第0話 プロローグ
私は果たして、正しい行いというものを続けているのであろうか。
そして、潔く過去の罪に報いることができているのであろうか。
孤独にこれを熟考するという、何とも蛇足じみた愚行を際限なく繰り返し…。
徒ににそんな日々を送るまでになった今日の間、私はある少年に出くわした。
------それはそれは、見窄らしい衣を纏った、灰の髪、青緑の目の少年だ。歳は12かそこいらだろうか。
助ける義理など無い。しかし、かといってヤツらがこの少年にもたらす走馬灯を、傍目で見て見ぬ振りをするというのも、何とも夢見の悪いことであった。いや、悪い夢が大悪夢に変わると言ったところだろうか。
詰まるところ、その少年を保護した。
それから暫くだ。思えば一瞬でもあったような。
当然の報いだろう。
ついに私の番が回ってきたのかと、それまでの罪を全て忘れ去るかの如く、なんとも無責任な感情が湧き出た。
これでようやく…
いや、駄目だ。駄目だダメだだめだ、駄目だ!!
たとえ私の過去の悔恨は消えたとしよう。
だがどうだ、彼の今は?
彼の未来は?
彼の生きる残る術は?
それはどうなる。守らねばならないか?
いや、守るべきだろう。
それが私の、守ることのできなかった人々へのせめてもの報いなのだから。
正味これは、終末に振り絞った醜い言い訳だ。それが私の限界だった。
だが、私は彼の、非凡なるその力を信じ、その少年に最後の言葉を託すのであった。
「私の悲願を継いでくれ。そして…、守ってくれ…。」
言葉を吐けば後は楽だった。
そうして全身の力が溶けいていくのを、他人事のように感じるのだった。