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嵌められ勇者のRedo Life Ⅳ  作者: 綾部 響
2.美食への誘い
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喜色の仲間たち

仲間たちに武器を渡して、俺たちはそれぞれの部屋へと戻って行った。

後は明日に備えて眠るだけ……なんだが、そう簡単に休む事は出来なかったんだ。

 全員に武器を渡し終えて、俺たちは明日に備えてそれぞれ部屋に引きこもった。と言っても男性陣は4人部屋だから、セリルとシラヌス、ヨウが、さっき渡した武具を嬉しそうに触っている様子が目に入って来るんだけどな。


「なぁなぁ、この『セルティス』の扱いなんだけどさぁ」


 だから、さっき渡した武器の扱いについてやら特性について、すぐに質問できる状態にある。セリルには「セルティス」という両刃の片手斧を渡したんだけど、これまでの片刃とは使い勝手が……と言うよりも、使い方が良く分からないみたいだ。


「あぁ、両刃の戦斧の使い方は……」


 本当は実践で、自分自身で知っていくのが良いんだけど、予備知識を得ておくのも悪くない。特性を理解している、聞いた事があるってのは、まるで知らないよりも遥かに有効だからな。


「両側に、同じ重さの刃がついているから、重たくなるけど攻撃力が上がるんだ」


 柄の両側に、同じ大きさの刃がついているのが両刃武器の特徴だ。その最たる利点は、重量の均一化による破壊力の向上だろうな。想像に難くないんだけど、片刃の時よりも力が入りやすい。しかも重量がある分、多少頑強な鎧や強固な皮膚も突き破る攻撃力が魅力だ。


「へぇ……なるほど、確かにな。でもよぉ、何で戦斧は全部この形状じゃあないんだ?」


「それは、慣れていない者には扱いが難しいからだよ」


 戦斧を主武装としているセリルからは、より実体験からくる質問が投げかけられた。それに対して俺は、出来るだけ簡略に返答したんだ。今のセリルには、難しく理屈を語っても理解出来ないだろうからな。でもまぁ、これが一番の理由なのは間違いない。


 不慣れな者が両刃の武器を使えば、その重量で取り回しが利かないってのはある。戦斧が手に馴染むまでは、扱いやすい片刃斧を使うのが最適だろうな。

 もちろん、両刃斧の利点はそれだけじゃあない。

 継戦能力の向上……刃が2つ付いているという事は、片方が痛んでも反対側で戦える事を意味している。

 特に戦斧は、切ると言うよりも叩きつけると言う扱いが殆どだ。その用法上、早い段階で刃が欠けたり切れ味が落ちるのは仕方がない。切る事を主眼と置いていないとはいえ、断裁力が落ちれば戦闘力が低下するからな。


「そっかぁ……。なら、俺も随分と慣れて来たって事なのか?」


「まぁな。諸刃の武器を使っても、振り回される事はないだろうって判断だよ」


「へっへへぇ!」


 セリルの疑問に答えてやると、何やら随分と嬉しそうに鼻の下を指で擦って顔を赤くしやがった。何がそんなに嬉しいんだろうねぇ。


「じゃあ、俺の武器にも何か特徴があるのか? 以前もらった『カタール』と違って、こっちには武器が付いてないんだけどよ」


 セリルとの話が一段落した直後に、今度はヨウが質問してきた。奴に渡したのは「銀の拳」と呼ばれる戦闘用の篭手だ。確かに見た目だけで言えば、拳の先に刃物が付いていた「カタール」よりも攻撃力が落ちているように見える。


「武闘家系の技術を磨いてレベルも上がり力も強くなってくると、武器は必ずしも必要じゃあないんだ。逆に邪魔になる事だってあるからな」


 刃物や鉤爪の付いている篭手は、少ない攻撃力を補う効果がある。初心者に毛が生えた程度の冒険者ならば有効だけど、ある程度強くなれば必要なくなるんだ。逆に間合いのズレが発生したり、武器が破損して攻撃力が落ちたりしかねないからな。

 ちなみに、更に上級者ともなれば、拳に武器の有無なんて関係なく使いこなしちまう。刃に属性の付与された篭手を、状況に応じて使い分けるなんて芸当も可能だろうな。


「確かに最近は、カタールの刃が邪魔に感じる事もあったなぁ……」


「その点この『銀の拳』なら、拳の部分は硬度の高い魔獣の皮を使用していて、拳を守りつつ相手に強い攻撃が打ち込める。そしてこの手甲部分は〝魔鉱〟を含んだ銀鉱で出来てるからな。防御力も格段に上がってるんだ」


