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032.十階層ボス・猪頭鬼たちとの戦い

 十分な休憩も取り、緊張感は残しつつ疲れは取れた。

 一時間ほど休憩していたが十層ボス部屋に辿り着いた他のパーティはいなかった。

 もし他のパーティが来て挑戦すると言うならば順番を譲るつもりであったが、問題なく挑戦できるらしい。


「そろそろ行こうか」


 十兵衛がそう言うと全員が立ち上がる。梨沙は椅子などをマジックポーチに仕舞って居る。そして全員の顔を見る。

 最澄も、茜も、梨沙も、これから十層のボスに挑戦するのだと言う気迫が漲っている。これなら最高の状態でボス戦に挑めそうだ。

 もちろん負けるつもりはない。と、言うか誰一人失うつもりはない。そのくらいは当たり前だと思っている。


 ただ舐めプするつもりはない。つまり忍術も解禁だ。今までの戦いでは忍術に頼らない戦いをしていたが、今回のボス戦は今までとはレベルが違うのだ。

 忍術を惜しんだ結果、パーティメンバーの誰かが失われては後悔してもしきれない。絶対にトラウマになるだろう。


 少なくとも十兵衛は梨沙だけでなく、最澄や茜も仲間と認め、このパーティで上り詰めたいと思っていた。

 どうせダンジョンに潜るのだ。コメントで言われたからではないが、ダンジョンの未到達層まで潜るのを目標にしても良いだろう。


 日本の最高到達階層は四十二層である。ちなみに世界で見るとアメリカのスペシャルフォースが四十八層まで攻略している。次に中国、ロシアの四十七層。日本の四十二層と言うのは世界で言うと七番目か八番目に深かったはずだ。やはり四十五層の壁は厚いらしい。


 この結果を見れば日本の自衛隊はそれだけ優秀だと言う証左でもあるし、ダンジョンでレベルアップした探索者が罪を犯した時に捕まえる為に警察官たちもダンジョンに潜ってレベルアップしている。

 そうでないと犯罪者を捕らえることができないと言う弊害がどこの国でも起きているからだ。


「よし、じゃぁ行くぞ」

「おう」

「行きましょう」

「やっちゃうよ~!」


 鋼鉄のでかい扉に十兵衛が手を添えると、押しても居ないのに鋼鉄のでかい扉が開いていく。その中は暗くなっており、中は確認できない。中に入って初めて、ボスの存在が確認できるのだ。

 ただ十兵衛たちはパイオニアではない。十層ボスの情報はしっかりと全員頭に入っている。

 オークリーダー、オークメイジ、そしてオークタンクやソルジャーたち。それが待ち構えているのがわかっている。


「最初に忍術ぶっ放すから、三人は後ろに居てくれ」

「あぁ、わかったぜ」

「えぇ、任せるわ」

「十兵衛ちゃんの本気、久々に見られるんだ。嬉しいなぁ」


 :十兵衛くんの本気!

 :マジ見たい!

 :本気忍術制限してこれだもんな。気になるよな。

 :期待して見ようぜ。目が離せない。

 :あぁ、マジ期待。勝つのは当然としてどう勝つのかが見たい。

 :な、心配とか全くないよな。


 コメントを横目で見ながら一歩を踏み出す。途端にボス部屋の中が見えてくる。かなり広い。三人が十兵衛から一歩遅れて入って来るのが気配でわかる。

 そして正面にはオークリーダーが大剣を持って立っている。その脇にはオークメイジが、そしてそれらを守るようにオークタンクが二体居る。そしてソルジャーたちが前衛として槍や剣、盾を持って待ち構えている。


「オークシャーマンがいるぞ! 気をつけろ!」

「火遁・〈火災旋風〉!」


 最澄がオークシャーマンに気をつけろと叫んだが、その瞬間には十兵衛の〈火災旋風〉が激しくオークたちの集団を巻き込んでいた。

 ソルジャーたちはその高温に苦しみ、のたうちながら沈んでいく。そして塵になっていく。

 だがタンクに守られたオークリーダーとオークメイジ、そしてオークシャーマンは無事のようだった。そしてソルジャーも息絶えてない者が残っている。


(くっ、レベルが足らないか)


