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100.甲賀忍者たちの決断

「襲撃!?」

「大丈夫だったの?」

「ここにいるんだから大丈夫だよ~」


 昨晩襲撃があった事を知らせると最澄と茜が驚く。梨沙は知っているので普段通りだ。


「大丈夫だ。撃退したからな。だが相手も凄腕だった。うちの忍者たちと同格で、山の中とは言えスナイパーライフルや自動小銃を使ってきたからな。流石に避けきれん。何人かはポーションの世話になったな」


 風魔忍者には当然医者が居る。銃弾をピンセットで引き抜き、ポーションを掛けるだけの簡単なお仕事だ。致命的な部位さえ守っていればそうそう死ぬ事はない。レベルアップした忍者なら尚の事だ。

 十兵衛もスナイパーライフルの弾を頭に直撃されても死ぬかどうかはわからない。レベルアップとは存在強度を上げる事。地上で作られた、魔力の籠もっていない銃弾など物ともしない。少なくとも下層探索者とはそういう存在だ。

 最澄や茜、梨沙も同様だ。多分銃で撃った程度では、脳味噌や心臓に直撃でもしない限りは死なない。皆ポーションを持っている。最悪腹の中に銃弾を抱えて出血を抑えれば痛いは痛いがそのまま戦える。

 ダンジョンの中で最澄や茜がどれほどの傷を受けたか。数える気も起きない。血が流れるどころではない。腕が千切れかけた事すらある。

 だがそんなのは探索者では日常だ。だから十兵衛も襲撃を受けたことを気にしてすら居なかった。撃退して今生きている。それで十分だ。


「今日の探索大丈夫なの?」

「あぁ、問題ない。俺は一撃も喰らってないからな。数人やむを得ず殺したが、まぁ正当防衛の範疇だろ」


 茜に問われるが、十兵衛は問題ないと一蹴した。

 さぁ楽しいダンジョン探索だ。二十二層の半分までは攻略した。今日はもっと奥まで行こう。そう思った時に声が掛けられた。


「よぉ、十兵衛。調子良さそうじゃないか」

「レオ先輩」


 そこに居たのはチーム・アレクシオンの面々だった。


「それで、前言ってたクランを作る件、考えてくれたか?」

「あ~、あんまり考えてませんでした」

「私たちはチーム・暁と一緒に攻略したいんだよ。そしてそれならクランを作るのが手っ取り早い。十兵衛がクランを作れば入りたいパーティは山程出るはずだぞ」

「その選定が面倒くさいんですよ」

「じゃぁお父さんに任せちゃえばいいよ~」

「なるほど?」


 北条家の情報部は風魔忍者だ。表も裏も全て調べられる。伸びしろのない奴等、やる気のない奴等は弾いてしまえば良い。そして表も裏も真っ白な奴だけを入れるのだ。それなら大所帯にならずに済むだろう。

 少数精鋭のクランならば十兵衛でもなんとかなる。と、言うか優秀な事務員を雇って任せてしまえば良いのだ。

 十兵衛たちは探索者だ。ダンジョンを潜るのが仕事であり、本分である。面倒くさいクラン運営など信頼できる人間に投げつけてしまえば良いのだ。

 そう考えれば風間の家を支えてくれている分家の人間など丁度よい人材が幾らか思い出される。琢磨に頼んで貸して貰えばよい。


「うん、それならいいかもな」

「マジか、言ってみるもんだな」

「ギャンブルですか?」

「まぁクランを作れなんて普通は言わないさ。私が作って入らないかと誘うのが筋だ。だが十兵衛たちはどんどんと攻略を進めて行くだろう? 私たちチーム・アレクシオンは今は同等の力を持っているがチーム・暁の進行速度にはついていけない。死にたくないからね」


 暗にそれは十兵衛たちは死線の上を踊っていると言っているようなものだ。そのくらいは十兵衛もわかる。最澄たちはそれをわかっていて十兵衛に付き従っている。

 いつ死ぬかわからない。だが死ぬならダンジョンの奥底が良い。誰も見たことのない世界。それこそ五十階層を超えた先を見てから死にたい。そう十兵衛は思う。

 ただ梨沙の存在がある。風魔忍者の存在がある。十兵衛の肩に背負われた責任は思い。十兵衛は自分の命の使い所をきちんと考えなければならない。例えば梨沙を庇って死ぬとか、一族の為に死ぬとか、北条家の為に死ぬとか。自分勝手に死ぬ事は許される立場ではないのだ。


(それに俺も梨沙との子を見てみたいしな)


