第11話
決勝。
相手は三年生チームで、体の大きい野球部やサッカー部らしきイケイケ系+バレー部の主力で構成されていた。うちのチームと同じくここまで全試合圧勝で来ており、そう簡単にはいかないだろうと試合開始前に悟った。
「ナイスボール!」
相手チームが大きな声で叫ぶ。
試合は一進一退の攻防を続けており、ラリーもこれまでより相当に長い。チームメイトは既に息を切らしており、俺と智也は実質二人で得点を重ね続けていた。
チームメイトにはひたすら高くレシーブすることだけを徹底してもらい、智也がトスを上げて俺がスパイクで得点を重ねた。
そしてついに俺たちのマッチポイントを迎えた。
頑張れ!と女子の高い声が体育館に響く。既にほかの競技は全試合終わっているようで、俺たちは体育館の中央のコートで、全校生徒が見守る中で試合をしていた。
そのどこかに冷泉もいるかもしれないが、これだけ注目されていれば冷泉も上手く介入はできまい。
「最後決めるぞ!」
「おお!」
チームメイトが緩やかなサーブを放つ。相手のバレー部が軽くさばいて、一番背の高い野球部であろう坊主が腕を振り抜く。どうにかレシーブを上げて、智也のトスに合わせて助走を取った。思い切りジャンプして、バレー部のブロックの間を狙ってボールを叩く。ボールはブロックの手の端に当たり、明後日の方向へ飛んでそのまま力なく床で跳ねた。
俺たちの勝利を告げる笛が二回鳴らされる。
「よっしゃあ!!」
勇介はグッとガッツポーズをして喜ぶと、チームメイトが駆け寄ってきた。きゃあ!!!と今日一番の黄色い歓声が体育館を覆う。
きた、これで俺はモテモテ、そして彼女を作れる……。
そう思った時だった。
「二ツ橋君!」
聞き慣れた声がして身構える。も、避ける間もなくその声の主が俺に抱き着いてきた。
「ちょっ!」
いきなりのことに思考が止まる。全校生徒が見ている中でこんなことをされるとまずい。そう思っても建前上引きはがすこともできない。
智也以外のクラスメイトがヒューヒューと囃し立て始める。
冷泉はわざとらしく、はっ、私何しているんだろう顔をした後、恥ずかしそうに俺から離れていった。しかし一度囃し立てられるともう流れは変わらない。ヒューヒューヒューヒューとそこら中から聞こえるようになった。
「今のって彼女かな?」
「彼女いたんだね」
「すごい美人だったね」
そこら中からそんな声が聞こえてきて、俺と冷泉の関係は全校生徒の知るところとなってしまった。わざわざ自分が注目されるために頑張った結果、それをまんまと利用されてしまった形となった。
「……くそお」
試合に勝ったのに悔しそうな俺を周囲が不思議がる中、智也だけが優しく肩を叩いてくれた。
「やってくれたな」
帰り道、冷泉に言った。
「私だって不本意ですよ」
冷泉は不機嫌そうに言った。
「橋本君に監視を頼んだんですけど断られてしまったので……。できればあんなことしたくなかったです」
勇介は怒りのままに責め立てるつもりだったが、本気で嫌そうな冷泉にかなりのダメージを受ける。これまで女子に嫌がられた経験があまりない勇介はそういう属性の精神攻撃への耐性がないのだ。
「……すみません……」
「まあいいですけど。優勝おめでとうございます」
「ああ、冷泉も」
「ありがとうございます」
試合後、教室に帰ってから冷泉達のソフトボールチームも優勝したことを知った。
冷泉は全試合で完全試合を達成し、全打席でホームランを打ったらしい。
……素人の試合とはいえ普通じゃないだろ。
ともあれ今回の作戦も失敗に終わった。
しかも更に恋愛しづらい状況まで作られてしまって。
……また別の方法を考えなければならない。
これまでは不定期でしたが毎週月曜と木曜に決めて投稿していきたいと思います。




