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クールな王妃は裏切られる 1

今回の話の終わりまで読んだらあまり気分が良くないかもしれませんが、あくまでも途中です。

続きの詳しい状況を次回に書くつもりなので、判断するのはそれまで待ってください。


「ふふふっ」


 私は自室で一人、笑みを浮かべていた。

 自室にたった一人で笑っているという光景は傍から見れば精神的に問題があるのではないかと思われるだろうが、いたって私は普通である。

 そんな私の目の前──机の上にはアクセサリーが置いてあった。


「お揃いなんて学生以来ね。やっぱり友達とこんな買い物をするのは大人になっても楽しいものね」


 私は思わず呟いた。

 このアクセサリーはメリッサと一緒に城下町に出かけたときにお揃いで買ったものである。

 せっかくの思い出に、と二人で選んで買ったものである。

 友達というよりは姉妹のように見えたかもしれない。

 だが、そんな関係性も良いなと思ってしまった。

 まあ、それは私たちの身分の差が許さないだろう。

 友達という間柄でも十分幸せであるので、そこまで関係性を進める必要性もないけど……


(コンコン)

「?」


 不意に部屋の扉がノックされる。

 もうすでに外は真っ暗となっており、月もすでに真上を通り過ぎているような時間である。

 こんな時間に来客が来るとは思ってもみなかったのだ。

 様々な可能性を考えてみたが、こうやってノックする来客は思い浮かばなかった。

 しかし、いつまでもそのままにしておけない。


「どうぞ」


 私は部屋に入るように促す。

 扉がゆっくりと開かれ、そこには予想外の人物がいた。


「メリッサ? ……それにメイド長?」


 部屋に入ってきたのはメリッサと彼女の上司であるメイド長だった。

 メイド長はまじめに仕事を頑張るメリッサのことがお気に入りであり、自分の跡を継ぐのは彼女だと常日頃から口にするほどメリッサのことを気に入っている。

 メリッサも先輩として厳しくも優しく接し、面倒を見てくれるメイド長のことを尊敬しているらしい。

 そんな二人が私の部屋にいきなりやってきた。

 しかも、その表情はかなり暗かった。


「「……」」


 二人は暗い表情のまま口を開かなかった。

 いや、開けなかったのかもしれない。

 だが、いきなりやってきた二人が口も開かず、暗い表情で立ち尽くす──そんな状況に私は何も聞かずにはいられなかった。


「二人とも、どうした──」


「「申し訳ございませんっ!」」


「──って、えぇっ!?」


 私の言葉が言い終わる前に二人はいきなり土下座をした。

 突然の行動に私は驚愕してしまった。

 しかし、私の反応は当たり前だろう。

 目の前で友人とその上司がいきなり土下座をしたのだから、驚かない方がおかしい。

 だが、すぐに冷静になった私は質問をする。


「一体、何を謝っているの? 謝られただけじゃ、何もわからないのだけど……」

「そ、それは……」


 私の質問にメイド長が答えようとする。

 普段のキリっとした雰囲気が嘘のように慌てている様子であった。

 一体、何が彼女をここまでにしたのだろうか?


「メイド長、私が言います。すべては私の責任ですから……」

「メリッサ?」


 しかし、そんなメイド長を止め、メリッサが口を開いた。

 その行動に私はさらに疑問に思った。

 メリッサにとって、メイド長は上の立場の人間である。

 あのメリッサが目上の人の言葉を遮り、自分で話をしようとするとは思わなかった。

 しかも、言った内容も気になる。

 だが、気になったことをすぐに後悔した。

 彼女が口にしたのは、とんでもないことだったからだ。


「申し訳ありません。私は王太子殿下と間違いを犯してしまいました」

「っ!?」


 メリッサの爆弾発言に私は今までで一番驚いてしまった。

 思考が上手く働かない。

 頭がメリッサの言葉を理解するのを拒んでいるようだった。

 しかし、理解を拒んでいるからといって、事実が変わるわけがなかった。


「私はクリス様を裏切ってしまいました。だからこそ、クリス様のそばにいることができなくなります」

「……どういう経緯か説明しなさい」

「はい?」


 私の質問にメリッサが驚いた表情をする。

 おそらくもっと怒られると思ったのだろう。

 だが、予想外に私が静かだったのだ。

 といっても、私が静かだったことには理由があった。


「メリッサが私を裏切るなんて信じられないわ。何か理由があったのでしょう?」

「……クリス様」


 私はメリッサが裏切ったことを信じることができていなかった。

 学生時代からの付き合いとはいえ、初めてできた信頼できる友達だったのだ。

 そんな彼女が裏切るなんて考えたくもなかった。

 だからこその反応であった。

 しかし、私がいくら信じたくなくとも、彼女のやったことが変わるわけではなかった。


「クリス様は王太子殿下が過剰にお酒を飲まれていることをご存じですよね」

「ええ、もちろんよ」


 メリッサの質問に私は答える。

 愛する旦那様のことである。

 妻として知っていないとおかしいであろう。

 もちろん、過剰にお酒を飲むことは体にも悪いため、止めようとは思っていた。

 しかし、私がストレスを溜めているのと同様に、殿下もストレスを溜めていたのだ。

 だからこそ、ストレスを発散するための方法を取り上げるわけにはいかなかった。

 今までは何の問題も起こしていなかったので、私も止めることはなかったのだ。


「今夜も王太子殿下は過剰にお酒を飲まれ、酷く酩酊されておりました。一人で城の廊下で座り込んでおられました」

「……」


 メリッサの話を聞き、私はその状況をすぐに想像することができた。

 殿下は人に弱みを見せることが苦手な人間だった。

 王太子という立場上、常に尊敬されるような人間であろうとしているそうだ。

 だからこそ、お酒を飲むときはいつも一人だった。

 友人も護衛も使用人たちも誰一人近くにはおかず、一人で飲んでいたらしい。


「廊下で座り込む王太子殿下を見かけた私は介抱しました。そして、このまま廊下で座り込むのは良くないと思ったため、殿下の部屋へお連れしました」

「……まあ、当然の行動ね」


 メリッサの行動は何らおかしいものではなかった。

 彼女の立場や性根からそのように行動するのは納得できた。


「殿下をベッドに寝かせようとしたとき、体勢を崩してしまって二人で倒れてしまいました」

「……」


 私は何も言えなかった。

 しかし、これもおかしな話ではない。

 メリッサは女性としても平均的───いや、やや小柄である。

 男性として平均より少し大きめの王太子殿下を運ぶだけでも重労働なのに、ベッドに寝かそうとしたら体勢を崩してしまうのも仕方のない事だろう。


「倒れてしまった拍子に仰向けの私に王太子殿下が覆いかぶさる状況になってしまいました」

「……それが間違いってこと? その程度で私が怒ると思ったのかしら?」


 メリッサの説明に私はそう反応した。

 もちろん、怒っている気持ちはある。

 しかし、何も悪い事をやっていない状況で怒るつもりは毛頭なかった。

 いや、私は信じたかったのかもしれない。

 ここで話が終わるのだ、と。


「それだけだったら、私もここまで落ち込むことはありませんでした。申し訳ありませんが、その先をしてしまいました」

「っ!?」


 メリッサの口から告げられた言葉に私は血の気が引くのを感じた。

 信じたくなかった裏切りが本当になってしまったからである。






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