魔境調査
今日から,魔境の調査に入る。行くのは僕とヨウゼフの二人だ。
白熊オレオが一緒に行きたそうな顔をしていたが、無理だ。僕もヨウゼフも自分だけしか守れない。
もう少し鍛錬すれば複数人、光の盾で囲うことが出来るかもしれないが。
二人だけで調査となると、かなり日数が掛かるだろう。若しかしたら数ヶ月かかるかも知れない。
ヨウゼフは緊張している。ミミはヨウゼフの見送りをしに来ているからだ。ミミには、話して聞かせたら、あっさり納得してくれた。あんなにくっ付いていたのに、今は良い距離感を保って居る。
僕の収納にはたっぷり食材が入っている。他にも必要と思う物は手当たり次第に突っ込んだ。おかげで、僕の塔の中は空っぽだ。
ヨウゼフも万一の準備はしている。背負子に最低限必要な物が入っている。
皆の見ている前で、僕達は,魔境に入っていった。
僕とヨウゼフの二人同時に光の盾を発現させた。ヨウゼフは俊足。僕は剛脚。そして走った。
十二時間後魔境を抜けた。
「兄貴、此処が新地ですか。」
ヨウゼフはグルリと周りを見まわした。そして海の方に走っていった。
青春か!僕は余り海は気に掛けなかったが、若者は取り敢えず海を見ると走る。
結構な距離があるのに。僕はあいつをほっといて、野営の準備だ。
簡易の小屋を造る。チョット大きめにしてお互いのプライバシーを守る。食事は外でも良いか。外に水場を造っておく。便所は、離れた処に穴を掘っておく。赤スライムが見つかったら良いが。風呂は別に小屋を建て,風呂用の石桶を造っておく。数ヶ月はここを拠点にする。
ここを起点に三方を探索しよう。ずっと後方に魔境が、濃いマナを漂わせていた。
「兄貴ー。何か,在るっす!」またか。あいつはいつも何か見付けてくる。ヨウゼフが駆け寄ってきて、早く早くとせかす。
僕は、よっこいしょっと掛け声をだして、立ち上がり、ヨウゼフと一緒に『何かの物』目がけ走った。
二時間走って、海縁に着くと、鯨が陸に打ち上げられていた。大きい。今にも死にそうだ。僕は鑑定をかけると、魔物だった。海の魔物か。此方は鯨が魔物なのか。
「海の魔物だ。もう、マナが尽きかけている。」
「そうっすか。じゃあ、やっちゃっていいですね」」
ヨウゼフは、剣で、一息に殺した。すごい、剣筋。若しかして。、鑑定を掛けてみると、矢張り剣術のスキルが生えていた。ヨウゼフは、成長している。教えてやると、
「なんか、そんな感じしてたっす。」
僕達は協力して、鯨を解体した。凄い肉の量だ。魔石も巨大だ。マナが殆ど無いので,金にはならないが。僕はふと、海に特殊個体が出たら、と考えて仕舞った。でも海には人が居ない。ダンジョンは出来ないはずだ。
内臓類は分からないので、海に帰した。ヨウゼフが肉の塊を持って
「今夜はステーキでいいっすか?」「ああ、楽しみだ」
油が、普通の陸の動物とは違う旨みがあった。かなり旨かった。
「ヨウゼフ、明日は、川を浚ってみるぞ」「浚う?何か,蟹でもとるんですか?」
「ああ、スライムさ」