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030.十階層ボスへの挑戦・玖

「ここで半分だ。後半分頑張ろう」


 十階層でのエンカウントも十回を超えた。だが多少の怪我はあれど問題なくゴブリンやコボルトの敵は倒せている。小さな怪我は梨沙の治癒魔法で治るので、問題はない。と、言っても十兵衛も梨沙も氏康から本来まだ買えない値段のポーションを多く支給されている。


 マジックポーチに眠っているが、一本一千万円のポーションが十本ずつ梨沙と十兵衛のマジックポーチにあるのだ。

 これは四肢欠損などしなければ、ほぼ重傷でも治す事ができる。つまり即死と欠損だけ気をつければなんとかなるのだ。欠損も千切れた部位があればくっつく優れモノだ。


「まだ二時間と少ししか経ってないのね。それでもエンカウントが多いから結構疲れが溜まってるわ」

「あぁ、そういう時こそちゃんとしないと怪我を負うぞ。気をつけろ、茜」

「えぇ、そうさせて貰うわ。ちょっとリーダーをこれから十兵衛に任せても良いかしら」

「いいぞ。もともと俺がやっていた仕事だからな。その代わり梨沙や最澄の前衛としてしっかり守ってやってくれ」

「了解。ボス」

「なんだそれ」


 茜の返答に十兵衛は苦笑した。別に十兵衛はボスでも何でもないのだ。むしろリーダーは梨沙である。だが梨沙も含めて戦闘時でのリーダーは十兵衛の指示を聞いている。ボスと言われても仕方がない。


「ん、あっちの方向に巨大な反応があるな。多分ゴブリンキングの集落だ。避けて行くことにしよう」

「そうね、今ゴブリンキングと戦うのは無謀だわ」

「ってか一パーティでキング討伐とかねーよ!」

「え~、ゴブリンキング十兵衛ちゃんなら倒せたりしない?」


 梨沙がとんでもないことを言う。倒せるか倒せないかで言えば多分倒せる。だがそれは十兵衛が全力を出せばだ。それはパーティの経験にはならないだろう。十兵衛がソロ探索者ならば意味があるが、パーティの経験にならずに危険になるならば挑戦する意味がない。君子危うきに近寄らずである。


