011.五階層へ
「十兵衛の忍術を組み込むとこのレベルだと連携訓練にならないな」
「そうね、ちょっと忍術強すぎよね」
最澄と茜が四階層で言った。実際十兵衛は忍術を解禁し、それを使った連携をしようとしているのだが、四階層で出てくるゴブリンライダーとホブゴブリンたちでは十兵衛の忍術一撃で倒しきれてしまうのだ。
「じゃぁしばらく忍術は封印するよ。通常状態での連携の確認をしよう」
「そうね、あたしとか全然戦えてないし。ってか最澄と茜も戦ってないしね。全部十兵衛がやっちゃってる」
「お、次は五体来るよ。二体は俺がやるから残り三体を三人でやってくれ」
ちょうど索敵に五体の反応があったので、忍術なしでの戦いをやってみることにすることを十兵衛は提案した。
「了解」
「やっと薙刀を振れるわ。むしろここまで殆ど出番なかったもの」
「あたしも戦えるの嬉しい!」
「梨沙は結界魔法とかがどの程度有効か色々試してみてくれよな。怪我したメンバーは居ないから回復魔法はまだ必要ないと思うけど」
「りょうか~い」
話していると敵が来たので十兵衛が突っ込み、そのまま駆け抜けて後ろに周り、後ろの二体を忍者刀で切り刻む。
「おらぁっ!」
最澄が盾でゴブリンの攻撃を受け、短槍で急所を狙う。茜は先を取り、ゴブリンに攻撃される前に倒してしまう。梨沙はゴブリンの一撃を杖で受け、その後蹴りで首を折って倒した。
(流石の体術だな。体術だけでゴブリン程度なら相手にならないか。いや、でももっと深い階層で出てくるブラックゴブリンとかは強いって言うからゴブリン全体を舐めたら痛い目に会うな)
十兵衛は三人の戦いを見て十分戦えると思った。ただ個々の戦闘力が高すぎるおかげで四階層では正直連携とかは意味をなさない。普通に戦えば皆勝ててしまうのだ。
「凄いやりやすいわ。このパーティ」
「あぁ、俺も今まで組んできたパーティの中で一番だ」
ただ茜と最澄の意見は違うようだ。個々の実力があり、連携する必要すらない。そんな実力者が集まったパーティは初めてだと感動している。
:いや、めっちゃ強いよこのパーティ。
:うん、これからどこまで行くかめちゃくちゃ楽しみ。
:茜さん推しです。
:俺は梨沙ちゃんかな。
:やっぱ十兵衛くんでしょ。
:最澄くん派居ないの? 背も高くてイケメンじゃん。
コメントも戦闘になっても安心して見ていられるのかなんだかまったりしている。ゴブリンの集団と戦闘してもハラハラする部分はないので、視聴者たちもゆったりと見れているようだ。
(ちゃんとした戦闘も見せたいな。もちろんすぐの話じゃないけれど)
このパーティならもっと奥に行ける。十兵衛はそう確信しているが、では何階層まで行けるのかまでは行ってみないとわからない。そしてやはり難所と言うのはあるので、どこで躓くかはわからないのだ。
小さな小石でも躓けばパーティメンバーを失う事すらあるのだ。ダンジョン探索は遊びではない。
梨沙も遊び感覚のように見えるが、しっかり本人は鍛えているし、プリマヴェーラとして良い魔法を持っているのでそれを活かして探索者になりたいと志しているので、決して遊びではないことはわかっている。
と、言うか梨沙にはしっかりと両親や十兵衛からその事は言い聞かせている。
ポーションや回復魔法などで怪我や病気は昔に比べれば遥かに治りやすくなったと親などから聞いているが、それでも失われた命は戻らない。蘇生薬は世界で一番ダンジョン探索が進んでいるアメリカでも見つかっていないのだ。
ただもしかしたら蘇生薬がダンジョンから発掘されるかも知れないというので、金持ちで死んだ人はコールドスリープポッドに入れて死体を保存している人たちもいるとは聞いたことがある。
「とりあえず今日は六層の転移球まで行って地上に戻ろう。連携は六層より下で練習すればいいと思う。四層や五層だとあんまり連携の必要性を感じないからね」
「そうね、と、言うか連携しなくても勝てちゃうこのパーティが異常なのよ。レオ先輩がこのパーティを推してくれて本当に良かったわ」
「あぁ、俺もレオ先輩に誘われて入るの決めたけど、本当にレオ先輩の話が来て良かったと思ってる。宜しくな、十兵衛、茜、梨沙」
