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027.十階層ボスへの挑戦・陸

(見られているな)


 十兵衛たちは順調に探索が進んでいた。あの後三回ほどエンカウントしたが、コボルトリーダーの集団もゴブリンリーダーの集団もきちんと倒す事ができた。最澄はタンクと言う役柄、多少傷を負う場面もあったが、大怪我ではなく、梨沙の回復魔法で治せるレベルだ。


 十兵衛と茜は回避が中心なので攻撃は受けてはいない。忍者刀と薙刀でしっかりと防ぎ、回避し、相手の首を落としたり急所を突く。

 十兵衛か茜が相手の後方に飛び、リーダーとメイジを先に落とす作戦は見事にハマっている。

 だが十兵衛はモンスターの物とは違う視線を感じていた。


(敵、注意)


 ハンドサインで三人に注意を促す。もちろんこの場合の敵とは殺人鬼の事だ。三人もわかっているようで表情が険しくなる。

 なにせモンスターと戦っている最中に不意打ちをされればかなり危険なことになる。そして相手はおそらくそれを狙っている。


「前方におそらくコボルトの集団がいる。蹴散らすぞ。ただ今回は前から純粋に叩き潰す。最澄と梨沙も戦闘に参加してくれ」

「わかった」

「うん、頑張るね」


 おそらく横槍を入れてくるならココだろう。ならば十兵衛と茜が離れてしまうのは悪手だ。

 コボルトソルジャーたちと会敵し、十兵衛たちチーム・暁はまともにぶつかり合う。最澄はソルジャーたちの剣や槍を盾で受け、短槍で反撃している。十兵衛は梨沙を気に掛けながらソルジャーの首を落としている。茜は十兵衛が落としたソルジャーの穴をついて潜り込み、メイジに薙刀を突き立てた。

 コボルトリーダーは一気に形勢が悪くなったので慌てている。


 シュン。


 その瞬間、三本の黒塗りの投げナイフが飛んできた。一本は梨沙の使っているドローンに。そしてもう一本は梨沙に。もう一本は十兵衛に狙いが定まっている。


(予測できていれば不意打ちは不意打ちじゃないんだよ!)


 十兵衛は自身に飛んできた投げナイフを避けて、梨沙に飛んできた投げナイフを忍者刀で弾く。梨沙も気付いていたようで障壁をしっかり張っていたので問題はなかったかも知れない。ドローンには投げナイフが当たったが、梨沙のドローンは特別製だ。

 普通に売っているドローンは装甲がそうでもないが、梨沙と十兵衛のドローンは下層で使われる防具に使われる魔法金属で覆われている。つまり投げナイフ程度では傷すらつかない。

 その間に茜と最澄がコボルトたちを手早く片付ける。


「出てこいよ。やりたいんだろ。こそこそしてんじゃねぇ」

「ふん、言うじゃないか。まだ九階層でうろうろしている雑魚どもが」


 少し遠い場所、五十メートルほど先から黒尽くめの男が現れた。黒尽くめの男は剣と盾を構えているが、装備はおそらく身バレしないように黒尽くめにしているのだろう。正直忍者装束に似ていてそれだけで気に入らない。


「ふん、弱い物いじめしかできない奴が吐くじゃないか。お前の実力なら中層で十分稼げるだろう。もしくは下層にも行けるかもしれない。なんで低層なんかで探索者狩りをしているんだ」

「くくくっ、雑魚の悲鳴と言うのはいつ聞いてもいいもんだ。お前たちは今話題のチーム・暁だろう。だが井の中の蛙であることを思い知らせてやる。上には上がいる。そして絶望の中で死ね!」

「火遁・〈蒼炎刃〉」

「ふん、このくらいっ」


 黒尽くめに対して十兵衛は忍術を放ったが剣で斬り払われてしまった。やはり魔法金属を使った上位の剣だ。一千万以上する業物の筈だ。

 だがその剣も何人、もしくは何十人の人の血を吸った剣だ。魔剣とも言えるかも知れない。


「俺がやる。奴はやばい」

「わかったわ、任せるわね」

「防御は任せておけ。何発かくらいなら俺も防げる」

「私は結界を張っておくね! 十兵衛ちゃん頑張って」


 十兵衛がタイマンでやることを告げると三人は援護するのではなく、離れてくれた。これで安心して戦う事ができる。

 最澄も茜も、まだ殺人鬼の相手をするには早いとわかっているのだ。素直に引いてくれて助かったと十兵衛は思った。


「本気を出すぜ、付いてこれるか?」

「ふん、低層レベルの奴なんかに負けるわけがないだろう」

「その言葉忘れるなよ」


 十兵衛と殺人鬼の死闘が今、始まった。



 ◇ ◇



 ギン、ギンギンッ。刃の交わる音が響く。

 十兵衛は忍者刀二刀流で打ち込んでいるが、殺人鬼はそれを盾と剣でうまくいなしている。


(なかなか強いな。だが親父ほどじゃない!)


