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その武器に何を思う  作者: 人鳥迂回


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入寮


 俺達は学園に着く。まだ入学式が開始するまでは数日あるが、寮のため前々から学園内で過ごす者も少なくはない。かく言う俺もその1人だ。


 寮は男女で分かれており、更には貴族と平民でも分かれている。これも、生活の文化が違う者たちが諍いを起こさないための学園の配慮だ。当然俺は男子貴族寮。リーナは女子の平民寮だ。


「もうフードとっていい?」


「俺と別れたら好きにしていいぞ」


 ここにはまだ人目がある。フードを取って騒ぎになってしまっては学園に入るのに時間がかかってしまうかもしれない。結局学園内ではフードを取るし、俺と過ごす時間も多くなるはずなので意味はないのだが。


 手続きを終え、学園に入る。後者はとても大きく、王都にあるということを強く意識させられる。周囲には学生もちらほら見えるが多くはない。実家に戻ったり、寮内で生活したりしているのだろう。


「俺の寮はあっちだから」


「うん」


 俺は自分の決められた寮に向かう。しかし、後ろからはいつも通りリーナがついてきていた。


「リーナの寮はあっちだろ?」


 男子と女子では学園の東と西で寮が分かれており、最低限の区分けをしている。貴族の人が平民の女を脅して犯す事があるとも聞く。そういう事が起こった時に学園はちゃんと対処をしたという事実を作るための処置らしい。


「そう。それじゃ」


 俺がリーナの寮を指差すと、リーナはその方向に歩いていく。寮の場所が分からなかったから俺について来ていたのだろう。フードはまだ取っていないが、離れたら取るんだろうなと思いながら俺も寮へと足を進めた。


 リーナと寝る時以外で離れるのは家の中以外では殆ど無かった。家の中にいたときはリーナがどういう人なのか知らず、ただ好きだからという理由で一緒にいて楽しかった。


 でも今の俺はリーナと離れられてホッとしている。それに体も軽い。決してリーナのことが嫌いになった訳では無い。リーナのことが好きかどうかと問われれば、好きと答えられる筈だ。でも、その脳裏には村の見張りを殺したこととアーティアの男を殺したことが浮かんでくる。

 俺は本当にリーナという人間が好きなのだろうか。


 寮母に学園証を見せると部屋の鍵をもらえた。平民の部屋は知らないが貴族の部屋は1人部屋。実家の部屋よりは狭いが、学園の寮としては確りとしているだろう。

 

 荷物を置き、ベッドに座る。

 自分の手を見て、リーナのことを思い出す。

 武器の彼女、人を殺す道具の彼女。それでも俺が好きなはずの人。


「リーナ……」


 その名前を独りごちる。呼んでも何も返答はない。この場にリーナは居ないので当然なのだが、それが心を落ち着かせる。


 離れて初めて、俺はリーナのことを考えずに過ごすことが出来そうだ。




Sideリーナ


 ロージスと別れて寮に向かう。


 私はロージスと同じ寮でも良かった。ただ、学園のルールとして別れなければならず、ロージスがそれに従うからわたしも従う。遠く離れれば私がロージスを守ることが出来ずに死んでしまうかもしれない。


 ロージスになるべく監視をして危ないことがあったらすぐに助けに行けるようにしないと。

 そのためにも契約者と私の信頼関係を高めて心のつながりを強くする必要がある。


 ロージスは私のことが好き。そう言ってくれたから間違いない。皆から忌み嫌われる私を好きと言うってことは相当なこと。私もそれを言ってくれるロージスが好き。


 相思相愛というものの筈なのになぜか心の繋がりは最初の契約よりも弱くなっている。原因が分からない。私の持っている知識では思いの強さによって契約が強くなるはずなのに弱くなっている。


 もしかしてまだ、思いの強さが足りない?ならもっとロージスの喜ぶことをしてロージスの思いを強くする。約束を守って、ロージスも守って人を殺さなければロージスはもっと私を好きになる。


 そのためにはもっと一緒に居なきゃいけないのに、寮というものが私とロージスを拒む。燃やしてしまってもいいけどそれはロージスが悲しむと思うのでやらない。



 自分の住む寮に着いた私は寮母に学園証を見せた。そうしたら部屋の鍵をくれた為、自分の部屋に向かう。平民の寮とはいえ、2人部屋などではなく手狭だが寝るのには困らなさそうな広さの1人部屋だった。

 やっと私はフードを取ることが出来る。私の見た目は他の人にとっては忌避するべきもの。誰から伝えられたのか分からないがそういうものらしい。


 部屋に居ても私には何もやることがない。部屋から外に出ても何もやることはない。距離が離れているため、ロージスを感じることも出来ない。

 考えてみれば私は武器。本来感情を持たない物のはずなのに、ロージスと契約をしてから人のように色々と考えてしまう。


「ロージス」


 彼の名前を呼ぶ。それだけで心が温かくなる。私には心臓があるのか、血が温かいのか、そんな事はどうでもよくて武器としての私を温かくしてくれるのはロージスだけだった。


「ロージス、ロージス……」


 愛しき契約者。離れてしまっても、私は貴方を考えている。


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