勘違い電話
説明などは一切ありません。
あるのは台詞と音だけ。
それでもよろしいのなら、どうぞ。
prrrr....prrガチャ
「はい、もしもし」
「あ、たくみん? 俺だよ俺」
「え? どなたですか?」
「だー、かー、らー、俺だって」
「いや、どなたですか? あと、たくみんって誰ですか?」
「俺だっていってんじゃん。あとたくみんはたくみんだろ?」
「え、いや」
「たくみん、北表デパートの前集合って言ったじゃん。なんでまだ来てないんだよ」
「だからお前誰だよ!」
「おい、たくみん。いい加減にしないと俺怒るぞ」
「俺はたくみんじゃねぇ!」
「はあ?何を言って…………。
………。
誰だお前!? だ、騙したな!?」
「訳分かんねーよ! 騙してなんかねーよ! お前が勝手に勘違いしただけじゃねーか!」
「くそっ、なんて野郎だ!」
「こっちの台詞だ!」
プツッ。ツー、ツー。
「なんだよあの電話の野郎。意味分かんねぇ。」
prrrrr....
「あ? また電話か?」
ガチャ
「なあ聞いてくれよたくみん、さっきさ、たくみんに電話した時さあ、変な男がでやがってさあ。訳分かんねーのよ。
なんだよあの野郎。俺を騙したりしてきたんだぜ?」
「騙してねーよ!」
「おおっ!? どうしたんだたくみん。いきなり大声出して」
「だから俺はたくみんじゃねえっつってんだろうがっ!」
「たくみん。怒ると寿命縮まるよ?」
「てめぇが言うなや! だいたい俺はたくみんじゃねえってさっきから言ってんだろうが!」
「そ、その声、たくみんじゃないな!?」
「はじめっから気付けや!」
「まさかさっきの奴か!? 二度も俺を騙すなんて……なんて悪い奴なんだ!」
「誰もてめぇなんざ騙してねーよ!」
「バーカ! バーカ! 鍋食べて口の中火傷しろ!」
「今は夏だっ!」
プッ。ツー、ツー。
「なんなの? 本気でアイツなんなの? 俺に嫌がらせしたいのか?」
prrrrrr.....
「うわぁ、とりたくねぇ。しかもテレビ電話だし」
……ガチャ。
「やあたくみん! 聞いてくれよ! モグモグ。さっきさぁ、モグモグ。俺がさあ、モグモグ。」
「焼きそば食いながら喋んなや!」
「駄目だよたくみん。モグモグ。今はもう12時、モグモグ。つまり昼ご飯の時間だよ? モグモグ。1日四食しっかりたべなきゃ」
「一食多いわ! あと俺はたくみんじゃねえ!」
「またまた~。たくみん、さっき二回も変な男に、俺は騙されたんだよ? 学習ぐらいするさ。だからほら、テレビ電話」
「騙してねぇ! お前がアホすぎるだけだろ!」
「あれ? たくみん目の位置が変わったね。髪型もかえたの? 肌も白くなったねぇ」
「そこまで気付いていて何故分からない!」
「あ、そうそう。早く北表デパートに来てね。待ってたんだから」
「誰が行くか!」
「でも本当にたくみん変わったね」
「急に話題変えんな!」
「1ヵ月前はもっと痩せてて、もう少し顔が小さくて髪の毛も茶色じゃなくて黒だったよね。
なにしたの? 整形?」
「そんなの短時間であきらかに変わりすぎだろ!」
「あれ? よくみたらたくみんに似てない……
お前、誰だ!?」
「俺だってその質問をお前にしたいわ!」
「はやく答えろ! ボコボコにするぞ!」
「あァ? やんのか?」
「す、すみません! じゃなくて、この声はまさかさっきの電話の奴か! よくも三回も騙したな!」
「騙そうとしてないし、友人と他人との見分けもつかねーのか!」
「くそう、せっかくたくみんと北表デパートで待ち合わせしてたのに。
たくみんは来ないわ、訳の分からん奴に電話はかかるわ」
「失礼な! だいたいてめぇのいる場所北表じゃなくて南表だろうがっ!」
「何を言っているんだ詐欺師のくせに。だいたいここが南表な訳…………。
あっ」
プツッ。ツー、ツー。
「……遅いなあ」
「あ、たくみん、待った?」
「いや、待った? じゃないよ。今2時だよ? 待ち合わせの時間10時だったんだよ? なんで4時間も遅れてるの?」
「アッハッハ。ごめんごめん」
「ごめんじゃないよ……。
まあいいや。お腹すいたからお昼ご飯食べに行こう」
「え? 俺もう食べたよ?」
「……えっ?」