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放蕩王子の作戦は着々と進む


 クリスハルトの作戦は翌日から実行された。

 フィルに伝えると、いきなりハルシオンに直撃する暴挙に出てしまったのだ。

 下位貴族が第二王子にいきなり話しかけること自体おかしなことなのに、フィルは平民であるために周囲からは顰蹙を買ってしまった。

 クリスハルトが話を聞いた時、これはまずいと思ってしまったほどだった。


 しかし、事態は意外と良い方向へと進んだ。

 ハルシオンはフィルのことを知っていた。

 いや、正確に言うと、ここ一年で急激に成長しているクラウド商会のことを知っていたというべきだ。

 貴族相手にも商売をしていることから、王族にもその噂が広まっていたようだ。

 まあ、ムーンライト公爵家相手にも商売している時点で、王族にも噂が広まることぐらいはわかっていたことだが……


 そんなフィルに話しかけられたからこそ、ハルシオンは話を聞こうと思ったようだ。

 しかし、話す内容は商売とは全く関係ない。

 クリスハルトとセシリアのことであった。

 クリスハルトが第一王子の権力を使って、男爵令嬢であるセシリアに言い寄っていることをハルシオンに伝えたのだ。


 もちろん、フィルがセシリアと相思相愛であることも伝えた。

 どんな相手であろうとも愛情を貫くつもりではあるが、第一王子が相手だとそれだけでは分が悪い。

 権力で無理矢理引き裂かれる可能性の方が高いのだ。

 だからこそ、それを防ぐためにハルシオンに頼み込んだ──という話をした。


 この話を聞いたハルシオンは申し訳そうな表情を浮かべたらしい。

 義兄が迷惑をかけているので、申し訳なく思って当然である。

 だから、ハルシオンはフィルの頼みを聞くことにした。

 義兄の不始末への罪滅ぼしといったところだろう。

 といっても、クリスハルトに直接話をしても聞かないことはわかっていた。

 だからこそ、ハルシオンはレベッカに声をかけた。

 クリスハルトを諫めることができるのは婚約者であるレベッカである、そう思ったからである。


 しかし、レベッカでもそれは難しい事を知ることになった。

 この一年で彼女はクリスハルトからないがしろにされ続けていたのだ。

 そんなレベッカの言うことをクリスハルトが到底聞くとは思えない。

 レベッカの方にもセシリアが相談に来ていた。

 クリスハルトに言い寄られているのを助けてください、と。

 その頼みにレベッカは困っていた。

 婚約者としてクリスハルトを諫めることは義務だと思っている。

 だが、それはこの一年の間に何度もやってきたことであり、効果がない事も実証済みであるからだ。

 といっても、あくまでレベッカがクリスハルトに「王族としてふさわしくない行動を慎むように」ということを伝えただけであった。

 フィルとレベッカのことを伝えるのも一つの手段ではあったが、それはあまりよくないことだとレベッカは判断していた。

 クリスハルトは腐っても第一王子──その権力で二人に何をするかわからないのだ。

 だからこそ、下手にそんな情報を伝えるわけにはいかなかった。


 フィルとレベッカは迷った。

 クリスハルトを止めるために一番効果的なのは、フィルとセシリアのことを伝えることだと思っている。

 しかし、それは失敗すると二人に──いや、二人の実家にも迷惑をかけかねない。

 頼まれたこととはいえ、流石にそんなリスクのある行動をとることは難しいのだ。

 相談されてから何日も考える日々が続いた。

 そして、一週間が経ったとき、ハルシオンはあることを思いついた。

 「クリスハルトより身分の高い人から命令してもらえばいいんだ」と。

 今までクリスハルトに文句を言っていた者で一番身分が高いのは公爵令嬢であるレベッカであった。

 しかし、それでも第一王子であるクリスハルトよりは身分が低い。

 そのため、命令をすることはできなかったのだ。

 だからこそ、クリスハルトは言うことを聞かなかったのかもしれない。

 だが、クリスハルトより身分の高い人物からなら命令をすることができるのだ。

 そして、それをできる人物がこの国いる。

 国王である。

