「動揺してませんか?」



 「いえ!! まだ日本語は覚えたてなので、あまり上手くないだけですわ…」


 クスノキさんが「なるほど、そうでしたか」と納得して席に座る。ユーミンさんも額の汗を拭きながら空いている席に座る。私は来た二人をみながら思う。


 最初のクスノキさんには驚いたけど、やっぱりクスノキさんは相変わらずに優しい。


 ユーミンさんは同じ女性として尊敬する。



 (やっぱり、来て良かった。来なかったら確実に後悔してたよ)


 私も空いている席に座り、二人と話をした。



 でも、この時の私はまだ知らなかった。オフ会という未知の領域に踏み込んだことに後悔することを……



 ◇  ◇  ◇



 オフ会まで、あと40分前



 私達三人は、他のメンバーが来るまで世間話をして盛り上がっていた。チャットで話しているような内容なのに、いつもとは違う感じが素敵だった。話の最中に黒猫がテーブルの上に陣取るが構わず話を続ける。

 まあ、たまにクスノキさんの発言に引く場面が多々あるが、気にしないでおこう。



 まあ、今の所は楽しくしている。たが他のメンバーが一向に来ないと思っている私もいる。話の最中にテラスから僅かに見える道路を見ているが、オフ会のメンバーらしき人は見えない。


 (他の人来ないな~。何をしているのだろう? ……ん?)


 私は道路を見ると一人の老人が手を挙げてタクシーを止めているが、一向に捕まらない。

 すると、そこに黒服を数人連れた白服を着た外国人が来た。白服の男の人が老人に話をしてる。話が終わると白服の人が泣いてる。かなり号泣してる。

 そして自分の胸に叩いて何か喋ってる。多分、「俺に任せろ!!」的な事を言っているのだろう


 (優しい人だな~。ああいう人がオフ会のメンバーだったらいいな)


 白服の人は暫く腕を組んで考えている。そして何かを閃いたように、自分のスーツの胸ポケットに手を入れて何かを探してる。多分、携帯でタクシーを呼ぶんだろう。


 白服の人は胸ポケットから黒い………拳銃を取り出し、拳銃で老人の足をぶち抜いた。老人は足を撃たれその場に倒れ込む。そして周りにいた通行人は叫び声をあげて逃げて行く。


 「はぁ!?」



 「えっ!?」



 「lie(嘘)!?」


 私以外にも隣りから驚きの声が聞こえる。見るとクスノキさんとユーミンさんが驚愕の表情で白服の人を見ていた。『なんで私と一緒に見ていたの』とか『ユーミンさん驚きのあまり英語に戻っていますよ』とかツッコミたいけど、今はそれ所じゃない。

 私達は一瞬でテーブルの下に避難する。そしてクスノキさんが私に語りかけてくる。


 「あの…兎さん。見間違いだと思いますが、あの人…拳銃で老人の足を撃ちませんでした?」



 「そうですね…私もそうだと思いたいです。だってここは日本ですよ!! 世界でもトップクラスの法治国家ですよ!! 民間の方は銃とか所持してはいけない銃刀法違反が厳しくある国ですよね、ユーミンさん?」



 「えぇ…そうね。私の国より銃の所持については厳しい国だと思います! でも私の国の強盗でもこんな人気がある目立つ場所で発砲事件が起きるのは希ですね…」



 「そうなんですか…では、これは……そう、撮影ですよ、ドラマの!! 実は刑事ドラマを撮っていて、カメラは私達から見えない位置にあるんですよ、きっと!!!」



 「そうですね!! 流石は兎さんです。ただ、兎さん……私が見る限り、撃たれた老人が白目向いて気絶している姿や周りにいた通行人役のエキストラ全員真剣な表情で逃げている様子はリアル過ぎません?」



 「言わないでクスノキさん!! 私が必死で考えた現実逃避を消さないで!!」


 私はチラッと老人が撃たれた現場を見る。そこには黒服の人が撃たれた老人の足に布を巻いて応急処置をしている(本当にあの白服の人、なんで撃ったのかわからない)

 数分後に救急車が到着して撃たれた老人が運ばれた。そして撃った張本人は葉巻を吸いながら笑顔で救急車を見送ってる(最低だ…)見送りが終わると黒服の人と一緒に現場を離れる。

 その様子を見てユーミンさんとクスノキさんは安堵している。


 「いや~怖かったですね」



 「そうね。なんなのかしら、あの人達は? でも直ぐに警察に逮捕されるでしょうね」


 二人に笑顔が戻るが、私はまだ安心出来なかった。何故なら私のラビットセンサーがまだ危険信号を出している。しかも今まで感じた事がないくらいの反応している。

 私は“まさか”と思いながら……


 「…お客様。お連れ様が到着されたようですが、こちらにご案内しても宜しいですか?」



 「誰か来られたようですね♪ はい、通して貰っていいですよ」



 「分かりました。直ぐに……」


 そう言うと店員さんはお店に入り、誰かと話している。すると店員さん(さっきとは違い、顔が蒼白で、笑顔がうまく出来てない)が、こちらに戻ってくる………さっき店な前で発砲事件を起こした白服の人を連れて…。


 「「「!!!!!」」」



 「domestica―店員さん―、予約の席はどちらかな?」



 「ははっい! あちらのっっ席になりますす!!」




 「ringraziamento―ありがとう―」


 白服の人は私達に近づいてくる。私の“予感”が“確信”に変わった瞬間だった。そう彼は……


 「はじめまして、ソウゲツだ。ここはオフ会の場所でいいのかな?」



 私達のオフ会メンバーだ……。私は何とか笑顔で(作れている自信はないが)対応した。



 「どうも、ソウゲツさんでしたか。はじめまして、兎です。でこちらが…」



 「どうも…クスノキです…」



 「………ユーミンよ」



 「ああ、はじめましてだ。それにしても……なるほどね~」


 ソウゲツさんがぶつぶつ言いながら葉巻を取り出す。


 「ここは禁煙よ」


 ユーミンさん! さっき銃を持って発砲した人によく強く気で!! そう言われるとソウゲツさんは苦い顔をしながら葉巻をしまう。


 「失礼。出来るだけマナーは守るつもりでいるんだが、無意識に葉巻に手が伸びてしまう性分でね」



 「…なら、気を付けてね!!」


 うわ~ユーミンさん一気に機嫌が悪くなった。まあ、最初の印象が最悪だもんね。とりあえず私はソウゲツさんに色々聞いてみた。


 「あの…ソウゲツさん。後ろにいる人達は?」



 「俺の部下達だ」



 「部下ですか?」



 「ああ、本当は一人で来るハズだったんが、『俺一人だと何するか分からないから絶対に付いていく』って聞かないんだよ、これが」


 つまり黒服はお目付け役みたいな感じなんだ。ならさっきの事件もちゃんと止めなさいよ、黒服! 私は睨むように見ると黒服の人が首を横に振る。それだけ見るとかなり振り回されているんだろうな…

 でも、なんでソウゲツさんは老人に発砲したんだろう?


