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088.二十層までの道程・漆

「二十層か。チーム・アレクシオンのお陰で予定より大分早く着いたな」

「えぇ、彼らは強い。少なくとも今の私たちよりは……。十兵衛くんが本気を出せば違うと思いますけどね」


 二十層に入り、十兵衛は二十層の森林・湿原のフィールドを見て呟いた。茜は前衛なので十兵衛の横に立っている。そして当然ながらレオたちも前線に立っている。

 その前に居るのはタンクの最澄と陽斗である。和鎧と洋鎧と言う違いはあるものの、モンスターの攻撃を受けると言う役割は変わらない。最澄は飼い主に着いていく飼い犬のように陽斗に様々な質問を投げかけ、陽斗は実際に動いて見せながら最澄に教えている。


「じゃぁこういう場合はどう動けばいいんですか」

「まず優先順位を決めるんだ。絶対に護らなきゃいけない相手。例えばチーム・暁で言えば梨沙さんだ。チーム・暁の要は梨沙さんだろう? だったらタンクとして怪我一つさせてはいけない。もちろん梨沙さんも十分戦えるようだが、普通の治癒術士や魔法使いは近接では戦えないんだよ。だからタンクがしっかり護る必要がある。本来前衛も護らなきゃならないんだが、十兵衛くんと茜さんは強いからね。それほど気にしなくていい。あともっと直線で受けるんではなく、余裕を持って捌けるようになるといいね。受け流しってやつだ」

「くっ、それ苦手なんですよねぇ」

「努力で超えられるさ。少なくとも十兵衛くんにタイマンで勝つよりは余程楽だ」

「あははっ、それは一生涯叶いそうにないですね。それに比べれば今の悩みなんてちっぽけな物です」


 二人は良い関係で話し合っている。十兵衛を引き合いに出すのはどうかと思うがそれは黙って置く。

 十兵衛はタンクの話はできない。斥候と前衛がメインであり、タンクは畑違いなのだ。故に最澄にタンクの戦い方は教えられない。そういう意味では良い師なのではないか。レオの誘いに乗って良かったとそれだけでも思った。陽斗との出会いは最澄に良い成長を与えてくれるだろう。

 茜の道場でもタンクの戦い方などは教えて貰えない。だが歩法は基礎だ。どのジョブでも必須になる。それに強力な前衛との戦いを経験できる。護る者と書いてタンクと読む。そういう意味で茜の道場に通う意味は大きい。


「さて、行こうか。十兵衛くんたち。二十層は私たちももう攻略している。攻略情報は頭に入っているな? 情報と実戦は違うぞ。でもこのくらいの試練は君たちなら乗り越えられると信じている。仮令イレギュラーが起きたとしてもだ。私たちならやれる。それだけの実力がある。自信を持て。たった半年も経たずに二十層の大地を踏める探索者など他には居ない。君たちは先駆者なんだ。それだけの実力がある。故に人気があるんだ。実感しているだろう? 中層パーティでそれだけ視聴者がいる探索者は日本広しと言えどいないよ?」


 十兵衛は同時接続数を見た。百万を超えている。それだけの人数が十兵衛たちの探索を楽しみにして、大切な時間を削って見てくれているのだ。当然投げ銭も大量に入っている。額だけで相当な物だ。

 ちなみに聞いた所レオの配信でも十兵衛たちと合流してから接続数が跳ね上がったらしい。笑いが止まらない、とレオは話していた。


 :ついに二十層か。

 :早すぎだろ。

 :これボスクリアしたら下層探索者? この四月に登録したばかりのパーティが? 常識的に有りえんのだが。

 :常識を常にぶち壊していく。それが十兵衛くんクオリティ。

 :実際それだけのポテンシャルはあるからね。十兵衛くんは本気出せばソロでも下層へ行けるだけの実力があるし。

 :そうなんだよな。でも下層、深層へ行くにはやっぱ仲間が必要だと思って十兵衛くんは三人を鍛えてるんだろうな。

 :〈ガストン〉チーム・暁の配信はここでいいのかね。

 :まさかの世界一の探索者の降臨!?