「倒せるかも知れないけど梨沙たちが危なくなる危険は冒せない。そこはわかってくれ、な? 梨沙」

「わかったよ、十兵衛ちゃん。ちょっと遠回りになるけど西側ルートを取ろう」

「うん、それでOKだ。梨沙」


 十兵衛の探知範囲外からも漂ってくる強者の気配。これは明らかにゴブリンキングである。

 ゴブリンキングは中層以上の探索者がレイドを組んで倒す相手だ。間違ってもまだ十層攻略も出来ていない十兵衛たちが戦う相手ではない。


「一応この辺りにキングの集落があるとギルドには報告しておこう。こういう情報提供でも金銭が貰えるらしいしな」

「あぁ、重要情報には賞金が出るぜ。多分キング種の位置とかは情報だけで一人十万円以上とか貰えるんじゃないかな」

「一人で十万以上はでかいな。正確な位置を報告しておくか。それにしても情報だけでそれか。いや、大金だな」

「いやマジで大金だよ。少なくとも俺に取ってはな」


 最澄がそう言ってくる。と、言っても十兵衛は金に困った経験はないが、通常の金銭感覚と言うのは持っている。

 大学生の身分で情報料だけで十万円以上貰えるのだ。貰える物は貰っておくべきである。


 最澄の場合は探索資金が学費や生活費になるらしいのでかなり重要度が高い。

 ただ毎週の探索だけで十分稼げているとは言われているので、今後もっと稼げるようになるので最澄の生活の心配はしなくても良いだろうと十兵衛は思っている。


「よし、じゃぁゴブリンキングの集落を避けるルートを共有するぞ。このルートで行くとみんなマップを見ておいてくれ」

「わかった」

「えぇ、多少遠回りになるけれど、キング種を避けられるって言うだけで有り難いわ」

「ってか私でもキングの気配なんとなく感じられるよ。ほんと強いんだね」

「ゴブリンキングはやっぱり別格だと聞くぞ。リーダーの上のジェネラルを従えて居て、更に強い訳だからな。リーダーなんて何十体も居る」


 梨沙や茜もゴブリンキングの気配は察知できているらしい。このままそれほど強くないモンスターの気配も察知出来るようになって欲しいと思う。

 そういう意味ではこの強烈なキングの気配は気配察知する為の手掛かりと言うのは全員に恩恵があるだろう。

 十兵衛たちは新しく設定したルートを共有し、キング種の集落を避けるようなルートを取る事にした。



 ◇ ◇



「そろそろ終盤だな。気を抜かずに行こう」

「えぇ、結構エンカウント多かったわね。普段使われないルートだからかしら」

「だがあのルートはキング種が居たから、もしかしたら被害に遭っているパーティも居たかも知れない」


 :ちゃんと共有しておいたぜ。

 :キング種情報は大事だからな。他の九階層攻略してるパーティに緊急って付けて教えて上げておいた。

 :もちろん位置情報の情報料はチーム・暁に入る筈っていうかギルドもチーム・暁の配信見ていると思うから問題はないと思うけどな。

 :〈協会公式〉情報ありがとうございます。共有させて頂きました。キング種討伐のレイドも組ませて頂きます。


「まさかの公式コメント!」


 梨沙が叫んだ。


「本当にギルドが見てるんだな」

「あぁ、見られている意識はないけどな」

「いや、如月さんがうちのパーティには注目してるって言ってたじゃない。全部見られているわよ」


 公式コメントが来た事に驚いていると茜がくすくす笑いながら言う。


 :〈協会公式〉このまま十階層ボス攻略頑張ってください。応援しています。多分一パーティでの攻略は最短になると思います。


「最短だって。記録保持者だよ! 十兵衛ちゃん」

「マジか、そんなん狙ってなかったんだがな。むしろ戦闘経験を積む為にゆっくり進んでたんだが」

「アレでゆっくりなのか。最短で攻略しているんだと思ってたよ」

「それはおかしいわよ。十兵衛くん」


 十兵衛がそう言うと最澄と茜に呆れた目線で見られてしまった。

 忍者の修行は厳しいのだ。正直今のスピードでもかなりセーブしているつもりであった。だが最澄や茜の常識では最短で進んでいると思われていたらしい。


 確かにルート取りは最短ルートを選んでいたが、エンカウントはできるだけ避けないようにしてきた。避けようと思えば避けられたエンカウントでも、できるだけ戦闘経験を積む為に、更には連携の訓練の為に戦っていたのだ。


(こういうところも忍者の家に生まれた弊害なのかな。ちょっと常識外れな感覚を持っちゃってるんだよな。くっ、治せって言われても何が普通だかわからないから治しようがない)


 十兵衛は二人にそういう目線で見られたが、十兵衛のスタイルはもう固まってしまっている。そして最澄も茜も梨沙もついてこれている。だから大丈夫だと思っていたのだ。


「もしかして結構無理させてた?」

「いや、それはないな。十兵衛が強すぎて安定感があるから、無理しているってことはない。と、言うか無理だと思ったら無理だってちゃんと言うさ」

「そうね。安定感は高かったからこの進軍スピードもさもありなんって感じね。十兵衛くんが居なかったら有り得ないスピードではあるけれど、十兵衛くんがいるパーティなら私たちじゃなくても最速記録で十階層突破できるんじゃないかしら。もちろん梨沙ちゃんも戦力になっているけどね」


 十兵衛が問うとそう返って来たので問題はないらしい。

 十兵衛としてはこれからもこのペースで攻略していくつもりではあるので、ついて来てくれないと困るのだ。そういう意味では最澄も茜もこのペースで問題ないと言われてホッとした。


「ちょっと常識を知らないリーダーかも知れないが、これからも宜しくな」

「そんなの一階層からわかってたから今更だぜ? 十兵衛」

「そうね、初日から五階層まで行くなんて思っていなかったもの。多分それも公式記録更新してると思うわよ」

「マジか」


 :公式記録更新草。

 :いや、ってかめっちゃ早いぞ。意識して狙ってた訳じゃないのか。

 :むしろ十兵衛くんに取ってはゆっくり目だった件。

 :そうだったらこんなに注目されないんだよなぁ。

 :記録狙ってるんじゃないかと勝手に思ってた。

 :俺も俺も。


 コメントからも十兵衛のペースは常識外れで、公式記録を狙っているのではないかと思っていたと突っ込まれてしまった。

 だがまぁ良いのだ。パーティメンバーが理解を示してくれている。そして無理なく進んでそれが結果的に記録になるだけだ。

 別に狙っていた訳でもないし、公式記録だからと言って賞金が出る訳ではない。既にパーティ自体は有名になってしまっている。


(もう今更だな。諦めよう)


 コメントからもパーティメンバーからも突っ込まれた十兵衛は、諦める事にした。わざわざ常識に付き合って探索スピードが落ちたり、探索で得られる金額が減ったりする方向性に舵を切る必要性を全く感じなかったからだ。


「あともう少しね、十層のボス部屋前まで行ってしまいましょう」

「おう!」

「わかった」

「あたしも頑張るよ」


 茜が音頭を取り、十兵衛たちはその後数回エンカウントを挟んで十階層のボス部屋の前までたどり着いた。


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