 「あの~ソウゲツさん…」



 「ん、なんだクスノキ…呼び捨ては悪いな。なんだクスノキさん」



 「さっきそこの道で銃の発砲が“聞こえた”のですが何かあったのか知っていますか? “聞こえただけ”なので何があったのか知らないんですよ…」


 うまい、クスノキさん。私達は“何も見ていない”。ただ“音が聞こえただけ”だから、何も知らない。一体何故ソウゲツさんがあんな行動を取ったのか気になる。


 「ああ、あれか。いや~銃で発砲したの俺なんだわ♪」


 知ってます。リアルタイムで見ていましたから。


 「実はな、病院に行こうとしたお年寄りが必死にタクシーを止めようしていたんだが、タクシーの野郎、全然止まる気配すらないんだよ。本当に頭にくるよな。後であのタクシー会社を破壊しようかまで思ったくらいにだ!」


 いきなり物騒な話になった。本当にヤバイな、この人…。


 「お年寄りから、その話を聞いた俺はもう悲しくて、号泣してしまったんだよ。もうこれは俺が何とかしなきゃっと思ったわけだ!」


 ソウゲツさんはまた思い出し泣きをしてる。なんか本当に涙脆いソウゲツさんだなっと思う。


 「で、どうするかと考えたんだ。タクシーは止まらない。タクシー会社に電話しようにもタクシー会社の電話番号を知らない。歩いて行こうにもここからその病院まではかなり遠い。しかも俺達は外国から今日、日本に来たばかりだ。道なんて知らない。これは、かなり難しいsfida―挑戦―だなと思ったよ」



 「で、どうしたんですか?」



 「でも、俺は閃いたんだよ、最良の手を!! そう、救急車という代物があることを! 救急車に運んで貰えれば後は目的地の病院に着ける事が可能なんだよ。だが…問題は一つ…」


 いや、ソウゲツさん。問題だらけですよ。何救急車を私物みたいに使っているんですか!


 「救急車は怪我人じゃないと乗せてくれない。お年寄りの頭痛や腹痛程度では出働することはない。さて、どうするか…そうだ!!」


 ………ソウゲツさん…まさか……


 「俺は直ぐに思い付いた事を行動に移した。まず、誰もが持っているベレッタでお年寄りの足を撃ち抜く。勿論急所を外して、出来るだけ傷が残らぬように“優しく”撃ち抜くのがポイントだ」


 誰も持ってませんよ!! そして優しくない!!


 「そして、直ぐに部下に応急処置と救急車の搬送を手配する。後は救急車に乗せれば病院に着ける寸法だ!! どうだ実にperfetto―完璧―だろ♪」


 もうツッコむの止めよう…。この人、かなり疲れる。だが、これまでの話を聞いていたユーミンさんが怒鳴った。


 「貴方、そんな事が許されると思っているの!?」



 「安心しろ。既にテレビ局と警察には揉み消すように手配は済んでいる。大統領がスキャンダルに巻き込まれるのは嫌だろ?」



 「ッッ!!!? 貴方、私の事を…!!」



 「そりゃ、国際ニュースは見る人だからな♪」



 「えっ!? どういう事ですか?」


 大統領って誰が!? すると隣で黙っていたクスノキさんが何かを思い出したように、立ち上がった。


 「ああっー思い出しました!!!! アメリカ合衆国の現大統領!!!? そして今までの大統領の中で一番天才で、政治の絶対的指導者のユーミリア・ケネディ大統領ですか!?」



 「ええええぇぇっっーー、本当に大統領!!!?」



 「クスノキさんはともかく、兎さん…あんたはニュースは見ないのか? 俺はそっちにsorpresa―驚きだ―」


 なんかソウゲツさんに馬鹿にされた。確かに気付かない私は馬鹿かも知れないが…ソウゲツさんだけには言われたくない。


 「私の事を大統領と知ってチャットに参加し、私に会うためにオフ会に参加したのですか?…」


 「いや、アメリカ合衆国の役人という情報はあったが、俺はそっちについては興味がない。俺が来たのは“別口”でね♪ だが、まさか大統領が来るとは思わなかった。ある意味、niente―想定外―だぜ」



 「別口…?」



 「ソウゲツさん…貴方は何しにオフ会に来たのですか?」



 「俺か? “ある奴”に会いたくてね♪ まあ、あんたにはどうでもいいだろ?」


 そう言ってソウゲツさんはユーミリア…ユーミンさんに銃を向ける。………って、なんで!?


 「大統領、ここにはあんた直属部下はいない。軍にも要請出来ない。核ミサイルの発射ボタンもない……さあ、どうする?」


 ソウゲツさん凄い悪い顔してる。てか、ソウゲツさん、核ミサイルがあったら私達滅びますよ。

 するとユーミンの前にクスノキさんが入り込む。


 「どうした、クスノキさん? giustizia―正義―でも目覚めたかい?」



 「クスノキさん退いて!! これは私の問題ですから…」



 「いいえ、退く訳にはいきません。目の前で女性が困り、危険が迫っている時に助けるのが……紳士です♪」



 「……クスノキさん…」


 ヤバイ!! 今のクスノキさん輝いてる。はっきり言って格好いいかも!!? さっきまでダサく見えていたタキシードも相まって輝きが溢れ出ている。


  ――これが“紳士”――


 「さあ、ソウゲツさん!! ユーミンさんを撃つなら、私を撃ち抜いてからにしてください!!」



 「クックックッ、流石に格好いいね、クスノキさん。じゃあ、お決まりなセリフを言ようか。なんでその女を助ける? 欲しいのは名誉か? 富か?」



 「そんな物に興味はない!!」



 「なら、なんだ?」


 ソウゲツさん完璧に悪役だ。てか、悪だよ。そして、クスノキはどんな言葉を出すのか、気になる♪ 私的には王子様のような甘い言葉が欲しいな。


 「私は…」



 「「「私は…?」」」



 「私は……“女性”なら誰であろうと守る!!!!」



 「「「……………………はい?」」」


 ん? ちょっと予想と違うな…。まあ、最後まで聞こう。

 「私は…“女性”という性別なら例え、ロリでも、中学生でも、高校生でも、大学生でも 、人妻でも、熟女でも、お婆さんでも、天使でも、悪魔でも、2次元でも、ゾンビでも、スライムでも守り通す!!!!!!!!」



