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カモ理論~帰り道が同じ友達に養われていた件~  作者: シミネ
カモという沼から抜け出せなくなったらしい
20/34

ヒモにさせられました

「カモにさせてくださいっ!」


即落ちだ。

マンガで例えると一コマちょうどのレベル。

仕方ないじゃん。

監禁とヒモは似て非なるものだ。

人間らしい生活は保障してくれるだろうけど自由がない籠の中の鳥はさすがに勘弁だ。


「満点です♪喜んでヒモにさせていただきます♡」

「ほっ……」


華生ちゃんが明らかに異質な会話に安堵の息を漏らす。

一方の愛良先輩の顔には色とりどりの花園のような笑顔が咲き誇っている。


「善は急げです。ではお仕事先に向かいましょうか」


「なるほど、わかりました」

「今までお世話になりました」

「いいのいいの、むしろ二年近く働いて貰ったんだし」

「ただ……」

「はい? やっぱ都合悪かったりします?」

「それはこちらの問題だから気にしちゃダメだよ? そうじゃなくてね」

「仕事やめてからもその、ご飯に誘いたくても誘えないかなーなんちゃって」

「はい……ずっと断りっぱなしで申し訳ないんですけど」

「話、もっと長くなりそうですか?」

「は、早めに済ませますので! 申し訳ございません殺さないで……」

「ふふっ」


圧つっよ!?

お世話になっていたファミレスの職員室。

ここでマスターと俺と愛良先輩三人で居合わせている。

仕事辞めますって告げると血相変えて必死で止めてくるとかよくクラスメイトが言っていた気がするが、幸いそんなことにはならず。

仕事やめたいって言いだしたら花が咲いた笑顔で受理された。

おまけに先ほどまでむしろ『学生なのに仕事ばかりでこっちが心配』って言われる始末。

理不尽な怒られ方されたこともあるけどことの成り行きに気づいた途端、即謝ってきたし。

やっぱいい人なんだよなー


「むっす~!」

「ハウス!」

「むへ~」


ピタッと抱き着いてきた。

マジで困惑する。


「女性の扱い、上手だね? どうしてもっと早く……」

「むへっ」

「空気入れにやっただけですけどね」


年上に生意気なー! とかのキレ方に誘導して和気あいあいしたものに変えたかったけどなぁ。


「理由はちょっと言えなくて申し訳ないんですけど」

「むしろ根掘り葉掘り聞く方がおかしいよ? 仕事始める理由は同じでも辞める理由こそ人それぞれだから」


『これ常識』とあっさり言っちゃうマスターに尊敬の念が生じ始めた。

当たり前ってわりと守られにくいって人より早く学ばされた身としては今だけはこのマスターが輝かしく映る。


「まぁ止められる立場でもないけどね」

「なんか言いました?」

「ううんなんでも」


ボソッとしたけど小さすぎて聞き取れない。


「事後処理とかの諸々は雇った側の責任だし、帰りましょう? 孝充君」

「孝充君!?」


一度も聞いたことのないトーンの声がマスターの喉からまろび出た。

明らかに名前呼びに反応したな、今。


「ふ、二人ってやっぱりそういう仲……ですか?」

「ええ、言葉だけでは表せない仲です」

「ほ、本当ですか西園寺君!? 初耳ですよ?」

「今日から始まりましたので」


彼女のヒモに。

なんて、口が裂けても言えない。

高校生が高校生のヒモになっているって文字にしてみてもとてもまともな日本語にはなってない。

ふふん、って腕組みして自慢げになる愛良先輩。

勝ち誇るつもりだろうけど何と戦ってるんだ?


「そういうことですので失礼します。“うちの”孝充君がお世話になりました」

「行きましょうか、孝充君」

「ちょっ」

「ぼーっ」


愛良先輩に引っ張られるがまま挨拶もそこそこに職員室から出てきて、お世話になっていたファミレスを後にして帰路につく。


「これでやっと二人きりになれましたね? 孝充君……♡」

「ああ、そうだな」


マスターに仕事辞めると告げることで働き先が完全になくなった。

これで生活していく上で愛良先輩に頼る以外の選択肢はすべてつぶれた。

バイトでちょくちょく貯金にあてていた金ならあるが、それは残る学費に充てたいのでナンセンス。

彼女の目論見通り、ヒモになる以外の道はないってことか。


「あえて挑発するような口調にしてみましたけど外れでしたね」

「歪曲ネタはさすがに心臓にくるからやめよ?」

「ごめんなさい。でもこれで疑心暗鬼にならず済んだでしょ?」

「まぁ。な、ありがとう」

「まさにガチ恋のなせる技ってものです」


ふふっと自慢げに抱き着いてきた愛良先輩。

仕事辞めると報告のためファミレスに向かう最中。

仕事場でご飯や合コンの類はなかったのか何故かしつこく愛良先輩に尋ねられた。

仕事仲間との仲もまあまあよかったものの、金欠というチートワードで次第に誘われなくなった。

しかしマスターからのお誘いは頻度は低くとも数回かあって、『じゃあ、そいつがストーキングしてるんじゃ』になって先ほどの状況に至る。

先輩が一肌脱いでくれたおかげで心優しいマスターを疑わずに済んだ。


「意外でした」

「なにが?」

「ここで“どんな関係よ! うちは恋愛禁止って言ったはずよ?”って一昔前の古臭いルール持ち出すものかと思い込んでまして」


……藪から棒にどした?


「彼が幸せって心から言えるようから始まる文章およそ30個ほどピックアップしておりましたけど」

「どちらかというとそれ結婚の挨拶のやつだよね?」

「あ」


心底『知らなかった』という驚きの色が顔中に広がっていく愛良先輩。


「毒姫も抜けてるとこありますな~」

「むっすー! 今のは自虐ネタじゃないですか!」

「自虐どころかポンコツだったんじゃない?」

「あーあ、言ってはならないこと言っちゃいました。拗ねましたので寄り道の同行を要求します」

「はいはい。あ、金は……」

「あるじゃないですか。こ・こ・に♪」


ニーっといやらしい笑み付きで俺の前ポケットに指さす。

「ご馳走になろうかしら~!」

そういうことか。

「仰せのままに」

「大変結構、参りましょう」


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― 新着の感想 ―
[良い点] まぁーなんでこんな風な関係になったのか全然わかんないから飽きてきたな
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