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カモ理論~帰り道が同じ友達に養われていた件~  作者: シミネ
沼の深淵と芽吹く吊り橋効果
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別に鈍感ではないけどなんで顔赤らめてんだろう

これから退勤って伝えて電話繋いだまま五分放置はひどい仕打ちだって自覚している。

真夜中どころか暁の帰り道。返事がないと電話する相手は何かあったのではと心配性になる。

でもしょうがなかった。

寝ようとするとやたら視線が感じられて眠れないし。

紛らわすため動画つけっぱなしにして寝ようとしてみたけど、どうやら俺は光が漏れてるところでは中々眠れないタイプらしいのでうまくいかず仕舞い。

余計目が覚めた。


それで解決のため帰りがてら調べてみようとした。

が、人間捉え方によって同じものも違って見える生き物。

つけられてるのが被害妄想だとしても、頭の片隅にその思考があったままではいつもの道も違って見えてしまう。

だから電話繋いで話しながら探りを入れてみようとしたものの、夢中しすぎてそれどころじゃなくなった。


「そ、そういう理由でしたらその、今回は許しちゃいます」


何故もじもじしてるんだろう?

心なしか顔もちょっと紅潮してきたような……。


「にしても視線が感じられるってただごとではありませんね」

「つけられるような真似はなんもしてないけどなぁ」

「近頃変わった出来事などありませんでした?」

「ドロップキック食らったこと、帰路一緒にする友達がなぜかやたら俺をヒモにさせようとするところかな?」

「後者は一般常識ですが前者は明らかに異常事態ですね」

「後者がよっぽど頭イかれてるぞ」


前者は不慮の事故だけど後者は明らかな人身事故だ。

将来の俺に関わる事故だから間違いない。


「もう別れポイント、ここでお別れですね。今日のシフト夜明け二時頃まででしたよね?」

「把握されちゃったつけられる~」

「もうつけてますよ~? ロックオーン」

「ドロドロにとかされてちゃうぅー!」


クスクスと二人誰も通らない十字架で笑い合う。

くっだんねーギャグでいくばくか空気が和らいだ。


「孝充君、また明日ですよ」

「ああ、また明日な愛良先輩」


適当に片手あげて相づちする俺と深くお辞儀してはぐるっと背を向けて歩き出す先輩。

今日は二軒シフトが入れてあるのだ。

「夕飯抜きではキツいけど、まあやってみるか!」

・・・

「お疲れさん、しっかり身体休めろよー! 今日ノルマキツすぎたから三十分くらい休んでから風呂入れよー! じゃないと死ぬぞー!」

「お疲れさまでした……」


適当に相づちだけ打っては帰路へつく。


「きっつー……」


歩くというより下半身引きずりに近い形で家へ帰る。

今、心の中で呟こうとしたやつが表に出てなかったか?

まあいいか、誰もいないし聞かれる心配もない。

愛良先輩に言った夜明け二時より一時間ほど時計の針が進んでるから明日が怖い。

ルネ飛ばしたから明日またお小言もらう以外はいつも通りだろう。

それより今は休みたい、四畳半のマイホームが恋しすぎる。


「家までの道こんなしんどかったっけ?」


平地しかないから運動不足か何かしんどい作業やってないかじゃない限りつらいと思うはず……。


「や、めっちゃしてたな」


ついさっきまでほぼゾンビ状態でバーサーカーやってた、うん。

二軒ハシゴして飲むリーマン感覚でシフト入れてた過去の自分の愚かさを今更呪っても仕方がない。

後から確認してみたら今日はファミレスと工事現場どっちもシフトが被る日だった。

ド深夜には仕事がそこそこ少なくなったりする時がある。

何故か最近ずっとフィーバー状態だったファミレスと前回入れ替えでシフト入っていた時を除いたら基本暇な時が多い方に分類される。


そこでとある可能性を排除していた。

仕事量。それに拘束時間が入れ替わると一考もしてなかった。

ファミレスの方はそれはもう店長が“ここ連日ずっと忙しかったしもう閉めるね”と言っちゃうくらい人がないがらんどうの状態。

対する工事現場は詳細までは知らんけど足元に火の粉が飛んだ状況で。


「やっとついた……」


着いた途端、脳みそがふにゃふにゃのスライムと化して思考能力奪われてしまう。

波乱万丈と言える一日を頭の中でまとめていたらやっと家にたどり着いたんだ。リソースもう割きたくない。


「フィーバーオフー」


気の抜けた声で適当にぼやいて全身の緊張が一気に萎む。

疲れた…………。

俺は今、一昔前のアニメのリーマンキャラみたいに玄関につっぶしてる。

布団に入りたいのは山々だが今汗だく状態で入れない。

替えの服忘れるとか目が見えなすぎだろ。

おまけに疲れすぎてシャワー浴びてくるのも忘れた。疲れすぎると脳が抗議して思考能力死ぬ体験がまさか学生の身で体験できるとは誰が思うか?

床に潰れていたら瞼がどんどん降りていく。

巨大津波のよう怒涛の勢いで寄せてくる疲労感に抗う術はなく。

起き上がろうとしたものの身体に拒否られてノックダウン。

愛良先輩に明日行けないって伝えとくしかない。


「あと一回破ったら何されるかわかんない……」

笑顔、すげー怖かったな。


なんて昼の出来事が浮かびあがる中、なんとか気力を振り絞りルネを起動。

メッセージが届いてた。


『お仕事お疲れ様。もう少しの辛抱だって思ってください』

『今日はぐっすり安眠できますように』


「何か書いてるけど……」


見えん。

瞼が半分以上降りている。

心配してくれている旨のやつの可能性が高い。


「ねっむ」


適当に書きなぐって送信っと。

最後の気力を振り絞ったせいかそこで意識がプツンと切れた。


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