004.顔合わせ
「あ~、橘最澄だ。職業はタンクで短槍を使う。高校時代から潜ってたんだが友人たちが地方の大学にいっちゃったんでな。ソロになってどこかのパーティに入ろうと思って居た時に北条さんから誘われたんだ。二年少しの経験があってランクはD、最高到達階層は五階層だ」
百八十cmを超える大柄なイケメンが自己紹介を始める。
十兵衛たちが顔合わせに選んだのはちょっとおしゃれな居酒屋だ。だが全員成人ではあるがまだ二十歳になっていないので飲酒はNGだ。成人が十八歳なのだから飲酒喫煙も十八で良いと思うのだがその辺は緩和されないらしい。
ただ出てくる料理は普通に美味しい。唐揚げやエビの素揚げなど、酒が飲める人なら肴としてちょうど良いだろうと思う。他にもシーザーサラダのドレッシングが美味しく、女性にも人気なのが頷ける。
「望月茜よ。大学に入って探索者をしていたんだけれど前のパーティが仲間割れしちゃってね。それで新しいパーティを探していたら梨沙ちゃんに誘われたの。可愛い後輩の誘いだしちょうど良いかなと思ってお試しのつもりで入るわ。最高到達階層は六階層よ」
ポニーテールの凛とした美人と言う感じの茜はしっかりと背筋が伸びている。
「こら、見蕩れない」
「見蕩れてないよ」
隣の梨沙に肘で突っつかれる。別に見蕩れていない。ただ佇まいからして実力があるんだろうなぁと思っていただけだ。それだけの雰囲気が茜にはある。
「最後になるしみんな知っていると思うけれど北条梨沙よ。探索者はこれから始めるところ。でもプリマヴェーラで回復魔法と付与魔法、結界魔法が使えるわ」
「凄いよな。回復魔法だけでもレアなのに付与に結界まで使えるとか万能かよ」
「うん、私も初めて聞いた時は何言っているのこの子って思ったもの。でも実演されてしまっては信じざるを得ないもんね」
梨沙がエビの素揚げをポリポリ食べながら烏龍茶を飲む。ここに集まっているメンバーは全員梨沙が集めて来たメンバーだ。当然全員梨沙の事は知っている。
実際は梨沙はレオに相談してレオを介して二人を紹介されたらしい。二人もレオの事は知っていてレオが言うならと梨沙とパーティを組むことを了承したと言う流れだ。
そして梨沙は親の命令で十兵衛と言う護衛をつける事になった。つまり十兵衛だけ皆に知られてないのである。
「それにしても忍者って聞いたことないぞ。忍術って何ができるんだ」
「う~ん、空蝉の術とか火遁の術とかは使えるよ」
「おいおい、マジかよ。じゃぁ斥候兼魔法使いって思っていいのか」
「大体そんな感じの認識で間違ってないと思う。実際に一緒に潜って確かめて見てよ」
最澄は十兵衛の忍者と言うジョブと忍術と言うスキルに対して懐疑的であるようだが、こればかりは見て貰わなければ意味がない。
そして訓練場やダンジョンの中でない限り忍術を実践する訳にも行かない。居酒屋などで見せられる簡単な忍術などないのだ。
「あ~、試しに気配隠蔽とか使ってみようか」
「うおっ、マジそこにいるのかどうかわからん。すげぇ」
「ほんと、凄いわね!」
ジョブ忍者は当然の如く〈気配察知〉や〈気配隠蔽〉がスキルとして使える。後は〈危険察知〉などもある。それらはトラップなどにも使えるらしい。こちらは実際に使ってみないとわからないが、ダンジョン五階層を超えないとトラップなどは出てこないのでそこまで行かないと使わないスキルだ。
「あ~、斬るの試すの止めてくれない、茜さん」
「茜でいいわよ。と、言うかそれを感じて避けたのが凄いんだけど」
茜から殺気が飛んできて、斬られる感触があった。もちろん即座に避けるが避けなければ首が落ちる錯覚に陥っただろう。
殺気を飛ばすだけで相手に死んだと誤認させるほどの実力者だと言うのはわかったが、十兵衛の実力を試す為にしてはやり方が物騒すぎる。十兵衛はそこに苦言を呈したが茜は全く気にしないようにさらっと流した。
「と、言うかある程度以下の実力者だと斬られた事すら気付かないのよ。それに気付けるってだけで凄い事だわ。これだけで少なくとも背中は預けられると思ったわ」
「茜先輩そんなことしてたんすか」
「ちなみに最澄くんは気付かず斬られてたわね」
「こわっ」