「こちらこそ宜しく。初心者のあたしのパーティに茜と最澄が入ってくれて本当に感謝してるよ」
十兵衛が提案すると茜と最澄がチーム・暁に入れた事が良かったと言い、梨沙は二人が入ってくれたことに感謝する。
梨沙は未経験者であり、二人は経験者だ。通常未経験者は余程でなければ経験者と組む機会はそうそうない。そういう者たちは既にどこかのパーティに入っているからだ。
「俺も二人の実力が確かだとわかってホッとしているよ。宜しくな、茜、最澄」
「あぁ、宜しく。と、言うか忍者強すぎだろ。絶対チートだって」
「それね。あれほど強いとは思わなかったわ。しかも初級忍術ってことはもっと上の忍術もあるんでしょう? 十階層なんて簡単に抜けてしまえそうよね」
十兵衛が二人に向き合うとやはり十兵衛の忍術は反則らしい。
ただ十兵衛の叔父に当たる人が探索者をやっているが、やはり深い階層まで潜っているプロ探索者なので風魔忍者をやっていればそのくらいにはなれると思っている。他にも風魔忍者で探索者を現役でやっている者は多い。……基本配信はしていないので名は売れていないが。
ただいつかは勝つと決めている。少なくとも忍術でも体術でも剣術でも叔父に負けるとは十兵衛は思っていないからだ。単純に負けているのはレベル差だけ。十兵衛はそう思っていた。
ただダンジョンと言うのは特殊な空間だ。忍者の訓練は基本対人の訓練しかしていない。故にゴブリンライダーが乗っているウルフなどは少し戦いづらい。この辺のバランスはちゃんとチューニングしなければならないだろうと十兵衛は思っている。
「お、そろそろ五階層だな。やっぱりマップがあると違うな。それにしてもあれだけ居たのにあまり他の探索者とすれ違わないな」
「それでも三チームくらい追い抜いたじゃないか。まぁ基本探索者は馴れ合わないからな。信用できるチーム以外は少し距離を置く程度で丁度いいとは言われているな。まぁ実際に襲われた事はないんだが、全国規模で見ればそういう事件が実際に起きているしな」
最澄の言う通りダンジョン内での探索者の諍いと言うのは結構あるらしい。横殴りや酷いと魔石などを奪ったりする犯罪がある。そういう輩はわざと質の悪いドローンを使って一時的に故障させ、犯罪を起こすそうだ。
当然相手の探索者チームもドローンを使っているが、それらも無効化する手段があると言う。
ドローンでの配信などは念の為であって、犯罪抑止力はあっても、犯罪を完全になくす事はできない。
実際諍いが発展して殺し合いになってしまったとか、スキルオーブなどの高額なドロップ品に目が眩んで殺人事件が起きたりなどは日本だけでなく世界中で起きているダンジョン内犯罪だ。
「警察や自衛隊もダンジョンに潜っているけれどもっと深い階層だもんな。もっと目を光らせてくれればいいんだけど」
「流石にそんなに人員は割けないんだろ。地上の治安も守らないといけないしな」
「ただダンジョンで鍛えた犯罪者を捕まえる為に、やっぱり警察もスペシャルフォースとしてダンジョンの中で警察官を鍛えているものね。魔法持ちとかに普通の警官では太刀打ちできないわ」
十兵衛が溢すが最澄と茜から現実視点での話をされてしまう。
実際警察が当てになるのならば、梨沙や北条家に護衛など要らない。
北条家は風魔忍者と鎌倉、室町時代から関係がとされているので、主従としての歴史も長く、護衛にも事欠かないが、北条グループの強さに嫉妬に狂った他の成り上がりなどで金銭を得た経済人などは犯罪者を雇い、狙ってきたりするのだ。財界に長くいる重鎮たちは北条家の怖さをわかっているので北条家を狙ったりはしない。
警察は事件が起こってから対応することが多く、抑止力にはなっても犯罪をなくすことはできない。こればかりは仕方ない事だと十兵衛も知っている。
「お、五層の階段だ。行こうぜ。流石に一日で五層歩くのだけでも疲れた。パフォーマンスが落ちると余裕な層でも危なくなったりするから緊張感持って行こうぜ。こんなところで躓いたらつまらないからな」
「了解」
最澄の言葉にしっかりと全員が緊張感を持って、五層に踏み込んだ。