 :伝説の探索者じゃねぇか。

 :四十八層を攻略しているのでは?

 :ってか時差は? 今あっち何時だ。

 :ってかAIの翻訳機能凄いな。ガストンが日本語を喋っているように感じられちゃうぜ。

 :〈ガストン〉チーム・暁の活躍はアメリカでもとても広まっている。とても興味深い。故に閲覧させて貰っている。邪魔するつもりはないのだよ。

 :ガストン様、こんにちは。チーム・暁の活躍がアメリカでも広がっていると聞き、一視聴者ですが嬉しいです。

 :ってか日本の誇りだよな。

 :まだ中層探索者なのに世界一の探索者に目を付けられる十兵衛くん。

 :さす十。

 :それ言っときゃいいと思ってるだろお前。

 :いやだってそうとしかいいようないじゃんよ。



 ◇ ◇



「ガストン・ガーランド?」

「えっ?」

「なんだって?」

「ほんとだ。コメントしてくれてる」


 十兵衛がコメントを見て居ると視聴者の中にガストン・ガーランドが居た。まさか、と思うが現実である。

 ガストン・ガーランド。世界一の探索者であり、深層で最も深い層を探索している誰もが認めるレジェンドだ。アメリカのNYダンジョンやワシントン・D.C.ダンジョンを潜っている筈だが、今は休暇なのだろうか。十兵衛たちの下層アタックへの配信を見ているらしい。


(世界一の探索者の前で無様な姿を見せられるか? 有り得ない)


 十兵衛はそう思った。そして他のメンバーたちも同じ気持ちのようだ。明らかに気合が入っている。今回のアタックで二十層を攻略し、必ずボスを倒す。ガストンが現れただけでこれだ。十兵衛は僥倖だと思った。


(きっと真叔父さんも見ているんだろうな)


 札幌にいる真には、下層へアタックする時は知らせろと言われていたので実際知らせていた。真は忍者であることを隠して探索者として攻略しているが、日本でも最前線に近い四十一層の攻略をしている。

 自衛隊の特殊部隊が四十二層で止まっているのだ。真たちは自衛隊の特殊部隊にコンタクトされ、共同で四十二層を攻略しようと誘われているのだと聞いた。


 つまり札幌ダンジョンでは日本では初の四十三層へ足を踏み入れる可能性が上がったのだ。それだけ真の実績が評価されていると言える。そうでなければ自衛隊は自衛隊内部で完結させているに違いない。

 だが自衛隊の特殊部隊ではどのダンジョンでも四十二層の攻略はできていない。日本にある八つのダンジョン全てが四十二層の壁に阻まれている。


(俺も負けて居られないな)


 十兵衛は小太郎を襲名したら探索者は続けられないだろう。それは何時だろうか。わからない。父、琢磨の胸先三寸である。だが下層探索者のうちに無理に襲名すると言う事はないだろう。おそらく深層に踏み入った時。その話があるはずだ。それが十兵衛が何歳の事かわからないが、四十代になるまで深層に踏み入れないと言う事は十兵衛としては有り得ない。むしろ二十代の内に、欲を言えば大学生のうちに深層探索者になってしまいたい。

 ちなみに二十代で深層探索者になった例は殆どない。二十代前半での深層への到達の例はない。つまり十兵衛は、十兵衛たちは日本記録を塗り替えようとしているのだ。


(日本の到達階層更新をしてみたいんだがな、どうなることか)


 十兵衛にはタイムリミットがある。風魔忍者の頭領がダンジョン探索の最前線に出てしまえば誰が指示を出すのか。多くの忍者たちの命を握っているのだ。故に琢磨も、静も探索者を引退し、風間家を纏めるに力を注いでいる。

 琢磨に体調の不安はない。しっかりと医師の診断も受けているし、母、静もしっかりと補佐している。風間家の現在の状態は盤石だ。


(さて、行こうか。今日の俺は強いぜ? どんな敵が来ても負ける気がしない)


 十兵衛は獰猛な猛獣のような笑みを浮かべた。



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