 だが十兵衛は焦っていなかった。殺人鬼よりも強い相手と戦った事がある。そして勝った事もある。もちろん命の取り合いではないが、それに近い稽古での話だ。

 更に十兵衛は忍術と言う奥の手がある。負ける筈がない。そう十兵衛は考えていた。


 だが殺人鬼の実力は高い。茜では対処しきれないだろうし、最澄も防御に追われて結果的に追い詰められるだろう。

 十兵衛と茜、最澄の連携はそれなりになってきたとは言え、まだまだだ。そういう意味で十兵衛はタイマンと言う選択を取った。


 四人で立ち向かえば優勢に戦いを進められるかも知れないが、相手はおそらく中層、もしくは下層の探索者だ。茜や最澄を失いかねない。もちろん護衛として梨沙を失えば北条家から叱責が飛ぶでは済まされない。

 梨沙の強力な結界に阻まれて殺人鬼が投げる投げナイフなどは全て弾いている。故に殺人鬼は梨沙たちを殺す事を諦めて十兵衛との戦いに集中している。


 薙ぐ。払う。突く。避けられる。受け止められる。剣が襲ってくる、それをダッキングして避ける。蹴りが飛んでくる。それを籠手で受け止める。


「火よ」


 至近距離で炎が巻き上がる。殺人鬼は火魔法持ちだったのだ。

 だがその程度は予測している。魔力の動きが感じられたので十兵衛は既に炎が巻き上がる瞬間にはバックステップして避けていた。


「これも避けるか。忍者と言うのは優秀なんだな」

「まだまだだぜ。火遁・〈蒼炎刃〉」

「それは効かないと言ったらっ、何ッ?」


 先に放った〈蒼炎刃〉はスピードを半分にして放った物だった。そして今回は最速で放っている。そのスピード差に対応できず、殺人鬼の左腕が飛ぶ。


「ぐはっ、くっ、こんな奴に腕を」

「腕だけじゃなくて首を置いて行って貰うぜ?」

「まだ勝ち誇るには早い! 炎よ、竜巻になれ!」


 渾身の魔力の籠もった火炎竜巻が十兵衛を襲う。だが十兵衛はこの瞬間を待っていた。


「氷遁・〈氷陣壁〉」


 体に氷を纏い、火炎竜巻に突っ込む。


「なん……だ、と」


 火炎竜巻の熱に巻かれながら十兵衛はそれを突っ切り、背中のマチェットを引き抜き、袈裟に殺人鬼を切り裂く。それはトドメとなり、殺人鬼の瞳から色が消え、そのまま倒れ伏した。


「十兵衛ちゃん!」

「待て、梨沙。まだ危ないかも知れない。飛び込んでくるな」


 梨沙は十兵衛に駆け寄ってきたが十兵衛は油断していなかった。故に梨沙を止める。梨沙も十兵衛に言われて駆け寄るのを止めて、結界を張り直した。

 きっかり一分待って、これ以上危険なことはないことを確認した十兵衛は殺人鬼の装備を剥ぎ取り、色々と検めた。そしてやはり爆弾が仕込まれていた。気付かずに装備を剥ぎ取っていれば爆弾が破裂し、巻き込むようになっていたのだ。


 十兵衛は爆弾解除の経験もあるので、慎重に爆弾を解除した。

 そして爆弾の裏にあった探索者証を手に入れる。これで殺人鬼の身元が割れる。慎重な事だと思った。負けた時に備えて爆弾を体に巻き付け、それで居て火魔法を惜しげもなく使う豪胆さ。そして剣術の冴え。強敵だった。

 倒した殺人鬼から三つのスキルオーブが浮き上がる。


 スキルはそのスキルを持っている人間を殺しても得られるのだ。だからこそ、十兵衛や梨沙は狙われやすいといえる。

 茜は薙刀術と剣術、最澄は盾術と短槍術のスキルを持っている。だがそれらは言ってしまえばそれなりにダンジョン探索をしていれば生えてくるスキルだ。スキルオーブがドロップしてもそんな法外な値段にはならない。


 それでも子どもに最初から剣術を持たせたい金持ちの親などが居るので数千万はするが、梨沙の持っている回復魔法や結界魔法は桁が違う。

 もちろん十兵衛の忍術も幾らになるかわからない。そのくらいの値段になる。そしてそのレベルの値段になると常に狙われるのが当たり前の世界になる。


 それがわかっているので十兵衛は本当は梨沙に探索者になって欲しくなかった。

 だが探索を進めるうちに、レベルアップの恩恵と言うのがわかってきた。梨沙のレベルアップを進めれば梨沙の安全度が増す。これは確実だ。


 ならばやはり中層、下層を目指し、有名な探索者として狙われても大丈夫なくらいの実力をつければいい。

 十兵衛は最初探索者になると聞いた時はそんな危ない事をと思っていたが、今は考えが変わっていた。





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