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047.死闘・ブラックゴブリン・ジェネラル

「ブラックゴブリン・ジェネラル。なぜこんなところに……」


 レオが相手を視認してついそう呟いた。ゴブリンキングの傍に侍るのはブラックゴブリン・ジェネラルであった。ゴブリンの上位種はハイゴブリンであるが、更に上にブラックゴブリンと言うのが居る。それのジェネラル種がゴブリンキングについているのだ。

 なるほど、キングと同等の覇気があるのにも納得だ。むしろなぜキングに従っているのか。キングを打ち倒して集落を乗っ取ってもおかしくないだけの迫力がある。


 だがブラックゴブリン・ジェネラルはそうせず、ゴブリンキングの傍に控えている。つまりゴブリンキングに従っているのだ。

 それがゴブリンジェネラルとキングの差なのか、そこまでは十兵衛はわからない。だがゴブリンキング並の敵がもう一体居る。それだけは事実だ。


「レオ先輩、俺がブラックゴブリン・ジェネラルの相手をします。レオ先輩たちはゴブリンキングの相手をしてください」

「いいのかい、任せちまって」

「倒す、とまでは言い切りませんが、足を止めるくらいはできます。もちろん倒せるなら倒します」

「その意気だ。じゃぁ任せたよ。十兵衛は言った事は守る男だと私は思っている」

「はいっ」


 十兵衛はブラックゴブリン・ジェネラルに手裏剣を投げ、注意を引いた。そしてお前の相手は俺だとばかりに離れていく。

 ブラックゴブリン・ジェネラルも誘いに乗って十兵衛の方向に走ってくる。予定通りだ。


 十兵衛が誘った場所はすでに他のパーティがゴブリンたちを殲滅した場であり、魔石が落ちている以外は特に誰も居ない。むしろ加勢される方が困る。十兵衛はタイマンでこそ、もしくは部隊を率いた状態でこそ本領を発揮できるジョブなのだ。

 今回はブラックゴブリン・ジェネラルとのタイマンである。覇気は強い。強者の迫力はある。だが負ける気はしない。そしてその勘は外れた事がなかった。


(ならば勝てる!)


 そう信じ、忍者刀を構える。ブラックゴブリン・ジェネラルは柳葉刀を構えている。ちなみにゴブリンキングは大剣だったのでレオと大剣で打ち合っているだろう。

 ブラックゴブリン・ジェネラルが巨大な柳葉刀を振り下ろす。それを脇に避け、懐に入ろうとするがブラックゴブリン・ジェネラルもバックステップで逃げられる。


(一度受けて見るか)


 再度ブラックゴブリン・ジェネラルが振りかぶって振り下ろしをしてくる。それを二本の忍者刀を交差して受ける。


「うぐっ、重い」


 速く、そして鋭く、さらに重い。これは忍者刀一本では捌ききれない。いや、きちんと受け流せれば良いが、失敗すれば腕の一本や二本飛ばされてしまう。この速さ、重さの一撃を受け流すのは至難の業だ。ミスは許されない。

 だが十兵衛は熟した。柳葉刀の一撃を逸らし、受け流し、懐に入ろうとする。だがブラックゴブリン・ジェネラルは懐に入らせるつもりはないようで、明らかに警戒している。


「火遁・〈劫火球〉」


 轟と、忍術がブラックゴブリン・ジェネラルに直撃する。至近距離での劫火球は避けられる物ではない。


「グギャァァァッ!」


 ブラックゴブリン・ジェネラルは叫びながら柳葉刀をぶんぶんと振り回し、忍術に耐えた。


(この程度じゃ倒せないか。レベルアップして威力も上がったんだけどな)


 そう思いながらブラックゴブリン・ジェネラルとの死闘を続ける。

 ついに受け流しが連続で成功し、ブラックゴブリン・ジェネラルに隙が現れた。十兵衛はその小さな隙を見逃さず、首を狙うと見せかけて鎧の隙間の太ももに忍者刀を突きたて、更に抉る。

 即座に反撃が来るのは予想していたので、ブラックゴブリン・ジェネラルの腹を蹴って距離を取る。


 狙い通り太ももの動脈を切り裂き、ブラックゴブリン・ジェネラルの太ももからはドクドクと大量の赤黒い血が流れている。だがブラックゴブリン・ジェネラルの戦意は衰えない。

