幼女戦記について
最初に言っておくと、私はこの作品を好きです。
なぜか、と言うと読むに値したからだ。
幼女戦記は人事部のおっさんが転生して幼女に生まれて無双する……というような作品だ。
ドイツのような国の魔道軍人となってて、この作品がいいのはテンプレを上手に使った上で、含蓄に富んでいるところ。
普通のなろう系にないオリジナリティがある。
ちなみに、なろう系だけど載ってたサイトはなろうではない。
欠点としては、なかなか最新刊が発売されないことだ。
内容が良いから仕方ない、と割り切るしかない。
漸く、明日最新刊が出るのは個人的には好ましいこととして受け止めてる。
この作品のタイトルを読んだ時、私は「気持ち悪いオタク向けライトノベルかよ。俺はオタクだけど、萌え萌えキュンキュンしたような作品は嫌いなんだ。萌えはあっても良いけど、それを主体に押されるとかね。ハルヒやSAOや魔法科高校の劣等生やリゼロのようなマジで面白い小説以外無理なんだよ!」と思ったものです。
一年は無視していたのですが、縁あって一巻を無料でAmazonで読み……二巻から全て最新刊まで購入。
「タイトルはふざけてるようでいて、中身はマジで面白い小説だったぜ。内容も文章も悪くねえ……いや、良い」
陳腐、と言われてもおかしくないし、ここでこの記事を読む人はなろう系を愛しているだろうから語る価値もないかもしれない。
だがあえて言うと、異世界転生して前世の知識を持って無双する、そのテンプレがこんなにも面白いのかと教えられた作品の一つでした。
しかも、魔法科高校の劣等生と同じように魔法と軍隊がテーマでそこが個人的には刺さる。
そして無双系でありながら、一応ちゃんと内容があって終わりが見えてるのがこの作品の傑出した良い個性だとおもいます。
異世界転生は好きだけど、出だしが全てで内容浅そう……そう思ってしまうことがある。
終わり考えてないだろって作品が多いし、エターが怖い。
だがこの作品は違う。
ちゃんと「辛くて暗い未来」が描かれてるし、間違いなくそれは描かれる。
ただテンプレが書かれてるのでなく、なろう系らしからぬ要素ーー戦争を戦争として大局的に書くことが出来てしまっている。
ターニャという個人を書くだけでなく、帝国の情勢を比較的丁寧に書いてて、尚且つエンタメとして成立している。
個人的にはよくある異世界転生ものでありながら、今までに無かった全く新しい戦争エンタメ小説です。
私はこの作品が「人事」という視点で丁寧に反戦を描かれてるのがとても良いと思った。
というのも、それはネット右翼達に「神書」と呼ばれる本の存在を知っていたからです。
それが「失敗の本質」というタイトルの本なんですが、大日本帝国の人事から失敗を読み解こうとしたその本です。その本と似通ってるかつ、納得出来るからに他ならない。
キャラを描くのに人事という視点で描写するのです。
そこが素晴らしいですね。
私は日本人なので、戦争を日本人かアメリカ人の視点で触れることが多い。
だからこそ、ドイツが舞台という視点が新しくて良いと思った。
しかも、内戦戦略というドイツ軍あるあるのネタをなろう系と言って良いテンプレでかましてくれるのが学びにもなるし見ていて気持ちが良い。
話は分かりやすいし、読み易い文章になってる。
ワナビーとして、これは良い文章力だな……とリスペクトする。
ちなみに、幼女戦記は語彙が比較的豊富で難しい語彙を使ったりするが、それは異世界転生だからこそキャラに合ってるところがある。
私は子供向けに書かれたような本を読んだりして、「こんな難しい語彙を使って子供に愛されると思ってるのかな?」とか思ったりする。
しかし、ターニャは中身がおっさんなのだ。
おっさんだからこその語彙に納得する。
また、私は芥川賞系の小説とかを読むことはあったけど、「何でこんな若造がこんな語彙を?」とか疑問に思うことがある。
しかしターニャは人事部おっさんかつ、高学歴。
語彙に納得できる背景がある。
しかも、ちゃんと分かり易い展開を書いた上で難しい語彙を使うので、難しくても既に状況が想像出来てる。
読者に優しい良い文章をしている。
日本の小説家ってクソだな、と言いたくなる瞬間が本を読んでてあった……それは豊富な語彙使ったら格調が高くなるという驕り。
気持ち悪いとしか思えない。
そんな私が唯一かもしれないーー語彙があって面白いと思ったのが幼女戦記だ。
キャラに嵌まってるなら語彙があっても良いな、と生まれて初めて思えた。
なろう系は分かりやすくて良いな、とか思ったりする私としては幼女戦記とそこら辺の語彙豊かなだけの小説は天地の差がある。
幼女戦記は難しい語彙を使うけど、平易で分かり易くあるべきは分かりやすくしている、そこが良い。
平易と難しい語彙の塩梅が良い。
