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038.十一階層の洗礼

 :十兵衛くんの配信来た!

 :待ってた。

 :全裸で待ってた。

 :服来とけ。まだ肌寒いぞ。

 :ってか十兵衛くんが突撃しないの珍しいな。

 :他のパーティメンバー鍛えるんだろ。明らかに十兵衛くんだけ飛び抜けてるから、バランスが悪いんだよな。いや、他のパーティメンバーも強いんだけどさ。

 :それな。頭二つ分くらい抜けてるよな。B級探索者タイマンで倒せるとかありえん。

 :十層ボス部屋最短攻略のMVPだからな。殆どのオーク十兵衛くんだけでやったろ。

 :アレは圧巻だった。っていうかDチューブであの戦いの動画超伸びてるよな。

 :あぁ、あれは何度も見ちゃう。間違いない。


 十兵衛はコメントを見ながら最澄たちの戦いぶりを見ていた。悪くはない。だが十一層のコボルトたちは十層のコボルトたちよりも連携が良い。数も十と最澄たちよりも多いのでどうしても攻撃よりも防御寄りになってしまっていく。


 最澄は踏ん張っているし、茜は数を減らしている。梨沙の結界槍は弾かれている。やまりまだ熟練度が足らないのだ。そういう意味では十一層の階段近くで戦う戦法はありだ。すぐ逃げ帰れるし、十一層に入ってくる探索者も居る。危険になった時に助けを呼べるのだ。


「まぁ助けが必要になったら俺が出ればいいだけなんだけどな。ちょっとあのコボルトアサシン危ないな。こっちで始末しておくか」


 コボルトアサシンが最澄の死角から迫っていたので十兵衛は棒手裏剣を投げてコボルトアサシンの首に穴を開けた。最澄はそれで危険が迫っていた事に気付いたようだ。


 少し後ろに居た梨沙も気付いてなかったようなので、気配を消すのが上手いのだろう。十兵衛には少し引いて見ていたのと気配察知能力が高いのでバレバレであったが、コボルトアサシンの恐怖を二人はしっかりと刻みつけてくれただろう。

 梨沙の護衛として十兵衛は見逃せなかったと言うのもある。


 :でも三人でも安定して戦えてるな。

 :こっそりアサシンを瞬殺する十兵衛くん。

 :いや、アサシンマジ嫌らしいんだよ。戦えばわかる。

 :アサシンなしなら互角以上に戦えてるけどアサシン入りだとまだ厳しいかな。

 :でも茜ちゃんとかどんどん敵倒してるから勝てそうではあるよな。

 :うん、十階層までみたいに一気に攻略はできないだろうけれど、三人パーティでも攻略はできそうではある。

 :そこに十兵衛くん足せば十五層とか一気に攻略とかできちゃいそうなんだよな。

 :それはある。


「いや、それはしない予定だぞ」


 :お、珍しい。十兵衛くんがコメントに反応してる。

 :ほんとだ。梨沙ちゃんとかはファンサしてくれるけど、十兵衛くんは珍しいよな。

 :コメントも戦闘も見てアサシンの接近も排除して万能かよ。


「俺にだけ依存したパーティってのはどっかで崩壊するからな。皆にも俺と同じレベルまで来て欲しいってだけだ。其の為には十一階層から十二階層でちゃんと経験を積むつもりだな。あとオークたちとは戦っておかせたい」


 :あ~、それはあるなぁ。

 :でも十兵衛くんと同じレベル求めるのは酷じゃない?

