Ⅹ 特訓の続き
あれから1週間。
さて、この前の特訓から1週間が経ったわけだが。先輩、テストはいいのか?
「今日も早く来すぎたかな」
暇だったからこの前の公園に早めに来たが、やはり先輩の姿は見当たらない。
「あ、ししょ~!!」
どうやら来たようだ。
「お疲れ様っす。早速やります?」
「うん!まず何からする?」
「その前に、ちゃんと、1日100回やりました?」
「やったよ!」
胸を堂々と張る姿には、嘘はないようである。垂直である。
「じゃ、ちょっと触りまっせ」
「えっ?あ、ちょ!?」
ふむ…。そこそこ筋肉ついたか?くらいだな。もう少し負荷をあげてもいいかもしれない。人間には加減が難しいから気を付けないとな…。
「いいっすね。成果は出てるみたいっす」
「むぅ…」
あれ?俺なんかしたか?
「いきなり触るって何!?せめて一言聞いてからにしてよ!」
あぁ、びっくりしたのね。なるほど。
「そらすいませんした。ちゃんとやってたみたいっすね。これなら、良さそうです」
「あたりまえだよ…まったくもう。初めてだったのに…」
最後のほうはぼそぼそ言ってて聞こえんかったが、ちゃんとはきはき話せばいいのに。
「とりあえず、外周10周してからっすね」
「は~い」
ーーー20分後ーーー
「終わったよ~!!」
「あれ?もう終わったんすか。早いっすね」
最初の1周だけ見て、走り方変わったなとは思ったが、なんと前回より10分も早く帰ってきて、かなり驚いている。
「そりゃ毎日やってたし、早く走れるように研究したし」
だとしたらなんでここまで弱いのかわからんのだが…。1人で強くなれそうでは?
「そうなんすね。じゃ、もうあれやってもよさそうっすね」
「あれって?」
「端的に言えば、居合切りっすね。これができるかできないかで、かなり変わります。先輩みたいに、筋力がなくても打ち勝てる唯一の手段なので」
「へ~」
「とりあえず、ちょっと見ててください」
俺は周りに人がいないことを確認し、ある程度真面目に居合を、持ってきた的めがけて打つ。
この人には1度見られているし、あまり関係がない。
「お~!スパッと!」
「こんな感じっす。人によってやり方はいろいろあるんで、ある程度は威力が出せるやり方、体に負担をかけないやり方を教えますが、その先は自分で開拓してください」
「おっす!」
「じゃあ一回やってみましょう。体験するほうが、上達は早いです」
俺はとりあえず、居合の基礎だけ教えてみることにした。正直、できるようになる気はしない。
「えいやっ!あれ?」
まぁ、だろうな。的は刀が食い込んで外れなくなっているし、ほとんど刺さってもいない。力任せに振るときのあるあるだ。
「刀には、切り方ってのがあります。ただ力任せに振っても威力はでないんす」
「ふむふむ。じゃあどうするの?」
「さっきの動画とってたんで、これ見て、頭の中の俺と比較してみてください」
「わかったよ」
集中した面持ちで、何もしてないように見える先輩。きっと頭の中は、俺にもわからない動きをしていそうだ。
「…」
暇だな。この時間は。あの技、そういえば最近やってねぇな。ま、あれやるとな…。
「…」
そうだ、蒼汰結局あの日どうなったんだろ。ぼろぼろで帰っていたのは覚えてるんだが、いかんせん話聞かずに寝ちまったからな。朝飯が梅干しだけ出てきたときは焦ったな。夫婦喧嘩かっての。
「…なるほど」
どうやら分かったようである。
「ししょーは風の動きと、刃の向きを考えてやってるんだね。空気抵抗を最小限にして振ることで、刀にかける圧力を増やせるんだ」
「大体正解っすね」
「でもなんか、前に見たものとは違ったような…」
「あれは先輩にはできないんで、考えなくていいっす」
身体能力の差が、ありすぎるからな。
「そっか。じゃあ、あとは練習あるのみだ」
「ですね。とりあえず、これ切れるようにはならないと使い物にならないっすから」
「はい!ししょー!」
とはいっても、今の先輩の筋肉量では切れるはずもないから、半分まで刃が行くくらいがせいぜいだろう。
ーーー2時間後ーーー
細かい修正を出しながら、先輩が居合をする姿を見ているが、形にはなってきたというところだろう。居合っぽく見えるって感じだな。
「ちょっと休憩にしましょう」
「そうだね~…」
さすがに疲れが見てとれる。
「先輩、家でも剣振ったりしてます?」
「いや?してないよ」
「じゃあ、家でも剣振ってみましょう。ただまっすぐに振りかざすだけでいいっす。それだけで、だいぶ感覚変わると思いますよ」
「そっか!ししょーがそういうならやってみる!」
「あと、今度から頻度上げましょうか」
「え!いいの!?」
「先輩、体力かなり上がったみたいっすからね。俺の見立てが間違ってたのかもしれませんが、毎日やっても大丈夫かもしれません。ただ、無理は禁物なんで。無理すると、悲しくなりますからね」
「悲しくなる?」
「俺の師匠の言葉です。昔、自分が鍛えた剣士が、みんな無理して剣を握れなくなって。俺には、悲しくなるから無理はするなってめっちゃ言うんです」
「それって、僕が剣を振れなくなったら悲しいってこと?」
「さ、今日はこの辺っすかね」
「え?ちょっとちょっと~。答えてよ~」
余計な事言ったかな。
「蒼汰だが、もうあとがきのネタないってまじ?」
作者:「マジです」




