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カモ理論~帰り道が同じ友達に養われていた件~  作者: シミネ
カモという沼から抜け出せなくなったらしい
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ヒモにも自覚とか義務が生じるらしい(愛良曰く)

「―……それではまた明日」

「ふぁ~んっ……」


ホームルームの担任の演説が終わる頃、タイミングよく長い睡眠から目が覚めた。


「今日は早めに合流できそうだな」


ルネを開きグループチャットに“今から向かう”という旨を伝えて待ち合わせポイントへ。


「ねっむ」


到着と共に携帯に“今向かってる”という旨のルネが届いた。

三人で帰るなら各々都合とかできるかもしれないということでグループチャット作ることになった。

絶対三人で帰宅。事情が生じた場合、連絡するのがルール。

二人で帰っていた頃と変わったようで案外なにも変わってない。

変わったのは人数だけ、ルールだってこれまで暗黙的意識だったものを敢えて言葉にして明瞭したものに近い。


「眠いようですね。ダメですよ? 授業は真面目に聞かないと」

「そうですわね。将来はともかく補講になったりしたら夏休みがパーになりますわ」

「習慣になってる節はある。なかなか治せないんだよな~」


愛良先輩のおかげで放課後に余裕ができるようになり、授業中寝ることはなくなるかと思ったが、どうやら考えが甘かったようだ。

一年近くかけて出来上がった習慣が突然直るのも考えてみれば無理な話だろう。

昼飯が取れるようになった。くらいが関の山で、相変わらず昼休み辺りからホームルームまで意識が飛ぶ毎日。

これもストーカー騒ぎが収まったら少しはマシになるだろうか?

というかこういう小言言うのはこの世に二人しかいない。


「帰りましょうか、孝充君」

「今日一日お疲れさまでした。孝充様、お供いたしますわ」

「気配、感じられなかったぞ」

「ついさっき着きましたので♪」


理由になってないぞ?

いつの間にか合流した二人と歩き出す。


「そういえば」

愛良先輩の声に華生ちゃんが何故かビクッと反応し、いつものメスガキ感のある表情が次第にばつが悪そうなものに変わる。

「一昨日、ボディーソープをお買いになられたようで」

「あ、ああ。詰め替えが必要でさ」

「それはわかっています。どうして自分の残高に影響が及ぶ真似したのか、説明いただけますか?」


どうしてそれを……なんて、少し考えてみればわかる。

華生ちゃんの申し訳なさそうな顔。

雑談に俺の話が出て来て、愛良先輩のカード使った前提で話してたら違った。というのがオチだろう。

圧に負けて説明する。

アプリのポイント貯めるため使ったけどいつもの癖で決済までそれで済ませた。

繋げていた口座は俺個人のモノで、すっかり忘れていた事までかいつまんで説明する。

説明が終わると、静かに聞いていた愛良先輩が口を開く。


「なるほど。そういう経緯が」

「ああ、仕方がなかった」

「仕方なくないですよ? ヒモにさせる私の口座ではなくどうしてあなた個人のお金使ってるんですか。これカモにとってはひどい侮辱行為ですよ?」

「そこまで……」

「言われることかって、当たり前じゃないですか。カモのカード使わず自分の金使っておいて知らんぷり。これは明らかな裏切り行為。

お前いらない子って突き放すようなものですよ?」

「ヒモになりたいとのたまうのでしたらヒモに要る基本的なエチケットくらい身につけてください」

「はい……」

「敬語するなってこれで二回目です。次はないですよ」

「わ、わかった」

「携帯貸してください。登録した口座、替えておきます」


言葉は拝借する形のものだけど、既に愛良先輩の手に渡り支払先の口座が変更されて再び俺の手元に戻る。


「あなたに不便は致しません。カモの言うこと、聞いてくれますよね?」

これくらいなら怒られないだろうって思ったが、これから俺が貯めてある金はどうやら使えないらしい。


「……悪かった」

「ううん、これからいっぱい使ってくれるならそれでいいですよ」

「孝充様ぁ……」


萎縮していた華生ちゃんが、声を振り絞りやっと話しかけてきた。

申し訳なさと愛良先輩の圧に負けて声が出せなかったんだろう。


「いいよ。別に華生ちゃんのせいじゃない」

「でも……」

「まぁおかしな理由で怒られたけど」

「むっ、おかしくないですよーカモの権利の問題ですー」

「否定できませんわね……」

「華生ちゃんも当然、愛良先輩のカード使った前提で話したんだろ?」

「そうですがこれ以上迷惑かけたら嫌われるかと思って……」


ストーカーが迷惑って自覚はあったのか。


「嫌いにならないから安心しろ」


はっきりと言葉に乗せて伝える。

途端に華生ちゃんの顔から次第に陰りが徐々に散っていつもの明るい顔色が戻って来た。


「本当ですか……? 嫌いになりませんか?」

「困りはするだろうけど嫌いにはならないよ」


未だどこか申し訳なさが伺える華生ちゃんに苦笑を浮かべつつしっかり伝える。

悪意を持って伝えたわけでもない。

いつもの愛良先輩との雑談で偶然伝わっただけだろう。


「こんなストーカー女許しちゃっていいんですか? カモの立場、立たせるなら今ですよ?」

「カモの立場ってなんだよ」

「彼女以上夫婦未満……?」

「幼馴染でも義妹でもないだろ愛良先輩は」

「けど夫婦に最も近しいんじゃないでしょうか。なんせ孝充君の生活にもっとも根深く関わらせていただいておりますので」

「ゆくゆくは生活全判握らされるのか俺は」

「素敵じゃないですか? 私ナシでは生きていけられないと縋る眼差しの孝充君……破壊力やばいです」

「いいですわね……案外カモっていいのかもしれませんわ」

「ヒモになりてぇ~」

「もうなってますよー」


久しぶりの常套句に返事が返ってくるとは。


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