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009.最澄と茜の実力

学生さんは夏休み! 社会人さんは暑い中お疲れ様! と言う事で十五日まで毎日二話投稿します。

朝六時と夕方六時です。楽しみにしててください!

「じゃぁ次は俺だな。十兵衛が凄いのはわかったけど俺らの実力も見て判断してくれよ。正直十兵衛が強すぎて俺がパーティに居ていいのかすら疑問符が付くんだ」

「あぁ、わかった。最澄。高校生からやってた実力を見せてくれ」


 十兵衛がゴブリンを一瞬で屠ると最澄がずいと乗り出して言ってきた。

 まぁ実際パーティメンバーを風魔忍者で固めようとしていた感は北条家にはある。それだけ梨沙が大事なのだ。


 ただ最澄も茜も二十歳でB級探索者をやり、更に有名な大剣使いであるレオが勧めたメンバーである。おそらく単なる経験者でとどまらないだろうことは予想ができる。


「あっちから二体来るぞ。ゴブリンだ」

「ゴブリン狩りは慣れた物よ。ただ十兵衛みたいに一瞬とは行かないからそこは勘弁してくれよな」

「最澄頑張れ~」

「頑張れ~」


 女性陣の応援を背中に最澄は武者鎧をガチャガチャ言わせながら先頭に立った。

 正直モンスターに気取られやすいので防音の付与を最澄の武者鎧には掛けたいのだがそれには数百万かかる。今の最澄にそれだけやれとはとても言えないし、流石に北条家に頼るのも申し訳ない。


 そういう訳で十兵衛はそこの点は目をつむることにした。階層を重ねて行けば探索者は儲かるのだ。そこで装備の更新の機が必ず来るので、もしくはその前に強敵に出会った時などには進言してみようと思う。


 その頃にはこのパーティでも何百万くらい稼いでいる筈だ。ちなみにゴブリンの魔石は一個五百円で売れる。二十体倒せば一万円なのでソロやペアの探索者たちが正規ルートを外れてゴブリンの魔石で小遣いを稼いでいる、なんてのも普通にあったりする話だ。高校生には一万円は重い。だが命をベットしての値段だとすると割に合わない気はする。

 もちろん彼らは命をベットしている気はない。余裕で倒せるゴブリンを倒して小遣い稼ぎしているだけだ。


「よし、来い!」

「グギャッ」


 最澄が盾を地面にガンとぶつけるとゴブリン二体は最澄に注目し、棍棒を振りかぶった。十兵衛ならすでに倒しているところだが最澄はその棍棒を盾できちんと受ける。そしてその隙間から短槍を左手で繰り出して見事にゴブリンの喉を突き刺した。


 もちろん二体目のゴブリンも攻撃体勢に入っているのだが間合いの取り方が上手い。一体目のゴブリンの体が盾になるように位置取りをして、二体同時に攻撃させないようにし、一体目のゴブリンを危なげなく屠ったのだ。そして二体目のゴブリンは一体だけになったのもあり、同じように盾で棍棒を受けられ、短槍を今度は胸に突き刺され、心臓に穴が空いて魔石となった。


 喉や頭、胸を狙うだけの腕はあると言いたいのだろう。

 実際動きはスムースでゴブリン狩りに慣れていると言うだけある。最初から複数相手だったが全く危なげがない。これなら前を任せられる。もしくは梨沙の護衛を一時的に預ける事ができる。十兵衛はそう思った。


「すご~い」

「ね、見事な物だと思うわ」


 梨沙と茜が感想を言う。だが最澄の瞳は十兵衛に「どうだ?」と言わんばかりであった。

 パチパチパチ。

 十兵衛はその視線に応えるように拍手で返した。それで最澄は十兵衛に認められたと判断し、ホッとしたように少し肩の力を抜く。


(最後が減点だぞ。まだモンスターがいるかも知れないダンジョン内で気を抜くな! 常在戦場だ!)


 十兵衛はそう思ったがパーティの雰囲気が壊れると思ったので今は言うのは留まった。今日の総括や打ち上げなどでこっそり言って置こうと心の中にメモをした。


 :最澄くんも凄いやん。

 :うん、素人とは思えん動き。

 :最澄くんは素人ではないらしい。高校生からやっててD級だって。

 :なるほど。

 :いや、忍者の十兵衛くんの動きが凄すぎて霞むけど最澄くんくらいでも十分凄いんだよな、本来。

 :それ。


 コメントでも最澄を褒めるコメントがついている。どうも最初に十兵衛が実力を見せたのが悪かったらしい。だがだんだんと視聴者数は上がっていて、コメント数も増えている。あまり増えると追えないのでこのくらいの人数でちょっとアドバイスをくれる、くらいの塩梅が良いなと十兵衛は思った。