 「「「…………」」」



 「更に言うなら、私は小学校低学年(特例あるが)までなら男子を“男の娘”として守る。そして、女性の心を持つなら機械だろうとニューハーフだろうと守るべき対象に入る。それが…私の紳士道だぁぁぁぁ!!!!!!」



 「「「…………」」」



 何故だろう……さっきまで私の心には熱い何が奮えていたハズなのに、急に氷河期に入ったように冷めてしまった。


 ユーミンさんも光が失った目でクスノキさんを見ている。多分、私も鏡で見たらあんな目なんだろうな。


 ソウゲツさんはまるで汚物を見るような目でクスノキさんを見てる。私もそんな目で見ている。

 私は今感じている言葉をソウゲツさんに言った


 「ソウゲツさん……撃っちゃって下さい」



 「わかった…」


 ソウゲツさんは躊躇なく、クスノキさんを銃弾を撃ち込む。クスノキさんは弾丸をまともに受け、倒れ込む。あっ、私は今まで何を…


 「「クスノキさん!!」」



 「大…丈夫さ……紳士ですから♪」



 クスノキさんは上半身を起こし、胸ポケットから何かを取り出す。


 「ああ、これが守ってくれたのさ…この『犬ミミロリ、ワンキーちゃん』が私の命を…(ダン、ダン、ダン)ぐはぁ……」


 ソウゲツさんは何か気に入らないのか更に数発撃った。たが…クスノキさんは立ち上がる。


 「…ハァ…ハァ…、この懐に入れていた…『本物柔らかイヌミミセット』が私の…命を…(ガチャ)はい、すいません。調子に乗りました。すいません」


 ソウゲツさんは眉間に拳銃を突きつける。本当なら助けないといけないのだが、何故か助ける気がしない。不思議な気持ちだ。


 「そこまでにしたらどうだ。余興なら充分だと思うが…?」



 「「「「えっ(はい、あん、誰)!?」」」」



 声のする方を見ると2㍍以上ある身長、鋼のような屈強の筋肉、武骨顔と豪快な髭を生やした軍隊の服を着ている男だった。

 見た感じは間違いなく、軍隊を率いる最強の軍人にしか見えなかった…。そして、今このテラスに来るという事は、間違いなく“あの人”だろう。


 「もしかして…まさか…」



 「うむ、遅れて済まない。私が…ウィキぺディアだ」


 やっぱり、ウィキさんか。そうだよね。ウィキさんしかいないよ。軍隊マニアで通っているのは彼しかいませんからね。想像を斜め上超えた人なのが


 「そして、ソウゲツさんか? その銃口を下ろしなさい。君の気持ちはわからなくないが、とりあえず止めたまえ」



 「…ウィキさん…初めて会ったのに酷くありませんか?」


 ウィキさんはクスノキさんの言葉を無視して、ソウゲツさんに近付く。そして、ソウゲツさんは更に笑みを浮かべる。何が楽しいのだろう…


 「よう♪会いたかったぜ、ウィキさん。いや…『ロシアの銀狐』、グロース・エルリックさんっと呼んだ方がいいかい?」



 「………ほう、私を知っていたのか…?」



 「確証は無かったけどな♪」


 何、ウィキさんの本名なの?ってソウゲツさんなんでそんなに詳しいの?貴方って何者!?


 「彼はイタリアを牛耳るイタリアマフィアのボスだ。本来ならこのような遊戯の場に来る人間ではないが…。なるほど、彼の狙いが私だったようだな」


 「心読まれた!!! なんで!? てか、マフィア!?」



 「おいおい、俺だってオフ会くらいは参加するぜ。人を見た目で差別しないで貰いたいな♪」



 「私に何の用だ、ソウゲツさん。いや、イタリアンマフィア『オロ・ビャンゴ』の首領、イアン・マーキン!!」



 「何だ、俺の事も調べ済みか? 流石だね♪」



 「あんな居場所を隠す気もない回線をしている人に言われても何も感じんよ。まるで“私を見つけて下さい”と言っているようなもんだからな」



 「まあな。では…時間もないし、始めようか?」


 ソウゲツさんは銃をしまい、ウィキさんに詰め寄る。ウィキさんも荷物を置いて、ソウゲツさんに歩み寄る。


 「この日を待っていたぜ、ウィキさん♪」



 「私も、“強き者”と戦いたいと体が震えている」


 二人が合い、対する。あれ、これってオフ会…だよね?



 「さあ、楽しいゲームのinizio ―始まり―だ♪」




 ◇  ◇  ◇



 オフ会まで、あと20分



 「まさか…これほど…とは…。…流石はロシアの銀狐…」



 「見事としか…言うしかない。まさか、私がここまで苦戦するとはな…」



 「止めをさせ。それで、全て終わる。まさか、情けをかける気は無いだろうな?」



 「私は軍人だ。敵に情けなどかけん。安心しろ…」



 「そうか…なら、いい。楽しいゲームだったが、これでfine―終わり―か…」



 「…イタリアマフィアの首領に恥じない誇り高き男だ。楽しかったぞ…さらばだ…(ダン)」



 「…ぐぅっはぁ……」















 「………で、二人は何をしてるのですか?」



 私は、芝居かかった二人を見て怪訝な顔で見る。何をするのかと内心焦っていた自分が恥ずかしくなる。

 そう…さっきまでこの二人は死闘をしていた。していたが……


 「くそーー、負けた!! まさか、あそこで右から攻めてくるとは迂闊だった!!!!」



 「ふっ、私から戦略で勝つなど100早い!!」



 「くぅ…もう一回…もう一回だ、ウィキさん!! 次こそは必ず…ウィキさんのフラッグを奪う!!」


 「良いだろう、ソウゲツさん。携帯ゲームを…いや、銃を構えろ!!」



 「次は、絶対にpiangere―泣かす―!!」



 二人はソウゲツさんが持ってきた対戦型戦争系ゲームをしている。なんでも『オンラインは勝てないが、このゲームなら勝てる』とソウゲツさんが言い、二人で携帯ゲームをしている。二人は緊迫した雰囲気を醸し出しているが、私達は呆れ果ててしまう。

 しかもソウゲツさんの部下達は店の中に入り、和気藹々と談笑しながら、料理を注文している。中から「日本のスイーツ最高!!」「ヤマトナデシコ素敵でーす」とか聞こえる。女の店員さんが接客しているが、笑顔が出来ずに怯えている人がいる(中には、営業スマイル満点の子がいるのは凄いと思う)


