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その武器に何を思う  作者: 人鳥迂回


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王都

「王都に入るのにフード付きの服とかいるな。遠くから分からなければ何とかなることも多いし」


「それなら持ってる。グレンバード家を出る時に持たされた」

「それなら最初から着けてくれれば村での扱いも良くなったんじゃないか?」


「忘れてた。それにもうあそこに行くことはないからいい」


「とりあえず何があってもフードは取らないようにしてくれ」


「分かった」


 王都に付いたのは深夜だったため、当たりに人は居なく門の前にも門番が立っているだけだった。人の出入りが多い場所なので夜でも門番が立っており、通行の確認をしている。


 俺達も通例に習い、門番の元へ行き王都へ入ることを許可してもらわなければならない。リーナはフードをかぶれば、髪がすっぽりと隠れる。瞳は隠し用がないが俯いていればあまり問題はないだろう。


「すみません。中に入りたいのですが」


「ん?見ない顔だな?通行証か仲に入るための許可証とかあるか?なければ身分証明をしなけりゃならんから夜が明けるまで待っててもらうことになる」


「いえ、大丈夫です」


 門番の言葉に従い、王都にある学園の学生証を見せる。学園の学生証は身分証明にも使えるため、それを見せれば王都に入れるのだ。


「これは、お貴族様でしたか。礼を失し申し訳ありません」


「大丈夫ですよ」


 貴族と平民で態度を変えるのは当然のことだ。平民に対して丁寧に接しすぎると門番として有事の際に甘く見られてしまう。適度な威圧感を持って仕事をすることで平民が守られているという上下意識を植え付けている。

 逆に貴族に対しては自分たちが恩恵を受けているため、上下意識を植え付けられているのだ。


「そちらの方は?」


 門番はリーナの方を向く。

 リーナは俺と同じように学生証を門番に見せた。当たり前だがリーナも学生証を持っている。この学生証には顔の分かる物は付いていないため、見せるだけではリーナのことは分からないだろう。


「中に入るには顔と名前を一致させる必要があるのでフードを取っていただいてもよろしいですか?なにかが起こった時、誰が担当したか等をこちらが対処できるように決められていることですので協力お願いします」


 想定外だったのは王都に入るためには顔を見せなければならないということ。門番の言葉にリーナがフードを取ってしまえば村でのようなことが起こるかも知れない。王都なら忌避感を持たれる程度で済むとは思うが門番の人となりも知らないため追い返される可能性もあった。


「いや、彼女がフードをとるのはちょっと」


「なにか問題があるのですか?問題があるなら尚更入れるわけには行きません」


 いっそのことフードを取って顔を見せれば納得して入れてもらえるだろうか。一か八かに賭けてやってみるのもいいかも知れないが失敗した時にリーナは入れない可能性がある。学園の許可証があるため永遠に入れないことはないかも知れないが時間がかかるかも知れない。

 リーナの方を見ると一切の動きをしていなかった。門番にフードを取れと言われたときも一切動いていなかったような気がする。

 

 その後、俺と門番が少しばかり話しているとリーナが俺の方へ近づいてきて手を握った。


「フードを取って顔を見せでいただいてもよろしいですか?」


 門番は再度リーナに問う。その言葉に対してリーナが取った行動はフードを取るものではなかった。


「私はアーティファクト」


「「は?」」


 門番と俺の声が同時に出た。門番は何を言っているんだという声。俺のは急にどうしたの声。図らずとも同じタイミングで同じ声を発してしまったのだった。


「知ってる。アーティファクトは特例で身分さえ証明できれば王都に入れること。悪用されないために顔を隠すことが許されていることも」


 確かに、俺が勉強した中にもそのようなことが書かれていた。既に自覚しているアーティファクトは契約しているものが多い。つまり、契約者の方を殺せばアーティファクトはフリーになり新たな契約が出来るのだ。それを起こさせないために、アーティファクトは顔を隠すことが許されている。門番からの情報の漏洩を防ぐためだ。


 中に入ってしまえば人と同じ見た目をしているため、人の中に紛れる。そうすればアーティファクトだとバレることはない。


「アーティファクトっていうなら登録されてると思いますが、何か証明出来るものはありますか?アーティファクトだと偽って中に入ろうとするケースもありますので」


「ある」


 リーナは王都に来たことはないと思う。それなのに王都が管理するアーティファクトの証明を持っているのだろうか。管理するためにアーティファクトには証明書が送られるらしい。現物は見たことがないが王都での発行が必要となるため一度王都に来なければない。


「ロージス」


「え、なんだよ」


 俺の返答と同時にリーナの姿は消え、一振りの剣となった。リーナが武器となるのに影響していたはずだが、今回は何も言わずとも変化してしまった。


「(これ、武器になるのに詠唱いらないのか?)」


「(前の詠唱は契約の詠唱。契約者になったからもう詠唱は要らない)」


「(そうなのか)」


 剣となったリーナはすぐに人に戻った。それを見ていた門番は唖然としていたが、何度か見たことがあるのだろう。すぐに冷静さを取り戻し門番としての仕事に戻る。


「疑ってしまい申し訳ありませんでした。証明書をお持ちでないと思いますので証明書をお作りすることを薦めます。学園で作れますので」


「あ、はい。ありがとうございました」


 証明してしまえば後はとてもスムーズに事が進んだ。周りに人が居なかったこともあってかリーナのことは誰にも見られていない筈だし、アクシデントはあったが王都に入ることには成功した。


 王都に入ると深夜にも関わらず、所々に明かりがついており営業している店がある。結局、丸一日何も食べていない俺達は営業していた露店で適当なものを買って食べた。貴族としては行儀が悪いのだが、元々街へよく出ていた為こういう食事にも慣れている。

 リーナもあまり忌避感はないみたいで良かった。


「そういえば門番に言われてもフード取らなかったな。取るんじゃないかって冷や冷やしたぜ」


「言ったから」


「何を」


「ロージスが何があっても絶対取るなって」


 確かに言ったが俺も言ったことを今まで忘れていた。それを律儀に覚えて実践してくれていたのは嬉しく思う。その結果、王都に入ることが出来たわけだし。


「そっか。ありがとな」


 リーナが言ったことを守ってくれたこと、それで王都に入れたこと、その2つに対して感謝の言葉を告げた。


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