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その武器に何を思う  作者: 人鳥迂回


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殺人事件?

 俺は今、ソロンからの呼び出しを受けて生徒会室にいる。いつもならば俺とリーナ、そしてソロンとバレットの四人しか居ないのだが、今日はこの部屋に似つかわしくない姿をした数人とこの部屋に閉じ込められていた。


「まずは私達の呼び出しに応じてくれて感謝しますよ、ロージス・グレンバードくん」


 俺の目の前には鎧を来た金髪の男がいた。優しそうな顔つきの中に厳しさが見え隠れしており、鎧越しにも鍛えられた体がよくわかる。威圧感が漏れ出ている男を前に、テーブル越しの俺は感じたことのない緊張感を味わっていた。


「えっと、はい。ロージス・グレンバードです」


 呼び出された理由も分からない俺は自己紹介をするしかなかった。ソロンが態々俺の部屋まで足を運んで至急生徒会室に来てくれと連絡を貰っただけで詳細は聞かされていなかった。その時の切羽詰まった表情から何かしらの事情があると判断して生徒会室へと向かったのだ。リーナはバレットが呼びに行ったらしく、生徒会室に入ると既にリーナとバレットが席に着いていた。

 俺がソロンに何が起こっているのかを聞こうとした時、生徒会へ屈強な者たちが入ってきたのだ。中には女性もいたが、先頭を歩いている男の気配が強すぎて他の者は目に入らなかった。

 ソロンが入ってきた人達に対し、腰を低くして挨拶をすると俺に席へと着くように促して会話が始まった。


「さて、ソロンくんから話は聞いていますか?」

「いえ。俺もここに連れてこられただけなので全く知りません」

「おや?近々伺うと伝えていたと思いますが」


 目の前の男はソロンの方へと視線を向ける。視線の先にいたソロンは罰が悪いような表情を浮かべて男へ謝っていた。   

 部下を連れて学園に我が物顔で居座り、ソロンへの態度も大きい。男の右胸には国章を付けている。鈍い俺でもわかるが、この男はこの国でも偉い立場の人間なのだろう。


「急だったので仕方ありませんか。私も忙しいものでして」


 男は俺の方へと向き直り、観察をするように目を向けてくる。


「改めましてロージスくん。私はこの国の守護団の団長を務めている、グランド・エインジーと申します」

「グランド……」

「ええ。恥ずかしながら、私の名はこの国の者なら知っているでしょう」


 その名前は俺でも知っていた。容姿は知らなくても名前だけならば王都で知らないものは居ないだろう。事あるごとに聞こえてくるグランド、および守護団の名声はこの国の地位を確たる物にしている一端だ。

 魔獣討伐や他国からの侵略を未然に防いだりと国からの命令を遵守し、功績を挙げている組織。守護団は国防の中心だった。目の前にいる人物が守護団の団長であると分かり、咄嗟に名前を呼んでしまう。

 グランドの名を呟くと、立って控えていた団員の数名が動き、鎧が擦れる音が聞こえた。その表情は険しくなっており、俺に物申したい事があるようだった。


「団長。発見よろしいですか」


 その中でも唯一の女性団員が声を上げ、グランドへ進言をしていた。


「なんですか?プランシー」


 プランシーと呼ばれた女性は俺を睨みつけながら一歩前に出てくる。少し低く、威圧感のある声には明らかな怒気が含まれていた。


「ロージス・グレンバードは学生ということは把握しています。そして私達が聞きに来ている立場と言うことも理解しています。本来ならばロージス・グレンバード自ら守護団へ赴き、状況説明をするべきですがそれも置いておきます。ですが、団長を目の前にしての態度は見逃せません」


 なぜ俺が守護団へ赴いて説明をしなければならないのかが分からない。グランドが隊長ということも今知ったので対応は難しい。守護団の団長に対して敬意ある対応がどのようなものか、貴族の中でも勉学を行わず遊び呆けていた俺には分からなかった。


「プランシー。少し落ち着きなさい。ロージスくんを威圧しては聞きたいことも聞けないでしょう」

「それは分かっていますが、それ相応の――」

「落ち着きなさいと言ったでしょう?」


 グランドは一切プランシーの方を見ずに会話をしていた。プランシーに言い返せるように呟いた言葉は威圧感が今までの言葉とは比にならないくらいに大きかった。俺に向けられた言葉ではないのに、冷や汗が出てきてしまう。それを直接受けたプランシーは震えながらグランドに謝罪していた。


「うちの団員がすみません。ロージスくん」

「気にしません」

「守護団としての規律が厳しいから他の人にもそれを求めている節があるんですよ。特に団長である私には気を使ってくれています。それは先代から続くものなので私としては、もう少しフランクに来てもらいたいのですがね」


 強張った表情を浮かべている守護団の面々にはグランドに対してフランクに接することなど出来ないだろう。俺もグランドを目の前にした瞬間、敬意を払わなければいけないと無意識に思ってしまった。そんなグランドと常日頃から過ごしている団員からすれば、敬意の足りていない俺は無礼者に見えるのかもしれない。


「ロージスくんはそのままで大丈夫ですよ」

「分かりました」


 プランシーは未だに俺のことを睨みつけているが、気にせずに会話を続けることにした。


「それで今日は俺に用事があるってことでいいんですよね」

「はい。先日のクリエイトを殺害した一件について話をお聞かせ願いたい」


 シェラタンの件は入っていくところと出ていく所を王都の住民に見られていた事で俺が関わっていたことがバレてしまっていた。その後、酒場が全焼し、守護団が調査に入ったのだろう。そこでシェラタンの死体を発見し、俺に話を聞きに来たのだ。


「何を話せばいいのか……」

「そうですね。こちらから質問をしますので答えてくれればそれでいいですよ」

「分かりました」


 守護団の一人が紙とペンを取り出し、何かを書き始める。取り調べのようなものなので調書を作っているのかもしれない。ソロンとバレットは一言も発さず俺の後ろに立っていた。リーナも大人しく椅子に座ってくれているので俺が一人でグランドに立ち向かわなければいけない。


「最初の質問です」

「はい」

「あそこにいた死体はクリエイトのメンバーのもので間違いありませんか?」

「はい」

「名前は?」

「シェラタン。シェラタン・メサルティムって言ってたと思います」

「その男をロージスくんが殺したと言うことで間違いありませんか?」


 もしかして俺は今、殺人事件の容疑者となっているのか?


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