ピュア系ストーカーもたいがいだけど同担は論外だろ
「念のため聞くけどさ」
「はい」
「もし付き合った相手が……」
「わたくし、あなた様以外の人とたとえ想像の中であれ付き合うことになるのは無理ですの」
「うっ」
耳元で囁かれてドキッとしてしまう。
メチャクチャ重い。
けど純情すぎる甘い言葉が間近から飛んで来たらドキッとしちまう。
おまけにギュッと力入れられた。どうやらマジで無理っぽい。
仕方ない。
「オーケー。じゃあ仮に俺と付き合ってるとして」
「はいっ!」
「もし俺が浮気したらどうするの?」
「泣きます」
「は?」
「一日中泣いて泣いてあなたに捨てられないようもっと努力しますわ」
「おぅ……」
めっちゃピュア……
「ちなみに浮気相手の女性はどうするんだ?」
「あなた様に二度と会わないよう、小金を握らせてお願いして遠ざけますわね」
「そこでお嬢様パワー使うのかよ」
「で、わたくしも帰り道の仲間に入れてくださりますの……?」
先ほどとは違う不安げな声色でこちらう伺うように華生ちゃんがそう訊ねてくる。
このメスガキお嬢様のストーキングの動機も行動原理が嫌でもわかった気がする。
この子はピュアすぎる。
ストーキングしたのも犯罪に片足突っ込んだのも突き詰めてみたら(好きな人のことが知りたいから)で、それ以上でも以下でもない。
手元にある情報かざして脅迫する。
という発想がハナから頭から排除された上で考え、行動に移している。
うーん……。
「たかみちさまぁ……」
いつの間にか後ろから俺の上に馬乗りになってうるっとした目で見下ろしてきていた。
「うっ……」
エロ過ぎる、破壊力が抜群で直視できないー!
童貞には刺激が強すぎる状況。
アグレッシブな行動取っておいて要求の内容はもっとも純粋という矛盾アタックか。
「……いいよ」
「はぁぁ……!」
「ち、ちなみにですが」
「もっとあるの?」
「毎朝、起こしにお訪ねしても、その、よろしいでしょうか」
「その、あの……」
「……いいよ。だたし条件がある」
「な、なんでしょうか。エッチなことはその、付き合ってからがいいかと……!」
「ななななにいうてんねんこの子!? 違うよ! そっちじゃなくてさ!」
ポンと煙出しちゃうほど真っ赤になった華生ちゃんにこっちもつられて顔が熱くなってきた。
落ち着け……落ち着いて言いたいやつからビシッと言っとくのだ。
じゃないと安眠の未来はない。
「一週間前から付けてたよね? 退勤する時と寝る時だけは勘弁してもらえるかな。最近、視線感じて寝不足気味なんだ」
「はい……?」
「なんでお前がそういう顔になるんだよ。いや別につけるなって言ってるわけじゃなくてだな」
「ち、違いますの」
「わた、わたくし、ちがっ」
「ん? 急にどうした、大丈夫か?」
華生ちゃんの顔が真っ青になり突然錯乱し始める。
先ほどまで熱に浮かされたような、蕩けた。と言った方がピッタリな顔だったのに。
今の顔色はそう。まるで何かに怯えたような……。
「わ、わたくしは孝充様と知り合ったあの日からつけておりましたの」
「俺ずっとストーキングされてたの?」
「一途ですので。問題はそれではありませんわ!」
「いや充分問題だっつーの」
「わたくしは先ほどこの家に監視カメラと盗聴器も仕込んだと申し上げましたわ」
「そうだな。あ、別にそれ今すぐ取らなくていいよ? 満足してからとっても……」
「そうじゃありません! 孝充様はまだ気づいてないのかしら」
「最初言ったではありませんか、わたくし睡眠中のあなた様をつけるような真似する必要などございませんわ!」
「え……?」
「おまけに一日中付きまとったのは知り合った日からで、なるべく気配は消しておりました」
「は?」
「あなた様が学校から出てきた辺りから無事帰宅するまで。そしてお仕事場に向かわれるまで見守っておりましたの」
「じゃ、じゃあ、ストーカーがもう一人いるってことになるだろ」
「で、ですわね……ど、どうしましょう?」
「と、とりあえず、三人で対策練るしかないか」
「ちなみにストーキングやめるつもりは?」
「死んでもありませんわ。むしろボディーガードってていで堂々とできて役得ですのよ♡」
「左様ですか……」
もうひとりのストーカーってパワーワードに身が縮む思いも一瞬、純情ストーカーすぎる華生ちゃんのおかげで肩の力が一気に抜けた。
両手合わせて百点満点の笑顔でハニカム姿は純粋そのものだけど内容が内容だからなぁ……。
愛良先輩に連絡しておこう。
「これでよしっと」
愛良先輩には『ストーカー二人おった』と適当に送っといた。
『今日は早めに待ち合わせポイントにつくように』と可愛いアイコン付きで返信が送られてくる。
「放課後までわたくしと甘いひと時はいかがかしら?」
「逆にこっちにいる方が危ないかもしれないだろ?」
「ちぇー。でも、今日の登校道はこの華生がお守りいたしますのでご安心ください孝充様♡」
「はいはい。っと着替えるからあっち向いてて」
「ごくっ……」
「覗いたら出禁な」
「や、やですわ~お嬢様のわたくしがそんなはしたない真似……」
「……孝充様」
「なに?」
「盗撮って、いいですわね」
「目覚めないでー戻ってきてー!」
トリップ仕掛けている彼女に声掛けしつつ制服に袖を通す。
「どうして充電器に前のスマホ刺さってたんだろう」
いつもの癖がまだ抜けてないのか?
反り込みこっわ~と、いつもの独り言が零れて華生と玄関から出ていく。
もしここがゲームの世界で、セーブポイントがあるとするならば。
ターニングポイントがあるとしたら皆が皆絶対ここが分岐だって主張に違いない。
けど俺は気づいてなかった。いや、気づけるよしもない。
ここでこのスマホ無視したせいで後々どんな目に遭うのか……。




