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043.チーム・アレクシオンの圧倒

「さぁ、とりあえず今日は九階層まで一気に進む。魔の八階層なんて呼ばれているが今更インセクト系モンスターを倒せない雑魚はこの中にはいないよな?」


 レオが総勢五十を超えるメンバーに声を掛ける。十兵衛が見回すと全員が覚悟の決まった表情をしていた。誰もゴブリンキング討伐を疑っていない。自分の力を疑っていない。

 それぞれプロ探索者として身を立てている自信が漲っている。


「じゃぁ行くぞ。着いてこれないなんて戯言は聞かないからな」


 レオはそう言って先陣を切る。

 ちなみに配信は自由となっているので、今回は十兵衛のアカウントで配信が開始されている。十兵衛のアカウントの収益は半分はパーティ口座に、残りは山分けになっているので最澄と茜も、ゴブリンキングやジェネラルと戦うであろう十兵衛のアカウントで配信すべきだと主張した。


 :おいおい、ゴブリンキング討伐戦に十一層のチーム・暁が選抜されてるぜ

 :他のパーティは中層後半攻略組だろ。異色すぎだろ。

 :それだけ期待されてるってことだよ。俺のパーティ中層攻略しているけど声すら掛からなかったもん。

 :マジ協会も期待してるんだな。専属受付嬢いいなぁ。

 :それな。十一層で専属受付嬢とか普通ないから。

 :やっぱ十兵衛マジックなんだよなぁ。

 :ゴブリンジェネラルやキングとの戦いが間近で見られるとかそうそうないからな。ありがてぇ。

 :低層探索者です。マジキング怖いんで早く討伐してください。

 :お、低層探索者来た。間違っても十兵衛くんを見本にしちゃダメだぞ。じゃなきゃ死ぬぞ。

 :マジそれな。真似しようとしてもできないけどな。

 :体術とかレベル倍なんじゃないってくらい速いからな。中途半端なレベルの犯罪者とか余裕でワンパンでしょ。

 :ってか実際初心者殺しを倒したんだよなぁ。一桁階層レベルで。


「俺たちも行くぞ。遅れないようにな」

「あぁ、わかった」

「えぇ、みんなの邪魔にだけはなりたくないわ」

「頑張るよ! 十兵衛ちゃん」


 チーム・暁はチーム・アレクシオンと近い場所を指示されている。もちろん道中の露払いも期待されているし、きたるゴブリンキング戦での活躍も期待されての抜擢だ。

 レオは私情で後輩だからと言って贔屓はしない人だ。そのくらいはわかる。実際レオは十兵衛たちの配信を見て、それに耐えうると信じて誘ってくれたのだ。その期待には応えなければならない……と、十兵衛は考えている。


 それは梨沙も、最澄も茜も同じだろう。

 レオたち五人は先陣を切り、どんどんとゴブリンやコボルトのエンカウントを処理している。レオの大剣は一撃で数体のゴブリンやコボルトの胴体を泣き別れにされ、後衛の弓士が取りこぼしを撃ち抜いている。


(あの後衛の動きいいな、最澄の参考になりそうだ)


「最澄」

「ん、なんだ?」

「チーム・アレクシオンの後衛の弓士居るだろう? アレが火魔法でできるようになってくれ。そうすれば俺が随分助かる」

「十兵衛の動きを見切ってフレンドリーファイアしないようにしろってことだよな。高い壁だが期待を裏切らないようにさせて貰うぜ」

「あぁ、頼むぜ。いい見本だと思う。じっくり見て勉強させて貰え」


 実際レオがブンと大剣を振り抜き、その脇などから矢が飛び出ているのだ。顔の横を掠めることもある。精密な射撃に惚れ惚れとする。

 十兵衛は三人の動きを見ながら手裏剣で同じような事をしているが、弓でそれはできない。弓も一応習っているので使う事ができるが、同じレベルで精密射撃ができるかと言えば否だ。

 それほど、レオが信頼するパーティメンバーは強く、且つ安定している。


「六階層、いや、八階層まではチーム・アレクシオンだけで問題なさそうだな」

「あぁ、俺等はついていけばいいだけって感じだな。安定感が違う」

「私たちもあんな連携ができるようにならないといけないのね」

「あたしも頑張らなきゃ!」

「最澄はまず俺じゃなくて茜の援護に徹してくれればいい。俺は一人でもなんとかなるからな」

「そうだな、十兵衛の動きについていくのはちょっと難しい。十兵衛の動きは三次元的過ぎてついてけないんだよな」

「まぁそのうちできるようになるさ。下層に降りるまでに出来るようになっててくれればいい」


 十兵衛は最澄にそう指示を出し、チーム・アレクシオンの良いところをじっと見つめていた。

 タンクがしっかりと防御し、アタッカーのレオは振り回しているだけのように見えるがしっかりとした剣術を学んだのがみて取れる。そしてゴブリンやコボルトは大剣の一撃に対応できていない。おそらく中層に出てくるハイゴブリンタンクなども盾ごと倒してしまうだろう。それほどの攻撃力を感じた。


