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その武器に何を思う  作者: 人鳥迂回


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報告

 生徒会室をノックし、返事を待ってから中に入っていく。生徒会室に入ると普段と同じようにソロンは書類仕事をしていた。いつもよりも山積みにされた髪の束に眉間に皺を寄せ、バレットと共に苦悩しているようだった。


「今よかったのか?」

「お前が来るのを待っていたからな」

「待ってた?なんでだよ」

「そんな事はお前が一番分かっているだろう?夏休みの間にあったことを思い出せ」

「は?」


 夏休みに起こった事件はリーナにもヘイルにも口外をしないように伝えていた。それが無くとも俺たちには口外する相手などいないため、どこから情報が流れ出たのか分からず困惑してしまう。


「ソロンに話すのはいいんだがどこで知ったんだ?俺たちは誰にも話していない」

「お前たちが何かしらを起こした建物が先日焼失した。その中を調べたら死体が出てきたことで周りに聞き込みをしたらこの学園の制服を着た生徒の話が出てきたというわけだ」

「死体……シェラタンのやつか」

「それを含めて報告しろという事だ。これは私からの要望ではなく、学園からのものではない。国からの調査だ。後日国の機関が直接話を聞きに来るらしいが、先に私にも話してもらおうか」


 焼失した建物の中からシェラタンが出てきたことでクリエイトという組織がシェラタンを見捨てたことが明白となった。死んでいるからこそ死人は喋らない。その正体を知るものが俺たちしかいない以上、口外をされても問題ないと判断されたのだろう。国の機関から調査をされても逃げ切れる自信があるのかもしれない。

 ソロンは喋っているがバレットは此方の様子をうかがいながらも会話に参加する素振りは見せていない。聞き役に徹しているようで書類整理を行い続けている。リーナも質問をされている対象がロージスト分かっているため余計な口を挟むことはなかった。


「先に聞きたいことがあるんだが一ついいか?」

「早く終わる話でもないだろう。席に座れ」

「分かった」


 俺とリーナは指定席と化した椅子に座る。バレットが飲み物を用意しようと席を立ち上がったが、手で制した。


「それで聞きたいことはなんだ?」

「ソロンはクリエイトのことをどこまで知っている?」

「何も知らないという事だけは確かだ。勿論、活動内容程度は自衛のために聞かされては居るが構成員や根城なども知らない。それは国も同じだろう。だからこそ、クリエイトの一人を殺したロージスに話を聞きたいのだ」


 ソロンや国の中ではシェラタンを殺したのは俺ということになっているらしい。あの場に入っていった生徒を把握されているとすればアーティファクトを使った戦闘が出来るのは俺とリーナだけとなる。契約者のいないヘイルと戦闘能力のないシルキーは除外されてもおかしくはなかった。

 シェラタンが最後に言っていたケバルライという者の名に覚えがなかった俺は話の流れでソロンに聞くことにした。


「この学園にクリエイトの手の奴がいる事は分かっているのか?」

「何!?」


 ソロンは机を叩きながら勢いよく立ち上がる。書類整理をしていたバレットは急な行動に驚いたのかソロンのほうを見ていた。すぐに自分の起こした行動を理解したソロンは一言謝罪をするとゆっくりと席に座った。


「詳しく話せ。この場の話は口外禁止だ」

「分かってる。シェラタン――俺たちが倒したクリエイトのメンバーが言っていた。この学園にいる生徒から俺とリーナの情報を聞き出して狙ったってな」

「クリエイトのメンバーということは一般生徒か」

「ああ。俺たちが訓練場を使っている姿を見られている。アーティファクト同士は気配を感じ取れるが、リーナは気配を感じ取ることが出来なかったから恐らく一般生徒だ」

「名前は分かるのか?」

「ケバルライ」


 俺が名前を伝えるより前に、リーナがソロンに伝えていた。


「ケバルライって言っていた」

「リーナ?喋るのはいいんだが急にどうしたんだよ」

「気配に気が付かなかったのは私の責任。伝えるのは私がよかった」


 リーナはリーナなりに思うところがあったみたいだ。俺たちは一心同体だ。リーナだけが責任を感じる必要は一切ないと思っていても、それの言葉をリーナにかけることは出来なかった。


「ケバルライか。バレット。その生徒を調べてくれ」

「分かった。クリエイトの手の内の人間となると隠しているかも知れないから、時間かかるかも知れないけどやってみるね」

「頼む」


 2人が学園の生徒を把握していると言っても限界がある。調査には時間が掛かることとも当然だった。


「ロージス。何が起こったか簡潔に話してくれ。質問があればその都度行う」

「分かった。俺も自分からの全てを話せるとは思えないから聞いてくれると助かるよ」

「私も覚えていることは話す」


 ロージスは夏休みに起こったことを思い出す。事の起こりはシルキーを宿に送り届ける為に学園の外にでた所だった。そこでシェラタンと出会い、戦闘にはならずともその後にクリスが攫われた。


「シェラタンはアーティファクトを使っていたぞ」

「クリエイトは本当にアーティファクトを破壊している組織なのにアーティファクトを使っていたのか」

「ああ。だが契約をしていると言っても相互関係じゃ無さそうだった。奴隷のように無理やり扱われていた。感情を無理やり出させることで契約をしているみたいだった」

「感情を無理やりとはどういうことだ」

「死ぬ直前まで痛め付けて生きたいと思わせ、その感情とシェラタンの生きたいという感情が繋がった時に契約をしたとか言ってた。クソ野郎だよ彼奴等は」

「ひどい……」


 感情的にならないように状況説明をしていた俺だったが、話しながら拳に力が入っていることに気がついた。隣にいたリーナが俺の手の上に手を重ねてくれたことで手の力が抜けていく。バレットの悲痛な呟きが生徒会室の雰囲気を重くした。


「そこから――」


 俺が起こしてしまった失敗を自分に刻むこむようにソロンに伝えていく。自分の犯してしまった罪に心を苛まれながらも伝えなければいけない。この痛みがシルキーに負わせてしまった事の罰だと刻みながら。

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