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018.キラービーの巣とクイーンビー

「あっちに大量のモンスターがいるな。十どころか数十、百にも届くかも知れない」

「え、じゃぁアント系かビー系の巣があるんじゃないかしら。数が多いって言うとそれ系が鉄板よね」


 十兵衛が気配察知をすると茜が教えてくれる。十兵衛も知識としては知っているが、茜や最澄はやはり詳しい。


 :キラービーの巣とか一パーティーで戦うもんちゃうで。

 :うん、普通に迂回したほうが良い。

 :数の暴力はマジ危険だからな。

 :茜ちゃんや梨沙ちゃんがインセクト系モンスターに食べられる映像は見たくない。


 コメント欄も迂回を推奨しているが、キラーアントやキラービーの巣の駆除はクエストが出ている。結構な大金だった筈だ。更にクエストが出ているのに気付いてしまったのに迂回すると言うのは十兵衛はイヤだった。


 それに少しずつインセクト系モンスターに慣れてきた──と、言ってもまだまだ悲鳴を上げてインセクト系モンスターを引き寄せてしまっているが──ので、大量のキラービーかキラーアントとの戦いの経験も積ませたいし、十兵衛も積みたい。


 ちなみに八階層はフィールド・森林型だけあってマップはあるが最短ルートと言うのはない。幾つかの推奨ルートはあるが、どのルートを取るのかはパーティの判断次第だ。そしてどのルートでもエンカウントは必至なので他の階層のように他のパーティの後ろをついていき、エンカウントを減らすなどの手は使えない。


「行こう。キラービーでもキラーアントでもクエストが出てた筈だ。俺たちならやれると思う。どうだ、最澄、茜」

「あ~、まぁ今までの戦いを考えると行けると思うんだよな。普通はもっと人数集めてやるクエストなんだと思うが、十兵衛の忍術があれば行けると思う」

「私もそうね。十兵衛頼りになるけれど、うちなら行けると思うわ」

「なんで十兵衛ちゃんはあたしに聞かないの!」

「梨沙に聞くと絶対反対するだろ。聞く意味がない」


 最澄と茜に聞いてみると消極的だが行けるとの判断を返してくれた。梨沙は「そうだけどぉ」と文句たらたらで、それでもやらなければならないことだと自分に言い聞かせ、納得した。


「これで三対一だな。行くぞ、梨沙」

「ふえ~ん。ランダムエンカウントでも辛いのにわざわざ大量にいるところに行く事ないじゃん!」

「そう言うと思って梨沙には聞かなかったんだ。反対一択だろ、梨沙は」

「うぅ。そうだけどぉ。一応パーティリーダーあたしなんですけど」

「じゃぁパーティリーダー権限で行くの無しにして迂回するか?」

「ううん、みんなが行けると思って行こうって思ってるなら行くよ。あたしも守られてばかりはイヤなんだ! 苦手だけど頑張る!」


 :梨沙ちゃんええ子や。

 :さっきから叫んでばっかりだったけどちゃんと結界魔法とか障壁魔法使って虫系モンス倒してたもんな。

 :実力はあるんよ、実力は。ただ苦手なだけで。


「と、言うわけで推定キラーアントかキラービーの巣をちょっと覗いてきます。ただダメだと思ったら普通に撤退するので必ず交戦する訳ではないです。期待値上げないでくださいね」


 :りょ。

 :了解。

 :でも一パーティでキラーアントとかキラービーの巣に突撃するのとか聞いた事ないから期待しているワイがいる。

 :まぁ期待しちゃうよな。

 :普通キラーアントとかキラービーに対しては五パーティくらいで挑むもんだしな。

 :ただチーム・暁なら行けると思ってる俺がいる。

 :そうだな、このパーティなら一パーティでも行けそうな気はする。それだけ実力が桁違いだから。


 ドローンに向かって十兵衛が言うとコメントでも返信が返ってくる。やっぱり視聴者はキラービーやキラーアントの巣駆除に期待してくれているようだ。ただ梨沙の安全を考えると危なそうならば逃げる、が当然正しいので当然逃げと言う選択肢は存在する。


 そんなことを言うなら挑戦しなければ安全だと言われるかも知れないが、今後探索者を続けて行くのならばこのくらいの試練は超えられないと行けないと言う意識がある。だから十兵衛も梨沙に怪我の危険がある百を超えるモンスターの大群を確かめに、そしてできるならば討伐してクエストをクリアすると言うのを目的にしているのだ。


「行こう」

「あぁ、こっちだな」

「わかったわ」

「うぅ……わかったよぉ」


 十兵衛の号令に三人はそれぞれの言葉で返し、十兵衛について来た。



 ◇ ◇



「キラービーの巣だな。ってかキラービーの巣ってあんなに大きいのか」


 ブンブンとうるさい羽音。百を軽く超えるキラービーの大群。そしてその巣は高さ二十mはあるかと思わせるほど大きく、見上げなければならない。

 当然巣の中には幼虫やクイーンがいる筈だ。そしてクイーンを駆除しないとキラービーは一気に数を増やし、探索者の被害が増えるのだ。


 インセクト系モンスターの中でもキラービーは危険な類のモンスターに指定されており、その大群など普通のパーティが間違えて迷い込めば死体になるのは目に見えている。特に八階層に入ったばかりのパーティが出遭えば即パーティ壊滅の憂き目に合うだろう。

