愚者
まじで何も考えてなかったのにタイトルとイベントが重なってしまった。『四月の愚者の日』
4月1日らしいです。
嘘をついてもいいのは午前中だけ、午後にはネタバラシというのが作法らしいです。
「単刀直入に言うね。私は貴方が自分の意思を持ってないところが嫌いだった。一目見ただけで分かったの。自分が武器だからって人間じゃないってそう思ってる。そこが嫌い」
バレットの言葉が私には理解できなかった。
だって私は武器。人間なのは姿だけ。人間には武器に変身できる人なんて居ないし、生まれた時から私は自分のことを武器だと思って生きてきた。
それにバレットも同じだろう。バレットも私と同じアーティファクトだ。バレットも私と同じただの武器。簡単に人を殺せるそんな武器。
「どういうこと?」
「何ていうか、それを分かっててやってると思ってたの。不貞腐れてるというか諦めているというか」
不貞腐れてる?諦めている?何に対して何を言っているのか分からない。私は武器として生まれたから武器として生きてきた。ただそれだけの事。自分のやるべきことを全うしているだけ。
周りの人間が容姿に対して勝手なことを言っているだけでそれは私のやるべきこととは関係がない。
「でも貴方は自分のことすらも知らなかっただけなのね」
「む。そんな事は知っている。私はリーナ・ローグ。アーティファクト」
「そういうことじゃないのよ。それは後付けされた情報ってだけ。それだけじゃ貴方のことは分からないわ」
「何がいいたいの?」
バレットは私の隣に座りながら深く溜息を吐く。その顔は此方を見ておらず、ただ呆れているという雰囲気だけは伝わってきた。
ロージスならもっとはっきり伝えてくれるのに。
そういえばロージスは今何をしてるんだろう。ソロンに連れて行かれたけど、決闘を挑んできた相手だし影でロージスの事を痛めつけてる可能性もあるがソロン自体が強そうな気配がしなかったしロージスでも死ぬことはないだろう。
危険があるのなら私にも直感でわかるし、バレットが何を言いたいかが気になる。
「1つずつ質問していくね」
「うん」
「まずロージスくんのことどう思ってるの?」
「さっきも言ったけど好き」
先程と同じ質問をしてくるバレット。
何度聞かれても私はロージスの事を好き。ロージスに好きって言われたから私は好きになった。この世界で私を好きになるのはロージスだけ。だから守ってあげたい。ロージスが死ぬその時まで一緒にいたい。
「どこが?」
「どこ?」
「さっきはロージスくんが好きって言ってくれたから好きって言ってたよね?それはきっかけであって今の貴方の感情が続いている理由にはならないよね。今の貴方はロージスくんのどんなところが好きなの?」
今の私ははロージスと出会った頃と何が違うのだろう。武器として生きているのは同じ。ただ毎日を過ごしているのも同じ。そこにロージスという人間が私の世界に入ってきただけ。
出会ったのは偶然。捕まった私を助けに来てくれた。その理由は私に一目惚れしたから。それを聞いた時、私の世界は少しだけ色づいた気がする。
捕まった時も自分で抜け出そうと思えば抜け出せたけど面倒だったので捕まったまま過ごそうとしていただけ。私のために誰かが必死になる姿なんて見たこともなかった。
昔の私と今の私。違うところはロージス。
それは毎日思っていることだった。
ロージスがこの世界でやっていいこととやってはいけないことを教えてくれる。ロージスが私の事を気にかけて色々してくれる。
どんなところが好きかは分からないけど、ロージスが居ることで毎日が無為なものじゃなくて新しいものに変わっていく。
「わからない。でもロージスが居ると毎日が楽しい。毎日新しい発見がある。一緒に居るのが好き」
「そう……。それが分かってればいいのよ。それじゃ次の話をしましょ」
「次の話?」
誰も通らない所にある、私達しか座っていないベンチ。2人だからこそ話せることもある。
「どうして貴方が武器化出来なかったのか。貴方は武器化出来ないことに気付いたから降参したんでしょ?」
「うん」
「なんで出来なかったの?」
あの時のことを思い出す。
まず戦いが始まった時、私は直ぐに武器化をしようとした。結果的にソロンの攻撃によって分かれたようになったが、アーティファクトの武器化は一瞬でできる。本来ならば最初にロージスと手を重ねた時には武器化できたはずなのだ。
それにも関わらずなぜか武器化でき無かったため私は自分の手を見つめて何が起こっているのかを考えたが何も分からなかった。その間にもロージスは攻撃を受け続けていたため確認することが出来なかった。
ソロンが武器化を促した時、それに従うようにロージスの元へ行き手を伸ばした。その手をロージスが取っていくら経っても武器化できない事で私は降参することを決めた。
私の心とロージスの心が繋がる感じがしなかったのだ。
「繋がれなかった」
「心が、ね。私からアドバイスだけどリーナちゃんはもっとしっかり喋ろうか。それじゃ何を伝えたいか相手に伝わらないよ?ゆっくりでもいいから相手にちゃんと伝える事をしないとそれだけで信頼っていうのは薄くなっていくんだ」
私はしっかり喋っているつもり。ロージスなら私のいうことをしっかり理解してくれているはず。ロージスとの信頼は薄くなっていないし何も問題ないように思える。
ロージスは私のことが好き。私も好き。それだけで心は通じ合ってるはず。
「アーティファクトが武器化するのに必要なのは互いの心を通じ合わせること。相手に対して猜疑心とか悪感情が大きい場合は武器化できない」
バレットの言うことが全部正しいと言うのなら、私がロージスと武器化出来なかった理由がわからない。この学園に来る前も、来てからもロージスは私と一緒にいてくれた。寮が違うのは性別で分かれているから仕方ないけどそれ以外の時間は常に隣にいた。
隣りにいるというのは契約者として当然のことではない。離れようと思えば離れられる。でもロージスは私の為に色々してくれるし、私の側にいてくれた。
心は通じ合ってる。だからこそ、なんで武器化出来なかったかわからない。
答えが分からず、バレットの方をただ見つめることしか出来ない。
そんな私に気付いたのか、バレットは自分の拳を握りしめ、此方の目をしっかりと見て私に質問を投げかける。私の赤い目をじっと見てくるのはロージスしか――。あれ。ロージスと私、最後に目を合わせたのっていつだっけ。
「酷い事を言うようだけど、リーナちゃん。ロージスくんにどう思われているか考えたことある?」
嘘をついていい日があるわけないだろ。
信用をなくします。バカの一つ覚えみたいなイベントに参加しないで生きづらい世の中を生きていくために自分は大丈夫だと嘘をついていきましょう。
全部ウソです。ソシャゲのイベント楽しい