「難しい言葉を知りたいんだったら漢検一級のテキスト買う、難しい語彙なんて使うなや」
私はそう思ってしまうのだ。
しかし、私が唯一愛すると言っても良いだけの語彙を使いこなすのがターニャだ。
他にも愛するキャラはいるし、幼女戦記は好きな小説ベストファイブに入らないが……一巻を除いて全巻買ってる以上、刺さるものはあった。
語彙において、このキャラより良いキャラはいなかった。
司馬達也くんのがターニャより好きだけど、ターニャも好きって言えるだけの魅力はある。
このターニャのキャラは良い。
幼女戦記は航空戦力として魔導戦を記述した傑作でもある。
幼女戦記のような視点でちゃんと航空戦が語られることは今まで無かったと思う。
ドキュメンタリーで一部言われたり、ネット右翼の人達がきゃっきゃわいわい語ってたくらいだ。
エンタメ作品としては無かった。
それがドイツ軍人、として描かれてる。
ターニャは時に陸上戦を行うし、部隊が第一次と第二次の世界大戦なので潜水艦などとも戦うけど、基本的には航空視点が良い。
航空戦力、という無双がある。
ところで、
ネット右翼の人達の言葉は面白くて「戦艦大和とか言う箱入り娘、いざ戦場に出したらろくに活躍出来ずに沈没する」というようなことを日々話している(表現は私独自です。こんな書き方をする人達ではない)。
戦艦大和、というのは大艦巨砲主義という考え方をベースに作られた戦艦だ。大艦巨砲主義とは「大きな大砲で撃った方が艦隊の撃ち合いって勝ち易いよね? じゃあ、大きな大砲載せるなら大きな船だよね?」と理解すれば良い。
で、実際作られたものの、ろくな活躍は出来なかった。
なぜなら時代は空母……航空戦力の時代に変わっていたからだ。
空母とは、飛行機を乗せる為の船だ。
飛ぶ戦闘機や爆撃機、それを運ぶ空母の方が戦果を上げると言うのに人類が気付いたのは第二次世界大戦の途中からだと言われている。
幼女戦記はそう言った航空戦の知識がある人が書いている。
だから無双の知識がいちいち納得できるし、「作者勉強してるなぁ」と感心する。
似たような知識は私にもあるけど、それをこれだけの文章と構成とキャラで、異世界転生という上手い感じに作品化するのは素晴らしいと言わざるを得ない。
作者は知識だけある人、でなくそれを使ってセンスある作品を書ける人なのだ。
キャラだけじゃなく、国や戦争と言ったものを書くことが出来てる。
この本の著者は下調べもそれなりにしてる上で、こってこてのテンプレを書いてる。
それが面白い。
ターニャの無双は心地よいし、日本人として共感出来てしまうのが敗戦に向かっていく感じにある。
あぁ、負けるんだな……というのが分かる。
私は東京ブラックホールや関東軍や財閥の麻薬利権やGHQ工作員となった日本人や朝鮮人やアメリカ人について調べてしまうような人間だった。
真剣に世の中のことを考えるのを愛している。
私が愛するのは正義であって、特定の国や人ではなかった。
その生き方も変えないといけないな……と度々感じる。
だがそれでも、正義ってのは気にしてしまうから、この作品には惹かれるものがある。
そんな私としては、ドイツがどう戦争に突き進み、そして失っていくのか?
それを知りたいと思っていた。
追体験するような作品は無いかな、と。
それが日本から出るのは驚きだった。
ドキュメンタリーを探したが、上手に構築されているのはなかなか出会えなかった。
なんだかんだ、映像の世紀とかも好きだが、何かが違う……と思った。
戦争を追っかけるというのは非常に難しくなることがある。
色んな人が色んな視点を持っているからだ。
だが、自分に合う視点を欲しいと求めてしまうことがある。
腫れ物、臭い物には触らず蓋をするのが普通だが……私は普通ではない。
答えが欲しい。
戦争をどう思えばいいのか?
その答えの一つが、幼女戦記だな、と思う。
全ての基礎知識を持った男が、現地に転生して実際に経験しているかのような臨場感がある。
強いて言うなら、第一次世界大戦のドイツはインフルエンザ(スペイン風邪)に苦労したけど、話の都合の為それがない。
しかし、それは幼女戦記としては書かなくてもいいだろうネタだったから納得できる。
純粋に軍事や外交や内政を書けば良いと思う。
ライト面しておいて、実際はかなりハードで読み応えがあった。
ネタバレは良くないからあまり語れないけど、ターニャは面白い。
優秀、というだけでなく優秀だからこその欠点がある。
他人の気持ちに共感出来ない……だからこそ、ターニャは無双出来る命を守り切れる。
次は、ヒトラー最後の12日間かな。
昔、専門学校に通ったけど……今思えば小説学科じゃなくてYouTube学科とかのが向いてたんだろうなとため息中です。
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