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040.レイドのお誘い

 :今日の配信も楽しかったな。

 :あぁ、十兵衛くんが後ろで見てたから三人がどんどん強くなっていくのがわかって良かった。

 :それに十兵衛くん無双も見れたしな。やっぱ十兵衛くんアカウントが最強なんよ。

 :同接続五十万とかだもんな。すげぇ。

 :もう登録者は二百万超えたんだろ。三百万に迫ってるよな。

 :いや、ほんと。Dチューブの収益だけで食ってけるだろ。

 :それは間違いないな。ただポーションとか普通に使ってるから探索で黒字かどうかは怪しいよな。

 :装備とか高いからなー。数百万数千万はざらの世界だからな。探索者は金もめっちゃ稼げるけどめっちゃ使うからな。

 :そのおかげで経済回ってるんよ。マジで。

 :まぁ電力とかも魔石発電のおかげで日本はエネルギーを他国に依存しなくて良くなったからな。マジ魔石発電発明した会社は神。

 :それが日本企業ってのが凄いよな。

 :09年からマジでダンジョンへの対応が世界で変わったもんな


「おかえりなさいませ、チーム・暁の皆さん。今日も問題なさそうでしたね。十一階層で躓く探索者は多いのでちょっと心配していたんですが杞憂でした」

「ありがとう、如月さん。あ、これ今日の分のドロップと魔石です」

「全部売却でいいですか?」

「えぇ、半分はパーティ口座に。残りは山分けでお願いします」

「畏まりました」


 如月は人気受付嬢なのだが、チーム・暁の専属受付嬢になったらしい。専属と言ってもチーム・暁だけを相手すれば良い訳ではないが、チーム・暁が居る場合は最優先で相手をしてくれる。それだけ十兵衛たちがギルドに注目されていると言う証左だ。

 如月は当たりも柔らかく、仕事が早いので彼女が専属受付嬢になってくれたことに十兵衛は感謝している。即座に入金の手続きを終え、ライセンスを返してくれる。


「そういえばご相談があるんですが……」

「なんでしょう?」


 パーティリーダーは梨沙の筈だが如月は十兵衛に話しかけるようになっている。だが最終決定権は当然護衛対象の梨沙の決定が必要だ。そして十兵衛は梨沙を危険に晒すつもりはあまりなかった。

 今日の修行も危険があれば即座に助けに入った。だがレベルの上がった梨沙はきちんと対処できていた。やはりレベルアップの恩恵と言うのは大きいのでこれからどんどんレベルアップして欲しいと思っている。


「この前ゴブリンキングの情報を頂いたじゃないですか。それでゴブリンキング討伐レイドが組まれる事になったんです。それに参加頂けませんか」

「あ~、それは詳しく聞かないと答えられないですね」

「当然です。ちゃんと説明させて頂きますよ。まずゴブリンキング討伐レイドは中層以上に潜られているパーティを大体十から二十パーティ招集します。今回のゴブリンキングは発見が早かった為に集落もそれほど大きく無いことが協会の指名斥候に頼んで確認済みです。規模はおおよそ三百。キングが一体、ジェネラルが二体から三体。そしてリーダーがおおよそ三十体。今回の例は十から十二パーティくらいに参加して貰うつもりです。そのうちの一つの候補にチーム・暁が入っています。正直十兵衛さんのレベルは頭一つ抜けているので参加してくれると有り難いのですが……」


 如月は資料と共に説明をしっかりしてくれた。極秘資料とかではないので普通に端末に送られてくる。映像もあるようだ。協会指定の斥候とは仲良くなれそうだと十兵衛は思った。

 なにせキングは探知能力も高い。その探知能力を掻い潜ってゴブリンの集落を探索し、相手の数まで把握するのだ。それこそ諜報を得意とする忍者の仕事である。


「どうする、梨沙」

「う~ん、経験としてやってみてもいいんじゃないかなぁ。あたしらって他のパーティと組んだ経験がないでしょ。で、今回はレイドだからまた違うけれど、そういう経験って必要だと思うんだよね。それにちゃんとギルドは死人が出ないように戦力を用意する筈なんだよね。余程のイレギュラーがない限り問題ないと思う。それに今九層とかを潜ってる子たちが襲われたら死んじゃうじゃん? じゃぁ早く対処しなきゃって思うんだよね」