 「なんなんでしょうね。あの人達は…」


 ユーミンさんがそう言いながら、隣に座っている。まだ怒りは収まらないだろうが抑えてくれると私は助かる。そして、私はさっきから気になる事をユーミンに聞いてみる。


 「ユーミンさん…。ユーミンさんは本当に…アメリカの大統領なんですか?」


 「……えぇ、さっきソウゲツさんが言っていた事は本当よ。アメリカの大統領が日本に来た理由がオフ会に参加するためって…笑っちゃうでしょ。本当ならアメリカで国民のために必死に働かないといけない人がこんなことしているなんて……」


 「……ユーミンさん」



 「でも、ね。私は嬉しかったのよ、兎さん。最初は単なるストレス解消の場として、参加してたのに、次第に楽しくなって止められなくなったの」


 そんな気持ちで参加してくれたんだ…ユーミンさん。あれ、目から何か零れてくる。


 「兎さん、このチャットを開いてくれて…、このオフ会に招待してくれて、本当にありがとう………」



 「はい……こちらこそ、今日のオフ会に来て頂いてありがとう、ユーミンさん」



 私達は二人で涙を流しながら、握手をした。うん、私今凄く感動している。周りから暑苦しい男達の叫び声や爆発音が聞こえるが、私は気にしない。


 「よろしくね、ユーミンさん♪」



 「はい、兎さん。何かあったら何時でも言って下さいね。ストーカーがいるなら特殊部隊に頼んで始末させたり、好きな人が出来たらCIAに頼んでどんな人か調べたり、外国に行きたいなら豪華な世界旅行くらいなら出来ますよ♪」



 「うん…ありがとう…ユーミンさん。でも、気持ちだけでいいかな……」


 流石にやり過ぎです、ユーミンさん。大統領権限がある人はやっぱり凄い。そして、さっきから大人しいクスノキさんは「次は女性、次は女性」と怪しげな呪いを唱えながら、黒猫に触っている(黒猫は不機嫌になり、噛みつく)さっきまで拳銃で撃たれた人とは思えない。この人も案外タフだと思う。


 (でも後は誰が来るんだろう? まあ、これ以上常軌を逸する人は来ないだろうな♪)


 紳士、大統領、マフィアのボス、軍人……これだけでもかなり凄いと思う(普通なら絶対に来ない人だし)これを超す人は流石に現れないよね。でも一般人だったら逆に、この空気に耐えられるのかな?


 「まあ、いいや♪」


 私は空を見上げる。気持ちいいくらいに空が晴れている。今日は晴れてよかったと思う。お日様も綺麗にヒビが入って……ヒビ? よく見ると太陽に亀裂が入っていく。


 「はぁ!?」


 私は目を擦り、もう一度見る。よかった、やっぱり違った。太陽にヒビなんて入ってなかった。私達の上にある“空間”にヒビが入っているんだ、ははは………


 「てっ、それも大問題じゃん!! 何安心しているんだ私は!!!!」


 私が叫ぶとユーミンさんとクスノキさんは驚き「何事だ?」と思いながら、上を見上げる。そして、二人も私と同じように叫びだした。


 「え、ええ、なっなんですか、あれは!? 天変地異!? 世界の崩壊!? ノストラダムスの大予言!!!?」



 「まっ待ちなさい、ここは冷静に考えるのよ!! いい、まずはコンビニで石油を買い占めて、そのままハワイでバカンスよ♪」



 「ユーミンさん、落ち着いて!!!! 気が動転し過ぎて、何を言っているのか全く、理解出来ない!! とりあえず、かなり混乱しているのは分かるから!」


 ヤバい…アメリカ大統領があまりの出来事に狂ってる。帰って来て、唯一の常識人!!!! 

 そして…こんな非常事態に、そこにいるマフィアのボスと軍人さんはまだ戦争ゲームをしてる!? 二人は「ははは、もうその撃ち抜かれた右手では戦えまい♪」「まだだ…まだ…左手が残っている!!!」とか言ってヒートアップしてる。こんな、時に、あり得ない………。

 するとクスノキさんが何かを見つけた。


 「あの……亀裂がもう一ヶ所ありますが…」



 「嘘!!!!!?」


 私はクスノキさんが指差す場所を見ると、確かに新たな亀裂を見つけた。二人の亀裂は徐々に大きくなり、今のにも割れそうに見える。

 ああ…これは、もうだめかな…。私のラビットセンサーを使わなくても、危険性MAXなのは目に見えている(ちなみに、私のラビットセンサーは、とうに振り切っている)


 そして、二つの亀裂が止まり…同時に割れる。そして、その割れ目から一つずつ、人が舞い降りて、お店のテラスに着地する。


 「異世界、到着♪」



 「うむ、空間転移は成功のようだな」



 「「「……誰!?」」」



 割れた空間の裂け目から、二人の男が出てきた。一人はまるで中世で出てくるような白い騎士甲冑を装着した金髪のイケメン男だった。その顔は爽やかな笑顔のオーラを出していたが、何かその笑顔には裏が有りそうに見える。

 そして、もう一人は黒を基準とした王族服?を着た長い銀髪の男だった。その服には宝石等が散りばめており、かなり高そうに見える。

 そんな二人は、お互いを見ると驚いていた。


 「なっ、貴方は…魔王!? なんで、この異世界にいるんですか!?」



 「ぬっ…お主は勇者か!? お主こそ、何故異世界に!?」



 「え~と、もしかしてお二人は…オフ会の方では……ないですよね?」


 私は勇気を出して聞いてみた。というか、この二人…なんて言った? 勇者? 魔王? 異世界!?

