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カモ理論~帰り道が同じ友達に養われていた件~  作者: シミネ
沼の深淵と芽吹く吊り橋効果
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遅刻と疑惑

「っふあ~」

「やべ、また昼間から飛んでた」

「不眠症か?」


夕暮れの眩しさに自然と瞼が開きグッと背伸びひとつ。

慌てすぎたせいか見当違いなセリフが勝手に飛び出た。

取り換えた(かえさせられた)スマホを取り出し時間を確認。


「っわ……」


数件のルネの通知と不在着信が届いている。

発信者はどれも愛良先輩だ。


「また心配かけちまったか」


傍から見たら束縛の強い彼女のそれだけど、中身がまったく違うのでさすがに申し訳なくなってきた。

待ち合わせポイントまで全力ダッシュ。

既に愛良先輩がついていた。


「……孝充君?」

「は、はい」

「どうして電話、出てくれないんですか?」

「あ、あはは、寝ておりまして……」

「ふふっ」


ニッコリとした微笑みに比例し幾度か気温が下がったような感覚。声かける当時の最初以来、こういう態度は初めてだ。


「ちょっ」


肉がつぶれる感触と同時にゆっくりと体温が上昇する感覚。

腕を抱きしめてきた。


「帰りましょうか? 物覚えの悪いた・か・み・ち・く・ん」

「はい……」

「敬語は禁止のはずでは? 一生カモしてくれる女の子探してる最中脳みそがカモ以下になったのですか?」

「今日はいつもよりめっちゃ辛辣だなーなんて……」

「原因わかってますよね? 処しますよ?」

「ひっ」


野生の感が働き身を引こうとする。

この前の一連の事件があったからか、過剰反応してしまった。

しまった。傷つけるつもりはなかったのに。


「元々暴力は嫌いですので安心してください」

「『ならなんであの時は華生ちゃんに暴力なんか』って顔してますね?」


俺、顔に出やすいタイプなのかな。

バイト先ではもっと愛想よくするようにと言われまくったせいでトレーニングした成果が返って毒になったんだろうか?

どうしてひとつひとつ全部当てられるんだろう。


「いずれしっかり説明しますよ。ふふっ」

「……?」


見慣れたいたずらっぽい笑みが急に顔中に広がった。

やっぱり今日は先輩の情緒がおかしいような気がする。


「では、説明してもらいますね? 拒否権はありません」

「わかった……」


敬語使ったらまたどえらい目に遭ってしまいかねない。

素っ気ないとも取れない返し方になったが、返って『はいっ』と慈しむ笑みが湛えた顔で返事してくれた。

俺たちのいつもの帰路に踏み出しつつ、なぜ遅れたか話始める。


「一週間ほど前からなんだけど」

「一週間!? 何かお悩みがおありでしたらいつでも話してって毎日言ってますよね!」

「むしろ一週間立ってるから悩みとなってこうして相談してもらってるんだろ?」

「言われてみれば……」

はぁ、とため息ひとつこぼす。

マジで悩みになるとは思えなかった。

「ここ最近、夜中によく眠れないんだよ」

「もしや毎晩私と電話してるせいで……」

「それはない。逆にそれがないと眠れないくらいだ」

「ひゃぃっ」

「……つけられてる気がする」


勘違いかもしれないけど。と念のため補足つけておく。

予想の斜め上をいく返答のせいか愛良先輩が面白おかしい顔になってしまった。

藪から棒にとはまさにこのこと。鳩が豆鉄砲を食ったような顔ってこれのことか?


「はい?」


ネタですか?と言いたそうな顔の愛良先輩に順を追って説明し始める。


「愛良先輩と別れてからすぐではないんだ。バイトが終った後、家への帰り道辺りから妙な視線が感じられる」

「電話してる時はまぁ気にならないけど目閉じたらめっちゃ気になってさ」

「もしやと思って聞きますので気を悪くしないでください」

「その……霊感持ち、とかでは?」

「ここに住み始めて二年ちょっとだ。それはない」

「お前に嫉妬して……」

「め・ら♡」

「……愛良先輩に嫉妬した可能性もないと思う」

「よくできました。偉い偉い」


うふふといつかしむ微笑みのまま優しくぎゅっとしてきた。

無性に抗いたくなる気持ちをグッとこらえる。

距離が近づいた分、お前呼びもイケると思ったのにプレッシャーだけ増すのはなんでだよー!


「ある日、どうしても眠れなくてさ結局行動起こした」

「行動に出たんですか? 危ないでしょ、電話切った後ですよね?」

「いや、電話してる最中からずっとだった」

「……?」

「数日前、一回指摘されたことがあっただろ?」

「あの日ですか」


しっかりと覚えていたらしい。


「家の辺りからしらみつぶしに片っ端から回って街の方に続く道まで見回りしてたけど、原因は見つからなかった」

「退勤はやたら遅い上にまともに返事しないそそろな様子だったのはそんな理由があったからなんですね」

やっと得心がいったのかやれやれと項垂れて首を振る愛良先輩。

「実はそういう理由があったんだ。心配かけてわりぃ」

「ブラック企業かなと思って潰すか悩んでたんですよ? あやうく気ままに企業潰しする漫画によくあるわがまま系お嬢様になるとこでした」


数日前、電話の際、適当に相づち打つばかりか五分ぐらい声が聞こえないのはマナー違反って叱られたのだ。

当然心配かけた上に配慮がなってないのもわかっている。

愛良先輩が目くじら立ててもしょうがないと思う。

でも仕方がなかった。


「で、結果はいかがでしたか? 利用された甲斐はあるでしょうね」

「何もありませんでした。すいません」

「はあ、これだけは真面目に答えてください。どうしてそんな真似を?」

「その……」

「はっきり言ってくれないとこちらも判断しかねます」

「……わかったんだ」

「はい?」

「一人はでスるのはその、どうしても勇気がなくて」

「~~!!」

「利用したみたいで悪いとは思うけどそんな理由だった。ごめん」


別れポイントに近づいたため、一旦歩みを止め姿勢を正ししっかり謝る。


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