休日
大学時代の友人に久々に会った。
「散々だよ」
「お、おう。どうしたの。仕事関係?」
「いや休日が、ね」
友人は散々たる理由を述べる。
「時間があるとさ、考えちゃうんだ。自分の今について。就活で何となく受かったからって理由で入った会社で仕事をして、いったい何になるんだろうって。別に大学に行かなくたってできるような仕事を日々淡々とこなして、それで何になるんだろうって。俺が小さい頃になりたかった将来の姿ってこんなんだったっけって・・・仕事中はそんなこと考えないからいいんだけど、休日は暇だからこそ、そんなことが頭に浮かぶんだ」
「・・・まあ仕事が好きならそれでいいじゃん」
「好きとは違うんだ。マシってだけ。休日で休めないってよりは、夢中で仕事をしている方がマシなんだよ」
「そうかあ・・・でも、分からないなあ。何か趣味でも見つければ変わるんじゃない?」
「・・・どうだろう」
「とりあえず、何か歌おうよ。ほら、久々に一緒にカラオケに来たわけだし」
友人は少し笑った。
「・・・せやな。2年ぶり・・・かな」
友人とふたりでのカラオケ。気を使わない選曲。それは、アニソンの連続。
「・・・なっっっっっっっっっつ!・・・」
「・・・あれは神作だったね・・・」
「・・・声優が先に死んじゃわないか心配だよ・・・」
「・・・てか、まだ続いていたんだ・・・」
気が付けば、マイクを置いてアニメ談議。
歌ってくれず、モニターは文句のひとつでも言いたげな様子で、同じ表情と同じ言葉を繰り返していた。マイクは寂しそうな様子で机の上にちょこんと座って、俺たちの会話を聞いていた。
「そろそろお時間です。退出の準備をしてください」
先にしびれを切らしたのはモニターだった。
その表示を見て、初めて時間を認識した。ふたりとも明日は仕事である。終電は待ってはくれない。慌てて支度をして駅のホームへと向かうのだった。
「はあああ」
俺はため息をついた。
「どうしたんだい?」
「え、明日が嫌だなあって」
「はは、そうか」
「うらやましいよ。仕事している方がマシって思えるだなんて」
「いや、それがね」
友人の、白い歯が見えた。
「2年ぶりくらいかな。・・・明日が憂鬱に感じるよ」
「・・・またすぐに会おうよ」
「・・・おう」
火照った体に、夜風が心地よかった。
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