表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/134

039.十兵衛の戦い

「ふぅ、ちょっと疲れたわ。戻って休憩しないかしら」

「さんせ~い」

「そうだな。もう三時間もずっと戦っている。一旦休憩でもいいと思う」


 茜が休憩を提案し、梨沙と最澄も同意する。実際この三時間で、かなりの数エンカウントし、ハイゴブリンやハイコボルト、アサシン系などへの対処も慣れてきている。三人でも十一階層の戦いでは安定する、その状況まで持って行けている。


「うん、いいんじゃないかな。じゃぁ一度戻ろうか。十一階層の転移球の前で休もう」

「帰りにもエンカウント、あるわよね」

「絶対ある~。やだ~」

「まぁ十一階層の入口まで三十分くらい掛かる距離だからな。もう一、二エンカウントくらいするだろうな」

「いいよ、その時は俺がやるから」

「は?」


 十兵衛が自信満々に言うと茜がポカンとした声を出した。


「さっすが十兵衛ちゃん。任せた!」

「え、おい。本当に任せていいのか? 三人で戦ってようやく倒せる相手だぞ」

「うん、まぁ戦い自体は見ていたしね。多分問題ないよ」


 :マジか。

 :十一階層初挑戦でソロエンカとか。

 :でも十兵衛くんが出来るって言うなら出来るんでしょ。

 :それな。


 帰り道、十兵衛たちの前にコボルトの軍団が迫りくる。それを十兵衛は既に察知していた。


「火遁・〈劫火球〉」


 ボウとエンカウントした瞬間に蒼い炎がコボルトソルジャーたちに迫り、二体を焼き尽くす。そして〈劫火球〉と同時に飛び出していた十兵衛はソルジャーたちを飛び越し、タンクの盾を体重を掛けて蹴る。その勢いでバク宙しながら、棒手裏剣を二本投げる。棒手裏剣は狙い能わず、呪文を唱えていたメイジたちの眉間を貫いた。


 地面に着いた瞬間に〈縮地〉を使い、コボルトリーダーに迫り、忍者刀で一閃する。コボルトリーダーの首が驚いたような表情のまま落ち、そして塵に帰る。

 後は掃討するだけだ。タンクは大きな盾を持っているだけで動きは鈍い。横に周り、タンクを忍者刀で一刺し。ソルジャーの残りから剣や槍が迫ってくるが掠らせもせずに体術と剣術だけで無双していく。


 十二体のコボルトたちはハイコボルト、コボルト関係なく十兵衛の前にひれ伏した。最後にアサシンと一騎打ちをし、アサシンのナイフを掻い潜り、アサシンの喉元に忍者刀が刺さり、戦闘は終わる。


 :きたー!

 :十兵衛くん無双、マジ格好いい。

 :ってかマジ無双だな。ソロで十一層の敵を一瞬かよ。

 :全滅まで二十秒掛かってねぇとか。

 :いやぁ、これ十兵衛くんのパーティメンバーきついよね。同レベルにならないといけないんだから。普通ついてけないよ。

 :あ~、俺も十兵衛くんと組んでみたいけど絶対足手纏いになる自信あるわ。

 :いや、これ絶対また動画バズる奴。

 :最近は海外にもJapanese Ninja! Fantastic Jubei って流行ってるもんな。もう忍者イコール十兵衛くんみたいな!

 :十兵衛くんはむしろ海外のが人気高いまである。


「十兵衛ちゃ~ん。マジ凄いんだけど」

「いや、先にコボルトもゴブリンも動きを見ていたからな。俺ならこう戦うってシミュレートしていたから出来ただけで、初見だったらもう少し慎重に戦ったぞ?」

「いや、見てただけで出来るって言うなら誰でも下層探索者になれるって」

「そうよ、と、言うか十兵衛くんは強すぎて参考にならないわ」

「いや、俺もレベルアップしてるからな。昔の俺じゃこんなに簡単じゃなかったと思うぞ」


 十兵衛が戦いが終わると仲間たちが駆け寄ってくる。コボルトたちのドロップ品や魔石は貴重な収入であるのでしっかりと拾う。そして梨沙のマジックポーチに仕舞われる。


「今日だけで五十万くらいは行けそうか?」

「多分倍くらい行くわよ。まだやるんでしょ。休憩を挟んで」

「そうだね、休憩したらまだやれるよ~。っていうかそうじゃないと十五層まで目指せないじゃん!」

「そうだな。もっと戦い慣れて置きたいな。もっと深い階層に行けば行くほど強くなっていくんだから、コボルトの癖とか掴んで置きたいんだよな。コボルトの動きちょっと独特で苦手なんだよ」


 最澄がぼやく。確かに最澄はコボルトの相手にまだ少し苦手意識があるように思えた。半歩反応が遅れているのだ。それでもなんとかなっているが、確かに端から見ていれば慣れていないのはすぐわかる。