 正直〈火災旋風〉で一撃で倒せる予定だった。だがまだレベルが足らなかったらしい。こればかりは仕方がない。オークリーダーとオークタンクたちの耐久力が十兵衛の渾身の一撃よりも強かったと言うだけだ。

 それでもオークの集団は半分に減った。これなら行ける、と思った瞬間、十兵衛の体が急に重くなった。


「シャーマンの呪いだ。梨沙、解呪を」

「うん! 〈解呪ディスペル〉」


 最澄が叫ぶ。梨沙の解呪を受けると重くなった体が回復する。

 その瞬間に〈風刃〉を放ったがオークタンクの盾に守られてしまう。だがそれは陽動だ。そこに隠された黒塗りの棒手裏剣がオークシャーマンの眉間に突き刺さる。シャーマンは塵になった。守れなかったタンクは悔しそうだ。


「これでシャーマンは倒した。後はタンクとリーダーとメイジ、そして手負いのソルジャーだ。行けるな、みんな」

「私たちはソルジャーとタンクをやるわ。十兵衛はメイジとリーダーをお願い」

「俺は梨沙を守るぜ。ただリーダーが来たらそう何発も耐えられないから助けに来てくれよな」

「わかった。メイジとリーダーだな」


 十兵衛と茜は同時に走った。タンクが道を塞ごうとするが、ドロップキックを盾に喰らわせる。十兵衛の走力はかなり速い。全体重が乗ったドロップキックは優に百キログラムを超えるオークタンクですら二歩ほど後ろに下がらせるほどの威力だった。

 オークメイジが風の刃を放ってくるが、それは視えている。軽く躱すとそこにオークリーダーの大剣が迫る。

 素早く身を翻して大剣を躱し、まずはオークメイジの首筋に忍者刀を突き刺す。返す刀でオークタンクの腕を狙う。

 腕が落ちたオークタンクは盾を維持できなくなる。


「ブモォォォォッ」


 オークタンクはそのでかい体躯を活かして突進してくるがそんな鈍い突進を受けるほど十兵衛は甘くない。

 オークタンクの突進を躱し、オークリーダーが横薙ぎに振る大剣を地面すれすれに体を倒す事で避ける。そしてオークタンクの足に棒手裏剣を突き刺し、倒れたところに忍者刀でトドメを刺す。


 逆側を見るとオークタンクとソルジャーと茜が壮絶な戦いを繰り広げていた。

 リーダーが十兵衛側に来たことで、最澄と梨沙は茜に助勢することにしたらしい。

 これを信頼と取るべきなのか、十兵衛に押し付けられたのかは正直良くわからない。

 だがもうオークリーダーと一対一の戦いだ。


「来いよ」


 敢えて挑発的に手の平でくいくいとリーダーを呼ぶ。


「ブモォォォォッ」


 挑発は通じたようでオークリーダーは大剣を大きく振りかぶり、十兵衛を叩き潰そうとする。


「それが隙なんだよなぁ」


 〈縮地〉で懐に入り、オークリーダーは大剣を振りかぶったまま、オークリーダーの心臓に十兵衛の忍者刀が突き刺さる。

 それだけでは倒せないかも知れない。オークリーダーはそれだけの生命力がある。と、言うかモンスターは死ねば塵になる。オークリーダーは心臓を貫かれても塵になっていなかった。