 このまま出血が続けば死ぬ。だがその前に十兵衛を倒す。そういう迫力があった。


(手負いの獣は強い。気を引き締めないとな。奥の手を使うか)


 十兵衛はブラックゴブリン・ジェネラルの本気の殺意の波動を浴びて、奥の手を切ることに決めた。

 ブラックゴブリン・ジェネラルは突進し、大きく柳葉刀を振りかぶって十兵衛を殺しにくる。流石に本気で振りかぶられると受け流せない。それほど重い一撃なのだ。避ける以外の選択肢はない。

 幾度もの強烈な攻勢を紙一重で避け続ける。そして小さく腕に傷をカウンターでつけていく。

 スタミナが多いブラックゴブリン・ジェネラルも常に攻撃を続けられる訳がない。息が切れた。その瞬間、十兵衛は切り札を切った。


「空間忍術・〈次元歪曲〉」


 ブラックゴブリン・ジェネラルはそのヤバさに気付いたようで即座に逃げを打った。右腕と首を狙ったのだが狙いは逸れ、首筋の一部と左肩を抉るに留まった。だが左腕はもう使い物にならない。首筋も動脈を捕らえ、大きく出血している。

 しかし十兵衛は油断していなかった。ブラックゴブリン・ジェネラルは全く十兵衛を倒すことを諦めていないのが瞳の強さから読み取れたからだ。

 モンスターはトドメを刺すまで油断してはならない。これは探索者になったら必ず言われる格言だ。


「さぁ、決着だ」

「グギャァァァッ」


 日本語が通じた訳ではないだろう。だが決着しようという意思はお互いが通じ合った気がした。

 ブラックゴブリン・ジェネラルは渾身の一撃を右腕で繰り出し、十兵衛はそれを紙一重で避ける。そして切り札の二枚目を切った。


「空間忍術・〈次元断裂〉」


 〈次元断裂〉は強力な結果を齎した。ブラックゴブリン・ジェネラルの体は袈裟に別れ、ずり落ちる。目に光がなくなり、ブラックゴブリン・ジェネラルの命は消え去った。そして塵になり、柳葉刀と見たことのない純度の大きな魔石。そしてスキルオーブが一つ、ドロップしていた。


「これは俺の物でいいんだよな」


 基本的にレイドは山分けが基本だが、強敵などを倒した場合のドロップはそのパーティの物になる。単騎でブラックゴブリン・ジェネラルを倒した十兵衛はブラックゴブリン・ジェネラルのドロップの取得権利があるのだ。

 スキルオーブに触れてみるとスキル〈剣豪〉であった。スキル〈剣術〉の上位互換であり、それを夢見る剣士は多い。


 売れば数千万円は固い。億にも届きうるかも知れない。だが十兵衛は売るつもりはなかった。茜に使わせるのだ。そうすれば茜の戦闘力は跳ね上がる。チーム・暁の為には金銭にするよりもそれが一番良い筈だ。

 実際最澄は火魔法をうまく扱えるようになって戦力としてかなり強化された。短槍術は持っているが、短槍だけでは攻撃力が足らなかったのだ。


「よし、レオ先輩はどうかな」


 まだ戦いは終わった訳ではない。ゴブリンキングを倒して初めて勝利になるのだ。

 全体で見ると通常のゴブリンたちは殆ど掃討できている。取り逃がしも殆どないだろう。取り逃がしがあったとしても、それは普通のゴブリンと一緒だ。九層探索者ならばエンカウントしても倒せば良いだけの話であり、理不尽な暴力の権化であるブラックゴブリン・ジェネラルやゴブリンキングとは訳が違う。


 十兵衛がゴブリンキングとの戦闘の様子を見に行くと戦闘は終了間際だった。

 無傷とはいかないが、レオはしっかりと打ち合っており、ゴブリンキングには大きな傷が幾つもついている。


(これは手助けは要らないかな)


 何本も矢が刺さり、焼け爛れている部分もあり、左腕も切断されている。後はトドメを刺すだけだ。レオに限って心配はない。実際慎重にトドメを刺す機会を伺っている。変に横槍を入れてしまうとチーム・アレクシオンの連携が崩れてしまう。

 そう十兵衛は判断し、静観の構えを取った。




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― 新着の感想 ―
どこかの忍術使うサラリーマンは空間の断絶を相手の殺意を読んで避けてたなぁ
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