「コボルトは犬系だからな、ゴブリンとは動き出しや攻撃方法が違うからな。慣れと言うよりもしっかりと見るといいと思うぞ」

「囲まれて戦ってる最中にそんなに見てる暇ねーよ! 必死なんだぞこっちは!」

「そのうち見る余裕が出るさ。経験値は溜まってるんだ。レベルアップもしてるんだろう?」

「まぁそうなんだがな。レベル幾つか知りたいな」

「それは鑑定士に頼まなければわからないんだろう? 日本には一人しか居ないからな。鑑定されたい探索者なんて山程居るから難しいよな」


 レベルは上がったと感覚的にわかるが、一気に二とか三上がることもざらだと言う。つまりレベルが上がった感覚の回数がレベルとはイコールではないのだ。自分より強敵と戦うと上がり易いと言われ、逆に雑魚狩りをしても上がらないと言われている。今更一層とかで戦ってもレベルは上がらないのだ。


 故に正確なレベルを知りたければ〈鑑定〉と言うスキル持ちに見て貰わなければならないのだが、そうするとスキル情報なども全部鑑定士に持ってかれてしまう。

 鑑定士はギルド所属で日本には一人しか居ない。世界でも数十人しかいない超希少スキルな為、どの鑑定士も基本的に国に保護されている。

 そしてレベルなど幾つか知っていても知らなくてもあまり変わらないのだ。結局実力でモンスターに勝てるか勝てないかの世界が探索者の世界だと十兵衛は理解している。


「えっとね~、鑑定士に伝手はあるよ。でも知らなくていいんじゃないかな~。レベル幾つだろうが、負けたら死ぬんだよ? 最澄くん」

「マジかっ、伝手あるのか……って確かに自分のレベルを知ったところで負けたら死ぬ世界なんだよな。梨沙ちゃんの言う通りだ。前言を撤回する。それにスキル情報が協会に渡るからな。知らないスキルとか生えていたら有益だけど、大体スキルは生えたってわかるしな」


 最澄は梨沙の言い分に納得したようだった。


「それがイヤなんだよね~。私の場合はちょっと特殊だから鑑定して貰ってわかったんだけどね。治癒魔法は知ってたけど結界魔法は使えるって知らなかったんだよね」

「それでも使いこなしてるじゃないか」


 梨沙は治癒魔法も結界魔法も熟練度が高い。それは十兵衛は間近で見てきたから知っている。が、最澄はそういう裏事情は知らないだろう。


「えっとね~、高校の時に知ったからずっとそれから結界とか障壁の練習はしてたんだよね。親に反対されてたからダンジョンには潜ってなかったけどね」

「なるほど、俺の火魔法みたいに手に入れたばかりじゃないんだな」

「そうそう。ちゃんと練習したんだよ~。治癒魔法もいっぱい病人とか怪我人の人に掛けたよ!」

「俺も火魔法を実戦で使えるように頑張るよ」

「あぁ、頑張れ。期待してるぞ。お、そろそろ十一層の入口だな。休憩にしよう」


 結局エンカウントは一回だけだった。十一層は洞窟型の迷路になっている。脇道からモンスターが来るので例え最短ルートを取っていても後ろを取られることすらある。そして十層までよりもかなり長い距離を歩かなければならない。当然エンカウント回数も増える。


 長時間集中力を切らさないこと。更に戦闘回数を熟しても大怪我をしたりしないこと、長期泊まり込みで十五層を目指せること。これらが揃わない限り十五層の転移球には辿り着けない。

 十兵衛は夏休みには十五層、更に二十層のボスまで行ければ良いと思っていた。


 日本の暦ではGWを除くと長期の休みと言うのが取れない。全員大学生なのだ。学生の本分は勉学である。実際梨沙も勉学に支障がない程度の探索にしろと命令が下っている。当然それは十兵衛にもだ。十兵衛の場合は護衛優先なのでまたプライオリティが違ってくるが。


「まぁちょっとゆっくり休んで、違うルートを攻略してみよう。三人の連携は十分取れるようになってきているから、どんどん殲滅速度は早くなると思うぞ」

「そうだな。連携はやっぱり数熟すしかないよな」

「そうね、私もそう思うわ」

「あたしは攻撃手段が通用しないのが辛い! 一瞬止めるくらいしかできないんだもん」

「いや、でも梨沙ちゃんの一瞬止めてくれるのすげぇ助かってるぞ」

「そう? ならいいけど、やっぱり倒したいな~」


 エンカウントしても十兵衛がやってくれると知って三人は少し弛緩しているように見える。だが気が抜けていないことは気配でわかる。上々な仕上がりだ。


(十五層にはいつ行こうかな。やっぱり夏休みかな)


 一日一層攻略して休んでも十五層までには五日必要だ。ならば週末に十一階層と十二階層で鍛錬を積んで、きちんと大学生らしくテストも終わらせて夏休みに一気に攻略する。それが十兵衛のプランだった。

 ただこのプランはまだ話していない。それなりに三人でも戦えているので、大学の休める授業を休んでどこかで十五層までアタックしても良いかも知れない。十兵衛はそんなことを考えていた。


15日まで毎日二回更新のつもりでしたが8月いっぱい二回更新します。9月は無理ですw

お楽しみください。

また、面白い、続きが気になると言う方は是非☆評価を5つ付けていただけると続きを書くモチベになります。

宜しくお願いします((。・ω・)。_ _))ペコリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