03
それから普通の日々が続いた。
視線は家に着くまで、
朝は家を出たところから
学校の休み時間ですらも感じる。
確かに何も知らないでこの視線をずっと感じていたら
流石に怖くなっていたと思う。
それでも視界に写ることはなく、
不快にならない。
いつの間にか当たり前になるくらいには
彼からの視線に慣れてしまった自分に少し驚く。
彼は私をみていて何がたのしいのだろう?
確かに容姿には恵まれている自覚はあるけど、
性的対象として見られる、あの粘ついた視線を彼から感じたことはない。
それが私を安心させる。
そんなある日の夜、
珍しく彼からメールが届いた。
内容は、
『明日は法事があるので雅さんを見ていることができません。
一応ご報告させていただきます。
それで、
おこがましいお願いなのですが、
雅さんの写ってる写真を送って頂くことはできないでしょうか?
1日、雅さんを見られないのは悲しいので。
ダメでしょうか?』
というものだった。
うーーーん、
こう言ってくるってことは隠し撮りとかしてないってことで、彼の誠実さを感じて好感が持てる。
でも、写真を送るのもちょっと抵抗がある。
我慢してくれないかな?
休日、私が家に籠ってる時は見られることもないわけだし、、、
うーん、悩むわ。
そうは言いつつ、彼の悲しそうな顔が脳裏に浮かんで
断れない気持ちにさせる。
それがなんだかちょっと悔しい。
そうしてしばらく悩んだ末に、
長いため息と共に
自身にケータイのカメラを向けてカシャッとシャッターを押した。
何の感情も表していない自分の顔がそこに写っているのを確認して、メールの返信を返す。
そのまま送るのは釈なので、
『あなたの写真と交換なら』
と送ってみると
すぐにラフな格好で緊張した顔をした彼の写真が送られてきた。
その必死感がなんだか微笑ましくて、クスッと笑ってしまう。
私はさっき撮った写真を送り、
『変な目的や誰かに渡すようなことはしないでね』
と釘をさしておく。
『もちろんです!
ありがとうございます!!大切にします』
と返信がきて、なんだかほっこりしてしまった。
明日は彼の視線のない1日になる。
それが普通のはずなのになんだか不思議な感じがする。
ま、特に何が変わる訳でもなし。
明日の学校の準備をして寝支度を整える
ベットに入ると
なんとなくさっきの彼の写真が見たくなってもう一度彼の写真を開いて眺める。
そうしているとなんだか暖かい気持ちになれ、穏やかな眠りが訪れる。
そのままケータイを枕元に置いて
優しい眠りの世界に誘われた。