まさか、この二人は……。


 「「そう(ですよ だが)」」



 「……そう…ですか(悪い予感が当たってしまった…)あの…失礼ですけど…二人の名前とお仕事は?」



 「これは申し遅れました。私はマナツです。職業は昨日まで勇者をしていましたが、今は冒険者をしています」



 「我はゾークだ。職業は…建前だけなら魔王だな。もう魔王の権限は全て部下に任したから、魔王と言っても、形しかないが…」



 「へぇ~……勇者と魔王ですか…。これは、滅多に会えない方に出会いましたね~……もう嫌だーーー!!!!」



 「ああ、遂に最後の常識人の壁…兎さんが壊れた!!」



 「五月蝿いです、クスノキさん!! 何これ!!!? 勇者と魔王!? 何でそんな人物が空間を超えてやって来るのよ!!!! 本っ当ーーにあり得ない!! 何、オフ会には勇者と魔王がセットでやって来るもんなの!? な訳あるかーーーーーー!!!!!!」


 私だって我慢の限界があるのよ。そして、そんな私を余所に、ゾークさんとマナツさんが睨み合ってる。


 「あなたが…ゾークさん? 聖人君子で世界中の人々を救いたいと願っていたゾークさんが、魔王!? これは笑えますね」



 「そなたがマナツさんだと? あの他人を平気で蹴落とし、自分勝手なマナツさんの正体が、あの勇者とは……ずいぶん滑稽な話だな」



 「…何か文句ありますか?」



 「…お主こそ?」



 二人は更に目を鋭くして睨んでる。そして、二人の間に火花が散ってる(いや、マジで)


 「いいでしょう…勇者として、最後に魔王の首でも、あげましょうか」



 「出来るか? お主のような腹黒勇者が?」



 「その驕りを、体諸とも真っ二つにして差し上げます!!」



 「ふん、まずは我の魔法を切ってから言うがよい!!」



 二人が間を取って、牽制する。うわー…大変事態になったけど、ゾークさんの魔法を使っている所は見たいから、止めるのは後にしよう。一体、魔法ってどんなのだろう? ちょっと、楽しみ♪


 「見せてやろう……かつて世界を破壊したと言われている…禁断の極大消滅神話魔法を、その目に焼き付けるがいい!!!!」



 「ちょっと、待ってゾークさん!!!! 魔法は見たいけど流石にそんな危険な魔法は使わないで!!!!」


 使ったら世界が滅ぶとか、勘弁して欲しい…。


 「ぬっ…そうか!? なら……初級魔法を見せてやろう」


 ありがとう、ゾークさん。でも、神話魔法から初級魔法に移るのは、何かやだな……。


 「喰らうがいい!!『サンダーランス』」


 ゾークさんが呪文を唱えると槍の形をした稲妻が現れた。稲妻は更に大きく、大きく…30㍍以上大きな槍になった。……あれ、大きく過ぎてない!?


 「どうだ!! これが魔王の槍だ!! これだけの大きさなら半径100㍍は稲妻が回りに散らばり、回避は出来まい!!」


 えっ…それって…私達も効果範囲内…だよね。


 「終わりだぁぁぁぁ勇者!!!!!!」



 「待ってーーー!!!!、私達も死んじゃう!!!!」


 稲妻の槍が真っ直ぐにマナツさんに向かって突き進む!! ああ…終わった……短い人生だったな…


 「そんな…もの…切り裂く!!!!」


 マナツさんは腰に差していた剣を抜き、ゾークさんの魔法を真正面から切り裂いたのは、凄い……が真っ二つになった稲妻の行方が方が気になる。


 一つはお店の屋根に当たり、半壊。


 もう一つは植物園に落ちて、植物園の4分の1は稲妻の衝撃で吹き飛んだ。


 これ……弁償は誰がするんだろう(中にいた店員さんはその光景を見て、倒れた)


 「あんなもんか? ま・お・う・さ・ま?」



 「あんな初級魔法を、切り裂いたくらいで調子に乗るな。本当の戦いはここからだ!!」


 一人は剣を構え、一人は更に魔法を打ち出そうとしてる。どうしよう……もう、二人を戦いを止められない!! だって、勇者と魔王だよ。誰があの戦いに入ることが出来るの!? 誰か教えてよ!!!? このままだと、この辺一体が瓦礫の山になる!!!!


 「さて、見るがいい!! これが魔王の爆裂呪文『イクスプロージ…「このゴミがぁぁぁぁ!!!!!」ゴハァ!!!!」


 ゾークさんが呪文を唱えようとした瞬間、ソウゲツさんのドロップキックが後ろから容赦なく飛んで来て、マナツさんの所まで吹き飛ばした。ってソウゲツさんがいきなり登場して来た!!!! しかも、かなり怒っている!?


 「てめえら…!! 俺があとちょっとで勝てる戦いをしていたのに……お前が放った稲妻のせいでゲームの電源がとんで、更にお前が切る角度が甘いせいで斬撃の余波でゲーム器が壊れたじゃねぇか!? この落とし前どう着ける気だ、ゴラァ!!!!」



 「そんな理由で蹴飛ばしたの!? というか、それまでずっとゲームしていたのですか、ソウゲツさん!!!?」


 むちゃくちゃだ…この人。この騒ぎの中、よくゲーム出来たな、おい。そして、ソウゲツさんの後ろから、静かにウィキさんが近付いて来る。あれ、ウィキさんも…何か…様子が……。


 「…別に私は負けかけてなかったよ。あれは敵を誘い出すための、罠だからな。……だが、真剣勝負を、男の戦いを邪魔された私は……君達を許す事が出来そうにない…」


 ウィキさんが怒っている!! あの温厚で優しいウィキさんが怒っている!!!! 体から溢れ出てくる殺意が半端じゃない!!!!


 「なんですか、あなた方は? 私と魔王との戦いに水を差す気ですか?」



 「最初に出したのは、てめえらだろ。どうやらイタリアマフィアを怒らしたら、どうなるか…教えてやらないといけないな」



 「我に蹴りを入れるとは、貴様ら…殺すぞ!!」



 「私の考えで言えば“蹴る人”より“蹴られる人”が悪い。少し余所見をすれば死に繋がる。それが、戦場だ……」


 あれ? なんかさっきより状況が悪化してない? 二人から四人に乱闘騒ぎが大きくなってる。


 「さあ、始まりました。勇者・魔王VSイタリアマフィア・軍人の戦い!! 解説は私、クスノキです。そして、今日は特別ゲストに今話題のアメリカ大統領ユーミンさんが参られました。今日は宜しくお願いします♪」



