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076.蟻塚発見

「ハイジャイアントアントだ! 多いぞ」

「くそっ、近くにこれは巣があるぞ」

「ジャイアントアントの巣か。キラービーを思い出すな」

「見つけたら積極的に討伐するか、敵わないなら逃げろって言われてる相手だぞ。無駄口を叩くなっ」


 十七層。すでに四時間はそこでチーム・暁は戦い続けていた。戦果は上々、今日の上がりはかなりの値段になるだろう。だが戦場を移した先には多数のジャイアントアントが居た。八層で出会った物とは違う禍々しい気。明らかに上位種。更に三十を超える数。

 疲れが溜まっているチーム・暁では少し手に余る。


「火遁・〈火炎桜吹雪〉」


 十兵衛の火遁が撒き散らされる。ひらりひらりと桜色の火炎の塊がハイジャイアントアントに降り注ぎ、燃え上がる。それは木々に擬態していたトレントも同時に燃やし、更に隠れていた蔦の魔物も燃やした。


「燃えたろ?」

「何格好つけてるの、十兵衛ちゃん」

「いやだって、配信でちょっと格好いい事言えって言ったのは梨沙じゃないか」

「まぁそうだけどさぁ、どうなんそれ。格好いいの? 中学生じゃないんだよ?」

「うっ」


 ぐさっと梨沙の言葉の槍が十兵衛に刺さる。しかし最澄も胸を抑えた。おそらく流れ矢だ。十兵衛の「燃えたろ?」が格好いいと思ったのだろう。だが梨沙に中学生だと断じられてしまった。故に最澄も胸が痛んだのだ。


「まぁいいじゃないか。十兵衛くんが格好いいのは梨沙ちゃんに取っても好ましい事だろう?」

「いや、あたしが求める格好いい十兵衛ちゃんはこういう方向性じゃないよ?」

「でもコメント超盛り上がってるぞ?」


 :十兵衛くん格好いい!

 :きゃー! 素敵! 決め台詞!

 :中学生でもいいじゃない。格好いいのは格好いいんだよ!

 :俺もおっさんだけど格好いいと思ったぞ。

 :ってかハイジャイアントアントを一掃って。どんだけだよ。

 :バ火力。

 :これで最強の忍術じゃなくて通常忍術だっていうね。

 :魔法だったら上級魔法並の威力があるのに更っと無詠唱で放ってこの威力よ。


 梨沙もコメントを見たのか文句が言えなくなってしまっている。十兵衛のちょっと格好よくしてみよう作戦は視聴者には刺さったらしい。男はいくつになっても中学生の心を持っているのだ。

 と、言っても十兵衛たちはまだ大学生になったばかりであり、少し前までは高校生だったのだ。それこそ、格好いい俺の決め台詞! なんてのが中学生の頃や高校生の男子の間で流行った物である。

 あとは有名漫画やアニメ、ゲームの決め台詞などでどれが一番格好いいかなんて論争もされた。男子などそういうものだ。そしてたった半年、大学生になったからと言ってそのセンスが更新される訳がない。


「うぅ、視聴者人気超高いよ。でもこんなの十兵衛ちゃんじゃないよ」

「いや、俺は隠してただけでこういうの大好き人間だぞ?」

「むぅぅ、それは知らなかった。十兵衛ちゃん隠すのうますぎだよ」

「はっはっは、梨沙にも隠し通せてたってことは完璧な隠遁だな」


 十兵衛はそういいながら真剣な表情をした。それに反応して三人が即座に戦闘態勢に入る。この辺の切り替えがうまくなった。十七層も抜けようと思えば抜けられるだろう。だがもう少し彼らをここで鍛えて置きたい。魔の十七層などと言われているが、修行には最適だと思うのだ。


「疲れているとは思うが、ジャイアントアントの蟻塚、攻略するか? 撤退してもいいぞ」

「いや、あの数の斥候部隊はヤバイ。十七層で活動してる他のパーティに死人がでる。十兵衛がやれるって言うのならやったほうがいい」


 最澄が疲れているだろうに、他の探索者の心配をして声を上げる。


「そうね、私はまだやれるわ。ジャイアントアントは硬くて嫌いなんだけどね。刃筋をきちんと立てないと斬り裂けないわ」

「強敵だよね~。でも十兵衛ちゃんが行けるっていうなら行けるよ。なら行こうよ。他の人の為にもなるし、ギルドの評価ポイントもあがるよ~。二十層攻略したら十兵衛ちゃんA級認定されるかもよ。日本最速A級探索者の爆誕だよ」

「いや、そういう功績目的でやる気はないんだが……、まぁいいや、みんながやるっていうならやるか。相手は数百を超えるジャイアントアントだ。油断するなよ。間違えてもあの顎に食いちぎられるなんてことはないようにな」

