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007.初ダンジョン

 四月も中盤を過ぎた時に、十兵衛たちはダンジョンに入る予定に決まった。平日は皆大学の授業があるので、普通に土曜日だ。


「すごい人だな」

「そうね、こんなに居るのね、探索者って」


 シーカーギルドのダンジョンの入口はとても賑わっていた。当然ながら入ダンする為の手続きをしなければいけないが、それはパーティリーダーの梨沙のスマホをタッチするだけで手続きが完了される。


 ちなみに新宿ダンジョンの入口は大きな洞穴のような感じで、ギルドの建物の中に内蔵されているが、かなり異様な雰囲気を放っている。

 横三十メートル、縦三十メートルの歪な半球方の洞窟の入口がある感じだ。


 広い分ダンジョンに入るのにも多数の人数が並んでもそれほど困らないが、それでも今日ダンジョンに入ろうと思う人間がギルド内に多数居る。一体何百人居るのか。昼からや夕方から入る人間も居るので一日にどれだけの探索者がダンジョン探索をするのか予想もできなかった。


「新宿ダンジョンはいつもこんな感じだぜ、平日はもう少し少ないけどな」

「そうね、他のダンジョンは行ったことがないけれどこんな感じね」


 経験者の最澄と茜はこの光景が当たり前のように言っているが、初体験の十兵衛と梨沙には驚きの光景だ。

 だがこれが新宿ダンジョンなのだ。自衛隊や警察、そして民間の探索者が潜る日本最大のダンジョン。


 ダンジョンが生まれて三十年。既に攻略されたダンジョンと言うのも世界には存在するのだが、新宿ダンジョンは……と、言うか日本にある八つのダンジョンはどれもまだ攻略されていない。


 ダンジョンは攻略されるとダンジョンが消えてなくなる。だがダンジョン産業が進んだ今、ダンジョンは危険物ではあるが大事な鉱山としての役割も期待されている。

 日本の法律でもダンジョンを勝手に攻略、つまりダンジョンコアを壊す事は犯罪であり、更にかなりの重罪となる。これは講習会でも習ったことだ。講師が口をすっぱくして言っていた。


「まぁ俺たちはまだまだプロ層に行けるかどうかわからないレベルだ。気にしなくていいと思うぜ」

「それより梨沙ちゃんと十兵衛くんの装備凄くない? それどこで売っているの?」

「あ、梨沙と十兵衛って呼び捨てにしてください。戦闘の時にちゃんとかくんとかつけるとロスになるんで」


 十兵衛が茜にそう伝えると茜と最澄は微妙な表情をした。どうしたのかと思うと茜は小さく頷いて答えた。


「まだ初心者だと言うのになんかプロみたいな事言うのね。でもわかったわ」

「あぁ、俺もわかったぜ。と、言うか最澄って呼んでくれよな」

「うん、宜しく。ちなみに俺たちの装備は梨沙の父親が準備してくれた物で多分一品物だと思う。少なくとも北条ダンジョンギアのシリーズにはないものだから」


 梨沙の父親、北条氏康が準備してくれた装備はおそらくオートクチュールだ。十兵衛と梨沙の為だけに、北条ダンジョンギアの製品をより改良して作られている。


 十兵衛の籠手からは例えば尖った分銅が射出し、鋼糸がその分銅についているツールがある。コレは落とし穴などに落ちた際やフィールド型ダンジョンなどで移動にも使える強力なギアだ。もちろん攻撃にも使える。


 もちろん他のメーカーにもこういうギアはあるが、かゆいところにも手が届く範囲で十兵衛の忍者アーマーはしっかりと作られており、更にダンジョン素材も深層の物が使われている。


 当然娘の梨沙のローブやブーツなども最高の素材が使われているだろう。値段にすると幾らになるか正直検討もつかない。だが命の値段よりは安い。それだけは確かだ。


「北条ダンジョンギアの一点ものだって!? 幾らするんだよ」

「ってか梨沙ちゃんって北条グループの人だったのね。そうよね、北条さんだものね。でも北条って名字はそう珍しくないから気付かなかったわ。それなら納得ね。初心者なのに明らかに初心者じゃないギアだもの。深層探索者と言われても納得できるレベルの装備ね」