 「はい…宜しくお願いします…」



 「ってクスノキさん何やっているのですか!?」



 「いや~やることが無いので解説をしようと思って~。さっさ、兎さんも隣座って下さい♪」


 まあ、あの四人を止められないし……いいか♪。私は彼等から少し離れた場所にある解説場所に座る。そして、四人の戦いが始まる。


 「来いよ、勇者様♪ お前にたっぷりと悪の恐ろしさを教えてやる」



 「悪だと…悪が正義に勝てると思っているのか? しかも、私は勇者だ!! 悪には絶対に負けない象徴ですよ」



 「確かにな…だが、悪は“不滅”だ。どんな時代にも、どんな世界にも必ずいる。それが悪だ。どれ、先手は譲ってやる……来な!!」



 「減らず口を。今から叩けないようにしてやる!!!!」


 そして、マナツさんが剣に手を伸ばす……瞬間にソウゲツさんは懐から拳銃を取り出し、マナツさんに発砲した。マナツさんは銃弾はまともに浴びて倒れ込んだ。


 「「「「えっえぇぇぇぇ!!!!!」」」」



 「よし。俺様の勝ちだ♪」



 「いやいやいやいやいやいや、ソウゲツさん!!!! 何してるのですか!!!!!?」



 「何って…普通に発砲しただけだが…どうした?」


 ソウゲツさんは真顔で「何言ってんの?」的な感じで見てる。えっ、私が悪いの…。

 そして、マナツさんは何とか起き上がるけたまど…血がドバドバ出てる。完璧に致命傷与えたよ、あれ。


 「貴っ…様…、先手を…譲っるのでっは…ないのか? この卑怯…者…」



 「あん? 嘘に決まってるだろう、あんなの? 俺は悪だ。嘘もつくし、卑怯なマネだってするぜ。そんな悪が正々堂々と真正面から攻撃はする訳ないだろ。勝つためなら、どんなものだって利用して捨てる。それが…悪の真の恐ろしさだ♪ わかったか?」


 うわー清々しい程最低だ…。ソウゲツさんとあまり関わりたくないな~。


 「それに、俺が卑怯なら…あいつはどうなんだよ。向こうもとっくの昔に終わったぞ」



 「え!?」


 ソウゲツさんが指を差す方に目を向けると、そこには後ろから押さえ込み、腕を極めて、首元にナイフを当てているウィキさんの姿がある。そして、ウィキさんが抑え付けているのは、ゾークさんで間違いなさそう…


 「あの……いつの間に…?」



 「俺が発砲した時には、もう動いていたな。俺が発砲したせいで、ゾークさんの意識がこちらに向いた瞬間、ゾークさんの後ろから“圧倒的な速さ“で回り込み、後ろから押さえ込み、腕を絡めて極め、喉元にナイフを入れた。この時間僅に3秒だな♪」



 「ウィキさん……人間の身体能力の限界を軽く超えてません?」



 「軍人ならこれくらいに出来て当然だ。それにさっきも言ったハズだ。余所見をすれば、それが死に繋がると……」


 軍人って凄いな~。というかこの二人、勇者と魔王を倒しちゃったよ。なんなの、パーティ。でも、これで、やっと争いが終わった…。良かった♪………と思っていたけど…


 「おっと、手が滑った(ダン、ダン、ダン)!!!!」



 「ぬぅ!!」


 ソウゲツさんが手元が狂い?手に持っていた拳銃が暴発(ように見えないが)して、ウィキさんに誤って(私からは確実に狙いを定めて撃っている)発砲するが、ウィキさんは間一髪避ける(だが、その弾丸はゾークさんに当たり、ゾークさんの叫び声が聞こえる…)


 これには、解説席グループ三人はドン引きしてる。


 「あの…ソウゲツさん。今…確実にウィキさんを狙いましたよね……?」



 「何を言ってる。俺は手が滑っただけだぜ♪ けして…さっきのゲームで負けた腹いせをしようとは…思ってないぜ♪」



 「「「(絶対に……嘘だ!!!!)」」」



 「………それは、仕方ない事だ。戦場でも銃の暴発はかなりあるからな。私は器の小さい男ではない。おっと、ソウゲツさん。私も手が滑ってしまった♪」


 するとウィキさんが懐から何かを取り出し、何かのピンを抜き、明らかにソウゲツさん目掛けて何かをパスをした。だが、ソウゲツさんは笑顔で受け取ろうとする。


 「ああ、いいぜ♪ 手榴弾ごときでビビるような性格はして…ない?…!!!!……っせいや!!!!」


 ソウゲツさんは何かに気付いたのか、ウィキさんが投げた物体を、頭上に向かって全力で蹴り上げる。そして、ソウゲツさんの頭上10㍍以上で大爆発した。………うそ!!!!


 「てめえ……ウィキさん!!!! あれはただの手榴弾じゃねえな!!! 小型のプラスチック爆弾だろ!!!!!! 俺が蹴り上げなきゃ、この辺一帯は吹き飛んでいたぞ!!!!!!!!」



 「ああ、済まなかった。だが、私も手が滑っただけだから、ははは♪」


 ウィキさんは笑いながら、謝ってる。反省の色がまるでないよ……私達もしかしたら死んでいるのに……。ああ、そしてソウゲツさんが何かに火が付いて、何処からかマシンガンを取り出した(本当に何処から出したのだろう?)まさか……


 「いいぜ、いいぜ、ウィキさん。それなら、もっと派手にやろうぜ!!!!」



 「そうだな。そこの二人も回復したようだし、折角だ…バトルロイヤルで殺り合おう」


 ウィキさんがそう言うとマナツさんとゾークさんが起き上がった。しかも、さっきまであった傷が見当たらない。魔法とかポーションで治したのかな?


 「さっきは油断した……だが、もう同じ手は通じない!! 私のアルトーラ剣術奥義をその目で焼き付けろ!!!!」



 「……魔王を怒らしたら、どうなるか…分かっているのだろうな!! 見せてやろう…我の最終形態を!!!!」



 「最後にものを言うのは、戦略と技術と培ってきた戦場の数が勝敗を呼ぶ。それが一番あるのは私だ!!」



 「いいぜ、いいぜ、いいぜ!!!! 盛り上がって来たな!!!! さあ…partye―宴―の開始だ!!」


 ああああ、なにか最終対決が始まってしまった……。もう止めて!!!!私のオフ会を壊さないで!!!!


