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037.新装備とダンジョンアタック十一階層

「お、最澄と茜は装備更新したんだな」

「あぁ、いい鎧と盾、それに短槍も更新したから全更新だぜ。めっちゃ割り引いてくれたから買えたんだけどな。下取りもいい値段で下取りしてくれたし、梨沙さまさまだな」

「私も欲しかった薙刀と小袖と緋袴、それに胸当てを更新したわ。前の装備は低階層では通用するけれど、中階層に通用するか怪しかったからね。でも太刀と脇差しはそのままね。単純にお金が足らなかったわ」


 十兵衛たちがギルドに集まると二人の装備は変わっていた。と、言っても大幅に見た目が変わっている訳ではない。

 最澄は和鎧に盾、短槍と言うのは変わらないし、茜も小袖に緋袴、胸当てに薙刀に太刀、脇差しと言うのは同じだ。


 だが最澄は全て、茜も防具とメインウェポンである薙刀を買い直したらしい。装備はピカピカで、且つ上位の素材が使われているのは見ているだけでわかる。

 十一階層から挑戦するが、これならば中階層後半でも通用するだろうと言う装備をきちんと整えている。それはもちろん坂崎を捕らえた事で大きな収入があったと言う背景があるのだが、やはり装備は万全の物を使うべきだと十兵衛は思っているので、最澄や茜が金銭をケチらずに装備を更新したことを嬉しいと思った。それだけチーム・暁で上位層にトライする気概がそれだけで見られる。


「は~、二人とも格好いい。新装備いいなぁ」

「いや、梨沙の装備は下層どころか深層でも通用するからな」

「そうだけどさ~。そんなこと言ったら十兵衛ちゃんのもそうじゃん」


 逆に十兵衛と梨沙は最初から最上級装備を与えられている。深層素材で、有名な鍛冶師が作った渾身の作だ。梨沙のローブなどは魔法金属の糸と深層に居る蜘蛛の糸を使われている。


(梨沙は蜘蛛苦手なのに蜘蛛の糸を身につけるのはいいのか。もしかして素材を知らない? よし、触れないことにしよう)


 梨沙の白のローブなどは金糸と銀糸で華麗な刺繍まで入っており、明らかに光沢が違う。魔法杖も魔法銀が使われており、綺麗で、且つどでかい魔宝石が埋め込まれている。誰が見ても高級品だとわかる。と、言うか実際に買えばそれぞれの装備だけで億を簡単に超えるので間違いなく高級品だ。


 逆に十兵衛は黒尽くめの特殊部隊のような格好である。古の忍者と言うよりは現代特殊部隊員だと間違われてもおかしくない。額当てに風魔忍者の刻印がされているので、そこだけが忍者要素である。

 ただメインウェポンは手裏剣や忍者刀であるので、やはり十兵衛は忍者なのだ。


「今日は十兵衛の配信なんだっけ」

「あぁ、なんか前の配信で俺の活躍する姿をもっと近くで見たいって変なコメントが多くてな。じゃぁ次は俺なって梨沙が決めたんだ。最澄のアカウントでやりたいなら最澄のアカウントでやってもいいぞ。茜も気にせず自分のアカウント使いたいなら言ってくれ」

「いや、大丈夫だ。と、言うか十兵衛の動画とか切り抜き動画凄い出回ってるぞ。トレンドとかにも入っているしな。今日も多分配信初めた瞬間に十万人とか超えると思うぞ」

「そうね。まぁでも今度私のアカウントで配信させて貰うわ」

「俺としては忍ぶ者だから人気になるのは不都合なんだがな」

「ハハッ、何を今更。ダンジョン探索者の配信は義務じゃないが配信している時点で誰かに見られるのは当たり前だぞ。そして十兵衛は大手配信者よりもよっぽど視聴者を稼いでるんだ。そこら辺の自己評価本当低いよな」

「こればっかりは性分でな」


 最澄に笑われながらGW後半で人がごった返すギルド内を進み、十兵衛たちは初めての十一階層に足を踏み入れた。



 ◇ ◇



「十一階層からはオークが出てくるんだよな。十階層ボスでオークたちとは戦ったけれど、あのボス戦はほとんど十兵衛がやっちゃったから俺たちは経験が足らないんだよな。だから普通のオークとの戦いを俺と茜、梨沙に任せてくれないか。経験値を積みたい」