 心臓に刺したままの忍者刀をぐりっと捻る。そして背中のマチェットを引き抜き、喉元へ突き刺す。


「ブモォッ……」


 すると数秒してオークリーダーが死に、塵になってドロップと魔石を落とした。ドロップはオークリーダーの大剣だった。

 大剣としては大きすぎる剣ではあるが、ダンジョン産鉱物の使われた剣であるので高値で売れる。

 茜たちを見るときちんとオークタンクとソルジャーを倒していた。ちょうと茜がトドメを刺し、そちらも塵になっている。


 :すげぇぇぇっ。

 :十階層ボスの最短討伐記録なんじゃないか。

 :マジ一瞬だった。

 :十兵衛くんだけでほとんど倒してるの草。

 :十兵衛くんの忍術強すぎなんだけど。ソルジャーほぼ丸焼きとか目を疑って擦っちゃったよ。

 :それな。あれ喰らったら骨も残らないっしょ。普通の人間なら。

 :ってかオークリーダーあんなに簡単に倒せる相手じゃないんだよなぁ。

 :普通は一時間以上掛けて倒す相手を五分で倒す、それがチーム暁。マジ最強。

 :いや、ホント中層とか余裕だと思う。本気で下層探索が見たい。


 ボス部屋を討伐が終わった事で十一階層への階段ができている。そして宝箱が出現している。

 ドロップはオークソルジャーが持っていた剣と槍、そしてシャーマンが持っていた杖も落ちている。どれも高値で売れる商品だ。特にシャーマンの杖は希少品なのでかなり良いお値段がするとは聞いている。


「ふぅ、なんとかなったけれどシャーマンの呪いだけはビビったな。梨沙が居てよかった」

「ふふ~ん、あたしだって活躍するんだからね!」

「いや、本当に助かった。ありがとう、梨沙」

「うっ、うん。十兵衛ちゃんの為なら何でもしちゃうよ!」


 梨沙に本気で十兵衛が頭を下げると梨沙はちょっと照れた感じで俯いてしまった。


「じゃぁお楽しみの宝箱を開けようか」

「おう、何が入ってるか楽しみだぜ」

「ね、十層の宝箱でも結構良いのが入ってる事ってあるものね」

「たのしみ~」


 ドロップを梨沙が回収し、宝箱に手を掛ける。ちなみに通常の宝箱は罠が有ることもあるが、ボス部屋の宝箱は罠がないのが常識だ。

 十兵衛が手に掛け、あまり大きくない宝箱を開けるとその中には剣とスキルオーブが入っていた。


「スキルオーブ。マジか」

「十層でスキルオーブってドロップするのね、知らなかったわ」

「わ~い、スキルオーブだ~。えぇっと、〈再生〉? のスキルオーブだね。誰が使う」

「いや、ってかそれ五億円くらいするスキルオーブだぞ」

「でも売るって選択肢はないわよね。今後の探索には絶対必要なやつよ」

「そうだよ。ってか十兵衛ちゃんに使って欲しいな」


 梨沙がそう言うと最澄と茜は即座に頷いた。


「いや、今回のMVPは明らかに十兵衛だし、十兵衛の戦力がこのパーティの要なんだから十兵衛が使うべきだろ」

「その通りね。十兵衛くんが使うべきよ」

「いいのか? タンクの最澄とかが使った方が良くないか?」


 〈再生〉のスキルオーブは文字通り〈再生〉のスキルが得られる。

 〈再生〉のスキルを持つと簡単な怪我なら即座に治り、骨折とかも三日も経たないうちに治る。探索者だけでなく、普通の人にも垂涎のスキルオーブだ。

 その分高く、オークションでは最低値五億円からと言う超高額スキルの一つだ。数十億までオークションで行った事があるらしい。そのくらいのレアスキルである。


 ちなみに治癒魔法も有用過ぎるので最低五億円くらいはする。プリマヴェーラで持っている梨沙がおかしいのだ。ただそれは先人がいる。プリマヴェーラで治癒魔法を持っていて、聖女と呼ばれた有名探索者がいるのだ。もう引退して、医療現場に従事しているが、聖女に治せない病気や怪我はないと聞いたことがある。


「わかった。俺が使う」


 三人が頷いたので十兵衛はその場で〈再生〉のスキルオーブを使った。




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