 「そこまでだ!!!! 全員その場を動くな!!!!」



 「「「「「「えっ!?」」」」」」


 私達が声のする方を見ると、警察服を着た五十過ぎの男が怒りながら怒鳴っていた。よく視ると高級官僚の人らしく、胸に警視正のバッチを光らせていた。更に男の周りには特殊部隊が待機され、後ろには多数の戦車が並べられ、上にはヘリが二、三機も飛んでいた。

 えっぇぇぇぇ!!!! まさか日本の警察が出動したの!? と私が驚愕していたら隣からユーミンさんが声をかける。


 「兎さん、大丈夫よ♪ 実は私がさっき日本の上層部に連絡して、この人達を止めるように連絡したの。これだけの戦力なら止められるわ♪」



 「ユーミンさん、さっきから黙っていると思っていたら、そんな事してたんだ!!」


 と、私達が話をしていると、警視正が前に出てくる。


 「そこにいる街中で戦闘行為を繰り返している四人告ぐ!! 今すぐに武器を棄てて投降しろ!! ワシはこの日本警察のエリート、数々の凶悪犯を逮捕してきた剛綱 健だ!!!! 誰か知らんが、ふざけた事をしやがって!! 全員ブタ箱に送ってやる!!!!!!」


 うわー偉い人が来ちゃったよ……。でも、ヤバイ…さっきまで暴れていた四人の視線が警視正達に向いている……。


 「「「「勝負の邪魔(するな、です、だ)!!!!!!」」」」



 「なっ!?」


 四人の行動は速かった。


 マナツさん、はあり得ない程跳躍して、かなりの高さにある数機のヘリを、一振りで真っ二つにして破壊。


 ゾークさんは、上級魔法を使って、周りの戦車(10以上を)爆破して破壊。


 ソウゲツさんとウィキさんは、マシンガンとナイフを使い、抜群のコンビネーションで特殊部隊を圧倒して殲滅。


 掛かった時間……僅か…13秒。……あり得ない。私達三人は目が点になり、警視正さんは呆然としていた。そして、そんな警視正さんをこの四人は見逃さない!!!!


 「ぬっ!?」


 まず、ウィキさんが警視正さんの左手を持ち、左腕全ての関節を破壊。その瞬間にゾークさんが氷の魔法で両足を貫く。倒れたそうな時に右手に持っていた拳銃で発砲する瞬間に、マナツさんが剣で右腕ごと斬る。そして、悲鳴をあげながら倒れて命乞いをした時に、ソウゲツさんが後ろからベレッタで発砲(何故こんな時に完璧なコンビネーションを発揮したの!?)


 全ての敵を排除したのを、確認すると四人はバトルを再開させようとする。私はその姿を見て我慢の限界をぶち抜き、彼等に歩み寄る。


 「さて……じゃあ、再開するか?」



 「妙な邪魔が入りましたが、いいでしょう」



 「準備運動にはなった」



 「よし、始めようぜ♪」



 「………止めな…さい…」



 「「「「ん!?」」」」



 四人は私に注目して、驚く。今私がどんな表情でいる分からない。でも、怒っている事は間違いないだろう。その時に…


 「……はぁ…あの……こんにちは……ぜぃ…。ドラ…ゴン…です…。はじめ…して……。…しぃ…仕事は…イギリス…で…色々して…ます」


 ドラゴンさんらしき人が来た。何故か…全身がずぶ濡れで、ほのかに潮の香りがする。頭には海草とタコがへばりついて、かなり疲れている。その姿を見て、私はキレた!!


 「そこにいる…全員……正座…」



 「「「「「え!?」」」」」



 「全員、その場で正座!!!!!!!!」



 「「「「「はっ、はい!!!!」」」」」



 その場で四人+関係ない一人を正座をさせ、私は彼等にたっぷりと説教をさせる。


 ◇  ◇  ◇


 オフ会まで、あと5分前



 「あぁ~もう、嫌だ!!!!」


 私はそう言い、テーブルに倒れ込んだ。最悪だ!! オフ会とか初めてだけど、まだ人生16年近くしか生きてないけど、人生で一番最悪の日だ!!!!

 何なのオフ会って!? オフ会に来る人って、本当に人知を超えた存在が来るの!? 変態紳士にアメリカ大統領、イタリアマフィア、軍人からイギリスの海人?…そして、極めつけは異世界から勇者と魔王が襲来ですよ。あり得ないよね!!! 私は絶対にあり得ないから!!!! 

 深雪ちゃんの嘘つき!! 世界にファンタジーがない……ファンタジーが押し売りのように来たよ!!!!

 そして、そんな人達が来てどうなったか知っています!? 


 オフ会の場所のお店は魔法や爆弾を受けて窓ガラス割れ、壁が無くなり、屋根が吹き飛びまして半壊。


 大きな植物園は雷を受けて、特殊部隊に踏み倒されて、あまつさえ爆発を受けて燃え尽きましたよ。あるのは焼け野原。


 私達がいるテラスは床に穴が空き、ここにあるテーブル以外壊れました。


 約一時間前までは花の香りがする素敵な場所だったのに、今あるのは薬莢と血の匂いが充満する最悪な場所になりました。


 そして、ここの女店長さんらしき人が涙を流しながら、座り込んでいる(だがソウゲツさんの部下の黒服が励ましながら、小切手を渡して何とか涙を堪えているが……まだ回復していない)

 そして、さっきまで説教をされた人達、傍観をしていた人達、全く関係ないのに説教された人はというと………


 「ひっく…くっ…私っ…必死な思いで…ひっく…日本海の嵐を…っ…抜けて来て、…泳いで来たのに…いきなり…あんな…仕打ちを受けるなんて……うぅぇぇん!!」



 「大丈夫ですか? まあ、タイミングが悪かったとしか言えませんねぇ……」



 「マナツさん、もう少しオブラートに…」



 「…ぅぅ…クラゲ…巨大サメ…クラーケン!? 私…わあっぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 ユーミンさんとマナツさんは、ドラゴンさんに毛布を被せ、心のケアしている。衰弱が酷いが、体には問題ない……が、ここに来るまでに何か心に傷を負ったらしい(止めに私の説教が加わり、悪化したらしい)


 そして、残りの問題児は、というと……


 「やはり、私が思うにケモノ耳はイヌミミが最高ですね♪」



 「いや、定番はやはりネコミミで間違いないだろう。異世界には、ネコミミという種族はいないから、我はそれに憧れてしまった!!」



 「私はキツネミミだ。何せ私の異名の『ロシアの銀狐』にする程にキツネミミを愛してる」



 「俺にはまだ理解出来ない存在だが…まあ、気持ちは分からなくない。興味があるとしたらクマミミだな♪ あの丸いミミが時に可愛く見えるぜ」



 「ソウゲツさんも分かって来てますね♪ ケモノミミ…それは人間があらゆる萌えを考えた一つの極み…ただ頭に動物の耳を着けただけで、その女性の萌え力を大幅に上げることが可能なり、一つの芸術作品仕上げる。さあ、皆さん!!!! 心を一つに!!!! 『全ての女性の頭にケモノミミを!!』」



『『『『全ての女性の頭にケモノミミを!!』』』』


 ほら、こんな事を言ってるよ、このお馬鹿さん達は……ああ、頭が痛い。一時間前の自分に言ってやりたい。『オフ会は駄目、絶対に来てはいけない』と言ってやりたい!!!! でも、全ては遅いし……。

 そして、クスノキさんが周りを見てる。


 「あと来ていないのが…キャッドさんですね♪ もう来てもいいと思うのですが?」



 「確かにな…だが、あれだけの騒ぎの中、近付く奴がいたら褒めてやりたい♪」


 ソウゲツさん、あなたが言わないで頂きたい。一番問題を起こしているのは、あなたですからね!!!!