二人とも唐揚げをパクパク食べながら話しているが話している内容は物騒だ。
得物があれば最澄は茜の刃に反応できず斬られるだろう。いや、タンクと言っていたから完全武装できちんと戦闘態勢を取っていれば防げるのかも知れない。
(常在戦場だと教わってるからな、俺とは常識が違うのかも知れないからよくわかんないな)
十兵衛は家にいる時も、寝ている時さえ殺気に反応できるように……、いや、殺気でなくても怪しい気配に反応できるように訓練されている。
知らない気配が寝ている最中に近づいただけで体が勝手に反応するのだ。
もちろんそれは幼い頃から鍛えられたからであって、常人はそれは当たり前ではないだろうと言う事くらいは知っている。なので十兵衛は二人の掛け合いを突っ込まずに静かに見守った。
「とりあえず自己紹介はできたわね。タンクに前衛、斥候に治癒術士のあたし。いい感じのパーティなんじゃないかしら」
「そうだな。バランスいいと思うぜ。後は連携訓練とかは低階層でやっていって、五階層を超えられると嬉しいな。うちは仕送りとかがあまりないから自分で稼ぐしかないんだ」
最澄がそう言うと茜もうんうんと頷く。
「とりあえず最高到達階層は更新したいわね。できれば中層までは行きたいわ。自分の剣術や薙刀術がどれだけ通じるか試したいの。父や兄には敵わないけれど道場生だと私に敵う相手って居ないのよ。そして父と兄はダンジョンで鍛えてレベルアップしているの。じゃぁ私もレベルアップしなきゃって思うでしょ」
最澄は金の為、茜は自身が強くなる為にダンジョンに潜るタイプのようだ。
梨沙は才能があったからダンジョンに潜る。そう考えると少し動機が薄い気はするが、梨沙がやんちゃな事は昔から知っている。
十兵衛は梨沙がダンジョンに潜りたいといい出しても「あぁ、梨沙ならいいそうだな」と思った位である。
そして十兵衛は最初ダンジョンにはあまり興味がなかった。ただ護衛役としてはダンジョンに潜ると言うのは悪くはない。
理由は単純で、ダンジョンで力を付けた相手が梨沙や北条家を襲う可能性がないとは言い切れないのである。
レベルアップと言うのは「在る」とは言われているが実際の自分のレベルを確かめる術はない。だが実際にダンジョンに潜り、たくさんのモンスターを倒せば常人とは違う力や耐久力、俊敏性などが得られる事は経験則で知られている。
「中層かぁ、自衛隊や警察も中層攻略はしてるって言うものね」
「とりあえずプロ層である五階層以上、できれば中層の十階層以上までは潜りたいな。もちろんすぐとは言わねぇ。大学にいる内に到達できるくらいでも構わない。五階層以上に潜れればそれなりに稼げるからな」
ダンジョンは十層までを低層、二十層までを中層、三十層までを下層と読んでいる。それ以上は深層と呼ばれ、世界のトップクラスの探索者でもほとんど到達していない。
そして五層を超えると週五日潜るとして大体手取りで二~三十万円くらいの稼ぎになるそうだ。プロ層と言われる所以である。専業探索者として五層以上に潜れる者たちは生計が立てられるのだ。もちろん中層に行けばもっと収入は増えるし、下層まで行けば年収で余裕で億を超えると言う。
ただ深い階層に潜れば潜るだけ必要な装備の値段と言うのも跳ね上がるので、中層くらいで落ち着く探索者が多いらしい。
「そういえばパーティ名を決めましょう」
「梨沙が決めていいよ」
「うん、梨沙ちゃんに任せるわ」
「あぁ、北条さんがリーダーだしな」
「えっ、あたしっ?」
そりゃそうだ。なにせこのメンバーを集めたのは梨沙なのだ。パーティリーダーも梨沙であるべきだろう。実際に戦う際に誰が指揮を取るのかは別だが、書類上のリーダーは梨沙になる。
「それじゃぁ暁と黄昏どっちがいい?」
「暁かな」
「暁ね」
「俺は黄昏がいいな」
十兵衛と茜が暁に投票し、最澄は黄昏を選んだ。結果パーティ名は暁となった。
ローファン日間24位に入っていました。ありがとうございます。是非一ページ目に表示されたいです。
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宜しくお願いします((。・ω・)。_ _))ペコリ




