表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/80

出立

 そこから2カ月の時が経ち、俺が学園へと向かう日が来た。


 なんだかんだ、リーナはグレンバード家に居座っていた。親父は「アーティファクトをそのままには出来ん。家で匿うことにする」と言っていた為、リーナはそれに甘えるようにこの家に住み着いた。


 その後俺はアーティファクトについて調べた。兄貴から聞いた話以外にもいくつか分かったことがある。

 

 1つ、アーティファクトは契約者が死ぬまで契約を破ることが出来ない。契約者から破棄をすることも出来ない。つまり俺は死ぬまでリーナと一緒に居られるというわけだ。嬉しい反面、そんな契約を俺と結んで良かったのかと考えてしまうこともある。


 2つ、アーティファクトとその契約者は魔法が使えるということ。アーティファクトの属性によって使える魔法は様々らしい。俺は火魔法が使えるようになった。リーナが火属性のアーティファクトだから火魔法。当然リーナは人間体の時には火魔法が使える。


3つ、1つ目に対しての例外。アーティファクトが死んだ場合は契約が破棄されるというもの。アーティファクトが死んだ時、残された契約者は魔法も使えなくなる。契約をするから魔法が使えるみたいだ。


 以上の3つが俺が調べて新しく分かったことだった。


 家にいる間、リーナを武器にすることは一度もなかった。それをしないといけないような有事が起こることは無かったから当然ではある。

 出発の日まで、俺は兎に角勉強と訓練をやった。今までサボっていたツケが回ってきたように最初は何も出来なかったが、必死になってやっていたら人並みには勉強も運動も出来るようになった。


「リーナと出会ってもう2ヶ月か。俺は今日学校に行くために王都に移動するけどリーナはどうするんだ?」


「私も行く」


 王都の学校には貴族の家系に連なるものか、貴族の推薦を受けた者しか入れない。後者は基本的に優秀な平民が学校に入るための手段として使われる。

 リーナは貴族でもないし、貴族からの推薦もない。いきなり行って学校に入れるわけがない。


「リーナは行けないぞ。貴族からの推薦が無いと入れないんだ」


「推薦はある」


「は?」


 リーナと玄関で会話をしていると兄貴と親父が見送りに来た。母上と次兄は見送りには来ない。嫌われているとかではなく、母上は身体が弱いため部屋からあまり出ない。確りと出立の挨拶はした。

 次兄は学校に通っているためここには居ない。


「親父、リーナが学校行くって言ってるんだが」


「推薦出したからな。ロバートから聞いていないか?」


 ロバートは長男の名前。因みに次兄はダレンズという。


「いや聞いてない」


「僕はてっきり父上が話した物だと思っていました」


「すれ違いが起こったな。まあいい。お前たちは2人で王都の学校に入れ。リーナさんはアーティファクトということで特別枠に入っている」


 俺が知らない内に話がどんどん進んでおり、いつの間にかリーナと一緒に学校に通うことになっていた。俺としてはリーナと一緒に過ごせるのは嬉しいがリーナは一体どう考えているのだろうか。


「ここでなにか言ってももう決まったことだしな」


「そういうことだ。それじゃ行って来い。ダレンズにもよろしくな」


「はいよ。それじゃ行ってくる」


「行ってくる」


「行ってらっしゃい」

 

 父と兄貴に見送られながら家をでる。貴族のため馬車などで移動するのが普通なのだが、グレンバード家は馬車を持たない。有事の際には使うが、基本的に自分たち力でなんとかするという信条を掲げているため楽をすることを嫌う。


 幸いにもこの領地から王都までは非常に近い。歩いていっても丸一日程度で済む。途中にある小さな村で休憩しても2日もあれば余裕で着いてしまう。


「リーナは良かったのか?俺と一緒に学校通うの」


「通ったことがない。楽しみ」


「ならいいけどさ」


 断られたりしたらショックで登校拒否になっていたかも知れないと聞いてから思った。表情には出ていないが楽しみにしているようだ。それなら俺からは何も言うことはない。


「丸1日歩けば王都につくけど途中の村で休憩して2日かけて王都に行こう。それでいいか?」


「大丈夫」


 俺は2ヶ月もの間リーナと過ごした。グレンバード家の人間は遊び呆けていた俺すらも見限らず接してくれるような優しい人たちだ。親父や兄貴だけに限らず、使用人すらも。


「それじゃ行こうか」


「うん」


 家の人たちはリーナにも優しくしてくれた。最初はおっかなびっくりだったが、リーナに関わる内に普通の客人に対する対応をするようになっていた。

 


 だから忘れていたのだ。


 リーナの髪と瞳が悪魔の子として忌み嫌われできることを。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