 小太郎になれなくても良い。だが自分と梨沙の結晶は見てみたい。会ってみたい。そういう欲望はある。

 今はまだそんな時期ではないが、いずれそうなる。それは決まったことだ。誰も覆す事はできない。仮令氏康でも、梨沙が猛反対し、家出すらするだろう性格をわかっているので、反故にはできないのだ。


「じゃぁクランの件、考えて起きますね」

「わかった。良い報告を待ってるよ」

「十兵衛ちゃんクラン作るの?」

「まぁ先々を考えると強力な味方は必要だろ? チーム・暁だけで五十層とか潜れるとは流石に俺も言わないよ」

「五十層て」


 最澄が呆れたように言った。五十層は世界の誰も見たことのない世界だ。しかし十兵衛はその世界を、世界で一番始めに見て見たい。

 まだ二十二層で何を言っているんだと言われそうだが、夢を見るだけなら簡単だ。後は実力を伸ばし、実現する。それだけの力がチーム・暁にはあると信じている。後はその信頼に彼らが応えてくれるだけで良い。

 今の処、最澄も茜も梨沙もしっかり十兵衛の期待に応えた働きをしてくれている。このまま続けてくれれば、三十層、四十層と段階を踏んで五十層まで到達できる。そう十兵衛は確信していた。


(〈龍眼〉も手に入れたしな。真おじさんからの早く深層に来いってメッセージだもんな)


 〈龍眼〉は世界に幾つかしか存在しないと言われている幻のスキルオーブだ。それをポンとくれた。それは期待の現れである。期待には応えなければならない。期待に応えることが、真への恩返しとなる。それを十兵衛はわかっていた。


「さぁ、行こう。冒険へ。二十二層の先へ」

「わかった、ついていくよ、十兵衛」

「私もよ。いつまでも負けていられはしないわ」

「ふふん、十兵衛ちゃんの横には常にあたしがいるんだよ」


 チーム・暁はモチベーションもコンセントレーションも高い。これならば問題はない。イレギュラーが起きても〈龍眼〉があれば対処できる。万全だ。

 さぁ今日も楽しい冒険だ。そう思い、十兵衛はダンジョンの入口に足を踏み入れた。



 ◇ ◇



「ふむ、雇って欲しいと? 先の襲撃はお前たちだろう」

「その通りでございます。ですが我らも雇われの身。どうしても断れない筋からの指示でした。しかしもう流浪の立場は辛いのです。どうか、どうか、我らに御慈悲を」


 氏康の元へ一人の壮年の男性が居た。全ての装備を解除され、風魔忍者に警戒されながらも、威風堂々とその男は氏康に頭をさげた。

 その男は先日十兵衛たちを襲った甲賀忍者の頭領である。風格があり、強力な武力も持っている。だが仕える先を求め、北条家に頭を下げに来たのだ。


「北条家専属となると言うことか。他の者からの仕事は一切請け負わない。そういうことだな?」

「はい、その通りでございます。また、宿敵でありながら、伊賀の者たちも同じように考えている……、と聞いています」

「ふむ、甲賀と伊賀か。どちらも金で雇われ、闇に生きた一族よな。徳川の半蔵は別だが、戦国の世が始まる前からの因縁であろう。良いのか? 同じ主君を抱く事になるぞ。そして風魔の下に付くことになる。耐えられるか」


 男は胸を張って言った。流石に甲賀の頭領である。氏康に一歩も引いていない。


「平和と安寧が与えられるのであれば、我らは狗にでもなりましょう」

「そうか、それほどの覚悟があるのであれば、雇ってやっても良い」

「本当ですか!?」

「あぁ、ただしけじめは必要だ。わかるな?」

「はい。某の首で良ければ」

「首などいらんわ。働きで報いろ。私は風魔の風間十兵衛を買っている。奴の下につけ。そしてダンジョン攻略を助けるのだ。奇しくも十兵衛はクランを作ろうとしている。そのクランに入り、チーム・暁を助けるのだ。できるか?」

「ご命令とあらば。甲賀忍者には下層探索者も深層探索者も居ます。最高到達階層は三十六階層」


 氏康は髭を撫でながら頷いた。


「悪くない。では一旦保留とする。まずは働きを見せよ。そして結果を見せたその時、正式にお主らの一族を雇い入れる事にしよう。まずは十兵衛を狙った者の首を取って来ることからだな。愛娘の伴侶の首を狙うなど許しがたい」

「畏まりました。有難き幸せ」


 十兵衛の知らぬ間に、様々な闇が蠢いていた。




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― 新着の感想 ―
こんばんは。 累計100話到達おめでとうございます! 伊賀と甲賀も血筋が現存してるんですねこの世界…。という事は伊賀の上忍三家、甲賀の望月・海野・根津の家も血筋を遺してるのかな? 後は(厳密には忍軍…
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