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012.帰還、打ち上げ

「お帰りなさいませ、長い間潜っていたようでしたが大丈夫でしたか?」

「あ、ただいまです。大丈夫ですよ。六階層入口の転移球まで登録しに行ったのでどうしても時間が掛かってしまいました」


 五階層を攻略して帰ってくると受付嬢の方に心配されてしまった。なにせチーム・暁は作ったばかりのパーティなのだ。そして今日が初めてダンジョンに潜ると言うのは受付嬢さんにはバレバレだ。

 朝潜り始めて十五時間くらいダンジョン内に居たので心配を掛けてしまったのかなと十兵衛は少し反省した。


「えっ、いきなり五階層まで行ったんですか!?」

「えぇ、パーティの慣熟も兼ねながら転移球に登録できました」


 受付嬢さんにも驚かれてしまったが、五階層までのダンジョン探索で危ない場面はなかった。むしろ梨沙の結界が万能過ぎて梨沙さえ居れば初心者でも五階層に行けてしまうくらい梨沙の結界魔法は強かった。


 当然それに頼った攻略はしていない。十兵衛の中級以上の忍術も使っていないし、最澄や茜もまだまだ余力を残している。


 ただ今日はもう十分潜ったし、ダンジョン内で寝泊まりする準備もしていないので今日は解散と言うだけだ。

 深い階層になるとダンジョンのフィールド自体が広くなったり、洞窟型のフィールドでも最短ルートでもかなりの距離歩かされたりと必然ダンジョンに長い間居なくてはならないと言うのは当たり前になる。五階層一気に攻略なんて低階層でしか通用しない。通常はダンジョンに寝泊まりするのだ。


「あんまり無理しないでくださいね。特に六階層以降、八階層なんかまではするする行けた探索者の方がやられることが多いんです」

「肝に命じます」


 八階層は魔の八階層と呼ばれている。フィールド型で森林タイプ。更に襲ってくるモンスターに昆虫系が多く、空を飛ぶモンスターが初めて出てくる階層だ。遠距離攻撃もしてくるので、対処できるパーティでないと痛い目に遭う、とは調べたデータでは知っている。

 ただまだ未踏破層なので、実際に行ってみないとどれほど厳しいかはわからない。


「あと、これはまだ未確認情報なんですが、装備の良い初心者さんが狙われる事件が最近多いんです。そういう意味でもチーム・暁さんたちは狙われると思うので気を付けてください」

「わかりました」


 探索者の格言で「受付嬢の言う事は素直に聞け」と言うのがある。受付嬢は公務員であり、実際に多くの探索者の生き死にを見ている立場だ。故に色々と助言をくれる立場であり、その助言は生き死にに直結することがある。

 十兵衛以外の三人もわかっているようで、助言をくれた受付嬢さんの話をしっかり聞いている。


(装備で狙われるか、考えた事もなかったな)


 実際四人の装備はとても良い。特に十兵衛と梨沙の装備は店売り品ではなく一点物だ。しかも北条家が本気で作った一点物である。値段にすると幾らになるのか想像もつかない。

 それを狙うと言うのは北条家を敵に回すと同義なのだが、犯罪者にはそれはわからないだろう。


 北条家を敵に回すと言う事は風魔忍者に付け狙われると言う事だ。報復で死ぬより苦しい目に遭うことは間違いない。

 だがそれは結果であって、十兵衛や梨沙の命が掛かっているのだ。十兵衛はもちろん死にたくはないし、梨沙を死なせるつもりは毛頭ない。頭の片隅に常に他の探索者に注意というのをしっかりと十兵衛は刻み込んだ。



 ◇ ◇



「かんぱ~い」

「って言ってもジュースだけどね」

「まぁそれはね。もう二年待ちましょう」

「茜さんは一年でしょう。いいな~」


 十五時間以上潜っていたが、全員元気だったので初探索成功の打ち上げを行う事になった。ちょっとおしゃれな居酒屋で料理が美味しいと評判の店だが実はここも北条グループ傘下だったりする。