「あぁ、いいぞ。じゃぁ俺は二、三体くらい残して残りを排除する感じでいいな」

「と、言っても十一階層はゴブリン系の強いのやコボルト系が多くてオークはそうそうでないけどな」

「そうね、オークが主体になるのは十四階層とか五階層以降よね」


 最澄と茜はボス戦でオークタンクと戦ったくらいで、十兵衛の忍術と忍者刀で殆ど倒してしまった。故に本来得られた筈のオークとの戦いの経験が積めていないのだ。

 だがあの時点の最澄と茜にはオークの、特にリーダーやソルジャーたちを相手にするには大怪我をする可能性があった。

 過保護かも知れないが、そんな危険を冒すくらいならば、十階層でもっと経験を積んでレベルアップしてから挑戦すれば良いのだ。だが十階層へは六階層から行かなければならない。


「とりあえず十一階層の雰囲気を見てみよう。いきなり踏破するんじゃなくて転移球の近くでエンカウントを狙って連携を深めて、中層の雰囲気を掴む感じだな、今日は」

「了解」


 最澄たちの言い分もわかるが、十兵衛は十一階層の転移球の登録を先に済ませて起きたかったのだ。別に今だって行こうと思えば六階層からやってレベルアップのための経験値──と、言うのがあると言われている──を稼げば良い。


 ただ六階層から経験値を積むのならば、十一層の最初の方でエンカウントを稼いだ方が経験値効率は良い筈だ。

 そう説明して、十兵衛は最澄と茜、梨沙を説得したのだ。もちろん十階層と十一階層では敵の強さが違うので、十一階層の方が危ないに決まっている。更に上位の探索者から狙われる可能性がある。


 なぜならば梨沙が治癒魔法と結界魔法を持っている事は周知の事であるし、十兵衛の忍術スキルはユニークスキルではないが、激レアのスキルである。更に最澄が火魔法のスキルを得た。


「そういえば最澄、火魔法は試してみたか」

「あぁ、低層に潜って試してみた。家だと火事が怖いからな。まだ種火と小さな火矢みたいなのを放てるくらいだな。射程は五mを超えるとちょっと危ない感じだ。だからまだ十兵衛や茜の援護とかには使えない。どちらかと言うと俺に迫ってきた相手に驚かせる為に使う感じになるだろうな」

「そのうち火球とか火炎竜巻とか使えるようになる魔法スキルだ。大事に育ててくれ」

「もちろん。〈種火〉」


 最澄は指先にぽっと小さな青い炎を出現させた。魔法スキルはまず一番弱い魔法で魔力操作を学び、しっかりと制御できるようになってから上位の魔法を使うと言うのが常識だ。

 そうでないと魔力暴走して自爆してしまう。この数日の間で火矢まで使えるようになったのならば十分だろう。それが十一階層で通用するかどうかはわからないが、どんどん使っていくうちに最澄の重要性は増して行くはずだ。


 特に最澄は短槍と言う特殊な武器を使っている。一メートル八十センチメートルほどの槍なのだが、梨沙の魔法杖と長さとしてはあまり変わらない。攻撃力は槍よりは弱いが小回りが効くのが特徴だ。


「まぁ最澄はタンクだからな。盾術なんかをメインに育ててくれ」

「それはもちろん。だが魔法が使えるようになるとは思わなかったからな。ついはしゃいで一階層で魔法の練習ばっかりしちまったぜ」

「気持ちはわかる。俺も幼い頃に忍術使えるようになった時に使いすぎてぶっ倒れて怒られた記憶があるからな」

「ふふっ、十兵衛くんもそんな時代があったのね」


 十兵衛が自分の失敗談を話すと茜が笑った。梨沙は現場を知っているのでニヤニヤと十兵衛を見つめている。

 だがまぁ男の子が魔法とか忍術が使えるようになったら使いまくると思うのだ。それは女子にはわからない感覚だと十兵衛は思っている。


 実際くノ一の知り合いは多く居るが、十兵衛のように使いすぎでぶっ倒れたくノ一は殆どいない。だが男性忍者は大体十兵衛と同じ失敗をしているのだ。

 父や祖父、叔父、兄などもやらかしたことがあると聞いた事があるし、年の近い忍者たちはやはり同じことをやらかしていた。


「お、お客さんだ。ちゃちゃっと新装備の錆にしてやってくれ」

「任せろ」

「任せて!」


 コボルトヒーローに率いられたコボルトの集団が現れ、最澄と梨沙は試し斬りとばかりにコボルトの集団に立ち向かって行った。


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