「じゃぁ次は私ね。見てて」


 茜が先にでる。ただ茜の戦闘を見るのに十分くらい掛かった。それは茜の戦闘時間が長かったのではなく、次のゴブリンにエンカウントするのに十分歩いたと言うだけだ。


「茜、次のゴブリンは三体だけど大丈夫」

「三体ね。むしろ事前情報で何体いるかわかるだけで有り難いわ。そのくらいは大丈夫よ。うちの前のパーティは十階層までは確実に行けるって言われている新進気鋭のパーティだったの。崩壊しちゃったけれどね」


 :むしろそう。

 :十兵衛くんの気配察知が異常過ぎるだけ。

 :この先に三体いるとかほんとどうしてわかるんだよ。

 :理解不能すぎるby中層探索者


 コメントがそのくらい流れたところで実際に三体のゴブリンが現れた。相変わらず腰蓑と棍棒と言うスタイルだ。

 三層に行くとゴブリンライダーと言う狼に乗ったゴブリンが現れるのだが、二層は基本的に棍棒を持ったゴブリンが主軸だ。たまに短剣などを持ったのが現れるらしいがドロップしてもくず鉄にしかならないので外れらしい。


「じゃぁ行くわ」


 茜は薙刀を構えるとそのまますすすっとすり足で近づき、ゴブリンの間合いになる前に薙刀を薙いだ。

 三体一気に首を落とすのかと思ったが多分威力的にそれはできないのだろう。狙ったのは足だ。


 三体のゴブリンの両足は膝や足首から両断され、三体のゴブリンは地に伏した。そしてしっかりと間合いを開けた状態で茜は首を狙い、即座に致命の一撃を入れ、ゴブリンたちは魔石に変化した。


 :すげぇ。

 :茜ちゃん可愛いだけじゃなく強い。

 :いやまじ強い。ゴブリン相手とは言え三体瞬殺だぞ。

 :うん、十兵衛くんが異常だっただけで今の戦いを見てるだけで茜ちゃんの実力がわかる。凄いな。


 コメントも好印象だ。実際十兵衛の判断も茜の動きは思ったよりも数段良かった。これならば殿に置いておけば梨沙をしっかり守ってくれるだろうし、前衛として出しても頼もしい相棒となってくれるだろう。


「うん、いいね。首三つは一撃では厳しいのかな?」

「えぇ。と、言うか首だけなら行けるのだけれど、棍棒などが挟まると薙刀の流れが悪くなって二体目、三体目の首が狙えなくなるのよね。だから足を狙ったの。足を切断されてまで危険なゴブリンはそう居ないわ」

「確かに。判断力、薙刀の使い方。両方素晴らしかったよ」

「ありがとう、嬉しいわ」


 茜は十兵衛の評価に満足していたようだった。


「おい、俺の時はもっと簡素だっただろ」

「いやまぁ戦い地味だったし、評価はしてるよ? あとやっぱ男だし」

「くそっ、男女差別だ!」

「それ男側が言う? しかもここダンジョン内だから男女差別とか言っている場合じゃないでしょ。俺は警戒してるけど最澄もちゃんと警戒してね。トラップとか出てくる階層にそのうち潜るようになるんだから気を抜いたらダメだよ」

「うっ」


 さっき言えなかった事を注意できたので十兵衛としては満足だ。

 最澄にも茜にも、常在戦場の意識は少なくともダンジョン内ではしっかりと持っていて欲しい。十兵衛と言う優秀なセンサーがあるからと言って気を抜いて良い訳ではないのだ。


「気配察知も俺だけに頼らないでね。自分でも意識して気配を探知していれば、そのうちスキルとして生えるかも知れないんだから、俺があっちに何体いるって言ったらその気配を探るように練習してみて」

「わかったわ。確かに〈気配察知〉のスキルは欲しいものね。と言うか全員持っているのが上級冒険者だもの。目指すなら取らないと話にならないわよね」

「おう、わかったぜ。任せっきりで悪いな。俺もそのうち生やすから待っててくれ」

「うん、わかってくれて良かったよ」


 梨沙がバッと手を挙げた。

 十兵衛としてはいい感じに二人に意識を植え付けられ、二人の実力の一端も見れたので良い感じだと思っていたのに何だろうか、と警戒する。こういう時梨沙は結構危険な発言をすることを十兵衛は長い付き合いの中で知っている。


「はいっ、あたしも戦いたいです!」

「梨沙は後衛だから」

「いやっ、ちゃんと戦いたい! と、言うかそうしないとレベル差がいっぱいできちゃう。戦える場面では戦う!」

「ぐっ、わかった。じゃぁ次は梨沙が戦ってくれ」


 梨沙は十兵衛の護衛を受ける立場ではあるが、雇い主の娘でもある。上下関係としては梨沙の方が強いのだ。

 本来は梨沙が危険に晒されるのを止めるべきなのだがダンジョンに潜っている時点ですでにその前提は崩れ去っている。


 ならば梨沙がダンジョンで戦い、レベルアップしてしっかりと自分の身を守れる。そうなるのが望ましい。

 十兵衛は消極的賛成と言う意味で梨沙に戦闘の許可を出した。


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