 最高権力者である国王の命令であれば、いくら第一王子であるクリスハルトでも聞かざるを得ない。

 命令無視をすれば、廃嫡だってあり得るのだから……

 そう考えた二人は早速国王へ頼むことにしたのだ。


 結果として、その作戦は失敗することになった。

 国王に現状を伝えることはできた。

 そして、国王はクリスハルトに対して命令を伝えることはできた。

 しかし、クリスハルトはまったく堪えていなかったのだ。

 もちろん、これ以上の問題を起こすのなら廃嫡することも伝えた。

 その言葉もクリスハルトには何の意味もなかった。

 元々、クリスハルトは子爵令息であった。

 だからこそ、王族という身分にはそこまで執着もなかったのだ。

 廃嫡をするのなら廃嫡すれば?──クリスハルトはそんなスタンスだったわけだ。

 この反応に国王は頭を抱えた。

 廃嫡をすると脅せば、クリスハルトは諦めると思っていたからだ。

 国王は別に本気で廃嫡するつもりはなかった。

 本当に次期国王にふさわしくない王子を廃嫡すること自体はおかしなことではないが、それは王族の評判を下げることもある諸刃の剣でもあった。

 評判の悪い王子を改心させることもできない──その程度の王族であることを周囲に知られることになってしまうわけだ。

 だからこそ、廃嫡は最終手段であり、そう簡単に実行に移すことができるものでもなかった。

 現状のクリスハルトは他人に迷惑をかけてはいるが、廃嫡するほどではないというのが国王の判断であった。

 罪を犯しているわけではない、好きになった女性に言い寄っているだけなのだ。

 流石にこれだけで廃嫡しようものなら、周囲の批判は避けられないだろう。

 もっと大きな失態をしない限りは……


 この結果をハルシオンとレベッカはフィルとセシリアに包み隠さず伝えた。

 自分達の力が及ばなかったことを恥じていた。

 しかし、そんな二人の反応にフィルとセシリアは怒ることはなく、受け入れた。

 相手が第一王子なのだから、仕方のない事だ、と。

 そんな簡単に解決するのであれば、この一年の間にとっくに解決していたはずだ、と。

 その言葉にハルシオンとレベッカはさらに申し訳ない気持ちになった。

 自分達が情けないせいで、二人に我慢を強いている状態になってしまったからである。

 だからこそ、ハルシオンとレベッカは伝えた。

 クリスハルトがセシリアに接触できないように、学院内ではできる限りレベッカと一緒に過ごすように、と。

 もちろん、それで解決するとは思っていない。

 しかし、クリスハルトとセシリアを引き離すことによって、この問題がより大きくなることは避けることができるはずだ、と。

 そう思ったからこそ、ハルシオンとセシリアはそう提案したのだ。


 これは命令でないことも伝えた。

 男爵令嬢であるセシリアが公爵令嬢であるレベッカと行動を共にすることで、周囲からいらぬ嫉妬を買う危険性もあったからだ。

 セシリアとレベッカにはもともと交流があることを知っている者も多い。

 しかし、多くの時間を一緒に過ごすほどの仲だとは誰も思っていない。

 そのため、いきなり二人が一緒に過ごすようになれば、セシリアがレベッカに取り入ったと判断されかねないわけだ。 

 その結果、セシリアが周囲から嫉妬を受け、嫌がらせを受けることになるかもしれない。

 それについてはレベッカも対応するつもりでもあった。

 しかし、ただでさえクリスハルトに言い寄られることで精神的に参っているセシリアにこれ以上の不安の種を与えてしまうのはどうなのか、という心配がレベッカにはあった。

 だからこその提案だったわけだが……


「その提案を受けます」

「え?」


 セシリアはあっさりと提案を受けた。

 あまりにもあっさりとしていたので、レベッカは驚いてしまったぐらいだ。

 普通はもう少し考えることだろうに、と。

 だが、提案を受けてくれたこと自体は良い事である。

 クリスハルトとセシリアを引き離すためには必要なことなのだから……


 しかし、この提案がどのような結果をもたらすか、ハルシオンとレベッカは正確にはわかっていなかった。






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