02
終了のチャイムと共に緊張もやってくる。
友達からの
「一緒に帰ろう~」
というお誘いに
「ごめんねー、今日はちょっと予定あって一緒に帰れないんよ。
明日は一緒に帰ろうね」
と断りを入れて、クラスの大半が帰るのを見送って
鞄を手に屋上入り口へと足を向ける。
踊場には沢木君が緊張した様子で待っていて
私が視界に入っただけで、視線があちこち忙しなく動いていた。
そんな彼と対面して私は少し落ち着くことができ、思いきって聞いてみた。
「今朝の手紙のこと、できたらどういうことか詳しく聞かせてくれる?」
私の言葉に彼はモジモジしながらも
「あ、あの、
雅さんを一目見たときから、ずっとみていたいなぁって感じて、
四六時中みていたくて、でもずっも視線を感じてたら雅さんは怖いかな?と思って。
それで手紙を書かせて頂きました。」
と頭を下げる。
「えっと、それって好きとか付き合いたいとかじゃなくて?」
と疑問を口にすると
「え?」
と頭を上げて、不思議そうに首を傾げる沢木君。
「え?」
私の方も彼の反応があまりに予想外で首を傾げる。
そうして彼は私が言ったことを考え込み、そのうちボッと音がしそうなほど真っ赤になって、慌てて
「え!いや、あの、ち、ちがっ、くて
えと、そんな、つもり、なくて、
だから気にしないで、ほしいです。」
しどろもどろになりながら言葉にする。
あまりにも純粋なストーカー、か。
そんな彼が可笑しくて、思わずクスクス笑ってしまうと、彼もつられて照れたように笑った。
緩んだ空気が二人の間に流れて、
私は彼に対する警戒を解いた。
「沢木君に悪意や過剰な狂気がないのはわかったわ。
特に何かするわけでもないなら、好きにして。」
そう言うと、彼はホッとしたように
「ありがとう。
えと、何か僕の視線とか態度で
雅さんが不快な思いをした、とかあったら
伝えてくれたら気を付けるようにするから、教えて。」
と頭を下げてお願いしてくる。
どうせすぐに飽きるだろうと思いながら
「わかったわ。
念のために連絡先は交換しておきましょう。」
と一応保険をかけておく。
彼は素直に自分のケータイを差し出して、フリーメールと電話番号を交換する。
私の番号を眺めて嬉しそうに眺める彼に、他言無用と一応念押ししておく。
「それじゃ、さようなら」
そういってその場を後にすると
私は一人家路についた。
さっそく背中に視線を感じながら。