 でも、ソウゲツさんの言う通り、誰がこんな危険地帯に入りたいのだろう。もし、私が途中から来たら、回れ右をして家に帰るだろう…。でも、これだけ癖のある人が来たら、もう、何が合っても驚くことはないだろう。だが…



 「いるわよ、私はここに♪」



 「えっ!?」


 私達はいきなりの声に戸惑った。ここには私達八人しかいないからだ。もしかして…


 「なんですか? 次は幽霊ですか!? 透明人間ですか? いいですよ、出てきて下さい!! 私はどんな人でも、驚きませんよ!!!!」



 「その気持ちは称賛に値するけど、私はここにいるわよ」



 「えっいるって、何処にです…か…!?」


 私は周りを見る。このテーブルに座っているのは私と今日来た七人しかいない………が、私は忘れていた。クスノキさんとユーミンさんとまだ三人の時に来た“あの存在”を………。そう、あれからずっと、テーブルの上で寝ていた“あの存在”………

 下を向くと“あの存在”は私の顔をじっと見ていた。そして…


 「こんにちは、兎さん♪ 私がハンドルネーム:キャッドよ。宜しくね♪」


 “黒猫”が喋りだした。気品溢れる素敵な日本語で…………


 「ねっ…ねっこ、猫が、喋ったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



 「あら、どんな“人”が来ても、驚かないのではなかったのかしら?」



 「“人”じゃないし、“猫”だし!!! せめて人間であって欲しかったです!!!!」



 「ここで人種差別ですか? いけませんよ、兎さん。それでは、人の上には立てません。私は白人でも黒人でも、分け隔てなくしたから大統領に成れたのです」



 「そうだ、我がいた異世界でも沢山の知的生命体がいる。それを差別することは許されない!!」



 「「「そうだ、そうだ」」」



 「何を反対しているんですか!? 私が言いたいのそんな事ではありません!!!! 皆さん、ふざけないで下さい」


 たく、この人達は…。そして、キャッドさん?と思わしき人物(人ではないが)が背筋を伸ばして立ち上がる。


 「まあ、驚くのも無理ないわね。では、私の真の姿を見せてあげる♪」


 そう言うとキャッドさんはその場で大ジャンプをする。そしてその小さい猫の体が光だす……。

 すると、光の中から………黒髪の長い白いワンピース姿の少女が現れる。頭にネコミミを生やした少女が………


 「それが……あなたの本当の…姿?」



 「そうよ。この姿にはあまり成れないけど…しばらくは維持出来るわ」



 「あなたは…なんなの!? 一体誰!?」



 「私が誰なのかは、まだ教えられない。でも、私を入れたあなた達でやって、貰いたい事があります!!」



 「それは…?」



 「それは……私とあなた達で…り「ケモノミミロリキタ━ーーーー(゜∀゜)━!」にゃっう!?」


 いきなりクスノキさんが立ち上がり、何か叫び出した(よく分からない顔?ぽいものと一緒に)

キャッドさんはいきなりの事で、可愛らしい悲鳴をあげる。……ちょっと、可愛く思えた。


 「……あの、クスノキ…さん? ですよね。私に何か?」



 「いえ、すいません、いきなり叫んでしまって…。私…感激のあまり、自身を制御出来なくて……とりあえず、耳を汚し…いえ、触っていいですか?」



 「言葉を直しても駄目です。拒否します!!」



 「では、舐めて…いえ、ペロペロしていいですか?」



 「嫌です!!!! 言葉を直してもいませんし、悪化してます!!!!」



 「では、ひたすら視姦します♪」



 「嫌…見ないで…そんな…目で…私を見な、嫌…近付かないで!! 嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


 ◇  ◇  ◇


 オフ会まで、あと2分


 とりあえず、クスノキさんが暴走しかけていたので、何人かにお願いして止めて貰いました。今クスノキさんはロープでぐるぐる巻きにされています。


 「何故です、ケモノ耳同好会の皆さん!!!!!? あの桃園の誓いでの約束を忘れたのですか!!!!!?」


 どんな約束をしたのですか。絶対に下らない話ではあるでしょうが…


 「ああ、約束はある。だが、犯罪行為を見逃すのは軍人としての誇りが許さない」



 「知らないのか? 裏切りは悪の常套手段なんだぜ♪」



 「済まない…。我にはまだやりたい事があるゆえ……」



 「私は加入すらしていませんので…」


 他の四人は賢明な判断を行い、クスノキさんを捕縛にしました。で、さっきまで怯えていたキャッドさんは私の膝の上に座っている(その姿は半端なく可愛らしい)


 「さっきの話の続きですけど、あなた達にはリレー小説を書いて貰います!!!!」



 「「「「「「「「リレー小説!?」」」」」」」」



 「あの~リレー小説というのは?」


 回復したドラゴンさんが会話に入ってくる。確か…代わる代わるに小説を書いていく、バトン形式の小説だっけ?


 「そんな感じです。相手が書いた小説を自分の好きに続きを考えて書く小説です。今日はそのリレー小説の内容を話合っていきます」


 勝手に今日の日程を決められてしまった!! 


 「皆さんの言いたい事は分かります。でも、これは運命によって決められた話なんです」



 「運命…?」



 「これ以上先は言えません。全ては…リレー小説が書き終わる時に分かります!!!!」


 私は皆を見る。それぞれ一癖も二癖もありそうな人達だが、皆でやれば……


 「できるのかな!? このメンバーで……」


 不安しかない。でも…やらないといけない気がする。皆も何故かやる気に溢れてる。


 「いいわ♪ やりましょう、リレー小説!!!!」



 「ありがとうございます、皆さん♪ では、まずリレー小説のタイトルですが、もう決まっています♪…その名前は」



 「ちょっと、待って、キャッドさん!!」


 私はキャッドさんの言葉を遮る。周りの皆も「どうしたの?」と言う顔で見てくる。

いや、皆さん。店に入ってから私達、何も注文してませんよ。私はメニューを皆に見えるように見せる。



 「とりあえず皆さん。飲み物何が良いですか♪」



 こうして私達のオフ会は始まった……




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 超絶長い!最後の 「とりあえず皆さん。飲み物何が良いですか♪」 には脱力しました。 もう、読むのに苦労しました(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