「梨沙がそう言うなら……あり、か」

「本当ですか!?」


 十兵衛が小さく呟くとガバッと如月が身を乗り出してきた。


「今回なかなかいいパーティが集まらなくて困っていたんです。もちろん戦力は十分に準備致します。決行は来週末を予定しています。もう七パーティには承諾を頂いているのであと五パーティ必要だったんですよ。上からせっつかれちゃって、困ってたんですよね。チーム・暁の皆さんが参加してくれるなら戦力としてもかなり頼りになるので、本当助かります」


 如月はかなり困っていたようだ。普段世話になっている如月が困っているのだ。助けるのは吝かではない。それに他のパーティとの連携訓練にはもってこいである。

 他のメンバーだとキングの相手は厳しいかも知れないが、必ず必殺のパーティが居るはずだ。十兵衛たちが相手するのは強くてジェネラルで、キングを倒すパーティは別にいるのだろう。

 その予測を言うと如月はちゃんと頷いてくれた。


「チーム・アレクシオンの皆さんが参加してくれることになっています」

「レオ先輩のとこじゃん」

「マジか」

「レオ先輩には世話になっているので、それこそ断りづらいわね」


 如月がレオのチーム名を出した事で最澄たちも参加する気になったようだ。この流れは十兵衛は止められない。明確に断るだけの理由もないのだ。

 梨沙の言い分も最澄や茜の言い分もわかるだけに断ると言う今更翻すと言う選択肢はなくなった。最悪は梨沙の命だけは十兵衛が命を賭けて守ると心に決めた。



 ◇ ◇



「梨沙、良かったのか」

「うん? 何が?」


 帰りの車の中で十兵衛は梨沙に問いかけた。もちろんゴブリンキングの話だ。気配察知で遠くから気配が察知できるほどの強力な威圧感があった。そしてそれからまだそれほど十兵衛たちはレベルアップできていない。

 ゴブリンキングと梨沙たちチーム・暁の実力の差は明白だ。


「わかってるだろ。ゴブリンキングの話だ」

「うん、そうだね。ごめんね、ちょっと意地悪しちゃった。でもね、やっぱり探索者を続けて行くなら一パーティだけでずっとやっていく訳には行かないでしょ。どこかで他のパーティと一緒に探索することもあるだろうし、今回見たいなレイドもある。中層でもオークキングの集落があって、下層のパーティがオークキングの討伐レイドがあるって言うじゃない。だからゴブリンキングは一番弱い相手なの。その一番弱い相手にも勝てないんじゃチーム・暁に先はないわ。そういう意味では危険はあるけれどいずれ通る道なんだから一番弱い相手も倒せないでどうするの? って思うのよね。だから十兵衛ちゃんには悪いんだけどやるって言ったの」

「ちゃんと考えてたんだな」


 梨沙の言葉を聞いてついポロッと溢してしまった。


「ひど~い、十兵衛ちゃん。これでも勉強もできるし、頭もいいんだよ!」

「知ってる。梨沙の勉強についていく為に大学受験は酷い目にあったからな」

「うん、でも十兵衛ちゃんがそれだけの努力をしてくれて一緒の大学に入学してくれたのは凄く嬉しいんだよ。改めてありがとうね、十兵衛ちゃん」

「まぁ落ちてたらバカ丸出しだけどな。受かって良かったよ」

「ふふふっ、もし落ちてたらお父様にお願いして合格にしちゃってたかも」


 梨沙が怖いことを言った。


「おいおい、ダメだろ。そういう権力の使い方は。お館様も清廉潔白とは言えないが今はマスコミがうるさい。北条グループ全体が炎上するぞ」

「うん、わかってる。そのくらい十兵衛ちゃんには同じ大学に入って欲しかったって話」

「だから入試で自分のじゃなくて俺の受験番号が見つかった時に泣いたのか」

「もうっ、あの時のことは言わないでってばぁ。恥ずかしいから! でもそうだね。十兵衛ちゃんと一緒の大学に通えるんだって思ったら自然と涙が出ちゃった」


 梨沙が泣いた時はわんわん泣く感じではなく、十兵衛の受験番号を真剣に探し、見つかった時に梨沙は静かに顔を上げた。そしてその時梨沙の美しい頬に涙がはらりと自然に一筋流れた。それを十兵衛は美しく思った。

 なんて美しく泣く子なんだろうと。こんな面が梨沙にあったのかと。その心は十兵衛は一生言葉にしないことに決めている。


「まぁレイドに参加することは決まったんだし、レオ先輩と言う頼れる先輩もいるんだから頑張ろう」

「うん、頑張ろう。そして皆で生きて帰って来よう!」

「おう!」


 十兵衛と梨沙は拳をコツンとぶつけ合った。l



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