 それを防ぐ為に、十兵衛はキラービーの巣の駆除を決めた。


「俺が忍術で大半のキラービーを倒す。でも全滅はさせられないだろうから残ったキラービーの駆除を三人に頼みたい。梨沙は無理しなくていい。最澄、梨沙の護衛頼めるか」

「もちろんだぜ。梨沙ちゃんには指一本触れさせないぜ」

「キラービーは何回か単体で戦ったけれど五体までなら一息で行けると思うわ。私も大丈夫」


 十兵衛は最澄と茜の頼もしい言葉に頷いた。


「あの、あたしも戦うよ。と、言うか戦い方を思いついたの。試していい?」

「いいけど、無理はするなよ」


 梨沙から思いがけない答えが返ってきた。だが梨沙の瞳は自信に満ちあふれている。おそらく思いついた戦い方と言うのに相当な自信があるのだろう。ならば任せてしまうのが正解だ。


 梨沙が自分で自信があると言う時は本当に信用ができる。少なくとも十兵衛は梨沙との長い付き合いの中でその信用を裏切られた事はなかったので素直に信用した。


「じゃぁ行くぞ。火遁・〈火炎竜巻〉」


 十兵衛が忍術・〈火炎竜巻〉を使うとキラービーのどでかい巣が炎の竜巻に包まれる。当然巣の周りを守るように飛んでいたキラービーたちが炎にまかれてどんどんと落ちる。むしろ巣を守ろうと炎の竜巻の中にキラービーたちは突っ込んで行き、数十のキラービーが一気に殲滅された。


「すげぇ」

「絶対受けたくないわね。あの範囲攻撃は目視した後で逃げても間に合わないわ」

「ふふん、十兵衛ちゃんは凄いんだから」


 最澄と茜はしっかりと戦闘態勢を取っている。まだキラービーは残っているし、当然巣にいるはずのクイーンもいる。そしてクイーンには近衛のより上格の近衛蜂が守っているはずだ。そこまでは火炎竜巻で倒せたとは思っていない。つまり戦いはこれからなのだ。


「来るぞ」

「いつでも!」

「あたしもやるよっ!」


 巣が黒焦げになり、火炎竜巻が収まるとキラービーたちは憤怒の雰囲気を纏って十兵衛たち暁に殺到してきた。


「結界術・〈六角結界〉!」


 梨沙の結界術でキラービーたちが突進の勢いを殺される。結界は解かれ、そこを十兵衛と茜が突進する。飛んでいるキラービーに一気に五本の棒手裏剣を放つ。キラービーを貫通しないように、しかししっかり倒せるように加減された棒手裏剣だ。


 加減する理由は回収するためだ。十兵衛の棒手裏剣は黒魔鉄で作られた逸品で一本だけでも数万する高級品だ。北条家から支給されるとは言え、できるだけ無くしたくはない。

 茜の薙刀も冴えている。一振りすれば二体から三体のキラービーが胴で泣き別れになっている。当然それがトドメとなり、キラービーたちは魔石へと変化していく。


「結界術・〈二重障壁・殻〉」


 梨沙は二枚の巨大な障壁を生み出し、それでキラービーを挟む事で倒す事に成功している。


(なるほど、うまい使い方だ。やっぱり梨沙はセンスがあるな)


 十m四方の巨大な障壁だ。素早いキラービーでも挟まれたら逃げられない。空中に居て茜の薙刀が届かない敵をメインに狙っているようで、梨沙に近づこうとするキラービーは最澄がしっかりと露払いをしている。

 戦闘をしながら梨沙たちのことも気にしていたが、茜含めて気にしなくても問題はなさそうだと思い、十兵衛は殲滅速度を上げた。


「ふぅ、もう大体倒した……よね」

「あぁ、羽音も聞こえないしな。いや、なんか聞こえてきたぞ」

「あぁ、これからが本番だ。近衛のキラービーが出てきたぞ。あとクイーンもな」

「……大きい」


 近衛のキラービーが二十体ほど。そして五mはあるかと言う巨大なクイーンビーが焼けた巣をバリバリと食い破りながら出てくる。

 巣を丸焼けにされ、兵隊であるキラービーたちを倒されたのに相当お冠なのだろう。殺気が十兵衛たちにビリビリと伝わってくる。


「やるぞ、あいつらで最後だ」

「わかったよ、十兵衛ちゃん!」

「おうっ。やるぜっ」

「トドメは私が頂くわ!」


 怒り狂うクイーンたちを前にもチーム・暁のメンバーは負けていない。しっかりと戦闘態勢を取り、油断も当然なしにそれぞれの得物を向けて、戦闘に入った。


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