分断された世界
彼女は人族だった。
「あんた達何処から此処に入ったの?艀に船が無かったんだけど。」
聞けば彼女は此処の北隣に位置する国の、探検者ギルドの探検者だ,と言った。
探検者?冒険者ではなく?
「僕達は・・なんて言うか・・・あの北の魔境を通り抜けてきたんだ。」
「う・・・うそ。あの魔境は獣人族でも無理だったのに。」
彼女の国には、この廃墟の住人だった獣人が移住していた。六十年前にスタンピートがあって此処を離れた人々だった。
此処に居た獣人族は東の魔境を超えて、彼女の国ノーズと行き来していたようだ。獣人は越えられたが人族は無理なので船で来たそうだ。魔境をグルリと迂回して。
今は偶に依頼で、此処の様子を見に来ている。獣人族がまた此処に帰ってくる為の準備らしい。
彼女のパーティーを紹介された。人族の男3人女2人、獣人族の男1人だ。この獣人族の男の依頼で、彼の護衛らしい。
「此は,空気が変わっている。マナが復活する兆しかも知れない」獣人族の男が騒いでいた。
其れはダンジョンコアを僕が壊したせいだな。
僕はその事を話してあげた。ダンジョンコアは壊すべきだとも。
獣人族の男は、
「私たちはあのダンジョンのおかげで交易が出来ていたのです。なのにダンジョンのせいですべてを失った。私は幼かったけれどおの恐ろしさは忘れられない。」
彼は,七十歳だった。獣人族の寿命は大体八十歳だ。見た目はまだ、それほど年取っては見えないから、マナが多いのだろう。
これからノーズにかえって、村の皆と帰国の話し合いをするそうだ。
僕達はそこで別れた。
彼女達は僕達のことを聞きたそうにしていたが、聞いてこなかった。
あの魔境を越えてきた事は信じて居なかったのかも知れない。若しかしたら、何かの事件に巻き込まれるかも知れないと、考えたのかも知れない。
真逆もう一つの世界があちら側にあるとは,話しても嘘だと思うだろう。
僕とヨウゼフは取り敢えずこの話を、国に持ち帰り、皆と話し合わなければならない。
僕達はここの調査を終えて、帰ることにした。
ヌポポは未だ、さなぎのままだった。