 最澄と茜は驚くが、幼い頃から北条家に入り浸っていた十兵衛は感覚が麻痺しているし、北条グループ総裁の娘である梨沙はこのくらいは当然だと思っている。当然最澄や茜とは金銭感覚が違うと言うのは二人とも理解しているがそれですれ違いが発生しないと言う訳ではない。


「まぁそんな訳でいいギアを作って貰ったんですよ。これ以上は秘密です……と、言うか詳しくは俺もわからないんですよね」

「あたしも一応説明されたけど詳しくはわからないなぁ。いい物だとは言われたけど」

「あなたたちねぇ……、自分の装備でしょ?」


 茜にはかなり微妙な視線を貰ってしまったが、パーティメンバーの装備が良いのは良い事の筈だ。茜と最澄にも慣れて貰うしかない。


「それに最澄くんや茜さんの装備もしっかりしてるじゃないですか。結構高級モデルですよね」

「う~ん、俺のは高級モデルっていうか中堅モデルだな。汎用鎧だし。ただ武者鎧なところは気に入ってる。これ買うのに二年掛けたんだぜ」

「私も業物の薙刀を買うまでが大変だったわね。当然親にお願いできる値段じゃないもの」


 最澄は武者鎧に盾と短槍。茜は小袖に緋袴、胸当てに薙刀を持っているが、腰には太刀と脇差しを刺している。籠手も着けている。

 どれも一度見せて貰った事があるので信頼性や値段なども調べたがかなり良い商品な事は十兵衛も知っていた。


 十兵衛と梨沙と比べてはならないが、最澄も茜も良い装備をしているのだ。

 少なくとも中層までは今の装備のままで行ける、と言うのが十兵衛の判断だった。


「とりあえず行きましょう。陣形は俺が斥候、その後ろに最澄。そして梨沙。茜さんは梨沙を守る感じで殿を務めてもらえますか」

「そうね、でも私も戦いたいから前衛はたまにやらせてね」

「俺も、戦いは経験したい。連携はすぐにはできないと思うが全部十兵衛にまかせてしまうと結局寄生しているみたいになってしまうからな。交代で戦おうぜ」

「わかった。じゃぁ行こうか」

「わ~い!」


 号令を掛けると梨沙が喜びの声を上げながらダンジョンに入る。梨沙が登録しているドローンが梨沙の後ろを追跡するように飛んでいる。


 :新人ktkr。

 :お、新人? いや、装備が新人じゃなくね。

 :でも今日初配信だぞ。今まで配信してなかったならわかるけど、雰囲気は初めての探索って感じじゃね。陣形とかまだ模索中っぽいし。


 ダンジョンに入るとARで配信に対してのコメントが付く。新人を好んで配信を見る層が居るとは聞いては居たが、十兵衛はもう人が集まっている事に驚いていた。なにせまだダンジョンに入って配信を始めて五分も経っていない。


 そして休日の新宿ダンジョンは人が多い。人が多いと言う事は既に一階層の敵などほとんど見敵必殺とばかりに蹂躙されているのだ。

 つまり洞窟型のダンジョンの中を散歩しているのと変わらない。


 ちなみに新宿ダンジョンは五層までは半径五kmの円形になっていることがマップによってわかっている。

 もしかしたら隠し扉などあるかもしれないが、基本的にマッピングはされているのだ。そして十兵衛は当然の如く十階層までのマップはギルドで購入している。安全と金を比べれば金のが安い。そして軍資金は氏康から預かっている。


 右耳に付けられたウェアラブルデバイスでパーティ内での通信はできるし、ARでマップやコメントも見ることができる。父、琢磨からは便利な世の中になったものだと言われるがARデバイスがあって当然の世代である十兵衛にはわからない話だった。


「モンスター出ないね~」

「少なくとも一階層の標準ルートはもう敵が居ないんじゃないかな」

「そうだね。みんなマップ買って最短ルートで行っているだろうし、モンスターに出会う可能性はほぼないと思ったほうがいいな」


 梨沙が愚痴るがこればかりは仕方がない。二階層、三階層に行けばまた違うだろう。とりあえず今日の目標は五階層である。もしくは厳しいと思った時点で引き返すと合意している。

 一階層は散歩気分で二時間ほどで攻略が終わり、結局エンカウントしないまま十兵衛たちは二階層に入った。



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