 テーブルに並べられたごちそうを摘みながら、今日の反省点……は、あまりなかったので素直に成功を喜び合う。


「ねぇ、十兵衛。これ見て」

「ん? スレッド?」

「うん、あたしたちの事が書かれてるよ」


 梨沙に見せられたスマホにはダンジョン探索者についてのスレッドが表示されており、その中で「期待の新星? ダンジョンにガチ忍者現る」と書いてあった。


 忍術を使う探索者は他にもいる筈だが、公にしている者は少ない。忍術だと言わずに、金に物を言わせてスキルオーブを手に入れた風を装ったり、実際にスキルオーブをドロップして魔法を使ったりしている探索者が多い。


 十兵衛は氏康から与えられた装備が明らかに忍者アーマーであったのと、父から特に隠せと言う指令もなかったので普通に忍術を使っている。

 と、言うか忍者がダンジョンに入っていても忍術と言うスキルが生えるとは限らない。むしろ極稀だと聞いている。


「まだ疑問形だし、そんなに目立ってるわけじゃないでしょ」

「え、いや。トゥイッターで普通にトレンド入りしてるよ?」

「マジか。でも今更忍術じゃありませんとか言えないしな。普通に隠してないし」

「そうね。ってか十兵衛ちゃんは十兵衛ちゃんらしく戦えばいいと思うよ」


 梨沙に言われて自分のスマホでも確認したがかなりニュースになっているようだ。到達階層を伸ばせば伸ばすほど注目されるだろう。実際十五時間を超える探索で最初は十人くらいしか居なかったが、最終的には数百人が配信を見ていた。気にはしていなかったが、初心者を見守る人々にしては多い。それだけ注目されていたのだろう。


「そんな目立ってたかな」

「まぁ忍者ってだけで珍しいからな。しかも十兵衛はガチ忍者だし。忍術以外の体術とか凄いと思ったぞ」

「うん、忍者ってこんなに凄いんだってびっくりした」


 最澄と茜にも言われてしまった。


 忍術はユニークスキルではないが、激レアスキルであることは間違いない。当然探索者フリークの人々も忍術を配信で見る機会はそうないだろう。

 今回の探索では火遁と風遁を使ってみたが良い感じに使えたと思う。


 フレンドリーファイアが怖いので範囲系忍術は使っていないが、どれも効果覿面であった。これなら五階層どころか十階層まではあまり苦労はしないだろうなとは思う。


 ただ十兵衛の忍術に頼ってしまうと梨沙はもとより最澄や茜も育たないので、十兵衛の忍術に頼り切らない探索をしようと言う話はしっかりとした。便利な物に頼り切ってしまうと成長に繋がらないからだ。

 それは最澄と茜に言われて十兵衛もなるほどと思ったので同意した。


「まぁ、そうは言っても忍術を自重する気はないけどね。自重して誰か大怪我でもしたら本末転倒だし」

「そうだね。あたしの回復魔法でも欠損とかはまだ直せないから、骨折くらいまでに抑えて欲しいかな」

「回復魔法あるの強いよな。今日は使わなかったけど、今後怪我してもすぐに復帰できると思うと安心感が違う」


 梨沙の回復魔法はまだレベルが低い事もあってそれほどの効果はない。だがそれでも軽い骨折くらいなら治すことができる。

 開放骨折や複雑骨折になると整復が必要になるので、そこは十兵衛の得意分野だ。痛いが骨を正しい位置に治すことができるし、当然武道を修めている茜や梨沙も治す事ができる。


 最澄はそういうのは分野外らしいが、四人中三人も整復ができるのであれば問題ない。むしろ一人居れば良いのだが、その一人が怪我してしまうとどうしようもなくなってしまうので、できれば複数人いるのが望ましい。


 骨折の整復はギルドで講習として受けられるのだが、最澄は講習は受けたが実際にやったことはないらしい。十兵衛と茜、梨沙は経験者だ。

 自分の肩の脱臼なども自分で入れられるし、骨折も手が届かない場所でなければ自身で治すことができる。


「やっぱいいパーティだよな。俺ここ間違えて抜けたら他にいけなさそう」


 最澄のそのセリフにみんなが笑い、楽しい打ち上げになった。


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