 :でも同じパーティだしなぁ。

 :最澄くんも茜ちゃんも十分中層で通用する腕前はあるんだよなぁ。

 :レベルアップすればもっと楽に戦えると思う。

 :お、戦闘終わった。無傷じゃないけどちゃんと勝利してるな。てか梨沙ちゃんの治癒魔法マジいいよな。

 :そう思う奴等が梨沙ちゃん狙って来たりするんだよな。だから十兵衛くんが護衛についてるんだろ。

 :十兵衛くん抜いて梨沙ちゃん殺すとかマジ無理そう。


「おつかれ。どうだった?」

「十階層までとはやっぱりちょっと違うな。特にアサシンの気配は全然感じられなかった。十兵衛有難うな」

「ありがとね、十兵衛ちゃん」

「コボルトたちの連携や動きも良かったわよね。あれとこれから戦って行くとなるとやっぱり経験を積んでから進みたいわね」

「そのつもりだ。だからしばらくは階段近くの最短ルートじゃないところをブラブラしてエンカウントを待つ。そして戦って経験を積む。その予定だがいいか?」


 十兵衛が確認するが全員が頷いた。

 装備を更新しただけあって大怪我はしていない。前の装備なら最澄は骨折くらいしていたかもしれない。やはり装備は大事なのだ。


「新装備はどんな感じだ」

「やっぱりいい奴は体に馴染むな。それと攻撃力も上がったと思う」

「私の薙刀も良い感じよ。動きやすさは変わらないけれど防御力は上がっている筈だから安心感が違うわね」

「じゃぁ新装備に慣れる為にも今日はどんどんと戦って行こう。危ない時以外俺は手を出さないから三人パーティのつもりでやってみてくれ」

「わかった」


 十兵衛が移動ルートを示すと全員で移動する。十兵衛は気配察知で敵の存在を知っていてもパーティには開示しない。理由は全員気配察知を覚えて欲しいからだ。

 当然ながら気配を探る練習をしなければ気配察知は得られない。そして上級探索者になると気配察知は全員が持っているものなのだ。熟練度の差はあれど、前衛だろうが後衛だろうが持っている。必須技能の一つである。


 その事は最澄たち三人も知っているので、気配を探りながら動いている。そして今度はゴブリンたちの群れにエンカウントした。

 ゴブリンリーダーにライダー。タンクにソルジャー。そしてメイジにアサシン。

 アサシンは嫌らしい動きで後衛を狙ってくるが今回は最澄たちは気付けるだろうか。


「ってか気配消すのうまいな、流石アサシンと呼ばれるだけある」


 十兵衛は呟きながら戦いを観戦し、いつでも援護に迎える距離で態勢を整えている。右手と左手に手裏剣を持ち、煙玉なども胸元に入っている。

 もし最澄たちが敗走したら──危険だと思ったら逃げて来いと指示している──、煙玉で一時的にゴブリンたちの目を眩ませるのだ。


「ゴブリン相手のが楽なのか? コボルトもゴブリンも強さは同じくらいだが、コボルトの方が獣寄りな戦い方をするからゴブリンのが戦い易いんだろうな」


 十兵衛は戦いを見ながら分析する。最澄と茜は先に五階層辺りまで進んでいた経験者だけあってゴブリンの相手はお手の物だ。梨沙もゴブリン程度には苦戦していない。

 アサシンの気配には気付いていないが、今回はきちんと死角を作らないように最澄と梨沙で陣形を作り、アサシンの付け入る隙を与えないようにしている。きちんと学んでいてすぐに応用できていると言うのはパーティメンバーとして信頼に値すると十兵衛は思った。


「やった~! 勝った~! 今回は十兵衛ちゃんにも助けて貰わなかったよ」

「そうだな。三人だけで勝てたのはやっぱり嬉しいな」

「でも五階層とかのゴブリンに比べると格段に強いわよね」

「中層のはハイゴブリンとかハイコボルトが混じっているんじゃなかったか」

「妙に強いゴブリンとかコボルト居たよね。びっくりしちゃった。見た目じゃわからないよね~」


 梨沙は呑気な事を言っているが、ゴブリンとハイゴブリンの違いは気配察知ができれば即座にわかるのだ。


「お前たち早く気配察知覚えないと危ないぞ。ハイゴブリンやハイコボルトの見分けなんて気配察知ができれば見なくてもわかるくらいなんだからな」


 :いや、それは無理。

 :十兵衛くんとかトップクラスの探索者だけの話だから。

 :中層に入ったばっかりの探索者に求める技能と違う。

 :俺下層探索者で気配察知持ってるけど、まだゴブリンとハイゴブリンの見分けはつかないぞ。下層だと全部ハイゴブリンだけどな。


 十兵衛は気楽に言ったが、実際には違ったようだ。気配察知を得ても、熟練度を上げなければゴブリンとハイゴブリンの違いはわからないのが常識らしい。

 だがチーム・暁としては十兵衛を基準に常識にして欲しいのだ。故に十兵衛は要求を取り下げる事はしなかった。




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