「「了解」」

「わかったよ~」


 十兵衛はそう言い、ジャイアントアントたちの痕跡を元に蟻塚に向かって歩いていった。当然ながら道中にもジャイアントアントの群れが居て、それらは最澄たちに処理させた。



 ◇ ◇



「あれが蟻塚。大きいわね」

「キラービーの巣を思い出すね~」

「あの時は大変だった。十兵衛が居なきゃ絶対死んでたぞ」

「でも死ななかったでしょ。十兵衛ちゃんのお陰だよ」

「そうなんだが、梨沙ちゃんの力も大きいんだよ。障壁や結界、それに治癒魔法があるってだけで助かるんだ。ポーションもあるけれど、やっぱりそれだけじゃ不安だからな」


 十メートルを超える蟻塚が十兵衛たちの前に立ちふさがる。そして周囲には数十のジャイアントアントが巡回している。当然向こうも十兵衛たちに気付いている。

 だがあのジャイアントアントたちは防御重視なのか攻撃はしてこない。蟻塚に攻撃をしないのならば静観する。そういう態度を見せている。


「さて、十兵衛。やるって言うんだから策はあるんだろうな」


 最澄から疑念の目を向けられる。心外だ。やれると思ったから提案したのだ。正直十兵衛一人でもやれると思っている。しかし彼らに聞いたのは犠牲を出さない為だ。そしてメンバーたちはみんなやると言った。ならばやろう。

 そして十兵衛も策は幾らでもあった。何せ一人でも行けると判断しているのだ。ジャイアントアントは強敵ではあるが、十兵衛にとっては的でしかない。何十集まろうと、何百集まろうと、忍術の一撃で一掃できてしまう程度の敵なのだ。


 だが今回はパーティ戦だ。十兵衛だけでやっては勿体ない。むしろこの極限状態で最澄や茜、梨沙を鍛えるチャンスだと十兵衛はとらえていた。

 要するに、十兵衛は彼らにジャイアントアントの相手を押し付ける気満々なのである。


「とりあえずでかい一撃を俺が入れる。そうすると蟻の巣からわらわらと何百ものジャイアントアントが出てくる。それを殲滅する。殲滅すれば後は巣に潜り込んで近衛アントを倒してクイーンアントを倒す。な、簡単だろ?」

「簡単な訳あるか! どんだけ戦うんだよ」

「だから数百のジャイアントアントだって」


 蟻塚は十メートルほどだが、当然だがそれだけではない。地下深くまで蟻の巣は続いている。そしてその最奥にクイーンアントはいるのだ。

 クイーンビーのように巣を割れば出てくる相手ではない。こちらから赴かなくてはならないのだ。そしてクイーンアントを討伐しなければ結局どんどん卵を生まれてジャイアントアントの群れが形勢される。雑魚を幾ら倒しても意味がない。元凶を絶たないとダメなのだ。


「十兵衛くんが言うと簡単に聞こえるけどね……、ふぅ」


 茜は呆れたように十兵衛を見てため息をついた。


「十兵衛ちゃんができるっていうならできるんだよ! 頑張ろ? 十兵衛ちゃんはあたしたちの実力をちゃんと測った上でできるって期待してくれてるんだよ! それに応えなきゃ!」

「梨沙は偉いな。その通りだ」

「えへへっ、また褒められちゃった」

「じゃぁ俺がとりあえず上級忍術で一掃するから、その後はお前らが主体で戦ってくれ。適宜ピンチになったら助けるから安心して背中を任せてくれ」

「待て、上級忍術ってそれこの辺り一帯が更地になるんじゃ……」


 最澄が止めに入るが十兵衛は既に詠唱に入っている。上級忍術は溜めが必要なのだ。ちなみに空間忍術は特級忍術に該当するが、十兵衛は素養が高いので無詠唱で放つ事ができる。


「雷神よ、我が呼び声に応えよ。我が意に沿ってその御力を貸し給え。我名は風間十兵衛。雷神の加護を得し者。この名を持ってその力を奮え。雷遁・〈轟雷・天〉」


 十兵衛の雷の雨がパーティメンバーだけを避けて降り注ぐ。蟻塚を護っていたジャイアントアントは全て一掃され、魔石に変わる。そして巨大な蟻塚には全員が目を瞑らなければいけないほどの光と轟音と共に、極太の雷が落ち、地上にあった蟻塚は姿を消し、巨大な穴だけが残っていた。




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― 新着の感想 ―
こんばんは。 自分は草薙さんより八神派だったなぁ…。「月を見る度思い出せ!」とか好きでしたww
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