(もしレオ先輩が敵対したら……)


 ついそんな事を考えてしまう。レオが敵対することは通常有り得ないが、レオ並の実力者が十兵衛たちを狙う事はあり得るのだ。

 自分ならばこう戦う、こう対処する。この忍術を使う。十兵衛の脳は走りながらフルで働いていた。



 ◇ ◇



「もう九階層だなんて、マジ早いな」

「一瞬だったな。流石アレクシオン」


 他のパーティたちは殆ど戦っていない。精々八階層で多少の戦闘があったくらいで、七階層まではアレクシオンの独壇場だった。十兵衛のフォローも必要がなさそうだったので観察に徹した。

 あれほどの実力が有っても十八階層を主戦場としているのだ。ならば三十階層や四十階層を主戦場としている者たちはどれほどの実力者か。そいつらから梨沙を守りきれるのか。


(ダンジョン探索者も奥が深いな)


 幾度かのレベルアップをして十兵衛も強くなっている。だが探索者をしていたと言う父親や叔父に勝てない理由がわかった気がした。

 彼らは深層探索者であるが、勝てないのも当然だ。地上でどれだけ修行してもレベルアップの恩恵に預かっていない十兵衛が勝てる筈がない。

 ある程度レベルアップしたからこそわかった。父は十兵衛と稽古する時は手を抜いていたのだ。そうでなければ十兵衛を殺してしまうから。


「さて、今日はもう歩き疲れただろう。ゴブリンキングの集落の位置はわかっている。全員休んでしっかりと準備を整えて明日の集落レイドに挑もう!」


 レオが号令を掛けると全員が従う。それだけのカリスマがある。


(真似できないな)


 レオと一対一で戦えば勝てるだろう。そう思う。小回りが効き、懐に入りさえすれば勝てると思う。だがレオはまだ本気を見せていない。

 中層探索者の中でも上位に入るレオが隠し玉を持っていない筈がない。そして低層を探索するのにそれらは使う必要がないのだ。

 大剣を振るうだけで防御を固めたゴブリンやコボルトはグシャリと潰れるか胴と首が離れる。今日見たレオの実力など一端でしかない。


(空間忍術での初見殺しなら殺せると思うけどな。まぁ当然やらないけど)


 そう思いながら、十兵衛は梨沙に結界を張る事を指示し、寝袋を用意する。

 レイドだからと言って他の探索者全員を信じられる訳ではない。もし死人が出ても協会が責任を取ってくれる訳でもなければ、死人は生き返らない。

 十兵衛はこんなところで躓くつもりも、パーティメンバーを失うつもりはなかった。故にしっかりと梨沙の結界だけでなく結界石を使う。


「よぅ、よくついてこれたな。後八階層と九階層で手裏剣で援護してくれただろう? かなり助かった。ありがとう。やっぱりフィールドタイプの階層はどうしても索敵が甘くなる。それを十兵衛たちはしっかりフォローしてくれた。おかげでかなり戦いやすかったし、他のパーティの戦力をしっかりと残せた。ありがとう」

「レオ先輩。むしろ中層探索者の強さを間近で見させて貰って良かったと思っています。こちらこそ感謝します」

「ははっ、まぁ上には上が居るものだ。私たちも中層で終わるつもりはない。下層に、そしていずれは深層に辿り着くつもりだ。それこそ自衛隊の特殊部隊と肩を並べられるようになりたいな」


 レオはそう言い残し、十兵衛たちから離れて言った。他のパーティの慰撫もするのだろう。そうすれば士気が高くなり、ゴブリンキング戦を有利に進められる事ができる。

 レオは天性でそれをやっているのか計算でやっているのかわからないが、十兵衛たちが活躍すればレオの役割を十兵衛がやらなければいけない時も来得るのだ。レオの動きを一挙手一投足見て学び、自身がその番になった時に同じように全体の指揮を取れるようになれるようにならない。

 十兵衛は自分はまだまだ甘いなと思いながら、寝袋に入った。


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