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その武器に何を思う  作者: 人鳥迂回


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一触即発

 プランシーは守護団の一員として言葉で注意はしつつも、感情に任せて武器を手に取るようなことはしなかった。流石に一般人に対して武器に手をかければそれなりの処罰があるだろう。俺達はアーティファクトと契約者だが、学園に通っている一般人なのだ。


「答えて。ロージスに敵意を向ける貴方は何?」


 先ほどのグランドの出した威圧感に似た物をプランシーに向けるリーナ。俺はリーナのことを止めようとしたが、グランドから制止をうける。

――どうして止めるんですか。

――プランシーは直情的なところがありますからね。発散させてあげなければ。後でお詫びはしますよ。

 小声で繰り広げられる俺とグランドの会話はリーナとプランシーには聞こえて居なかった。


「私は守護団の団員。プランシー・マーベルです。貴方達みたいな学生とは違い、国のために働くエリートと言えばいいですかね」

「そう。それはどうでもいい」

「どうでも……っ!?貴方が聞いたのでしょう!?」

「ロージスに敵意を向けるのは何故?」

「そこの子供が生意気だからですよ。守護団の団長たるグランドさんに対して不遜な態度。許されるものではありません」

「誰が許さないの?」

「無論守護団が、です」

「プランシー。貴方随分と分不相応に吠えるのね」

「は?私は齢20にして国の守護団に入ったエリートですよ」

「どうしてそんなくだらないことをするの」

「……煽っているんですか?」

「もう貴方に興味はない」


 リーナのその一言にプランシーは激怒し、その場から一歩前に出る。リーナはプランシーに対して興味をなくしたように座りながら目を閉じていた。その反応が更にプランシーの神経を逆撫でする。

 尊敬する守護団長の前ということを忘れ、リーナにつかみかかろうとしたプランシーを止めたのはグランドだった。


「相手は学生ですよ。大人の余裕を持ちなさい」

「ですがこの子供が……」

「貴方の反応も大概ですよ。団舎に返ったら説教をしますので覚悟をしておいてください」

「……分かりました」


 静観していたグランドだったが、手を挙げようとしたプランシーのことはさすがに止めていた。何か起これば俺も止めるつもりだったが、相手方が動いてくれて助かった。

 リーナがプランシーに喧嘩をふっかけた理由は俺に対しての敵意を感じたからだろう。王都に初めてきた時は敵意がある人は攻撃していいと思っていたリーナが、直接的な手段に出なかったのは大きな成長と言える。


 話が終わったグランドは後日団舎に訪れた時は自分の名前を出してくれれば時間を作ると俺に伝えて生徒会室から去っていった。グランドを先頭に生徒会室から出ていく守護団の人たち。最後に出ていくプランシーはリーナの方へ一瞥をくれた。視線を外すと小さな声で話しかけてくる。


「そこのアーティファクト。名前は?」

「リーナ・ローグ。ロージスの契約者」

「覚えました。アーティファクト如きが調子に乗らないよう」


 そう伝えると生徒会室から出ていき、後ろ手に扉を閉めた。

 俺にはプランシーの言葉がはっきり聞こえていた。『アーティファクト如き』とはっきり言葉にしていたのだ。それを言っていたのはシェラタン以外にはおらず、嫌な記憶がよみがえる。だが、国はアーティファクトの管理を徹底しており、特別処置をするほど待遇には力を入れている。国の中枢機関である守護団の団員がアーティファクトを如きということに違和感を覚えた。


「ソロン」

「分かるぞ。聞きたいことが」


 ソロンは眉間に皺を寄せ、蟀谷には青筋が立っているようだった。


「プランシーと言ったか?事もあろうに俺たちの前でアーティファクト如きと言ったな。抗議してもしたりない」


 怒るソロンのことをバレットが宥めていた。手を強く握り、鼻息を荒くする様子は普段の冷静なソロンからは考えられなかった。ソロン達は互いに思い合っている。その相手を如きと馬鹿にされた事で怒りが心頭に達したのだ。宥めるバレットも、ソロンが自分のことで怒ってくれた事が嬉しいのか、落ち着かせながらも口角は上がっている。

 俺も状況整理が進むにつれてプランシーの言葉に対して怒りがこみ上げてきた。陰口ではなく、直接言ってくるところには潔さを感じるが、守護団に所属している奴が言う台詞ではない。団長のグランドの思想といい、プランシーの態度といい、守護団の印象が滅茶苦茶に下がっていた。


「くそっ。あのプランシーとかいう奴、ボコボコにしてえ……。口だけだろあんなん……」


 創作ではでかい口を叩くやつは総じて弱いと決まっているのだ。プランシーは自分のことをエリートだと宣言していたが、誇れるものがそれしかないのだろう。


「ロージス」

「何だ?リーナも面倒なやつに絡まれちまったな」

「あの人にロージスは勝てないよ」

「どういうことだ?頭でっかちのエリートだろ。リーナだって分不相応だって言ってたし」

「違う。私が分不相応だと言ったのは実力に対してやっていることが小物だから。プランシーは強い。もしかしたらヘイルよりも強いかもしれない」


 リーナは冗談を言っているような目ではなかった。


「それはそうだろうな。守護団は実力主義。団長であるグランド殿の補佐に就くような者が弱いはずがない」


 ソロンもリーナの言葉に同調する。バレットの世話の甲斐あってソロンは何時ものような冷静さを取り戻していた。バレットは気分が良くなったのか笑顔を浮かべながらソロンに寄り添っていた。


「強い奴がなんであんな小物みたいな事をしてんだよ」

「分からない。性格じゃない?」

「守護って言うよりも狂犬だろ……」


 プランシー個人の考え方なのか、守護団全体の考え方なのか。どちらにせよリーナを馬鹿にされたことは事実だ。もう二度と会いたくはないが、ヘイルを連れて守護団の団舎へと向かうように言われてしまった。その時に顔を合わせないことを願うばかりだ。

 ソロンは朝から俺を呼び出したことに付いて謝罪をしてきたが、ソロンのせいではないため適当に受け流した。その後も授業があるため足早に生徒会室から出ていく。時間的には1限と2限をサボってしまったことになるが、俺達は教室に居なくても誰かが気にすることはない。寧ろ気楽に授業を受けている可能性すらある。

 朝から一悶着あり、普段の一日よりも大きな疲れが朝から俺の身体に重くのしかかって来る。守護団と関わるくらいなら共存派であるケバルライと関わっている方が気が楽だった。共存派はアーティファクトに対して「如き」なんて言わないだろうし。

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