「へぇ……なるほどな。でも、防御を考えたら、もうちょっと硬い素材の方が良いような気もするんだけどな。使い方としては、〝受ける〟と言うより〝流す〟って感じか?」


 さすがはヨウだな、質問がより実践的だ。確かに、力で敵の攻撃を受け止めるんなら、手甲部分には別の素材が望ましいだろうな。でもこの部分に銀鉱を使用したのには訳がある。


「そうだ。この魔鉱を含んだ銀鉱は、防御よりも攻撃に重きを置いていると考えていいだろうな。なんせ、魔法や闘気を通しやすい特性があるからな」


「ヒュウゥ……。そいつはすげぇな!」


 ヨウの技術なら、余程の実力差が無い限り攻撃を受け流す事が出来るだろう。そしてそれが可能だからこそ、手甲には魔銀鉱を使っていると言っても過言じゃあない。

 その事を理解したヨウは、口笛を吹いて喜びを露わにした。俺の説明で、それくらい気に入ったと見える。


「しかし、俺とサリシュには『魔導士の杖』か……。他の者たちの武具に比べれば、些か物足りないような気もするがな……」


 最後にシラヌスが、どこか不満げな言い方を俺に向けて来た。多分、もっと奴の興味を惹く武具を期待していたんだろうけど。


「お前たちのレベル帯で丁度良い杖が無かったんでな。でも、これだってLv20の冒険者でも持っていない方が多いんだぞ?」


「むぅ……。それは……そうなのだが……」


 魔導士の杖は魔術師の杖と同様に、魔力消費なしで〝初級火炎魔法〟を使う事が出来る優れ物だ。魔術師の杖で使えるのが〝初級火球魔法〟だという事を考えれば、〝初級火炎魔法〟が使えるこの魔導士の杖はかなり攻撃力が高いって言えるだろうな。


「『魔術師の杖』同様に、使用者の腕次第で〝初級火炎魔法〟を調整して使えるんだ。シラヌスなら、これを効果的に使えると思えるんだけどな」


 初級とは言え、広域攻撃魔法「火炎門(フラマ・トーア)」が使えるのは、本当に彼らにはピッタリだと思う。使用者の意思で効果範囲が調節できるし、更に自分の魔力を込めれば威力も変えられる。ある意味でこれは、使用者の適性や能力が問われる武器でもあるんだ。


「そ……そうか。それなら俺は、これを完璧に使いこなせて見せよう」


 多分シラヌスは、この「魔導士の杖」を十二分に使いこなすだろうな。それはサリシュも同じだろうけど。勉強家であり努力家でもある彼らなら、この武器の能力を申し分なく引き出してくれるだろう。


 町を離れて冒険を行う際、特に迷宮内を探索する場合に問題となるのは、やはり体力や魔力の消費と回復だろう。体を横たえて一定時間休息すればある程度は回復するんだが、そこはやはり油断したり気の抜けない冒険途中の休憩。万全に回復する方が稀だろう。

 そんな中でこの、魔力を節約できる武具はとても重宝する。特に魔法を使う者たちは、きっとその恩恵に感謝するだろうな。


「あ……ああ、期待してる」


 そう考えての武具のチョイスだったんだけど、何故かシラヌスも顔を赤らめて気合を入れていた。いや、別に褒めた訳じゃあ無いんだけどな。


 実際、過去の戦いでは、サリシュにレベルの見合わない杖を使わせた事もある。しかも能力を向上させる実や薬を服用させての、ハッキリ言って無理やり能力を底上げして、それでも足りない分は己の命まで掛けさせて使用させたんだ。

 そうしなければ生き残れなかった戦いだったから、それ自体は仕方がない。後悔はしているが、その時の判断は間違いじゃあなかったと考えている。

 でも本来ならば、そんな事は避けないといけない。命を懸けて相手を倒す……なんて事態は、絶対に回避しないといけないんだ。

 だから今回は、そういった命に関わる武具を彼ら彼女らに使わせる気はない。目的地の迷宮も、対象の石化鳥も、今回の面子なら間違いなく攻略できるし倒せるだろう。変にレベルの高い武器なんかを渡して、いらない危険を招くなんて愚の骨頂だからな。


(明日は道すがら、それぞれに渡した武器の説明をしておかないといけないかもなぁ……)


 みんな勉強熱心だから、武具を手にすれば自分でどう使えば考えて調べ、話し合うだろう。俺が話す内容は、多分補足程度だろうけどな。


「じゃあ、出発に向けて休むとしよう。道中も、決して安全とは言えないからな」


 俺の言葉を聞いて、珍しく誰からも反論なく、全員が素直にベッドに入ったんだ。


一通りの説明を終えて、仲間たちの感触は上々だった。

これなら恐らくは、マリーシェ達も喜んでくれているだろうな。

問題は使い方だけど……それは明日、改めてだな。

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